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第71話「ふふふ、やる気満々だな。今後の訓練に関してだが、何か希望はあるかね?」
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こん棒を振りかざし、標的の大岩を粉々に粉砕した俺。
よし!
これで、風弾と水弾をほぼ完璧に習得出来たぞ。
心の底から、嬉しさが込み上げて来る。
発動のスムーズさ、正確さ、命中率等々の練度をもっともっと上げれば、
身体能力を活かした剣技、格闘と組み合わせての戦いは、相当なレベルとなる。
もう、複数属性魔法使用者の魔法剣士と名乗っても、
差し支えないし、誰からも文句など絶対に言われない。
あのミランダにだって、いちゃもんをつけられないだろう。
王都へ戻ったら、ぜひ言ってやりたい!
「お前がごみ屑のようにぽい捨てしたこの俺が、今や数少ない複数属性魔法使用者の魔法剣士なんだぞ!」
そう、思い切り、ざまあ!と言ってやりたいのだ。
しかし、ここで素朴な疑問。
何故、わざわざ魔法の発動に、何の変哲もない、こん棒を使うの?って事。
そんな俺の疑問に、修行が順調で、上機嫌のローラン様は答えてくれた。
「ははは、それは君の資質に合わせているからだよ」
「え? 俺の資質に? 合わせているのですか?」
「ああ、魔法発動には様々な方法がある。精霊など人外の力を借用する事も多いのだが、最も必要な資質はメンタルの強さだ」
「最も必要な資質はメンタルの強さですか?」
「ああ、魔法とはまず、強い心の力が必要不可欠なんだ」
「強い心の力が必要不可欠ですか? な、成る程」
ほう、強い心の力が必要不可欠かあ。
うん、それは納得。
元々、俺は普通のメンタルだったけど、
原野や迷宮に置き去りにされたり、襲って来る魔物の盾にされたり、
あれだけシーニュの奴らから散々虐げられれば、
そりゃ、メンタルも身体も強くなるってばよ。
つらつら考える俺をよそに、ローラン様の話は続く。
「エルヴェ君のメンタルは相当なものだよ。そして想像力も抜きんでていて、体内魔力もけた違いに豊富だ」
俺の能力を褒めて、ローラン様は更に言う。
「私の相人眼によれば、君はイメージした事象を、心で具現化し、そのまま魔力に変換する能力に長けている」
ええっと、分からねえ!
「ローラン様、イメージした事象を、心で具現化し、そのまま魔力に変換する能力に長けている……難しいですね」
「ははははは、もう少し簡単に言えば、エルヴェ君は心が強く想像力に長けている。だから、魔法杖の風弾、水弾という、分かりやすいサンプルさえあれば、視界から認識したそのサンプルを基にして、心にイメージを浮かべ、それを魔力へ変換し、すぐに魔法が発動出来るんだよ」
う~ん。
そうですか。
何となく分かったような、分からないような。
やっぱり俺って、頭、悪いなあ。
つまりだ。
俺は妄想がモノ凄いし、ミランダから罵詈雑言を浴びても耐えられるくらい、
打たれ強い。
記憶力も良くて、目で見たものが、即座にマネ出来て、
魔法がぱぱっと使えるって事か!
でも肝心のクエスチョンは?
と思ったら、ローラン様は、
「でだ、何故、魔法発動の訓練に、こん棒を使うのかという質問だが、簡単な事さ。想像力がたくましいエルヴェ君なら、飾りにすぎないただのこん棒を、魔法発動体だと思い込めるだろ」
と笑って、答えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
補足しよう。
魔法発動体とは、術者が魔法を行使する際、行使を補助する魔道具である。
術者の魔力を増幅したり、円滑に伝導したりするものが多い。
最も多いのが、魔法使いが使う魔法杖であり、形状や大きさによって、
「ワンド」「ロッド」「スタッフ」などに分類される。
ちなみに……支給され現在俺たち新人が使っている魔法杖は特殊なもので、
術者でない全くの素人も魔法を行使可能なものだ。
でもまあ、大体理解した。
まずこん棒は、発動体の代わりと言うか、単なる飾りである事。
もしこん棒がなくとも、魔法は発動出来る事を。
そして、今やっている訓練方法が、俺にぴったりであり、
もっといろいろな魔法を習得出来るって事もだ。
今、習得している属性は風と水か……
もしかしたら、まだ属性が増えるってか?
もしかして俺は、全ての属性が行使OKな、
全属性魔法使用者だったりして!!
おいおい、全属性魔法使用者は、
この世界で数人しか居ないって聞いてるぞ。
いやあ、まさかね!!
そこまではありえないだろ。
と自問自答しつつ、期待は高まる。
俺に失うものは何もない。
つまり不安は何もない。
ただただ前進あるのみだ。
そんな俺へ、ローラン様は、
「ふふふ、やる気満々だな。今後の訓練に関してだが、何か希望はあるかね?」
と、尋ねて来た。
「希望と言いますと?」
「うむ、新たな魔法を習得するのか、それとも風弾、水弾、両方を使い、実戦訓練をしてみるか」
おお! 成る程!
う~ん、どちらにするか、迷うな。
同じ属性で、違う魔法習得に挑むか、3つめの属性魔法習得に挑むか。
または、ゴブリン、オークを相手にして、魔法剣士としての経験を積むのか。
「ええっと……」
迷う俺を見たローラン様は、
「はははは、ではいっそのこと、両方やろう」
と悪戯っぽい笑顔で、そう告げて来たのである。
よし!
