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第33話「口入れ屋藤吉郎トーマス②」
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「見かけはボロでも……真の価値がある商品か?」
俺が、ネネちゃんへ聞くと、きっぱり。
「はい!」
と肯定。
迷いのない口調に、俺は苦笑。
この少女が、本当は何を言いたいのか、はっきり分かっている。
実は……
『自分の旦那』トーマスを大いに自慢したいのだ。
だからはっきりと言ってやろう。
「ネネ! お前は口が上手いというか、性格がずるいというか、ずうずうしく思い上がりというか」
「うふふ、そうですかぁ? ひどぉい」
「はっ、何が酷いだ。そこまでこの猿にベタ惚れしているのか?」
「はあい! 夫が大好きでっす! 愛してまっす!」
「ふん! 分かったぞ。この店で真の価値がある商品というのはお前の夫の事だな、ネネ」
俺の指摘を待っていたかというように、ネネちゃんは「にこっ」と笑う。
表情は「作戦成功! してやったり」というのがピッタリだ。
ネネちゃんの代わりに、俺の質問に答えたのがトーマスである。
「ほう、こりゃ驚いた。今までどんな城や街でもウチの嫁の口上を見抜いた方は、全くと言っていいほど居なかった」
おお、嫁が嫁なら夫も夫。
この猿男、俺を褒めながら、さりげなくネネちゃんの自慢をしている。
少しあほらしくなって、俺は鼻を鳴らす。
「ふん、馬鹿を言え。そんな奴等の目は、どうせ全員、節穴《ふしあな》だ」
「節穴? 確かにそうかもしれませんねぇ。や、念の為ですが俺がサービスするとは言っても、あっちの方の奴隷とかじゃあ、無いですよ。それはパスです」
ほう!
あっちって何だ?
まさか、エッチ?
ふざけるな、気持ち悪い!
こっちこそ絶対にパスだ。
言っておくが、俺はむさ苦しい男に興味はない。
可愛い女子が大好き!
イシュタルやエリザベスが大好きである。
お付きの美しい小姓を可愛がったという信長とはまるで違う。
こんな汚い猿など尚更だ。
それにしても、偉そうに言うじゃないか。
こいつ、俺が自分の主君として相応しいか試しているに違いない。
じゃあ、はっきりと言ってやろう。
「たわけ! のぼせ上がるな!」
「はい~?」
「何がはい~だ。可愛いネネならともかく! お前みたいに得体の知れないキモオタ猿が、あっちの奴隷などと、反吐が出る! 虫唾が走るわ!」
俺が信長ばりにそう言うと、トーマスはあまりの罵倒、毒舌に我慢しかねたのかさすがに口を尖らせた。
「くうう、得体の知れないキモオタ猿とはあまりにも酷い! 俺は確かにイケメンじゃない! だけど超もてるんですよ!」
「ははは、そうらしいな」
「いえ! はっきりした証拠があります。実際こんな超可愛い嫁ネネが居るじゃあないですかぁ!」
今度は、トーマスの吐いた衝撃の台詞《セリフ》にエリックが絶句。
「ネネネネネ、ネネがあっ!? お、お前の超可愛い嫁だとぉ!? 信じないぞ!」
「嘘じゃないですって、騎士様。さっきからネネが何度も言ってます、俺が夫だって」
「嘘だ! いい加減にしろ! 金か何かでネネを臨時に雇ったに決まっている!」
おいおい、エリック。
猿が言うように、当のネネちゃん自身が「私は猿の嫁だ」と告げている。
なのに、こいつはリアルな現実を受け入れられないらしい。
「にやり」と笑ったトーマスの口からは、意外な事実が次々と明らかにされる。
「おい! 騎士様! 良~く聞いておくれよ。ネネは俺の事を好きだと言った、たくさんの候補の中から、選びに選び抜いた超美少女なんですよ」
「た、たくさんの候補の中から!? 選びに選び抜いただとぉ!!! う、う、嘘をつけ! この馬鹿猿!」
「馬鹿猿は酷い。なぁ、ネネ。嘘じゃないよなぁ? お前は最高の恋女房だよなぁ?」
「は~い! その通りよぉ」
トーマスが同意を求める声に応え、愛くるしい表情を見せるネネちゃん。
間違いない、このふたりはあつあつラブラブだ。
相変わらず現実を受け入れられないエリックは、またも目を白黒している。
「えええええ! 野良の猿みたいに不細工なお前が? たくさんの女の中からこの子を選んだだとぉ!? う、嘘だろう……信じられん。俺みたいなイケメンだって、彼女がひとりも出来ないのに!」
よほど悔しかったのだろう……
盛大に落ち込むエリックに対してトーマスは的確な指摘をする。
「へへへ、はっきり言おうか。あんたはイケメンで誠実なのは良いが、真面目すぎて、堅苦しい」
「お、俺が? ま、真面目すぎて、堅苦しいだと?」
「そうっす! そばに居る女は重苦しく感じて息が詰まっちまう」
「くううううう! ば、馬鹿にしやがって!」
「いえいえ、馬鹿にとかじゃあなくて、真実ですよ」
「むうううううう」
「あんたはどうせ可愛い女子とデートしたって、話が続かず間が持たない。結局つまらない男だと思われ、いっつも女子の方からサヨウナラって、別れを切り出される。大体がそのパターンでしょ?」
「げ!?」
