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第114話「うまい話には裏がある」
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イザベラの姉レイラの結婚式が終わった翌朝……
俺とイザベラは、彼女の父である悪魔王アルフレードルに呼ばれて、王宮へ伺候した。
「よくぞ、来た。我が息子に我が娘よ」
我が息子に我が娘?
その呼び方って、この親爺に認めて貰ったって事か?
この俺が……息子か。
良いのか、悪いのか、色々な意味で微妙だが……
「この前の話通り、余から仕事を発注しよう」
「仕事?」
「うむ、我が悪魔王国ディアボルスが他国に誇れるような宝物を購入せよ、但し予算は金貨100万枚、報酬は別途支払うが、購入金額の2割とする」
おおっ、すげぇ!
金貨100万枚って事は、ざっと予算100億円!?
で、最大利益が20億円!?
これはグレイトオファーだ!
期限等何か条件はあるのだろうか?
「期限は本日より1年以内、更にオプションとして当該の宝物が、我が王国に貢献すれば、別に金貨10万枚の褒美を取らそう」
我が王国に貢献?
それって経済的な貢献?
好感度上昇に貢献?
って、方法は?
「任せる……自由でよい。その代わり両方とも余が認めた場合に限る」
そうか……
でもさ、これって話がうますぎる。
……このような場合は契約条件の確認だな。
悪魔は人間を陥れるのが大好きだが、契約自体はきちっとするからな。
なので、俺から質問。
「万が一、貴方に価値が認められなかったり、定められた期間内にお宝自体が見付からなかったりした場合はどうなるのですか?」
「契約不履行で『死』……だ。正確に言えばお前の魂を喰らわせて貰う。神の使徒の魂を一度くらいは食してみたいと考えていたからな」
「お父様!」
とんでもない条件提示に、イザベラの非難の声が飛ぶ。
しかし、アルフレードルはしれっとして意に介していない。
だけど……何じゃあ、そりゃ!
ハイリターンだが、超が付くハイリスク過ぎる。
こんな無謀な仕事は受けられる訳がない。
俺は、きっぱり断る事にした。
「ペナルティが『死』なら謹んでお断りします!」
「我が依頼……いや命令を断るなど許さぬ!」
受けませんという俺の返事に、アルフレードルは不機嫌さを隠そうとしない。
露骨な感じで、眉間に皺を寄せた。
同時に、禍々しい瘴気と負の魔力波が押し寄せる。
かつて冒険者ギルドで感じたイザベラの比ではない。
さすがパパの悪魔王。
だが俺は今度ばかりは怯まなかった。
「どうしても受けろ! というのなら仕方がありません、戦います」
「何!」
「今ここで貴方と本気で戦います。俺には家族との先約がいくつかある。それを先に果たさないといけませんから」
「むう! では金は要らぬのか? お前は人間らしくない欲の無さだな。普通の人間ならこれほどの金を提示すれば、魂と引き換えに金を取るぞ」
はあ?
普通の人間ってどんなんだ?
俺なら金より命の方が全然大事。
20億の金が絶対手に入るならともかく。
それとも……
確実な死と引き換えでも、20億もの大金の前ではつい人生を賭けたくなるのだろうか?
俺は呆れて、「はぁ」と息を吐く。
そんな俺を、不思議そうに見るアルフレードル。
何か思いついたのだろうか、「はた」と手を叩いた。
今度は恫喝ではなく、トーンを落として俺を説得にかかる。
「ならば、ふたつ譲歩してやる。余の判断基準を緩くしてやる。それとお前に考えられないくらいの快楽も与えようぞ……人間族の絶世の美女数人と五感に染み渡る快楽もつけてやろう!」
判断基準を緩く?
それと、美女数人に五感に染み渡る快楽?
あの手この手……凄いな、この親爺は……
「お父様ぁ! いい加減にして下さい!」
イザベラの金切り声が響く中、アルフレードルは「にやにや」笑っている。
さすが、百戦錬磨の悪魔王だ。
剛だけで押して来ない。
柔の物言いも中々だ。
普通の人間なら直ぐ飛びつくだろう。
……だけど、これって考えたらすぐヤバイと分かる話だ。
20億は魅力だけど、成約条件がこの親爺が「気に入ったなら」なんて曖昧な基準じゃあ危なくて仕方がない。
判断基準を緩く?
そんなの、後でどうとでも言える。
なので、俺は再度、言い放った。
「俺はイザベラを始めとした家族を置いて、簡単には死ねませんのでね。やはりお断りします」
「むむむ!」
「その代わり商人としてこのディアボルスに貢献させて貰いますよ」
さあ、果たしてどうなるのか?
俺は答えを待った。
すると俺の強硬な主張に対して、アルフレードルは拍子抜けするくらいにあっさりとオファーを取り下げたのである。
「ふふふ、分かった……では今の話はナシだ。代わりにお前達へ期待して先行投資しよう。無利子・無期限・ペナルティ無しで返してくれれば良い。金額は金貨5万枚だ」
ええっ!?
無利子・無期限・ペナ無しで5億円も貸してくれるの?
これならば凄く美味しい!
