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第203話「邪神様には敵わない」
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悪魔の転移門から、俺達は魔界へ入った。
魔界は以前来た時と変わらない。
巨大な岩が転がる草木も無い砂漠。
空は雲など一切無く、濃い紫一色。
ディアボルス王国王都ソドムへ延びる石畳の道……
転移魔法を使わないのは地上世界と違って、時間軸がぶれやすく、様々な異界へ迷い込む為だという。
これはシュルヴェステル様のアドバイスなので、全員が納得して受け入れる。
かといって、飛翔魔法は発動可能な者が少ないので、この大人数を運べない。
よってひたすら歩くしかないのだ。
荒涼たる原野を横目に見ながら、悪魔王国ディアボルスの王都ソドムの前に着いたのは数時間後だ。
アマンダ、フレデリカ、ハンナ……
「魔界が初めて」というアールヴ達は最初、異様な風景に驚くばかりであった。
だが、次第に表情を引き締める。
はなから観光目的の旅ではないと分かっていた筈だが、独特な魔界の雰囲気に触れるうちに、更にそれを実感して来たからに違いなかった。
竜神王エドヴァルド父も同様だ。
ぴりぴりした緊張が伝わって来る。
しかし、自分の目の前では愛娘ジュリアが全く臆さず、堂々と振る舞っている。
そんな娘の成長を、頼もしそうに見守っていたのだ。
そんなこんなで王都ソドムへ入ると、エリゴスの部下らしい親衛隊の悪魔が立ち塞がった。
だがアモンが割って入り、ひと睨みすると無念そうに道をあける。
そして……
王宮前では、あのバルバトスが部下の悪魔と共に俺達を待っていた。
バルバトスは、俺と嫁ズ以外の面子を見て驚いた。
アールヴの長ソウェルに加えて、竜神王までが魔界へ訪れるなど考えられなかったからだ。
バルバトスはすぐ自室へ俺達を迎え入れると、人払い……いや悪魔払い?をして密談をさせてくれた。
アモンから事前に連絡は行っているし、話は早い。
「以前トール様に言われた通り、ベリアルとエリゴスの動きはずっと見張らせてあります。確かに最近動きがありました。奴等、とんでもないモノを手に入れたようです」
バルバトスの話によると、監視されていたせいで下手に動けなかったベリアルとエリゴスだが、一発逆点を狙って凄いものを手に入れたらしい。
「とんでもないモノ?」
「はい! 聞くところによると、何かとてつもない威力を持つ魔道具とか」
「魔道具? そうか……とりあえずアルフレードル様に会おう」
俺は不安を無理矢理、押さえつけるようにして、アルフレードルへの謁見を頼んだのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おう! トール、久しいのう」
今まさにクーデターが起ころうとしているのに……
何故か、余裕の態度をとるアルフレードル。
いや、今更だがアルフレードル父と呼ぼう。
エリゴス配下の親衛隊は遠ざけているから、話を聞かれる心配はない。
「お父様! ベリアル達が!」
早速イザベラが、絶叫に近い声で呼びかけるが……
アルフレードル父は「さっ」と手を挙げる。
何と!
心配したイザベラが具体的な話をしようとするのを、敢えて押えたのだ。
「ふふふ、言われんでも分かっておるわ。あんな奴等の陰謀などお見通しだ」
アルフレードル父の言葉を聞いたエドヴァルド父は、「腑に落ちない」というように怪訝な表情をする。
ここで口を挟んだのが、シュルヴェステル様である。
「成る程! 悪魔王よ、全てお見通し、対策済み……というようだな」
「ふふふ、その通りだ。ほう! 魔法で悪魔の容貌をしているが、満ち溢れる素晴らしい波動は隠しようがないぞ、アールヴのソウェル、そしてそこに居るのは竜神王だな」
さすがと、言うべきか、当たり前と、言うべきか……
アルフレードル父はシュルヴェステル様とエドヴァルド父の正体を見抜いていた。
ここは年長の特権? という事で、シュルヴェステル様が対応するようだ。
「ははは、今更、変装は意味がないか、悪魔王。ははははは」
「ははははは、そうだ!」
アルフレードル父とシュルヴェステル様は、お互いの顔を見て大声で笑い合う。
暫し、笑った後アルフレードル父が口を開く。
「ふふふ、どうやら役者は揃ったようだ。ならば、お前達に話しておく事がある」
俺達の顔を見たアルフレードル父は、どのようなわけか意味ありげに、にやりと笑う。
悪魔王アルフレードル父の話は……意外な内容であった。
驚いた俺達ではあったが、とりあえずベリアルを急ぎ確保するように指示されたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
さあ、いよいよバトル開始だ!
