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第181話「未来への扉を開け」
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「おおおっ! ソフィア! よかったなぁっ!」
俺は思わず大声をあげていた。
叫んだ俺に応えるようにソフィアも叫ぶ。
「だ、旦那様~っ!」
叫んだ後に口を真一文字に結んだソフィアの端麗な顔が「くしゃくしゃ」になる。
そして俺に向かって転がるように一目散に駆けて来たのだ。
俺は両手を広げる。
ばっち来~い! って奴だ。
ソフィアは俺に飛びつくと、顔を摺り寄せて甘えまくる。
「あおう、あおう! うわああああん!」
嬉しさの余りって事だろう、ソフィアは何か言葉にならない声で大泣きし始めてしまったのだ。
本当に辛かっただろう、怖かったのだろう。
この美しい身体が崩壊して、最後は喪失してしまうところだったのだから。
抱き締めた金髪碧眼の少女は、頼りないくらい華奢であった。
俺も思わず涙が溢れて来る。
この子が俺の……嫁なんだ。
「俺のソフィア! よかったなぁ! 本当によかったなぁ!」
「あうあうあうあう!」
泣きじゃくるソフィアを見て、嫁ズも貰い泣きしていた。
思いっきり泣いたソフィアは真っ赤になった瞳で周囲を見渡す。
「皆、ありがとう! 本当にありがとう!」
誇り高い大国の王女が、頭を深く深く下げている。
「何、言っているの? 家族なんだから当然でしょう!」とジュリア。
「そうそう!」とイザベラ。
「私、自分の事のように嬉しいです!」とアマンダ。
「ソフィア姉! よかったねぇ!」とフレデリカ。
ヴォラクやフレデリカの侍女ハンナも嬉しそうに笑顔を見せている。
凄い!
これが家族の絆ってものなんだ!
がっしゅう!
おおっ!
何だ、何だ!?
突如凄い蒸気音がしたので、思わず振り返るとゴッドハルトであった。
ソフィアの復活を見て、とても喜んでいるらしい。
「トール様、アリガトウ!」
「おお、ゴッドハルト。さっきのテオちゃんの言葉じゃあないが、ソフィアの身体をしっかりと守ってくれた貴方の力も大きかった! 本当にありがとう!」
俺はゴッドハルトに礼を言いつつ、ハッと思いついた。
ソフィアが復活した今、このコーンウォール迷宮で仕事の無くなった彼等第7騎士団を遊ばせておくのは惜しい。
本人達の意思確認は当然だが、これから俺達がやろうとしている仕事において、人手は全く足りないし、テオちゃん達魔法工学師が居れば彼等の外見を変えて貰い、働き場所を作る事も出来るだろう。
「ゴッドハルト、俺、貴方に話があるのだけれど……」
居住まいを正した俺の様子を見ていたソフィアも、何が始まるのかと可憐な顔をこちらへ向けたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ペルデレ迷宮地下8階真ガルドルド魔法帝国、宰相官邸大会議室……
コーンウォール迷宮から戻って来た俺達は、取り急ぎ今後の身の振り方の打合せをする。
特にアウグストに対しては、しっかりした説明をしなければならない。
俺は会議に臨むにあたって、現状と今後の見込み、そしてこのペルデレ迷宮に居る者達への選択肢の提示等を考えていた。
国や世界レベルでの取り決めなんて少し前まで高校生だった俺に仕切れるとは到底思えないが、今回だけは俺が主導して行かねばならない。
事前にプラン提示をして嫁ズとテオちゃん達に了解を貰った俺は、いよいよ会議に臨んだのである。
メンバーは俺、嫁ズ、テオちゃんと、魔法工学師10人、アウグストと代表のアールヴ数人、悪魔、人間も同様……このようなメンバーで意見交換したのだ。
そして――3時間後
会議は終了した。
現状に関してはまずこの迷宮から出るか残るかの選択提示、今後はソフィアが話した国や種族を超えた『商会』の設立、そして最後に俺のアイディアを出して皆の意見を入れて貰ったのだ。
