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第200話「大勝利!」
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すぱうん~っ!!!
肉を断ち切る音。
しゃぁぁぁ~っ!!!
真っ赤な血が派手に噴き出る音。
俺がヴェルザデーデの首筋へ叩きつけた魔剣は、怖ろしい切れ味を発揮した。
固い岩のように、跳ね返されるかと思った古代竜《エンシェントドラゴン》の皮膚。
だけど拍子抜けするくらい、全然固くなかった。
まるで、柔らかい豆腐か、溶けたバターを切るみたいだった。
邪神様の魔剣の威力か、神力波《ゴッドオーラ》のお陰か分からないが、俺は古代竜ヴェルザデーデを瞬殺したのだ。
そもそも竜とはとても頑健な生き物……という俺の中二病イメージ。
余計にそう感じたのは、この世界で武器屋を覗いた時に『竜革製』と銘打った防具が売られていた時。
それ、最高級品扱いだった。
何を言いたいかというと、つまり防御力が半端じゃないという事。
しかし!
そんなの邪神様の前では全く関係ねぇのだ。
まあ、『騎士』に任命したばかりの俺が、公の場で無様な戦いをしたら困るってのもあるだろう。
それに、よくよく考えてみたら、この力も納得。
冥界大戦で、邪神様と使徒軍団はアモン率いる悪魔軍団に圧勝しているのだから。
※第82話参照
そのアモンが竜を瞬殺しているのを考えると、『騎士』となった俺の力ってどんだけなの?
まあ良いか、今更。
タイマン勝負は吉と出たもの。
古代竜ヴェルザデーデは、俺の一撃で呆気なく頭部を刎ねられて死んだ。
奴の巨大な頭部は、くるくる回転しながら遥か彼方へ飛んで行った。
そして残された身体は切断された首から盛大に血をまき散らしながら、地上へと墜落して行った……
「トール、さすが闘神の騎士だ……お前は凄い……凄すぎる」
俺を乗せたエドヴァルド父が感慨深げに言う。
驚愕の波動が伝わって来る。
「ヴェルザデーデ……奴は数千年生きた歴戦の古代竜だ。それをたった一撃か……お前と敵同士にならないで良かった……心の底からそう思うぞ」
「いやぁ、俺も自分の力が怖いですよ」
そんな会話をエドヴァルド父としている最中……
俺が『首領』をあっさり倒したのを見て、他の竜共は恐怖の虜となった。
彼等にとって絶対的な力の象徴が、戦闘開始直後に屠られたのだから無理もない。
アモンとシュルヴェステル様が底知れない力で竜を続々倒していたのに加えて、リーダーのヴェルザデーデまで死んだ。
タトラ村を襲った竜の群れは戦意を失って総崩れとなり、彼等は命からがら逃げ出して行く。
四方八方散り散りに退却していく竜共を、俺達は眺めるだけで深追いしなかった……
後から聞いた話だが、元々竜神族に対して徹底抗戦を主張していたのはヴェルザデーデとその取り巻きだけだったという。
ヴェルザデーデが死に、取り巻きもこの戦いで殆ど戦死した。
なので、竜達を戦場に繋ぎ止めるものは今や、何もなかったのだ。
……俺は安堵のあまり、「ふう」と息を吐く。
緊張していた分、脱力感が半端ない。
とりあえず当面の危機は去り、奇跡的に誰も死なずに済んだ。
またも視線を感じたので見ると、驚愕していたエドヴァルド父の目が優しそうな慈愛に満ちていた。
思わず俺は言う。
確認を求めるように……
「親父さん、俺……皆を、家族を守れたんだな?」
かすれた声の俺に、エドヴァルド父はきっぱりと言い放った。
「ああ、そうさ、トール。お前は私の妻の……ジュリアの母親の仇も討った。俺の誇るべき息子だ。胸を張って一家の長だと言い切るが良い」
「……そうか、そうなんだ。俺の力で……これからも愛する嫁達を守っていけるんだ」
「うむ! 見るが良い」
エドヴァルド父は俺から視線を外すと、顎をしゃくった。
俺が示された方向を見ると、アモンとシュルヴェステル様が戻って来るのが見える。
「スパイラル様の啓示があったとはいえ……あのふたりが来てくれたのもお前が居たからこそ。この勝利はお前が作り上げた『絆の力』なのだ」
え?
俺の?
俺の為に来てくれた?
俺が居たから?
ふたりとも来てくれた?
ああ、何だろう?