俺と嫁ズは勿論、シュルヴェステル様、エドヴァルド父。
そしてアモンとバルバトス及び彼等の配下ズだ。
俺達は宰相官邸を急襲した。
行く手を、エリゴス配下の精鋭親衛隊が阻止しようとする。
親衛隊の悪魔は魔界でも抜きんでた実力者揃いだ。
だから王族の警護をさせているのだけれど。
しかし!
奴等との戦いは、竜との戦いのように一方的なものとなる。
邪神様の『騎士』として完全覚醒した俺を始めとして、強力な魔法や体術を使いこなす嫁ズ、アモン&バルバトスの上級悪魔コンビ、伝説の最強ソウェルと呼ばれたシュルヴェステル、そして神に匹敵するという戦闘力を持つ竜神王エドヴァルド父の強力な布陣の前には……単なる雑魚同然だった。
こうなると、展開はアルフレードル父から告げられた通りになる。
配下の悪魔を全て討ち取られ、追いつめられたベリアルとエリゴス。
最後の切り札ともいえる、その魔道具を取り出したのだ。
「貴様らぁ! 俺はまだ負けん! コレを見ろぉ!」
嫌らしく笑うベリアルが取り出したのは、何の変哲もない薄汚い壷。
バルバトスの話では、これが『とてつもない魔道具』らしい。
追いつめられているのに、ベリアルは自信満々だ。
愛おしそうに、『壷』へ頬ずりまでしている。
「これはなぁ……俺の息がかかった人間の商人が見つけて来た神器だ。決まった言霊を唱えるとなぁ……お前等は壷の中へ取り込まれる。壷の中は異界へ繋がっているぜ。お前等は永遠の彷徨い人となるのだぁ」
「ベリアル様ぁ! 早く、やっちゃいましょう!」
エリゴスが、「待ちきれないぜ」という様子で叫んだ。
ベリアルも「にやり」と笑い、俺達を残酷な目付きで眺める。
「ひゃはははは、俺の下へ持ち込んだ商人によればなぁ、これはこの世界の神スパイラルの創った神器だそうだ。トール! 皮肉にも貴様は主人の神器で死ぬ! あまりにも笑えて、ケツから屁が出るぜぇ」
ベリアルは俺の最後を想像したのか、面白そうに高笑いしていた。
綺麗な顔をしてるのに、下品な奴。
さすが背徳の悪魔だぜ。
「お前等をちょちょいと片付けた後は、にっくきアルフレードルを始末してやるぅ! 奴を始末したら、この王国はもう俺達のものだぁ」
もう駄目だ、こいつは……
やり直しは……無理だろう。
俺は「哀れな奴だ」……という気持ちを込めて奴を見る。
「やれるなら、やってみろよ……」
「な、何ぃ!?」
「やってみろと言っている」
「こここ、この野郎! 脅しじゃねぇぞ。部下で実験済みなんだぁ! 消えてなくなったぜぇ」
魔道具の効果を部下で実験!?
人体? いや悪魔実験か……
こいつ……本当に最低だ。
「外道が!」
俺は、一歩前に出る。
「馬鹿がぁ! トール、貴様、死に急ぎやがって! 消滅《ロスト》!」
ベリアルは壷の効力を発動するらしい言霊を唱えた。
すると!