俺のアイディア――それは人間、アールヴ、そして悪魔がそれぞれ設立した商会に紐づいた商業的な自由都市もしくは地区を作ろうというものだ。
イメージとしては、中世イタリアのヴェネツィア。
または日本の戦国時代の都市、堺が近いだろう。
限定されたエリアを作るというのには理由がある。
万が一の事があった場合も対処し易いからだ。
中でも商取引を行う際に物資の運搬を慎重に行う必要がある。
特に悪魔王国からの物資の搬入出の場合が1番気を遣う。
悪魔族は世間的には禁忌とされた存在なので、上手くやらないとそれこそトラブルを引き起こす原因となってしまうからだ。
それに悪魔王国の復興という大きな命題もある。
まずは経済的、技術的に豊かになって貰う事が先決だ。
そして悪魔側にも認識して貰わなければならないのは、やはり彼等悪魔は悪魔王国エリアで幸せになって貰うのが前提である事だ。
本能が絡むので困難かもしれないが、やはり人間やアールヴ達を害してはいけないのである。
今回1番気合が入ったのがアウグストとセーレである。
アウグストは世界を股にかける仕事だと理解して燃えていたし、セーレはヴォラクと意気投合して悪魔商会設立の具体的な話をしていたのだ。
そして悪魔王国にとって最大の朗報なのが、テオちゃん達ガルドルド魔法工学師達が持つ食糧生産の技術である。
何せ、迷宮でも人口農場を造ってしまうくらいだ。
砂漠のような厳しい環境の悪魔の世界を豊かにするという話をしたら、テオちゃん達はとても興味を示していたのである。
話がまとまり……だんだんと図式が見えて来た。
テオちゃんを中心とする技術商社的な立ち位置が真ガルドルド魔法帝国。
俺達を中心とする人間の商会。
アウグストを中心とするアールヴの商会。
そしてヴォラクとセーレによる悪魔の商会。
この4者が各自に動きながら、お互いに協力して相互補完を行う。
商売なので当然利益を追求しながら、世界に貢献し、満足の行く仕事をする。
秘密保持が1番の問題であったが、そこもソフィアとテオちゃんにより解決した。
この迷宮に居た者達が元の身体に戻る際、ある魔法を仕込んだのである。
魔法の名は『忘却』
万が一、取引の事を口外したり、極端な場合……裏切ろうとしたら、共有している秘密の記憶は一切失われるのだ。
こうして俺達は未来への扉を開け放ち、新たなスタートを切ったのであった。
俺は思わず大声をあげていた。
叫んだ俺に応えるようにソフィアも叫ぶ。
「だ、旦那様~っ!」
叫んだ後に口を真一文字に結んだソフィアの端麗な顔が「くしゃくしゃ」になる。
そして俺に向かって転がるように一目散に駆けて来たのだ。
俺は両手を広げる。
ばっち来~い! って奴だ。
ソフィアは俺に飛びつくと、顔を摺り寄せて甘えまくる。
「あおう、あおう! うわああああん!」
嬉しさの余りって事だろう、ソフィアは何か言葉にならない声で大泣きし始めてしまったのだ。
本当に辛かっただろう、怖かったのだろう。
この美しい身体が崩壊して、最後は喪失してしまうところだったのだから。
抱き締めた金髪碧眼の少女は、頼りないくらい華奢であった。
俺も思わず涙が溢れて来る。
この子が俺の……嫁なんだ。
「俺のソフィア! よかったなぁ! 本当によかったなぁ!」
「あうあうあうあう!」
泣きじゃくるソフィアを見て、嫁ズも貰い泣きしていた。
思いっきり泣いたソフィアは真っ赤になった瞳で周囲を見渡す。
「皆、ありがとう! 本当にありがとう!」
誇り高い大国の王女が、頭を深く深く下げている。
「何、言っているの? 家族なんだから当然でしょう!」とジュリア。
「そうそう!」とイザベラ。
「私、自分の事のように嬉しいです!」とアマンダ。
「ソフィア姉! よかったねぇ!」とフレデリカ。
ヴォラクやフレデリカの侍女ハンナも嬉しそうに笑顔を見せている。
凄い!
これが家族の絆ってものなんだ!
がっしゅう!
おおっ!
何だ、何だ!?
