真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第197話「激闘の予感」

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 邪心様の騎士である俺。
 そして嫁ズ……竜神族の姫ジュリア、悪魔王女イザベラ、魔法帝国王女ソフィア、アールヴのソウェルの孫娘アマンダとフレデリカ、そしてアールヴのハンナ……

 竜神王エドヴァルド父と配下の竜神族10名、超強力助っ人大悪魔戦鬼アモンとアールヴの長である伝説のソウェル、シュルヴェステル・エイルトヴァーラ。

 これだけ揃えば凄い布陣だ。
 いくら闘神スパイラルが派遣したからといって、この戦いは本来、竜神族対竜の戦いなのだから。
 だからエドヴァルド父は赴いてくれた戦士ふたりに対して礼を尽くさなければならない。
 当然、俺も一緒に挨拶する。
 もうシュルヴェステル様と呼ぼう。

「ご無沙汰しております、ソウェル! この度はお力添え頂き、かたじけなく思っております」

 跪き、頭を下げるエドヴァルド父に対して、シュルヴェステル様は頭を横に振り、無理矢理立たせた。
 俺も立つように言われた。
 自然体でOKという意思表示だ。

「いやいや、竜神王。ああ、エドヴァルドと呼んだ方が良いか。トールは儂の可愛い孫ふたりの婿でもあり、お前の娘婿でもある、戦うのは決してやぶさかではないぞ」

 「お前達は身内だぞ!」と強調するシュルヴェステル様に、エドヴァルド父は嬉しそうに笑顔を見せる。

「ははっ! ありがたき幸せ。トールは……我が息子は良い男です……奴が戦うと言った時に「お前を決して死なせはしない」という魔力波《オーラ》がはっきりと伝わって来ました。俺は……嬉しかったのですよ、ソウェル」

 おいおい、目の前に俺、居るよ。
 照れるじゃないか!

 何かもじもじしてると、シュルヴェステル様が更に言う。

「エドヴァルド、そうか……儂もだ。トールは息子夫婦の恩人。孫アウグストの生命を救った恩人、そしてアマンダとフレデリカの婿。闘神スパイラル様に命じられ、この地に赴いたが、戦う理由は寧ろ儂自身にある」

 シュルヴェステル様は、何故か悪戯っぽく笑う。
 今度は俺へ何か言うつもりらしい。

「トール、こんな事はさっさと片付けてしまおう。それより、何やら世界を股に掛けて面白そうな事をしようとしているではないか? 儂も当然、混ぜて貰うぞ」 

「は?」
 
 こんな事はさっさと片付ける?
 面白い事に混ぜろ?

 エドヴァルド父は唖然としている。
 俺だって、吃驚だよ。
 これから、とてつもない竜の大群と命を懸けた戦いに臨むのに……
 このアールヴの長は全く臆していないから。

「うむ、そうだ! この戦いに参加するのは種族同士の絆を深め、新たな世界を構築せよという闘神スパイラル様の啓示によるものだ。だが、実際は種族間において様々な商売で戦う為の準備だという、面白可笑しいものではないか。ふはははは!」

