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第152話「パパの憂鬱」
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翌朝……
いよいよ俺達、クランバトルブローカーは出発する。
行き先は旧ガルドルド魔法帝国の秘密が眠る失われた地……『ペルデレ』である
白鳥亭の食堂で朝食を摂り、紅茶を飲みながら俺達が寛いでいた時にその人物はやって来た。
訪れたのはアールヴの男性である。
サラサラの長い金髪をなびかせ、すらりとした体型。
顔は鼻筋の通った端正な顔立ちで、瞳は深い灰色。
アールヴ特有のやや尖った小振りな耳を備えている。
典型的なリョースアールヴであり、豪奢な服に身を包み、見るからに上流階級所属であった。
まるで某超有名ファンタジー映画から抜け出して来た容姿。
役を演じた某カリスマハリウッド男優以上のイケメンと言い切っても、全然間違いではない。
そして顔付きには、どこか見覚えがある。
もしかして……
「お、お父様!」
男性を見た我が嫁アマンダが、大声で叫ぶ。
やはり、俺が思った通り『アマンダパパ』だ。
「ア、アマンダ! やはり、その恰好は……私が聞いた噂話は本当だったのだな」
アマンダの父、マティアス・エイルトヴァーラは娘の姿を見てとても驚いていた。
そりゃそうかもしれない。
何しろ、白鳥亭の艶やかな名物女将姿から冒険者バージョンの地味な革鎧に身を包んでいるのだから。
あんぐり口を開けたままの父へ、アマンダは言う。
「お父様……私、また冒険者に戻る事にしたのですわ」
「クリスから聞いたよ。お前が人間のクランに登録したって聞いた。確か……」
アマンダパパが親しげにクリスと呼ぶのは彼の妹で冒険者ギルドマスターのクリスティーナ・エイルトヴァーラであろう。
自分とは関係ないと、つれない素振りを見せた彼女だが……
アマンダを溺愛するこのイケメンパパにはきっちり連絡を入れたようだ。
「そのクランなら、きっとバトルブローカーですよ、お義父さん」
「そうそう、確かそのクランだ。な! お、お、お義父さんって!? お前は一体誰だ!?」
訝しげに俺を睨む、マティアス。
どうやらクリスティーナさんは俺とアマンダが結婚した事は告げていないらしい。
だから俺は堂々と返事をした。
「貴方の息子ですよ、お義父さん」
自分の息子と言われたマティアスはまだ「はぁ?」という顔で俺を見つめる。
「わ、私の息子はアウグストだけだ。何故人間などが私の?」
合点がいかないようなので、俺はアマンダを呼ぶ
「アマンダ、おいで!」
「はいっ!」
元気よく返事をしたアマンダは「ぴたっ」と俺にくっついた。
顔を見れば、完全に甘えん坊状態となっている。
「こういう事です」
「え?」
呆然とするマティアスに対して俺は追い討ちを掛けた。
「クリスティーナさんから聞いていませんか? 私がこの度アマンダさんの夫になったトール・ユーキです」
「こ、こ、こんな人間の男が!? ほ、本当か!? アマンダ!」
ここで『こんな男』呼ばわりされて俺よりも嫁ズの怒りに火がついたようだ。
中でも一番怒り心頭で容赦ない言葉を投げつけたのがイザベラである。
さすが悪魔王女だ。
「何だよ、おっさん! 私達のトールのどこがいけないのさ? 文句あるんだったらぶち殺すよ」
「そうそう、いきなりこんな男と呼ぶなんて失礼だよ」
「アールヴの貴族だか、何だか知らぬが、妾の前で余り威張らぬ事だぞよ」
「う、うううう……」
イザベラの啖呵に吃驚したマティアスはジュリアとソフィアにも散々突っ込まれて、たじたじだ。
「うふふふふ」
俺達とマティアスのやりとりを見ていたアマンダが我慢出来ないといった感じで、とうとう笑い出した。
それもいつもの奥ゆかしいアマンダらしくなく、口を大きく開けて思いっきり笑っている。
マティアスはアマンダの魂からの笑顔を見て気が抜けたようだ。
少なくとも彼女が自分から俺の嫁になったのだと認識したに違いない。
「はぁ~あ」
マティアスはもう一回俺の顔をまじまじと見つめた後、大きな溜息を吐いてがっくりと項垂れたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「で、ではこの男は間違いなく螺旋様の使徒なのだな」