突如凄い蒸気音がしたので、思わず振り返るとゴッドハルトであった。
ソフィアの復活を見て、とても喜んでいるらしい。
「トール様、アリガトウ!」
「おお、ゴッドハルト。さっきのテオちゃんの言葉じゃあないが、ソフィアの身体をしっかりと守ってくれた貴方の力も大きかった! 本当にありがとう!」
俺はゴッドハルトに礼を言いつつ、ハッと思いついた。
ソフィアが復活した今、このコーンウォール迷宮で仕事の無くなった彼等第7騎士団を遊ばせておくのは惜しい。
本人達の意思確認は当然だが、これから俺達がやろうとしている仕事において、人手は全く足りないし、テオちゃん達魔法工学師が居れば彼等の外見を変えて貰い、働き場所を作る事も出来るだろう。
「ゴッドハルト、俺、貴方に話があるのだけれど……」
居住まいを正した俺の様子を見ていたソフィアも、何が始まるのかと可憐な顔をこちらへ向けたのであった。
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ペルデレ迷宮地下8階真ガルドルド魔法帝国、宰相官邸大会議室……
コーンウォール迷宮から戻って来た俺達は、取り急ぎ今後の身の振り方の打合せをする。
特にアウグストに対しては、しっかりした説明をしなければならない。
俺は会議に臨むにあたって、現状と今後の見込み、そしてこのペルデレ迷宮に居る者達への選択肢の提示等を考えていた。
国や世界レベルでの取り決めなんて少し前まで高校生だった俺に仕切れるとは到底思えないが、今回だけは俺が主導して行かねばならない。
事前にプラン提示をして嫁ズとテオちゃん達に了解を貰った俺は、いよいよ会議に臨んだのである。
メンバーは俺、嫁ズ、テオちゃんと、魔法工学師10人、アウグストと代表のアールヴ数人、悪魔、人間も同様……このようなメンバーで意見交換したのだ。
そして――3時間後
会議は終了した。
現状に関してはまずこの迷宮から出るか残るかの選択提示、今後はソフィアが話した国や種族を超えた『商会』の設立、そして最後に俺のアイディアを出して皆の意見を入れて貰ったのだ。
俺のアイディア――それは人間、アールヴ、そして悪魔がそれぞれ設立した商会に紐づいた商業的な自由都市もしくは地区を作ろうというものだ。
イメージとしては、中世イタリアのヴェネツィア。
または日本の戦国時代の都市、堺が近いだろう。
限定されたエリアを作るというのには理由がある。
万が一の事があった場合も対処し易いからだ。
中でも商取引を行う際に物資の運搬を慎重に行う必要がある。
特に悪魔王国からの物資の搬入出の場合が1番気を遣う。
悪魔族は世間的には禁忌とされた存在なので、上手くやらないとそれこそトラブルを引き起こす原因となってしまうからだ。
それに悪魔王国の復興という大きな命題もある。
まずは経済的、技術的に豊かになって貰う事が先決だ。
そして悪魔側にも認識して貰わなければならないのは、やはり彼等悪魔は悪魔王国エリアで幸せになって貰うのが前提である事だ。
本能が絡むので困難かもしれないが、やはり人間やアールヴ達を害してはいけないのである。
今回1番気合が入ったのがアウグストとセーレである。
アウグストは世界を股にかける仕事だと理解して燃えていたし、セーレはヴォラクと意気投合して悪魔商会設立の具体的な話をしていたのだ。
そして悪魔王国にとって最大の朗報なのが、テオちゃん達ガルドルド魔法工学師達が持つ食糧生産の技術である。
何せ、迷宮でも人口農場を造ってしまうくらいだ。
砂漠のような厳しい環境の悪魔の世界を豊かにするという話をしたら、テオちゃん達はとても興味を示していたのである。
話がまとまり……だんだんと図式が見えて来た。
テオちゃんを中心とする技術商社的な立ち位置が真ガルドルド魔法帝国。
俺達を中心とする人間の商会。
アウグストを中心とするアールヴの商会。
そしてヴォラクとセーレによる悪魔の商会。
この4者が各自に動きながら、お互いに協力して相互補完を行う。
商売なので当然利益を追求しながら、世界に貢献し、満足の行く仕事をする。
秘密保持が1番の問題であったが、そこもソフィアとテオちゃんにより解決した。
この迷宮に居た者達が元の身体に戻る際、ある魔法を仕込んだのである。
魔法の名は『忘却』
万が一、取引の事を口外したり、極端な場合……裏切ろうとしたら、共有している秘密の記憶は一切失われるのだ。
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