冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!

東導 号

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第67話「いや、エルヴェ君には言霊、呪文の詠唱は不要だと思う」

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「ふふふ、これがどういう意味か、分かるかい? エルヴェ君」

ローラン様はそう言うと、意味ありげな笑みを俺へ向けて来た。

ええっと……何でしょう?

でも、「すっごく良い事言ってあげるよ」って、波動がバリバリ出てます。 

ごくりと唾を飲み込み、俺は、ローラン様の次の言葉を待つ。

そしてローラン様は、何と何と!

「君は戦士として、特に剣に秀でている。魔法の習得レベルにもよるが、間違いなく優れた魔法剣士になれるだろう」

こうきっぱりと言い切ってくれた。

うわおおおっ!!??
お、俺が魔法剣士!!

補足しよう。
魔法剣士とは、属性魔法を剣に付呪エンチャントした魔法剣を使いこなす、
ハイブリッドな剣士である。

通常の剣技のみならず、魔法力を付与する事で、攻撃力は抜群に上がる。

例えば、火属性魔法を付呪エンチャントした魔法剣は『炎の剣』となり、
不死者アンデッドなど、火を苦手とする相手には、
通常以上のダメージを与える事が出来るのだ。

俺は、襲いかかる魔物相手に、魔法剣を自由自在に使い、
ガンガン倒す自分の姿を思い浮かべる。

うん!
魔法剣、かっこいいし、ぜひ使いたいよ。

また、魔法剣を使わず、単純に、「魔法を使いこなす剣士」を、
そう呼ぶ場合もあるから、魔法剣士の範疇はんちゅうは結構、広いと言える。

さてさて!
話を戻そう。

というわけで、俺は、びっくりしっぱなし。

でも、本当に、良い響きじゃないか、魔法剣士。

そんな事を思いながらも、興奮して声が上ずる。

「えええ!? ロ、ローラン様! お、俺が魔法剣士に、ですか?」

「ああ、それもあくまで現状ではという話だ」

何々?
あくまでも現状って、更に何か良い話の予感。

ローラン様、お願いですから、持ち上げて、
すとんと落とすのだけはやめてくださいな。

「むぐ! あ、あくまで! げ、現状ではとは……どのような意味でしょう?」

「うむ、言葉通りさ」

「言葉通り……」

「つまりだな、エルヴェ君はまだまだ発展途上。伸びしろはとてつもないって事だ」

俺自身が発展途上なのは充分に自覚してるけど……伸びしろはとてつもないか!

おい、おい、おい、何か、良い流れでローラン様の話が続いてるぞ。

「は、はい」

「私が先に告げた通り、君には素晴らしい素質が眠っている。身体能力、剣技、そして複数属性魔法使用者マルチプルである事も、君の素質のほんの一部に過ぎない」

「な!? と、いう事は!」

「エルヴェ君の素質という引き出しには、まだまだ奥行きがある。否、あり過ぎるんだよ」

ぐわ!!
何それ!?

ローラン様の物言いは、大絶賛というレベルじゃない。
遥かにそれを超越している。

戻す言葉が見つからず、俺は無言となってしまう。

「………………………」

「君は無限の可能性を持っている。戦闘タイプの賢者たる私以上かもしれない素質があるのさ」 

「!!!!!!!!!!」

驚きすぎて声が出ねえ!!!!!

俺に、戦闘タイプの賢者たるローラン様以上の素質!!!???

先ほどからずっとだが、改めて驚いた。
いや、驚愕レベルだと断言出来る。

「まあ、そろそろ理屈は良いだろう、エルヴェ君。君の眠れる素質をどんどん開花させていってくれたまえ」

「わ、分かりましたあ!!」

ローラン様から、ここまで言われたら!
素質を見込まれたら!

気合が入りまくりだ。

しっかりと応えなきゃ!!

やるしかねえ!
やるしかねえよ!

「まずは、魔法発動の準備に必要な深呼吸――呼吸法を教えた。やり方は自分で一番やりやすくリラックスするものをいろいろ探し、試してみるんだ。とりあえずここでは割愛する」

「は、はい!」

「さあ、呼吸法により、精神が安定、集中し、体内魔力が活性化したところで、実践に入ろう」

「了解です!」

いよいよか!

と思った俺であったが……

「エルヴェ君の腰から提げたこん棒を抜き、構えてくれるかな」

笑顔で指示を出したローラン様の言葉に、俺は「へ!?」と、
驚き戸惑ってしまったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

えええ?
何々??

「エルヴェ君の腰から提げたこん棒を抜き、構えてくれるかな」

……それって、どういう事だろう?

間違い……じゃないよね?
ローラン様は超人だが、やはり正真正銘の人間。

100%間違いがない事は、ありえない。

だから俺はつい尋ねてしまう。

「え? ローラン様、お借りした風の魔法杖ではなく、ただのこん棒を抜くのですか?」

「ああ、風の魔法を付呪エンチャントした魔法杖ではなく、君の持つこん棒を抜いてくれ」

「ええっと……」

「ははは、まずは、こん棒を抜いて構えてくれよ」

「わ、分かりました!」

わけがわからないうちに、俺がこん棒を抜き、構えると、

「ふむ、ロッジの小訓練場において、君達へ貸与した風の魔法杖を使い、風弾の射撃訓練をしただろう?」

「はい、新人全員で、しっかりと、やりましたし、実戦でも散々使いました」

「うむ、その時の事を思い出し、あの岩へ、風弾を撃つイメージを持ち、心で念じてくれ」

「そ、それで良いんですか? 言霊ことだまとか呪文じゅもんの詠唱が必要では?」

「いや、エルヴェ君には言霊、呪文の詠唱は不要だと思う」

「は、はあ……」

「論より証拠。やってみてくれ」

ローラン様はそう言い、何の変哲もないこん棒から、
岩へ向かい、風弾を撃つ事を命じたのである。
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