ツボを持っていたベリアルと、傍らに居たエリゴスが「ふっ」と消えてしまったのである。
持つ者が居なくなった壺は……床に落ち、粉々に砕け散った。
俺達を異界へ送ろうとしていたベリアル達は逆に異界へ送られてしまった。
壷の効力が自分達へ……
そう! 永久に……その魂を次元の牢獄に幽閉される事になってしまったのである。
「馬鹿は……やはりお前だったな、ベリアル」
俺は「ぽつり」と呟きながら、「神とはいかに残酷か……」と思ったのである。
――1時間後
俺達は、再び王宮の謁見の間に居た。
アルフレードルは厳しい表情をしている。
「ふん! やはりな……愚かな奴等だ」
俺達に告げたアルフレードルの意外な話とは……何か?
それは何と!
数日前に、悪魔王アルフレードルへ下された邪神様スパイラルの『神託』であった。
神が悪魔に対して神託を下す。
そんなのありえないし、聞いたことさえない。
さすがの悪魔王も、トンデモ展開に最初はえらく戸惑ったそうだ。
だが面白がる邪神様の話を聞くうちに、納得したのである。
神託という形で伝えられた邪心様の意図。
それは……
俺の改造&転生を契機に、人間、アールヴ、竜神族、そして悪魔族をまとめ上げて新たな絆を作り、管理するこの世界の安定を生み出したいという考え。
その為に不穏分子のベリアル達を始末する策として、『最強の神器』という触れ込みの魔道具を人間経由で与え、巧妙な罠を仕掛けた事を告げたという。
結果……全ては邪神様の計算通りとなった。
「やはり……悪魔は……所詮神には敵わぬよ……」
かつて悪魔は冥界大戦の折り、神の軍勢に大敗している。
アルフレードルはその事を思い出したのか、苦笑して大袈裟に肩を竦めた。
こうして……
愚かな悪魔の陰謀は潰えたのである。
……異界に永久幽閉されたベリアルとエリゴスの後任は、すぐに決定した。
新たな宰相となったのがバルバトス、親衛隊隊長がアモンというわけ。
このふたりなら、今後アルフレードル父を助けて魔界を盛り立てる事だろう。
……ちなみに余談ではあるが、隣国の悪魔王国トルトゥーラは夫エフィムの父王が嫁に来たレイラをひと目で気に入ってしまい、即座に王国の全権を任せたという話である。
魔界は以前来た時と変わらない。
巨大な岩が転がる草木も無い砂漠。
空は雲など一切無く、濃い紫一色。
ディアボルス王国王都ソドムへ延びる石畳の道……
転移魔法を使わないのは地上世界と違って、時間軸がぶれやすく、様々な異界へ迷い込む為だという。
これはシュルヴェステル様のアドバイスなので、全員が納得して受け入れる。
かといって、飛翔魔法は発動可能な者が少ないので、この大人数を運べない。
よってひたすら歩くしかないのだ。
荒涼たる原野を横目に見ながら、悪魔王国ディアボルスの王都ソドムの前に着いたのは数時間後だ。
アマンダ、フレデリカ、ハンナ……
「魔界が初めて」というアールヴ達は最初、異様な風景に驚くばかりであった。
だが、次第に表情を引き締める。
はなから観光目的の旅ではないと分かっていた筈だが、独特な魔界の雰囲気に触れるうちに、更にそれを実感して来たからに違いなかった。
竜神王エドヴァルド父も同様だ。
ぴりぴりした緊張が伝わって来る。
しかし、自分の目の前では愛娘ジュリアが全く臆さず、堂々と振る舞っている。
そんな娘の成長を、頼もしそうに見守っていたのだ。
そんなこんなで王都ソドムへ入ると、エリゴスの部下らしい親衛隊の悪魔が立ち塞がった。
だがアモンが割って入り、ひと睨みすると無念そうに道をあける。
そして……
王宮前では、あのバルバトスが部下の悪魔と共に俺達を待っていた。
バルバトスは、俺と嫁ズ以外の面子を見て驚いた。
アールヴの長ソウェルに加えて、竜神王までが魔界へ訪れるなど考えられなかったからだ。
バルバトスはすぐ自室へ俺達を迎え入れると、人払い……いや悪魔払い?をして密談をさせてくれた。
アモンから事前に連絡は行っているし、話は早い。
「以前トール様に言われた通り、ベリアルとエリゴスの動きはずっと見張らせてあります。確かに最近動きがありました。奴等、とんでもないモノを手に入れたようです」
バルバトスの話によると、監視されていたせいで下手に動けなかったベリアルとエリゴスだが、一発逆点を狙って凄いものを手に入れたらしい。
「とんでもないモノ?」
「はい! 聞くところによると、何かとてつもない威力を持つ魔道具とか」
「魔道具? そうか……とりあえずアルフレードル様に会おう」
俺は不安を無理矢理、押さえつけるようにして、アルフレードルへの謁見を頼んだのである。
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「おう! トール、久しいのう」
今まさにクーデターが起ころうとしているのに……
何故か、余裕の態度をとるアルフレードル。
いや、今更だがアルフレードル父と呼ぼう。
エリゴス配下の親衛隊は遠ざけているから、話を聞かれる心配はない。
「お父様! ベリアル達が!」
早速イザベラが、絶叫に近い声で呼びかけるが……
アルフレードル父は「さっ」と手を挙げる。
何と!
