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第42話「誰と伴走するかと言えば、当然シャルロットさんの一択のみ」

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魔物どもを倒した俺は、更に駆け続けると、
最後方を走っているセレスさんへ、追いついた。

少し前から、ペースをどんどんどんダウンさせ、ジョギングペースにしていた。

たったったと並走し、軽いノリで、セレスさんへ声をかける。

「ちゃ~っす!」

追いついた?俺を見て、

「あら! エルヴェ君! もう1周したの?」

「はいっす! 1周して来ました!」

「へえ! 凄いね! 君から見たら、私は周回遅れって事?」

「そうなりますか」

「うふふ♡ エルヴェ君のペースならあっという間に5周完走ね。もう結構な数の魔物や獣と戦ったんじゃない? ダメージはない? 治癒回復は大丈夫?」

「はいっす! そこそこ戦いましたが、全くダメージないっす! まだまだ大丈夫っす! 問題ないっす!」

「うふふ♡ 素敵♡ 頑張ってねえ♡ 期待してるよお♡」

「はあい! 頑張りま~っす! お先~っす!」

手をひらひら横へ振り、ダッシュ。
セレスさんを置き去りにして、俺は前方へ。

すぐ前を同期のシャルロットさんが走っていたが、俺に気づいていて、
ちょっと、にらんでる。

よくよく見れば、シャルロットさん、唇をとがらせ、ほおをふくらませている。
すねたような波動を感じる。
どうやら、ジェラシービームを放っているようだ。

セレスさん同様、俺はシャルロットさんとも並走する。

「シャルロット! お疲れ!」

「もう、エル君ったらあ!」

「はいよ! どうした?」

「はいよ! どうした?じゃないわ! あんまりセレスさんと仲良くしちゃ、嫌!」

仲良くしちゃ嫌って、あくまでクランの先輩女子と交わす、
通常会話モードなんだが……

でも、こういう感情先行の時、女子には正論が全く通じないと、
誰かから聞いた事がある。

なので、俺は敢えて反論せず、シンプルに言葉を戻す。

「おう! 分かってる!」  

「エル君を信じてる!」

「おう! 俺を信じろ!」

「ほんと?」

「ああ、本当だ!」

「うん! 私、エル君を絶対に信じる!」

なんて、彼氏彼女の『よく、あるある会話バージョン』を交わしながら、

「シャルロット! 先に行くぞ! また来るからな!」 

「はあ~い! また来てね♡ 待ってるわあ♡」

俺は再び、手をひらひら横へ振り、ダッシュ。
機嫌が直ったシャルロットさんを置き去りにして、更に前方へ。

少し離れた位置を走っているのは、同期のフェルナンさんである。

「フェルナンさん、お先しま~す!」

と、声をかければ、既に1周走って来た俺が抜かす事を認識。

「すげ~な~……もう1周したのかよ」

と、呆れたようにつぶやいた。

女子に比べ、会話が超、短いのはご愛嬌。
まあ、仕方がない。

残りは、バスチアンさんだけ。

更に俺は前方へ。

すぐに分かった。
……バスチアンさんは、かなりセーブして走っている。

俺はすぐ、真横へ並んだ。

「バスチアンさん、お先しま~す! とっとと5周、50㎞完走して、同期と一緒に走りま~す!」

と、言ったら、

「おお! 良い事だ! 新人主将らしくガンガン行け! 10㎞を5周50㎞どころか! 倍の10周、100km! いや! 無制限で走っても構わねえぞ!」

と、思い切りあおられたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さすがに無制限で走るのは勘弁して欲しいが……

『本来の先頭』を走るバスチアンさんを抜き去り……

俺はまた、『トップ』に立った。

ここからはまた、速度を上げ、魔物、狼、熊を倒しながら、ガンガン進む。
戦闘経験をたっぷり積む事が出来て、喜ばしい。

昨日初めて使った風弾の魔法杖の射撃も行い、
撃つ距離を徐々に伸ばし、命中の精度をアップさせた。

3周目を過ぎてからは、魔物や肉食獣がほぼ出現しなくなったので、
一気にペースを上げた。
もしかしたら、相手が俺を避け始めていたのかもしれない。

俺の行く手をさえぎる存在が居ないので、
最高速を含め、いろいろな速度で走る経験も積め、
スタミナの持ちなどを、存分に試す事が出来た。

ちなみに、自分でもびっくりしたが、
50㎞走っても、ほんの少ししか疲れていないので、治癒回復は無用となりそう。
まあ、50㎞走ったのが生まれて初めてだし、限界を目指す耐久レースなんて、
やる人間の方が稀だ。

よく「人生、逃げちゃ、ダメだ!」とクソ兄貴からは叱られたが……
シーニュ仮所属時代、置き去りにされ、逃げ回った事で、
人間離れした脚力と、底知れないスタミナがついた。

「怪我の功名」「結果オーライ」かもしれないが、 
無理して潰れたら元も子もない。
「人生、ガンガン、逃げましょう!」もありだよね。

今回の基礎訓練で、自分のスタミナは、現時点でも結構なモノと実感し、認識した。
更に鍛えればまだまだ、伸びるだろうと思われる。

走行速度等々、他の能力もそうだが、どこまで伸びるのか、大いに楽しみである。

そんなこんなで、5周50㎞持久走を走り終え、ノルマは完遂。

俺は一行へ追いついた。

誰と伴走するかと言えば、当然シャルロットさんの一択のみ。

「セレスさん、俺5周50㎞完走したんで、後はシャルロットさんと一緒に走りま~す!」

と声を張り上げれば、

「うふふ♡ エルヴェ君、そうしてあげて! 彼女も一層やる気が出るから!」

と、セレスさんから後押しを受け、俺はシャルロットさんの真横へ並んだ。

そうしたら、シャルロットさんの喜ぶ事、喜ぶ事。

セレスさんに構わず、自分の下へ来てくれた事が嬉しかったらしい。

「うわ! エル君が来てくれたあ! うっれし~~♡♡♡」

と、心の底から楽しそうに、浮き浮きと走ったのである。
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