真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
170 / 205

第170話「お父様との対決フラグ」

しおりを挟む
「みんなぁ、ちょっと聞いてぇ!」 

 吃驚した俺と嫁ズの前で、フレデリカはガーゴイルズへ向かって手を挙げた。
 彼等は全員、じっとフレデリカを見つめてる。 

 大注目を浴びたフレデリカは、大きく息を吸い込んだ。
 そして一気に言い放つ。 

「私、この人と結婚しまぁ~す! 愛してまぁ~す!」

 フレデリカが、俺の嫁になると宣言すると、その場はシーンとした。
 氷付いたように空気がビキビキ強張こわばったのだ。
 何か、凄くヤバイ雰囲気……

 思わず俺はフレデリカを庇《かば》うようにして、身構えた。
 当のフレデリカは守ってくれる俺の行為に感激したらしく、相変わらず甘えている。

 これは、とてもまず~い状況だ。
 熱狂的なアイドルファンは熱い分、このようなアイドルの『裏切り』に過剰反応する事も多い。
 いわゆる――可愛さ余って憎さ百倍という奴。

 しかしここでフレデリカが意外な行動に出た。
 庇われて隠れていた背後から俺の前にパッと出ると、居並ぶガーゴイルズに向かって堂々と宣言したのだ。
 
 何を?って……
 
 何と!
 改めての熱愛宣言だ。

「もう一度言うわぁ! 私は彼を心の底から愛してる! 真剣なのぉ!」

 おおおおおっ!

 真面目な顔のフレデリカを見たガーゴイルズからは、凄いどよめきだ。

私の・・トールはね~! 見ても分かるだろうけど人間の平民なのぉ! ギルドの制止を振り切って、命懸けで私と兄上を探しに来てくれたのよぉ! そしてすっごく強いのぉ! この迷宮でピンチになった私を、指先ひとつでピ~ンと助けてくれたのぉっ!」

 おおおおお~っ!
 わああああ~っ!

 むむむ!
 ギルドの制止を振り切って命懸けで探しに来たとか……違うし。
 危機ピンチに陥ったフレデリカを、指先ひとつで助けたとか……デコピンはしたけど違うし。
 話が全然違う気がするが、ここで訂正を求めるほど俺は馬鹿ではない。

 フレデリカの『熱愛宣言』という機転で、ガーゴイルズは俺達を信用してくれそうだから。

 この異世界では地球の中世西洋と一緒で、囚われた『美しい姫君』を命懸けで助ける騎士《ナイト》が受けるのは同じらしい。

「みんな~! お願いだからトールを認めてあげてぇ! 私はねぇ、身分違いの愛を貫く覚悟なのぉ! でもぉ、絶対に幸せになるからぁ! それにトールはこれからお父様と対決して勝たなくてはいけないのよぉ!」

 おおおおおおおおおおっ!

 今度は凄い叫び声が迷宮内を埋め尽くした。
 ガーゴイルズは大声で叫び、興奮して足を踏み鳴らしている。
 だが何か……とんでもない話になっているような気がするぞ。
 自分の発言に対して完全に酔っているフレデリカに、俺はストップをかけた。

「おい! フレデリカ! ちょっと待て!」

「なぁに、お兄ちゃわん!」

「なぁに、お兄ちゃわん、じゃあない。俺がマティアスさんと対決ってどういう事だよ」

 俺の糾弾にもフレデリカは「しれっ」とした表情だ。

「だってぇ! アマンダ姉さんだけじゃなくて、私もお兄ちゃんのお嫁さんになったらぁ、あのお父様が黙っているわけないんだも~ん」

「確かに……愛娘ふたりとも旦那様のお嫁さんじゃあ、お父様は大爆発確定ね」

 アマンダまでじと目をして「しれっ」と言う。
 こちらは少し、妹への嫉妬が感じられる。

 え?
 お父様大爆発確定?
 ああ、やばい!
 やばすぎる!
 有力貴族のマティアスさんが怒ったら、アールヴ軍団に俺の追討命令が下るかも……

 いくら神の使徒の俺でもアールヴ全体を敵にまわしたくない。
 かといって……もう大きな流れには逆らえない。

「「「「「「「「「「フリッカ! フリッカ! フリッカ!」」」」」」」」」」

 またもや沸き起こるフリッカコール。

「フリッカァ! 幸せになれよぉ!」

「俺達、応援してるよぉ!」

「もし結婚してもフリッカは俺達冒険者の永遠のアイドルだぁ!」

「「「「「「「「「「フリッカ! フリッカ! フリッカ!」」」」」」」」」」

 ああ、今更これでは俺に拒否権は無い。
 絶対に無い!

 しらばっくれて、明後日あさっての方角を向くフレデリカを、俺は複雑な表情で見つめていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 フレデリカ親衛隊という思わぬ展開から、ガーゴイル軍団100体余りを味方につけた俺達クランバトルブローカー。
 こうなれば勝手知ったる何とやら!
 迷宮を知り尽くしたガーゴイルズに先導して貰えば、奇襲を受けたり、酷い罠にはまるリスクも小さくなる。

 だけど、俺は念には念を入れた。

 万が一何かあってもガーゴイルズに盾になって貰えば、俺達に害が及ぶ可能性が減る。
 その上で、俺は召喚したケルベロスを先行させ、ソフィアにも滅ぼす者デストロイヤーを出撃させた。
 イザベラにも悪霊を召喚させたのは言うまでもない。

 ケルベロスと滅ぼす者デストロイヤー&悪霊を盾役として俺達に直接の攻撃が及ばない数段構えとするのだ。
 当然の事ながら、ソフィアには罠の索敵も徹底させる。

 こうしてガルドルド魔法帝国の街並みを再現した迷宮を俺達は打てる手を全て打った状態で進んで行った。

 この街はやはりコーンウォールの街の造りと酷似している。
 そんな中、ジュリアの鋭い声が響く。

「旦那様! 何故かノイズがあって捕捉が遅れたけど……300m先に敵よ! 今度は人間やアールヴ仕様の自動人形オートマタ約50体! ええと、中身は多分悪魔達ね!」

 何!
 人間やアールヴ仕様の自動人形オートマタで、中身は悪魔!?
 ふうむ……
 悪魔が自動人形オートマタを選んだ理由は、ソフィアを例にすれば分かる気がする。
 多分、外見が美しいからだろう。
 ジュリアの報告を聞いて、さっと前に出たのがイザベラだ。

「旦那様、今度は私の身内だね。よっし出番だ! 任せといて!」

 いきなりイザベラを突出させるのは、とても危険だがここは彼女の意思を尊重してやりたい。
 まあ俺のフォローがあれば良いのだから。
 その証拠に俺がずいっと出て横に立つイザベラの顔を見たら、花が咲いたように微笑んだのである。

「うふふ、旦那様! 援護を宜しくね」

 ――5分後

 俺とイザベラは自動人形オートマタ軍団と正対していた。
 やはり、人間やアールヴの美男ばかりを模した機体であった。
 暫しの沈黙の後、イザベラが声を張り上げる。

「私は悪魔王アルフレードルの次女イザベラよ! まずあんた達と話をしたいの! 受けるなら代表の者が挙手をしなさい!」

 イザベラの呼び掛けに対して、相手陣営は直ぐに動かなかった。

 待つこと5分……

 短気なイザベラが痺れを切らしそうになった瞬間、美しいアールヴ男性を模した自動人形オートマタがおずおずと手を挙げたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...