心配したイザベラが具体的な話をしようとするのを、敢えて押えたのだ。
「ふふふ、言われんでも分かっておるわ。あんな奴等の陰謀などお見通しだ」
アルフレードル父の言葉を聞いたエドヴァルド父は、「腑に落ちない」というように怪訝な表情をする。
ここで口を挟んだのが、シュルヴェステル様である。
「成る程! 悪魔王よ、全てお見通し、対策済み……というようだな」
「ふふふ、その通りだ。ほう! 魔法で悪魔の容貌をしているが、満ち溢れる素晴らしい波動は隠しようがないぞ、アールヴのソウェル、そしてそこに居るのは竜神王だな」
さすがと、言うべきか、当たり前と、言うべきか……
アルフレードル父はシュルヴェステル様とエドヴァルド父の正体を見抜いていた。
ここは年長の特権? という事で、シュルヴェステル様が対応するようだ。
「ははは、今更、変装は意味がないか、悪魔王。ははははは」
「ははははは、そうだ!」
アルフレードル父とシュルヴェステル様は、お互いの顔を見て大声で笑い合う。
暫し、笑った後アルフレードル父が口を開く。
「ふふふ、どうやら役者は揃ったようだ。ならば、お前達に話しておく事がある」
俺達の顔を見たアルフレードル父は、どのようなわけか意味ありげに、にやりと笑う。
悪魔王アルフレードル父の話は……意外な内容であった。
驚いた俺達ではあったが、とりあえずベリアルを急ぎ確保するように指示されたのである。
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さあ、いよいよバトル開始だ!
俺と嫁ズは勿論、シュルヴェステル様、エドヴァルド父。
そしてアモンとバルバトス及び彼等の配下ズだ。
俺達は宰相官邸を急襲した。
行く手を、エリゴス配下の精鋭親衛隊が阻止しようとする。
親衛隊の悪魔は魔界でも抜きんでた実力者揃いだ。
だから王族の警護をさせているのだけれど。
しかし!