これで、風弾と水弾をほぼ完璧に習得出来たぞ。
心の底から、嬉しさが込み上げて来る。
発動のスムーズさ、正確さ、命中率等々の練度をもっともっと上げれば、
身体能力を活かした剣技、格闘と組み合わせての戦いは、相当なレベルとなる。
もう、複数属性魔法使用者の魔法剣士と名乗っても、
差し支えないし、誰からも文句など絶対に言われない。
あのミランダにだって、いちゃもんをつけられないだろう。
王都へ戻ったら、ぜひ言ってやりたい!
「お前がごみ屑のようにぽい捨てしたこの俺が、今や数少ない複数属性魔法使用者の魔法剣士なんだぞ!」
そう、思い切り、ざまあ!と言ってやりたいのだ。
しかし、ここで素朴な疑問。
何故、わざわざ魔法の発動に、何の変哲もない、こん棒を使うの?って事。
そんな俺の疑問に、修行が順調で、上機嫌のローラン様は答えてくれた。
「ははは、それは君の資質に合わせているからだよ」
「え? 俺の資質に? 合わせているのですか?」
「ああ、魔法発動には様々な方法がある。精霊など人外の力を借用する事も多いのだが、最も必要な資質はメンタルの強さだ」
「最も必要な資質はメンタルの強さですか?」
「ああ、魔法とはまず、強い心の力が必要不可欠なんだ」
「強い心の力が必要不可欠ですか? な、成る程」
ほう、強い心の力が必要不可欠かあ。
うん、それは納得。
元々、俺は普通のメンタルだったけど、
原野や迷宮に置き去りにされたり、襲って来る魔物の盾にされたり、
あれだけシーニュの奴らから散々虐げられれば、
そりゃ、メンタルも身体も強くなるってばよ。
つらつら考える俺をよそに、ローラン様の話は続く。
「エルヴェ君のメンタルは相当なものだよ。そして想像力も抜きんでていて、体内魔力もけた違いに豊富だ」
俺の能力を褒めて、ローラン様は更に言う。
「私の相人眼によれば、君はイメージした事象を、心で具現化し、そのまま魔力に変換する能力に長けている」
ええっと、分からねえ!
「ローラン様、イメージした事象を、心で具現化し、そのまま魔力に変換する能力に長けている……難しいですね」
「ははははは、もう少し簡単に言えば、エルヴェ君は心が強く想像力に長けている。だから、魔法杖の風弾、水弾という、分かりやすいサンプルさえあれば、視界から認識したそのサンプルを基にして、心にイメージを浮かべ、それを魔力へ変換し、すぐに魔法が発動出来るんだよ」
う~ん。
そうですか。
何となく分かったような、分からないような。
やっぱり俺って、頭、悪いなあ。
つまりだ。
俺は妄想がモノ凄いし、ミランダから罵詈雑言を浴びても耐えられるくらい、
打たれ強い。
記憶力も良くて、目で見たものが、即座にマネ出来て、
魔法がぱぱっと使えるって事か!
でも肝心のクエスチョンは?
と思ったら、ローラン様は、
「でだ、何故、魔法発動の訓練に、こん棒を使うのかという質問だが、簡単な事さ。想像力がたくましいエルヴェ君なら、飾りにすぎないただのこん棒を、魔法発動体だと思い込めるだろ」
と笑って、答えたのである。
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補足しよう。
魔法発動体とは、術者が魔法を行使する際、行使を補助する魔道具である。
術者の魔力を増幅したり、円滑に伝導したりするものが多い。
最も多いのが、魔法使いが使う魔法杖であり、形状や大きさによって、
「ワンド」「ロッド」「スタッフ」などに分類される。
ちなみに……支給され現在俺たち新人が使っている魔法杖は特殊なもので、
術者でない全くの素人も魔法を行使可能なものだ。
でもまあ、大体理解した。
まずこん棒は、発動体の代わりと言うか、単なる飾りである事。
もしこん棒がなくとも、魔法は発動出来る事を。
そして、今やっている訓練方法が、俺にぴったりであり、
もっといろいろな魔法を習得出来るって事もだ。
今、習得している属性は風と水か……
もしかしたら、まだ属性が増えるってか?
もしかして俺は、全ての属性が行使OKな、
全属性魔法使用者だったりして!!
おいおい、全属性魔法使用者は、
この世界で数人しか居ないって聞いてるぞ。
いやあ、まさかね!!
そこまではありえないだろ。
と自問自答しつつ、期待は高まる。
俺に失うものは何もない。
つまり不安は何もない。
ただただ前進あるのみだ。
そんな俺へ、ローラン様は、
「ふふふ、やる気満々だな。今後の訓練に関してだが、何か希望はあるかね?」
と、尋ねて来た。
「希望と言いますと?」
「うむ、新たな魔法を習得するのか、それとも風弾、水弾、両方を使い、実戦訓練をしてみるか」
おお! 成る程!
う~ん、どちらにするか、迷うな。
同じ属性で、違う魔法習得に挑むか、3つめの属性魔法習得に挑むか。
または、ゴブリン、オークを相手にして、魔法剣士としての経験を積むのか。
「ええっと……」
迷う俺を見たローラン様は、
「はははは、ではいっそのこと、両方やろう」
と悪戯っぽい笑顔で、そう告げて来たのである。
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