 シュルヴェステル様は、呆気に取られているエドヴァルド父を促す。

「さてと、エドヴァルドよ。時間が無い。竜との戦いの前に、我々より永き刻を生きる悪魔侯爵――いや戦鬼へ一緒に挨拶をしようか」

「は! ソウェル様」

 エドヴァルドとシュルヴェステル様のふたりは椅子に座って、腕組みをしているアモンに近付いた。
 俺はというと、どんなやりとりをするのか、後ろでそっと見守っている。

 今迄目を閉じていたアモンはふたりが近付くと、すっと目を開き、にやりと笑う。

「悪魔の俺に竜神王、そしてアールヴのソウェルかよ……トールが縁とはいえ、不思議な組み合わせだな、くくく」

 エドヴァルド父は皮肉をいうアモンをスルーして、軽く一礼する。
 傍らでは、シュルヴェステル様が興味深そうにやりとりを見つめていた。

「悪魔侯爵アモン殿、この度は闘神《スパイラル》様の啓示により、よく馳せ参じてくれた。礼を言いたい」

 エドヴァルド父がそう言うと、アモンは手をひらひらと横に振った。

「ははは! 俺はそう思っていない」

「な、何!」

 闘神スパイラルの命令で来たのではない?
 アモンの台詞セリフを聞いたエドヴァルドは目を丸くして驚き、シュルヴェステル様は「ほう」と面白そうに呟いた。

「闘神《スパイラル》と悪魔は所詮そりが合わない。俺は今でもそう思っている。だがトールは闘神《スパイラル》の使徒とはいえ、大事な我が弟。そしてジュリアは大事な我が妹だ。俺にとって命に代えても大事なふたりが苦境に立ったと聞けば、助けるのは兄として当然の事」

「…………」

 相変わらずぶっきらぼうなアモンの物言いであったが、内容はとても熱い。
 エドヴァルド父は感動しているらしい。

「では俺も……この戦いの責任者、竜神族の長である前に! トールとジュリアの父としてそなたへぜひ礼を言いたい……ふたりが世話になった! そなたに戦い方、生き抜くすべを教授していただいたと聞いたので、な」

 エドヴァルドは改めて、アモンへ深々と頭を下げた。

「ほう! 誇り高き竜神王が、俺のような悪魔に頭を下げるのか? だがこれが新たな時代の幕開けかも知れぬ」

 ここでシュルヴェステル様がアモンに声を掛ける。

「儂とも宜しくな、戦鬼よ」

「くくく! 久し振りだな、アールヴ」

 どうやら、アモンとシュルヴェステルは旧知の仲らしい。

「もうサシでの力比べは出来そうもないが……それ以上に面白そうな事をさせて貰えそうだな。ちなみに儂はもう、瘴気の満ちた魔界でも自在に動けるぞ」

 どうやらシュルヴェステルは、かつて悪魔が巣食う魔界へ乗り込もうとして、いったんは断念したようだ。
 しかし今現在は完全に克服し、いつでも戦えると意思表示をしたのである。

「相変わらずだな、アールヴ……まあ、世界はこれから大きく変わる。トールという異分子が変えるきっかけを作ったのだ。我が不出来な弟が、な。くくくく」

「不出来か、そうは聞こえないがな。……ふふふ」

 シュルヴェステル様は、天邪鬼なアモンの真意を見抜いているようだ。

「くくく! いや、言っている通りだ。だからしっかり面倒を見なくてはならぬ。しっかりと、な」

 アモンとシュルヴェステル様の会話を聞いていたエドヴァルドも、やはり「にやり」と笑う。

 そんなやり取りの後……

 俺は改めて皆を集めてこれからの戦いの算段をしている。

 竜の大群はもう間近に迫っていたが、急いで作戦会議をしなくてはならない。
 だが気持ちは基本的に決まっていた。
 それは攻撃は最大の防御だということわざ通り。
 嫁ズに村を堅く守らせ……
 俺と竜神族、超強力助っ人軍団は竜に対して打って出るのだ。

 まずは魔法障壁と属性の壁でタトラ村を防御。
 嫁ズに盾役タンクとして専守防衛で村を守らせているうちに、俺達が相手の首領格を倒して群れを瓦解させようとするピンポイント作戦である。

 エドヴァルド父によれば今回も、ある古代竜エンシェントドラゴンが各種族の竜を纏め上げ、襲撃させているのではと推測している。
 で、あればその首領を倒せば相手の士気は著しく下がり、群れは弱体化するというのが俺の見方なのだ。
 こんな俺の意見にまず賛成してくれたのは、やはりアモンであった。

「いつもの一騎打ち……相手の大将とサシで戦うタイマンとかいうやり方だな。男らしくて俺は好きだ」

 アモンが賛同したので、エドヴァルド父とシュルヴェステル様に異存はない。

「トール、お前は飛翔出来るようになったというが……竜化した我が背に乗れ! その方が戦い易いぞ! お前が闘神スパイラル様の騎士なら俺が喜んで騎竜となろう」

 エドヴァルド父が熱い視線を送って来るのを見て、俺は大きく頷いていたのであった。
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