奴等との戦いは、竜との戦いのように一方的なものとなる。
邪神様の『騎士』として完全覚醒した俺を始めとして、強力な魔法や体術を使いこなす嫁ズ、アモン&バルバトスの上級悪魔コンビ、伝説の最強ソウェルと呼ばれたシュルヴェステル、そして神に匹敵するという戦闘力を持つ竜神王エドヴァルド父の強力な布陣の前には……単なる雑魚同然だった。
こうなると、展開はアルフレードル父から告げられた通りになる。
配下の悪魔を全て討ち取られ、追いつめられたベリアルとエリゴス。
最後の切り札ともいえる、その魔道具を取り出したのだ。
「貴様らぁ! 俺はまだ負けん! コレを見ろぉ!」
嫌らしく笑うベリアルが取り出したのは、何の変哲もない薄汚い壷。
バルバトスの話では、これが『とてつもない魔道具』らしい。
追いつめられているのに、ベリアルは自信満々だ。
愛おしそうに、『壷』へ頬ずりまでしている。
「これはなぁ……俺の息がかかった人間の商人が見つけて来た神器だ。決まった言霊を唱えるとなぁ……お前等は壷の中へ取り込まれる。壷の中は異界へ繋がっているぜ。お前等は永遠の彷徨い人となるのだぁ」
「ベリアル様ぁ! 早く、やっちゃいましょう!」
エリゴスが、「待ちきれないぜ」という様子で叫んだ。
ベリアルも「にやり」と笑い、俺達を残酷な目付きで眺める。
「ひゃはははは、俺の下へ持ち込んだ商人によればなぁ、これはこの世界の神スパイラルの創った神器だそうだ。トール! 皮肉にも貴様は主人の神器で死ぬ! あまりにも笑えて、ケツから屁が出るぜぇ」
ベリアルは俺の最後を想像したのか、面白そうに高笑いしていた。
綺麗な顔をしてるのに、下品な奴。
さすが背徳の悪魔だぜ。
「お前等をちょちょいと片付けた後は、にっくきアルフレードルを始末してやるぅ! 奴を始末したら、この王国はもう俺達のものだぁ」
もう駄目だ、こいつは……
やり直しは……無理だろう。
俺は「哀れな奴だ」……という気持ちを込めて奴を見る。
「やれるなら、やってみろよ……」
「な、何ぃ!?」
「やってみろと言っている」
「こここ、この野郎! 脅しじゃねぇぞ。部下で実験済みなんだぁ! 消えてなくなったぜぇ」
魔道具の効果を部下で実験!?
人体? いや悪魔実験か……
こいつ……本当に最低だ。
「外道が!」
俺は、一歩前に出る。
「馬鹿がぁ! トール、貴様、死に急ぎやがって! 消滅《ロスト》!」
ベリアルは壷の効力を発動するらしい言霊を唱えた。
すると!
ツボを持っていたベリアルと、傍らに居たエリゴスが「ふっ」と消えてしまったのである。
持つ者が居なくなった壺は……床に落ち、粉々に砕け散った。
俺達を異界へ送ろうとしていたベリアル達は逆に異界へ送られてしまった。
壷の効力が自分達へ……
そう! 永久に……その魂を次元の牢獄に幽閉される事になってしまったのである。
「馬鹿は……やはりお前だったな、ベリアル」
俺は「ぽつり」と呟きながら、「神とはいかに残酷か……」と思ったのである。
――1時間後
俺達は、再び王宮の謁見の間に居た。
アルフレードルは厳しい表情をしている。
「ふん! やはりな……愚かな奴等だ」
俺達に告げたアルフレードルの意外な話とは……何か?
それは何と!
数日前に、悪魔王アルフレードルへ下された邪神様スパイラルの『神託』であった。
神が悪魔に対して神託を下す。
そんなのありえないし、聞いたことさえない。
さすがの悪魔王も、トンデモ展開に最初はえらく戸惑ったそうだ。
だが面白がる邪神様の話を聞くうちに、納得したのである。
神託という形で伝えられた邪心様の意図。
それは……
俺の改造&転生を契機に、人間、アールヴ、竜神族、そして悪魔族をまとめ上げて新たな絆を作り、管理するこの世界の安定を生み出したいという考え。
その為に不穏分子のベリアル達を始末する策として、『最強の神器』という触れ込みの魔道具を人間経由で与え、巧妙な罠を仕掛けた事を告げたという。
結果……全ては邪神様の計算通りとなった。
「やはり……悪魔は……所詮神には敵わぬよ……」
かつて悪魔は冥界大戦の折り、神の軍勢に大敗している。
アルフレードルはその事を思い出したのか、苦笑して大袈裟に肩を竦めた。
こうして……
愚かな悪魔の陰謀は潰えたのである。
……異界に永久幽閉されたベリアルとエリゴスの後任は、すぐに決定した。
新たな宰相となったのがバルバトス、親衛隊隊長がアモンというわけ。
このふたりなら、今後アルフレードル父を助けて魔界を盛り立てる事だろう。
……ちなみに余談ではあるが、隣国の悪魔王国トルトゥーラは夫エフィムの父王が嫁に来たレイラをひと目で気に入ってしまい、即座に王国の全権を任せたという話である。
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ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
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