真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
129 / 205

第129話「アールヴの美少女」

しおりを挟む
 俺達クラン、バトルブローカーはこれから失われた地と呼ばれるペルデレを攻略し、ソフィアの為にガルドルド魔法帝国の秘密をゲットしなくてはならない。
 
 だが、それだけではない。
 
 悪魔王国から依頼されたミッションとして、アールヴの街ベルカナにおける商取引的なルート作りも必要だ。
 色々活動するに当たって、まず宿を決めねば。
 だが、クランのメンバーもヴォラクもこの街は初めてで心当りが全く無い。

 そこで俺達はアールヴの入場管理官ローペが教えてくれた『白鳥亭』へ行って見る事にした。
 門から街中に入ると俺達の目の前に綺麗な石畳で舗装された大きい道があり、その遥か先に中央広場がある。
 どうやら今迄見た街同様に、中央広場から放射線状に道が延びているようだ。

 ううむ……
 俺が行く街、行く街、どうして同じ様な構造なの?
 これも俺の影響?
 と思ったら、この街は隣国にある人間族の国、ロドニアの王都ロフスキを模して造られたらしい。
 という事はロフスキにも俺の中二病的な影響が出ているのか?
 
 ああ、もう!
 何が何だか、わけが分からなくなって来た。

 街の様子を見ると……
 やはり為政者である白のアールヴことリョースアールヴ族が目立つ。
 街角に警備中の革鎧を纏った美形の衛兵が結構居るのだ。
 
 しかし!
 
 いくら恰好良くても男はどうでも良い。
 俺がチェックしたのは当然、女だけ!
 こんな美女が街中に居たら雰囲気は当然華やぎ、気分も著しく高揚する。
 とっても、幸せになれる。

 アールヴ、すなわちエルフ美女が満ち溢れる街……
 もろに俺の大好きな中二病的光景である。
 
 ただ基本的にアールヴ族は非常に排他的。
 なので、いきなりナンパしてもまず振られるのがオチだという。
 そもそも俺には今、ふたりも可愛い嫁が居るからナンパなどする気は無い。
 それに目の前でそんな暴挙をしたら、俺を待つのは確実に死《デス》。

 いかん!
 そんな妄想より、とりあえず『白鳥亭』に向わねば!

 俺は目の前に居たアールヴ女性の衛兵に『白鳥亭』に行く道を尋ねてみた。
 このような時は情報を得た者の名前を出した方が良いという場合もある。
 俺達が同族の入場管理官ローペに教えて貰ったと伝えると美しい彼女は相好を崩す。

「それは、それは! その者の性格は良く知っております。彼が白鳥亭を紹介するとは貴方がたを余程気に入ったのでしょう。道順はこうです」

 超絶美形アールヴさんは懇切丁寧に教えてくれた。
 俺の近くに来て教えてくれたので、彼女のかぐわかしい香りをつい思いっきり嗅いでしまう。
 
 ああ、堪らない!
 と、思ったその時。
 俺に向かって、とてつもない殺気が放たれたのである。

 え!?
 何だ? こ、これは!?

 俺が恐る恐る殺気のした方向を見ると……嫁ズが凄い形相で睨んでいた。
 ジュリア、イザベラ、そして何と! ソフィアまでもだ。
 悪魔ヴォラクは怖れを為して、とっくにこの場から逃げている。
 そして物陰から怖ろしそうに、こちらをうかがっていた。

 こんな時は下手に言い訳しない方が良い。
 俺は意味も無く「にこっ」と笑い、さらっと言った。

「じゃあ行こうか」

「「「…………」」」

 返事は……無し。

 重いな~、この沈黙!
 まあ、仕方無い。
 たかが道を聞いただけで、いちいち殺されそうになっていたらきりがない。

 俺は素知らぬ顔をして出発したのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 暫し歩いた俺達は既に中央広場へ到達していた。
 
 目指す『白鳥亭』は中央広場を経由して延びている他の道路の道沿いにあるという。
 今度は嫁ズから殺気を放たれないように『男のアールヴ衛兵』に聞きながら、進んで行く。
 
 あ~あ、つまんねぇ!
 どうせなら、アールヴ美女と話したいのに……

 すると何かあったのだろうか?
 中央広場の一画で何か人だかりがしているのが見えたのである。

「何だろう?」

 こんな場合は「ちらっ」とでも見てみたくなる野次馬根性を持つのが人間である。

『僕もあるよ、そ~いう野次馬根性! 楽しいよね!』

 え!?
 また、こいつか!
 絶対に見に行くの、やめておこう!
 この御方が絡むと碌な事にならんわ!