涙がどんどん出て来た。
駄目だ、止まらないや。
俺が泣いているのを見たアモンが、強面の顔を歪め面白そうに笑う。
「ふん、トールめ。お前に涙など似合わぬぞ、お前は、な。俺の言う事に不満そうに顔をしかめているのが1番良い」
「…………」
な、何だよ、アモンの奴。
お前こそ、怖ろしい悪魔の風貌で優しい事を言うのなんて似合わないんだよ!
俺が無言の抗議をしていると、シュルヴェステル様がにやりと笑って、茶々を入れる。
「はっははは! アモン、お前こそ何だ? 鬼と呼ばれた男が可愛い弟の事となると急に饒舌になるではないか」
確かにシュルヴェステル様の言う通りだ。
「ふん、アールヴめ、抜かせ!」
言われたアモンは不機嫌そうな表情を浮かべ、ぷいと横を向いてしまった。
はは、やっぱり、アモンはアモンだ。
ここで助っ人ふたりを労《ねぎら》い、執り成しをしたのが竜神王であるエドヴァルド父である。
「おふたりとも、ありがとうございました。お怪我が無くて何よりです」
「あんな竜共など……今迄の戦いに比べれば、お遊びのようなものだ」
アモンが不満そうに言えば、シュルヴェステル様が大袈裟に肩を竦めた。
「同感だな。準備運動にもならん」
凄いな!
ふたりとも全くこたえていない。
逆に、まだ戦い足りないという顔をしてる。
それどころか!
「アールヴ、丁度良い。たった今から戦うか?」
「ああ、望むところだ」
アモンが挑発したのを、シュルヴェステル様も満更でもない様子で受けようとする。
慌てたのは俺とエドヴァルド父だ。
「や、やめて下さい! おふたりがもし本気で戦えば、この世界が滅びます!」
「そうそう親父さんの言う通り、戦うのはヤメテ! その代わり、これからもっと面白い事がありますから」
俺の口から咄嗟に出た『もっと面白い事』にふたりは反応した。
「ふ! トールめ、今の言葉はもう取り消せぬぞ」
「そうだぞ! 先程の約束通り、儂も混ぜるのなら我慢しようか」
俺とエドヴァルド父は思わず顔を見合わせた。
これは竜の襲撃より難儀するかもしれない。
しかしこの場を収めるにはOKするしかない。
「ははっ! お約束します!」
「うむ」「はっはははは」
俺が深く頭を下げるとアモンとシュルヴェステル様は満足そうに大笑いしたのであった。
肉を断ち切る音。
しゃぁぁぁ~っ!!!
真っ赤な血が派手に噴き出る音。
俺がヴェルザデーデの首筋へ叩きつけた魔剣は、怖ろしい切れ味を発揮した。
固い岩のように、跳ね返されるかと思った古代竜《エンシェントドラゴン》の皮膚。
だけど拍子抜けするくらい、全然固くなかった。
まるで、柔らかい豆腐か、溶けたバターを切るみたいだった。
邪神様の魔剣の威力か、神力波《ゴッドオーラ》のお陰か分からないが、俺は古代竜ヴェルザデーデを瞬殺したのだ。
そもそも竜とはとても頑健な生き物……という俺の中二病イメージ。
余計にそう感じたのは、この世界で武器屋を覗いた時に『竜革製』と銘打った防具が売られていた時。
それ、最高級品扱いだった。
何を言いたいかというと、つまり防御力が半端じゃないという事。
しかし!
そんなの邪神様の前では全く関係ねぇのだ。
まあ、『騎士』に任命したばかりの俺が、公の場で無様な戦いをしたら困るってのもあるだろう。
それに、よくよく考えてみたら、この力も納得。
冥界大戦で、邪神様と使徒軍団はアモン率いる悪魔軍団に圧勝しているのだから。
※第82話参照
そのアモンが竜を瞬殺しているのを考えると、『騎士』となった俺の力ってどんだけなの?