イザベラを見たが、笑顔で頷いているので、こちらの話は信じてよさそうだ。
なので、俺は遠慮なく受ける事にした。
口頭での話なので後で「言った、言わない」が怖いが、イザベラも一緒に聞いているから問題は無いだろう。
俺は素直に礼を言った。
「ありがとうございます、ちゃんと契約書も発行して下さい」
「契約書? 良いだろう」
そうそう、好条件だからこそ、絶対に口約束はなし。
後で誤解や行き違いの原因になる。
あ、そうだ!
「契約書の片隅に、気付かないよう小さく書くのも無しですよ。但し例外ありとか、俺の魂が担保で引き換えとか」
「分かっておる! それとこれをやろう」
おお、更に何か良いものをくれるのだろうか?
どうやら書面……のようだ。
俺は渡された書面の表書きを見たのであった。
俺とイザベラは、彼女の父である悪魔王アルフレードルに呼ばれて、王宮へ伺候した。
「よくぞ、来た。我が息子に我が娘よ」
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その呼び方って、この親爺に認めて貰ったって事か?
この俺が……息子か。
良いのか、悪いのか、色々な意味で微妙だが……
「この前の話通り、余から仕事を発注しよう」
「仕事?」
「うむ、我が悪魔王国ディアボルスが他国に誇れるような宝物を購入せよ、但し予算は金貨100万枚、報酬は別途支払うが、購入金額の2割とする」
おおっ、すげぇ!
金貨100万枚って事は、ざっと予算100億円!?
で、最大利益が20億円!?
これはグレイトオファーだ!
期限等何か条件はあるのだろうか?
「期限は本日より1年以内、更にオプションとして当該の宝物が、我が王国に貢献すれば、別に金貨10万枚の褒美を取らそう」
我が王国に貢献?
それって経済的な貢献?
好感度上昇に貢献?
って、方法は?
「任せる……自由でよい。その代わり両方とも余が認めた場合に限る」
そうか……
でもさ、これって話がうますぎる。
……このような場合は契約条件の確認だな。
悪魔は人間を陥れるのが大好きだが、契約自体はきちっとするからな。
なので、俺から質問。
「万が一、貴方に価値が認められなかったり、定められた期間内にお宝自体が見付からなかったりした場合はどうなるのですか?」
「契約不履行で『死』……だ。正確に言えばお前の魂を喰らわせて貰う。神の使徒の魂を一度くらいは食してみたいと考えていたからな」
「お父様!」
とんでもない条件提示に、イザベラの非難の声が飛ぶ。
しかし、アルフレードルはしれっとして意に介していない。
だけど……何じゃあ、そりゃ!
ハイリターンだが、超が付くハイリスク過ぎる。
こんな無謀な仕事は受けられる訳がない。
俺は、きっぱり断る事にした。
「ペナルティが『死』なら謹んでお断りします!」
「我が依頼……いや命令を断るなど許さぬ!」
受けませんという俺の返事に、アルフレードルは不機嫌さを隠そうとしない。
露骨な感じで、眉間に皺を寄せた。
同時に、禍々しい瘴気と負の魔力波が押し寄せる。
かつて冒険者ギルドで感じたイザベラの比ではない。
さすがパパの悪魔王。
だが俺は今度ばかりは怯まなかった。
「どうしても受けろ! というのなら仕方がありません、戦います」
「何!」
「今ここで貴方と本気で戦います。俺には家族との先約がいくつかある。それを先に果たさないといけませんから」
「むう! では金は要らぬのか? お前は人間らしくない欲の無さだな。普通の人間ならこれほどの金を提示すれば、魂と引き換えに金を取るぞ」
はあ?
普通の人間ってどんなんだ?
俺なら金より命の方が全然大事。
20億の金が絶対手に入るならともかく。
それとも……
確実な死と引き換えでも、20億もの大金の前ではつい人生を賭けたくなるのだろうか?
俺は呆れて、「はぁ」と息を吐く。
そんな俺を、不思議そうに見るアルフレードル。
何か思いついたのだろうか、「はた」と手を叩いた。
今度は恫喝ではなく、トーンを落として俺を説得にかかる。
「ならば、ふたつ譲歩してやる。余の判断基準を緩くしてやる。それとお前に考えられないくらいの快楽も与えようぞ……人間族の絶世の美女数人と五感に染み渡る快楽もつけてやろう!」
判断基準を緩く?
それと、美女数人に五感に染み渡る快楽?
あの手この手……凄いな、この親爺は……
「お父様ぁ! いい加減にして下さい!」
イザベラの金切り声が響く中、アルフレードルは「にやにや」笑っている。
さすが、百戦錬磨の悪魔王だ。
剛だけで押して来ない。
柔の物言いも中々だ。
普通の人間なら直ぐ飛びつくだろう。
……だけど、これって考えたらすぐヤバイと分かる話だ。
20億は魅力だけど、成約条件がこの親爺が「気に入ったなら」なんて曖昧な基準じゃあ危なくて仕方がない。
判断基準を緩く?
そんなの、後でどうとでも言える。
なので、俺は再度、言い放った。
「俺はイザベラを始めとした家族を置いて、簡単には死ねませんのでね。やはりお断りします」
「むむむ!」
「その代わり商人としてこのディアボルスに貢献させて貰いますよ」
さあ、果たしてどうなるのか?
俺は答えを待った。
すると俺の強硬な主張に対して、アルフレードルは拍子抜けするくらいにあっさりとオファーを取り下げたのである。
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ええっ!?
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俺は素直に礼を言った。
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あ、そうだ!
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「分かっておる! それとこれをやろう」
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