「あはは、その反応《リアクション》。ほれ、図星だ」
猿ことトーマス・ビーンはいかにも得意げな表情で胸を張ったのである。
俺が、ネネちゃんへ聞くと、きっぱり。
「はい!」
と肯定。
迷いのない口調に、俺は苦笑。
この少女が、本当は何を言いたいのか、はっきり分かっている。
実は……
『自分の旦那』トーマスを大いに自慢したいのだ。
だからはっきりと言ってやろう。
「ネネ! お前は口が上手いというか、性格がずるいというか、ずうずうしく思い上がりというか」
「うふふ、そうですかぁ? ひどぉい」
「はっ、何が酷いだ。そこまでこの猿にベタ惚れしているのか?」
「はあい! 夫が大好きでっす! 愛してまっす!」
「ふん! 分かったぞ。この店で真の価値がある商品というのはお前の夫の事だな、ネネ」
俺の指摘を待っていたかというように、ネネちゃんは「にこっ」と笑う。
表情は「作戦成功! してやったり」というのがピッタリだ。
ネネちゃんの代わりに、俺の質問に答えたのがトーマスである。
「ほう、こりゃ驚いた。今までどんな城や街でもウチの嫁の口上を見抜いた方は、全くと言っていいほど居なかった」
おお、嫁が嫁なら夫も夫。
この猿男、俺を褒めながら、さりげなくネネちゃんの自慢をしている。
少しあほらしくなって、俺は鼻を鳴らす。
「ふん、馬鹿を言え。そんな奴等の目は、どうせ全員、節穴《ふしあな》だ」
「節穴? 確かにそうかもしれませんねぇ。や、念の為ですが俺がサービスするとは言っても、あっちの方の奴隷とかじゃあ、無いですよ。それはパスです」
ほう!
あっちって何だ?
まさか、エッチ?
ふざけるな、気持ち悪い!
こっちこそ絶対にパスだ。
言っておくが、俺はむさ苦しい男に興味はない。
可愛い女子が大好き!
イシュタルやエリザベスが大好きである。
お付きの美しい小姓を可愛がったという信長とはまるで違う。
こんな汚い猿など尚更だ。
それにしても、偉そうに言うじゃないか。
こいつ、俺が自分の主君として相応しいか試しているに違いない。
じゃあ、はっきりと言ってやろう。
「たわけ! のぼせ上がるな!」
「はい~?」
「何がはい~だ。可愛いネネならともかく! お前みたいに得体の知れないキモオタ猿が、あっちの奴隷などと、反吐が出る! 虫唾が走るわ!」
俺が信長ばりにそう言うと、トーマスはあまりの罵倒、毒舌に我慢しかねたのかさすがに口を尖らせた。
「くうう、得体の知れないキモオタ猿とはあまりにも酷い! 俺は確かにイケメンじゃない! だけど超もてるんですよ!」
「ははは、そうらしいな」
「いえ! はっきりした証拠があります。実際こんな超可愛い嫁ネネが居るじゃあないですかぁ!」
今度は、トーマスの吐いた衝撃の台詞《セリフ》にエリックが絶句。
「ネネネネネ、ネネがあっ!? お、お前の超可愛い嫁だとぉ!? 信じないぞ!」
「嘘じゃないですって、騎士様。さっきからネネが何度も言ってます、俺が夫だって」
「嘘だ! いい加減にしろ! 金か何かでネネを臨時に雇ったに決まっている!」
おいおい、エリック。
猿が言うように、当のネネちゃん自身が「私は猿の嫁だ」と告げている。
なのに、こいつはリアルな現実を受け入れられないらしい。
「にやり」と笑ったトーマスの口からは、意外な事実が次々と明らかにされる。
「おい! 騎士様! 良~く聞いておくれよ。ネネは俺の事を好きだと言った、たくさんの候補の中から、選びに選び抜いた超美少女なんですよ」
「た、たくさんの候補の中から!? 選びに選び抜いただとぉ!!! う、う、嘘をつけ! この馬鹿猿!」
「馬鹿猿は酷い。なぁ、ネネ。嘘じゃないよなぁ? お前は最高の恋女房だよなぁ?」
「は~い! その通りよぉ」
トーマスが同意を求める声に応え、愛くるしい表情を見せるネネちゃん。
間違いない、このふたりはあつあつラブラブだ。
相変わらず現実を受け入れられないエリックは、またも目を白黒している。
「えええええ! 野良の猿みたいに不細工なお前が? たくさんの女の中からこの子を選んだだとぉ!? う、嘘だろう……信じられん。俺みたいなイケメンだって、彼女がひとりも出来ないのに!」
よほど悔しかったのだろう……
盛大に落ち込むエリックに対してトーマスは的確な指摘をする。
「へへへ、はっきり言おうか。あんたはイケメンで誠実なのは良いが、真面目すぎて、堅苦しい」
「お、俺が? ま、真面目すぎて、堅苦しいだと?」
「そうっす! そばに居る女は重苦しく感じて息が詰まっちまう」
「くううううう! ば、馬鹿にしやがって!」
「いえいえ、馬鹿にとかじゃあなくて、真実ですよ」
「むうううううう」
「あんたはどうせ可愛い女子とデートしたって、話が続かず間が持たない。結局つまらない男だと思われ、いっつも女子の方からサヨウナラって、別れを切り出される。大体がそのパターンでしょ?」
「げ!?」
「あはは、その反応《リアクション》。ほれ、図星だ」
猿ことトーマス・ビーンはいかにも得意げな表情で胸を張ったのである。
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