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プロローグ

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 俺の嫁――イシュタル・サン・ジェルマン。

 イシュタルは……
 隣国アヴァロン魔法王国国王アルベール・サン・ジェルマンが、跡継ぎの長男をさしおき、
 とびきり可愛がっている愛娘である。
 
  今年で16歳の若輩ながら、父に劣らぬ魔法の才を誇り、
 『アヴァロンの黒き魔女』と呼ばれる高名な魔法使いなのだ。

 このイシュタルと、今日……俺は結婚した。

 改めてイシュタルを見やれば……
 
 さらさらした、流れるような肩までの黒髪。
 鼻筋が「ぴしり!」と通った、知性を感じさせる整った顔立ち。
 
 髪と共に、黒き魔女と呼ばれる由縁《ゆえん》たる、
 切れ長の目に輝く漆黒の瞳。
 この黒い瞳が……
 
 イシュタルを見た人は吸い込まれるような錯覚を感じさせるほど、
 非常に魅惑的なのである。

 これはまた!
 と、俺は心の底から感動してしまった。

「イシュタルよ、改めて頼む、俺の嫁になってくれるな?」

 丁寧に頭を下げた俺。
 イシュタルは返事がすぐ出来ない。

「は?」

 驚くイシュタルへ、俺は優しく微笑む。

「イシュタル、どうした? 耳の穴をかっぽじってしっかり返事をせい! 今日、初めて会ったが、お前以外に俺の嫁はおらぬわ」

 お前以外に俺の嫁は居ない……
 心にとても響いたらしく、イシュタルは大きく噛みながらも、
 頑張って返事をする。

「は、は、はいっ! イシュタルは、アーサー様の妻になりますっ!」

「ははははは、イシュタルよ、お前の形の良い尻になら、いくら敷かれても構わんぞ」

「も、もう! 知りませぬ」

 俺を尻に敷くと言われ、イシュタルは頬を赤くし、
 口をとがらせてむくれていたが……
 目元は、ちゃんと笑っていた。
 
 あはは、可愛いな。
 俺へ、しっかり甘えているのが分かる。
 これがデレというものなのか……
 
 良いじゃないか、良いじゃないか、デレって。
 男子の皆が、あんなに喜ぶのが初めて分かった。

 現代日本で暮らし、
 今迄、女子に全く縁がなく、ついでに金も運もなく……
 完全に詰んでいた17年の暗黒人生……
 
 紆余曲折あって、異世界へ転生し、
 イシュタルという、超絶美少女を嫁にした。

 そう、俺の波乱万丈となる新たな人生が、
 ここでリア充華々しく、リスタートしたのである。
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