「そうよ、お父様。私はスパイラル様の啓示でこの方の妻となるように命じられたの」
神の啓示がきっかけで、俺とアマンダが結婚した経緯を聞いたマティアス。
しかしにわかには信じられないようで、嘆く、嘆く。
「おお、アマンダ! これは悲劇だ! 崇高なる神の啓示とはいえ、何て不幸な! このような貧相な男の……」
「ああ、お父様。それ以上仰ると……」
また俺の事をとやかく言いそうになったマティアス。
さっきは許した俺の嫁ズも今度は容赦しないだろう。
そのような事態を察知してか、アマンダがそっと父親を止めた。
まあマティアスが嘆くのも分からなくもない。
俺だって嫁ズとの間に超可愛い女の子が生まれたとする。
絶対に蝶よ、花よと溺愛して育てるだろう。
それが成人して俺みたいな男を、「パパ、私の彼氏で~す」なんて連れて来たら……
絶対に許さないだろう。
容赦なく瞬殺する。
「はぁあ……」
アマンダに愚痴を止められたマティアスはまた大きく溜息を吐く。
何だか俺迄気分が暗くなる。
溜息つかないでよ。
俺、何か極悪人みたいな気分になって来たからさ。
やがてマティアスは覚悟を決めたような表情で俺を睨む。
「話がある……」
「は!?」
「貴様に話があると言ったのだ」
「待って! あたし達も同席します!」
ジュリアが手を挙げて飛び込んで来ると、イザベラ、ソフィアも続き、最後にはアマンダも滑り込んだ。
嫁ズはアマンダ以外、厳しい表情である。
普通に戦えば、かなり強いであろうアマンダパパ、マティアスではあったが、俺でもびびる嫁ズの剣幕にさっきから押されっ放し。
俺は仕方なくマティアスを部屋に誘う。
「じゃあ、お義父さん。よかったら俺達が泊まっている部屋へ行きましょうか?」
「お義父さん、言うな!」
マティアスは、相変わらず俺にだけは強気だ。
――10分後
俺と嫁ズは白鳥亭の部屋でアマンダの父親マティアス・エイルトヴァーラと対峙している。
「で、話と言うのは何ですか、お義父さん」
お義父さんと言われてぴくりと身体を震わせるマティアス。
良く見ると、怒りでこめかみに青筋が立っている。
ははは!
さすがに、もう彼を「いじる」のはやめておこう……
マティアスは再度俺を睨んだ後、単刀直入に要件を切り出して来た。
「話というのは他でもない! こうなったら貴様に私の娘フレデリカを連れ戻しに行って欲しいのだ」
やはり、そうか!
俺は辛そうに顔を歪めるマティアスを、じっと見つめていたのであった。
いよいよ俺達、クランバトルブローカーは出発する。
行き先は旧ガルドルド魔法帝国の秘密が眠る失われた地……『ペルデレ』である
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訪れたのはアールヴの男性である。
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顔は鼻筋の通った端正な顔立ちで、瞳は深い灰色。
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まるで某超有名ファンタジー映画から抜け出して来た容姿。
役を演じた某カリスマハリウッド男優以上のイケメンと言い切っても、全然間違いではない。
そして顔付きには、どこか見覚えがある。
もしかして……
「お、お父様!」
男性を見た我が嫁アマンダが、大声で叫ぶ。
やはり、俺が思った通り『アマンダパパ』だ。
「ア、アマンダ! やはり、その恰好は……私が聞いた噂話は本当だったのだな」
アマンダの父、マティアス・エイルトヴァーラは娘の姿を見てとても驚いていた。
そりゃそうかもしれない。
何しろ、白鳥亭の艶やかな名物女将姿から冒険者バージョンの地味な革鎧に身を包んでいるのだから。
あんぐり口を開けたままの父へ、アマンダは言う。
「お父様……私、また冒険者に戻る事にしたのですわ」
「クリスから聞いたよ。お前が人間のクランに登録したって聞いた。確か……」
アマンダパパが親しげにクリスと呼ぶのは彼の妹で冒険者ギルドマスターのクリスティーナ・エイルトヴァーラであろう。
自分とは関係ないと、つれない素振りを見せた彼女だが……
アマンダを溺愛するこのイケメンパパにはきっちり連絡を入れたようだ。
「そのクランなら、きっとバトルブローカーですよ、お義父さん」