まあ良いか、今更。
タイマン勝負は吉と出たもの。
古代竜ヴェルザデーデは、俺の一撃で呆気なく頭部を刎ねられて死んだ。
奴の巨大な頭部は、くるくる回転しながら遥か彼方へ飛んで行った。
そして残された身体は切断された首から盛大に血をまき散らしながら、地上へと墜落して行った……
「トール、さすが闘神の騎士だ……お前は凄い……凄すぎる」
俺を乗せたエドヴァルド父が感慨深げに言う。
驚愕の波動が伝わって来る。
「ヴェルザデーデ……奴は数千年生きた歴戦の古代竜だ。それをたった一撃か……お前と敵同士にならないで良かった……心の底からそう思うぞ」
「いやぁ、俺も自分の力が怖いですよ」
そんな会話をエドヴァルド父としている最中……
俺が『首領』をあっさり倒したのを見て、他の竜共は恐怖の虜となった。
彼等にとって絶対的な力の象徴が、戦闘開始直後に屠られたのだから無理もない。
アモンとシュルヴェステル様が底知れない力で竜を続々倒していたのに加えて、リーダーのヴェルザデーデまで死んだ。
タトラ村を襲った竜の群れは戦意を失って総崩れとなり、彼等は命からがら逃げ出して行く。
四方八方散り散りに退却していく竜共を、俺達は眺めるだけで深追いしなかった……
後から聞いた話だが、元々竜神族に対して徹底抗戦を主張していたのはヴェルザデーデとその取り巻きだけだったという。
ヴェルザデーデが死に、取り巻きもこの戦いで殆ど戦死した。
なので、竜達を戦場に繋ぎ止めるものは今や、何もなかったのだ。
……俺は安堵のあまり、「ふう」と息を吐く。
緊張していた分、脱力感が半端ない。
とりあえず当面の危機は去り、奇跡的に誰も死なずに済んだ。
またも視線を感じたので見ると、驚愕していたエドヴァルド父の目が優しそうな慈愛に満ちていた。
思わず俺は言う。
確認を求めるように……
「親父さん、俺……皆を、家族を守れたんだな?」
かすれた声の俺に、エドヴァルド父はきっぱりと言い放った。
「ああ、そうさ、トール。お前は私の妻の……ジュリアの母親の仇も討った。俺の誇るべき息子だ。胸を張って一家の長だと言い切るが良い」
「……そうか、そうなんだ。俺の力で……これからも愛する嫁達を守っていけるんだ」
「うむ! 見るが良い」
エドヴァルド父は俺から視線を外すと、顎をしゃくった。
俺が示された方向を見ると、アモンとシュルヴェステル様が戻って来るのが見える。
「スパイラル様の啓示があったとはいえ……あのふたりが来てくれたのもお前が居たからこそ。この勝利はお前が作り上げた『絆の力』なのだ」
え?
俺の?
俺の為に来てくれた?
俺が居たから?
ふたりとも来てくれた?
ああ、何だろう?
涙がどんどん出て来た。
駄目だ、止まらないや。
俺が泣いているのを見たアモンが、強面の顔を歪め面白そうに笑う。
「ふん、トールめ。お前に涙など似合わぬぞ、お前は、な。俺の言う事に不満そうに顔をしかめているのが1番良い」
「…………」
な、何だよ、アモンの奴。
お前こそ、怖ろしい悪魔の風貌で優しい事を言うのなんて似合わないんだよ!
俺が無言の抗議をしていると、シュルヴェステル様がにやりと笑って、茶々を入れる。
「はっははは! アモン、お前こそ何だ? 鬼と呼ばれた男が可愛い弟の事となると急に饒舌になるではないか」
確かにシュルヴェステル様の言う通りだ。
「ふん、アールヴめ、抜かせ!」
言われたアモンは不機嫌そうな表情を浮かべ、ぷいと横を向いてしまった。
はは、やっぱり、アモンはアモンだ。
ここで助っ人ふたりを労《ねぎら》い、執り成しをしたのが竜神王であるエドヴァルド父である。
「おふたりとも、ありがとうございました。お怪我が無くて何よりです」
「あんな竜共など……今迄の戦いに比べれば、お遊びのようなものだ」
アモンが不満そうに言えば、シュルヴェステル様が大袈裟に肩を竦めた。
「同感だな。準備運動にもならん」
凄いな!
ふたりとも全くこたえていない。
逆に、まだ戦い足りないという顔をしてる。
それどころか!
「アールヴ、丁度良い。たった今から戦うか?」
「ああ、望むところだ」
アモンが挑発したのを、シュルヴェステル様も満更でもない様子で受けようとする。
慌てたのは俺とエドヴァルド父だ。
「や、やめて下さい! おふたりがもし本気で戦えば、この世界が滅びます!」
「そうそう親父さんの言う通り、戦うのはヤメテ! その代わり、これからもっと面白い事がありますから」
俺の口から咄嗟に出た『もっと面白い事』にふたりは反応した。
「ふ! トールめ、今の言葉はもう取り消せぬぞ」
「そうだぞ! 先程の約束通り、儂も混ぜるのなら我慢しようか」
俺とエドヴァルド父は思わず顔を見合わせた。
これは竜の襲撃より難儀するかもしれない。
しかしこの場を収めるにはOKするしかない。
「ははっ! お約束します!」
「うむ」「はっはははは」
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