 いきなり、俺のこころに話し掛けて来た邪神様、それも久々の登場。
 俺には嫌な予感しかしないので、さっさと踵を返そうとした。

『ま~ま~、そんな事言わないでさぁ、ちょっと見ていこうよ』

 うわ!
 身体の自由が利かない!
 こ、こいつ!
 
『い~じゃん、面白いよぉ~』

 俺は無理矢理身体の自由を奪われ、そのまま邪神様に連れて行かれる。
 嫁ズは自由の利かない俺の後ろを、不思議そうについて来た。

 そして……
 俺は恐る恐る人混みを掻き分けて覗いて見る。

「き、きゃ~、だ、誰かぁ、た、す、け、て~。この人達、けだものよ~、い、いいえ、まるで悪魔なのよぉ~」

 何だ?
 このド下手な、素人棒読み台詞セリフは?

 さりげなく見てみると、声の主はアールヴの美しい少女であった。
 金髪で長髪。
 深みのある菫色の瞳を持つ整った憂い顔。
 綺麗な緑色の革鎧を纏って、腰にはショートソードを提げていたが、剣は何故か抜いていない。

 何だ、この娘……結構強いや。
 助けを求めているけど……完全な嘘。
 
 俺の持った第一印象は、見かけの美しさによらない少女の強さである。
 一見爽やかだが、鋭い魔力波オーラを読んでの事なのだ。

 アールヴの美少女に相対するは、人間族の冒険者といった出で立ちの若い男3人。
 見かけは派手な黄色の鋲だらけの革鎧。
 ごついロングソードを腰から提げているが、放つ魔力波の力は低く、所詮、こけおどし。
 何だよ、恰好だけのカブキ者かよ、お前ら?
 
 俺は失笑しそうになった。
 こいつら、実力は少女よりずっと低そうだ。
 でも気になった。
 何故、群集が少女を助けようとしないのか。

 あのアールヴの娘。
 強そうなのは分るけど、衛兵も含めて誰も助けないのかな?

 俺は、傍らに居る人間族のおっさんに聞いてみる。
 しかしおっさんは、俺の問いに対して何も答えない。
 うんざりしたような顔付きで、首を横に振っただけである。

 ほら、やっぱり何かある。
 危険な予感が一杯だ。

 その瞬間、何故かアールヴの美少女が俺を見た。
 何の予告も前振りも無しに、俺の顔をまじまじと見たのである。

 そしてまともに目が合った!
 ヤバイ。
 これって最初に、イザベラに会った時の何か嫌な感じと一緒だ。
 
 俺は本能的に人混みから抜けようとした。
 幸いな事に『邪神様』から受けた呪縛は解かれている。

「皆、行くぞ!」

 俺はジュリア達に声を掛けると、踵を返して走り出す。

「こらぁ、そこの人間! ちょっと待てぇ~」

 背後から独特な節回しの声が追って来た。 
 しかし、「はい、分かりましたぁ」と待つわけがない。

 俺はアールヴ美少女の声を無視して、人混みからとっとと抜けたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

同級生の女の子を交通事故から庇って異世界転生したけどその子と会えるようです

砂糖琉
ファンタジー
俺は楽しみにしていることがあった。 それはある人と話すことだ。 「おはよう、優翔くん」 「おはよう、涼香さん」 「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」 「昨日ちょっと寝れなくてさ」 「何かあったら私に相談してね?」 「うん、絶対する」 この時間がずっと続けばいいと思った。 だけどそれが続くことはなかった。 ある日、学校の行き道で彼女を見つける。 見ていると横からトラックが走ってくる。 俺はそれを見た瞬間に走り出した。 大切な人を守れるなら後悔などない。 神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...