「そうそう、確かそのクランだ。な! お、お、お義父さんって!? お前は一体誰だ!?」
訝しげに俺を睨む、マティアス。
どうやらクリスティーナさんは俺とアマンダが結婚した事は告げていないらしい。
だから俺は堂々と返事をした。
「貴方の息子ですよ、お義父さん」
自分の息子と言われたマティアスはまだ「はぁ?」という顔で俺を見つめる。
「わ、私の息子はアウグストだけだ。何故人間などが私の?」
合点がいかないようなので、俺はアマンダを呼ぶ
「アマンダ、おいで!」
「はいっ!」
元気よく返事をしたアマンダは「ぴたっ」と俺にくっついた。
顔を見れば、完全に甘えん坊状態となっている。
「こういう事です」
「え?」
呆然とするマティアスに対して俺は追い討ちを掛けた。
「クリスティーナさんから聞いていませんか? 私がこの度アマンダさんの夫になったトール・ユーキです」
「こ、こ、こんな人間の男が!? ほ、本当か!? アマンダ!」
ここで『こんな男』呼ばわりされて俺よりも嫁ズの怒りに火がついたようだ。
中でも一番怒り心頭で容赦ない言葉を投げつけたのがイザベラである。
さすが悪魔王女だ。
「何だよ、おっさん! 私達のトールのどこがいけないのさ? 文句あるんだったらぶち殺すよ」
「そうそう、いきなりこんな男と呼ぶなんて失礼だよ」
「アールヴの貴族だか、何だか知らぬが、妾の前で余り威張らぬ事だぞよ」
「う、うううう……」
イザベラの啖呵に吃驚したマティアスはジュリアとソフィアにも散々突っ込まれて、たじたじだ。
「うふふふふ」
俺達とマティアスのやりとりを見ていたアマンダが我慢出来ないといった感じで、とうとう笑い出した。
それもいつもの奥ゆかしいアマンダらしくなく、口を大きく開けて思いっきり笑っている。
マティアスはアマンダの魂からの笑顔を見て気が抜けたようだ。
少なくとも彼女が自分から俺の嫁になったのだと認識したに違いない。
「はぁ~あ」
マティアスはもう一回俺の顔をまじまじと見つめた後、大きな溜息を吐いてがっくりと項垂れたのである。
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神の啓示がきっかけで、俺とアマンダが結婚した経緯を聞いたマティアス。
しかしにわかには信じられないようで、嘆く、嘆く。
「おお、アマンダ! これは悲劇だ! 崇高なる神の啓示とはいえ、何て不幸な! このような貧相な男の……」
「ああ、お父様。それ以上仰ると……」
また俺の事をとやかく言いそうになったマティアス。
さっきは許した俺の嫁ズも今度は容赦しないだろう。
そのような事態を察知してか、アマンダがそっと父親を止めた。
まあマティアスが嘆くのも分からなくもない。
俺だって嫁ズとの間に超可愛い女の子が生まれたとする。
絶対に蝶よ、花よと溺愛して育てるだろう。
それが成人して俺みたいな男を、「パパ、私の彼氏で~す」なんて連れて来たら……
絶対に許さないだろう。
容赦なく瞬殺する。
「はぁあ……」
アマンダに愚痴を止められたマティアスはまた大きく溜息を吐く。
何だか俺迄気分が暗くなる。
溜息つかないでよ。
俺、何か極悪人みたいな気分になって来たからさ。
やがてマティアスは覚悟を決めたような表情で俺を睨む。
「話がある……」
「は!?」
「貴様に話があると言ったのだ」
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ジュリアが手を挙げて飛び込んで来ると、イザベラ、ソフィアも続き、最後にはアマンダも滑り込んだ。
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マティアスは、相変わらず俺にだけは強気だ。
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「で、話と言うのは何ですか、お義父さん」
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良く見ると、怒りでこめかみに青筋が立っている。
ははは!
さすがに、もう彼を「いじる」のはやめておこう……
マティアスは再度俺を睨んだ後、単刀直入に要件を切り出して来た。
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