真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
192 / 205

第192話「驚きの再会」

しおりを挟む
「はぁ!? わらわは、そなたのような親爺など全く知らぬぞ」

 モーリスさんから、いきなり名前を呼ばれたソフィアは首を傾げた。
 全然、心当たりが無いらしい。
 ソフィアの無反応振りを見たモーリスさんは、何故か納得顔だ。

「……ああ、そうか! まあこの風体ではすぐに分からないだろうな」

「???」

 モーリスさんがぽつりと呟くが、相変わらずソフィアの頭の上には?マークが飛び交っている。
 怪訝な表情で、睨んでいるだけだ。
 首をゆっくり横に振ったモーリスさんは苦笑し、息を整えた。

「コホン! ええと……余は栄光あるガルドルド魔法帝国皇帝アレクサンデル・ガルドルド也!」

 何を言うのかと思ったら……
 モーリスさんがガルドルド魔法帝国皇帝???
 何じゃ、そりゃ!
 
 そしてアレクサンデルって何???
 凄~く恰好良い名前だけど、はっきり言って似合わねぇ。
 名前と顔が一致しない。
 
 そもそも皇帝って!?
 俺はソフィアの身内だぞ! って事だろうか?

 モーリスさんのとんでもないカミングアウト? に思い切りドン引きしたのであろう。
 彼を見るソフィアの視線は一気に冷たくなり、口元は呆れたような笑みが浮かんでいた。
 「笑うに笑えない冗談を言うな!」という顔だ。
 当然、出てくる言葉もきつい。

「……悪いが、良い齢《とし》をした親爺の、それもくだらない茶番に付き合っている暇はないぞ。さっさと旦那様との仕事を終わらせてはくれまいか、商店主よ」

 兄? どころか、完全に他人扱いが炸裂している。
 モーリスさんはソフィアの反応に吃驚して、あんぐりと口を開けていた。

「はああっ!? おいおいソフィア! 俺の言う事を信じてくれないのかよ!」

 ソフィアは……大きな溜息を吐いた。
 そして「もう、いい加減にして欲しい!」という雰囲気で、厳しく言葉を返したのである。

「当たり前じゃ! アレクサンデル様は確かに我が兄上であり、ガルドルド魔法帝国皇帝の名じゃ! だが兄上は世界でも有数の超美形! 全世界の国の王女、誰もがため息をつくような、妾の憧れの男子であった。お前のような汚く足が臭そうな、むさいおっさんとは違うのじゃ!」

 ああ、昔の兄との思い出を語るソフィアは、遠い目をして夢見る少女のようだ。
 これってかつてのフレデリカのようである。
 俺が思わずフレデリカを見ると、たまたま目が合ってしまった。
 案の定、彼女は苦笑している。

 片や、モーリスさん。
 愛する妹からスーパーショッキングな言葉を投げ掛けられて、茫然自失という感じである。

「俺が汚く足が臭そうな……むさい……おっさん……」

「そうじゃ! 鏡をよ~く見てしっかり自覚せい! どうせ、どこぞで手に入れた古文書か何かで兄上の名を知り、『語り』を行って来たのであろう?」

「…………」

 ああ、容赦ないソフィアの口撃……
 可哀想なモーリスさんは俯いてしまっている。
 しかし、ソフィアの追撃はやまない。

「お前がこれ以上、酷い『語り』をするのであれば容赦はせぬ。我が旦那様と一緒にお仕置きをさせて貰うぞ。兄上の名誉というものがあるからな」

 ここで……
 さすがにモーリスさんの堪忍袋の緒が切れた様である。

「ぐぐぐぐぐ……ソフィアぁ! 言わせておけばぁ!」

 モーリスさんが怒りの言葉を発したが、ソフィアは全く意に介していない。

「何じゃ? やるつもりかの! 旦那様、懲らしめの為にこの詐欺親爺を一発殴ってはくれまいか!」

 は!?
 ここで、いきなり俺に振る?

 だけど……

 あまりに凄い会話の内容だったので、気になった俺はソフィアとモーリスさんが話している間、色々と調べている。
 俺の特技である魔力波《オーラ》読みを使ってね。
 そしてまず、はっきりした事があった。

 それは……

「え? 嘘を言っていない? この汚い親爺が?」

 俺の言葉を聞いたソフィアは愕然としている。
 使徒として覚醒しつつある、俺の魔力波オーラ読みから得る情報が疑う余地はないと知っているからだ。
 
 俺はもう1回念を押す。

「ああ、この人、モーリスさんは全然嘘を言っていないよ」

 俺が擁護したので、モーリスさんは「うんうん」と頷いている。

「そうだ! 俺はさっきからお前の兄だ! とこれほど言っているのに…… だったら良い! 証拠を出そうじゃないか、俺とお前だけの秘密を喋ってやるぞ!」

「え? ひ、秘密!? ま、まさか? なんの話だと言うのじゃ!」

 モーリスの反撃に対して蒼ざめるソフィア。
 『秘密』と聞いて何か心当たりがあるようだ。

 ソフィアの秘密?
 一体、何だろう?
 果たしてこの人は本当にソフィアの兄なのだろうか?
 でも魔力波オーラを見る限りモーリスさんは嘘を言っていないんだよな。

 あたふたするソフィアを見た俺は、思わず『秘密』を聞こうと耳を澄ませていた。

「ソフィアが5歳になった朝!」

 モーリスさんが話を切り出した。
 どうやら、ソフィアが幼い頃の話らしい。
 だが、ソフィアの反応がモノ凄い。
 今迄の冷淡な彼女と大違いだ。

「は!? ななな、何じゃあ!?」

「こいつは中々起きて来なかった! 俺が心配して見に行くと……もじもじしたソフィアがベッドに座ったまま、俯いていて兄上……粗相をして御免なさいと……」

 ここでいきなりソフィアが大きく手をぶんぶん振って、モーリスさんの話を止めに掛かる。
 誰から見ても慌てているのが、丸分かりであった。

「わああああああっ! わ、分かった! たたた、確かに兄上じゃ! あああ、貴方は間違いなく妾《わらわ》の兄上じゃ!」

「ふん! ようやく分かったか!」

 勝ち誇る? モーリスさんに俺も何となく頭を下げた。
 何か事情があるようだが、ソフィアの肉親が生きているのは喜ばしい。
 そう、俺は思うもの。

「モーリスさん、貴方の素性を詳しく話して貰えないか? 俺もソフィアと出会った話をするから……」

「ああ、トール……お前が我が妹を助け出し、幸せにしてくれたんだろう? ジュリアちゃん同様に、な。――本当にありがとう!」

 モーリスさんは、心の底から嬉しそうな笑みを浮かべて俺に礼を言う。

 それは兄として最愛の妹に再会出来た事、そして彼女が幸せ一杯なのを見て満足したのに他ならなかったのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...