真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第166話「俺はベストを尽くす」

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 転移門を通る不可思議な感覚があっという間に終わり、地下5階に出た俺達の前には広大な街並みが広がっている。

 これは凄い!

 景観はコーンウォール同様に『街』ではあるが、遥かに桁が違う。
 多分、数倍以上の規模はあるだろう。
 さっきまで滞在していたベルカナの街の規模を遥かにしのいでいる。

 しかし、いつまでも驚いてはいられなかった。
 
 幸い、転移門の周囲には敵が居ない。
 となると、ここで即『キャンプ』である。
 この場を『臨時拠点』として、地下5階を攻略するのだ。

「よっし、まず周囲の索敵だ。ソフィアは特に罠関係を念入りに頼むぞ」

「分かったぞ!」
「はい! 旦那様」
「りょ、了解です!」

 ソフィア、ジュリアのふたりが涼やかな声で返事をし、少し焦り気味に答えたのがハンナである。
 索敵担当である俺達4人は、早速索敵を開始した。
 すると、4人揃って奇妙な魔力波オーラをキャッチしたのだ。

「う~ん、確かに結構な数の気配はあるが……」

「旦那様、おかしいですね……何とも不思議な魔力波です」

「これって!?」

 俺達の索敵結果は同じだった。

 反応は確かにある。
 敵らしい相手は複数存在する。

 しかし……何か様子が変だ。
 身体と魂が一致しない、アンバランスな魔力波《オーラ》を発する者達なのだ。
 俺達索敵班の中で唯一、この『何か』を特定したのがソフィアであった。

「むうう、もしやこれは? ようし、イザベラ……斥候を出す準備は良いかの?」

「良いよ! ふうん!」

 その会話が終わるやいなや、ソフィアの収納の腕輪からまるで某ロボットアニメのように滅ぼす者デストロイヤーが飛び出して出動。
 そしてイザベラが繋いだ異界からは、わらわらとおぞましい悪霊軍団も召喚されて、街の中へ向った。

 滅ぼす者デストロイヤーと悪霊軍団は慎重に進む。

 最初は何者も現れなかった。
 しかし滅ぼす者デストロイヤーと悪霊達が少しずつ進むと、いきなり相手は現れたのである。
 いや、現れたのではない。
 今迄動かなかった敵が、急に動き出したのだ。

 それは……俺が資料本で見た憶えのある『怪物』であった。
 怪物の名は、ガーゴイルという。
 
 欧州の古い寺院の屋根の四隅などに、怖ろしい風貌をした石像が備え付けられているのをご存知だろうか?
 形状は統一されておらず様々であるが、基本的には雨樋《あまどい》であり、奴等の語源もそこから来ている。
 この石像が実際に動き出して侵入者を防ぐ……この地下の街でもその為だけに存在するガーゴイルと呼ばれる者達が居たのだ。

 ざっと見て、ガーゴイルは数十体ほど居るだろうか?
 俺は彼等を見て、ソフィアが想像したのが何であるかが分かったのだ。

 このまま行くと滅ぼす者デストロイヤーと悪霊達は攻撃を仕掛け、100%戦闘状態へ入る。
 普通なら、バンバン戦う所だが……想像通りならまずい。

「ソフィア、イザベラ、滅ぼす者デストロイヤーや悪霊を一旦引かせるんだ! 怪物の中身は多分、行方不明になった者達だぞ!」

「おう、旦那様も見破ったか! だがここで引くと奴等はこちらへ一気に襲って来るぞ。破壊しないで良いのか?」

 ある意味、ソフィアは非情だ。
 家族や仲間が害されるのなら、彼等を破壊し排除するしかないという考えだろう。
 前に宣言した通り、クランリーダーとしては俺もそうあるべきだ。
 それは確かに分かるが、俺の脳裏には今迄に会った様々な人の顔が浮かんだのである。
 愛する身内や親しい知人がこの迷宮で行方不明になって、心の底から心配している人達だ。
 
 俺の身内ではフレデリカ、そして彼女の父マティアス。
 そして悪魔では大学学長のオロバス。
 行方不明者かもしれないガーゴイルの命を奪って、そんな人達を悲しませたくない。

 やっぱりアモンの言う通り、俺は甘ちゃんかもしれない……
 だが行方不明者を助ける為に、まずやれる事をやってみようと思う。
 後悔したくないから、全力だけは尽くしたいのだ。

 首を横に振ると、ソフィアは俺の意図を理解してくれたらしい。
 「にこり」と笑い、大きく頷いてくれたのである。

 そうこうしているうちに、押し寄せるガーゴイルの群れは更に数を増していた。
 周囲の建物から、応援が加わったらしい。
 最初は数十体だったのが、今ではもう百を超える勢いだ。

 仕方ない。
 
 俺はとりあえず撤退する事にした。
 相手を殺さないのなら、何か方法が必要だ。
 その為に、じっくり作戦を練る必要がある。
 当然、考える時間を稼がないと。

 となれば、すぐにメンバーへ指示だ。

 「よし! ここは一旦引こう。クランバトルブローカー、撤退だ」

 俺は大きく声を張り上げて、一時撤退を指示したのであった。
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