真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
111 / 205

第111話「妻として」

しおりを挟む
 イザベラが得意の爆炎魔法を容赦なく連発させたので、エリゴス麾下の王家親衛隊は大混乱に陥った。
 
 はっきり言って、奴等は俺達の事を舐め切っていたに違いない。
 魔法攻撃を受ける事を想定していなかったようなのだ。
 無防備な態勢で上位級の攻撃魔法をまともに受けては堪ったものではない。
 左翼からはソフィアが制御する、滅ぼす者デストロイヤーの試作機が突っ込み、悪魔騎士達をなぎ倒すと混乱の度合いは一気に加速する。

「ええい! 隊列を立て直せ! 盾役の戦鬼アモンさえ討ち取れば、後は烏合の衆だ! 大勢で一気に正面から突っ込め!」

 どうやらエリゴスの奴は俺を完全無視。
 邪神様の使徒であると名乗りをあげたのに、全く信用していないらしい。
 イザベラに対しては能力を認めても、箱入り娘で戦闘慣れしていないから大丈夫と踏んだようだ。

 えっと仲間達の状況は?

 アモンはイザベラの目前に立ち、完全に盾役に徹している。
 ソフィアは試作機を操りながら、何と魔法障壁を張り巡らしている。
 一度に2つ以上の魔法を発動させるとは、やはりソフィアは魔法の天才なのだ。
 ソフィアの傍らに居るジュリアは、強力な魔法障壁に守られて戦況を見つめていた。

「トール! もう一発、爆炎行くよ~!」

 イザベラの大声が響く。
 同時に爆炎の魔法が左翼に炸裂し、試作機も左翼から敵を崩しているので相手の目線はそちらに行っている。

 丁度、右翼はがら空き。
 よっし!
 ここは絶好のチャンス!
 俺が狙うのは、大将のエリゴス、ただ一騎!

 総大将を倒せば、軍の戦意は一気に落ちる。
 迷宮で戦ったゴッドハルトの時と同じだと俺は考えた。
 手薄になった右翼を、一気に突いた俺。
 しかし馬上の騎士自体を敢えて狙わなかった。
 
 このような場合は相手より図体の大きい馬を狙う方が効果的だから。
 俺は的にした騎士達の馬を切り裂きながら一気にエリゴスに迫った。
 馬とはいえ、魔界の馬なので神力ゴッドオーラを僅かに込めた俺の剣で呆気なく絶命する。
 騎乗馬を殺され、あえなく地に落ちたエリゴス麾下の騎士達は俺に対してすぐ反撃など出来ない。

 護衛を掃討され、無防備になったエリゴスに肉薄する。
 俺は、まず奴の馬を倒し落馬させた。
 落馬したエリゴスは虚を衝かれた事に、呆然としている。
 はっきりいって奴は俺の攻撃速度に全くついていけない。

「エリゴス、覚悟!」

 基本的に悪魔は死なないという。
 だがエリゴス達の乗る悪魔の馬が死んだように、彼等にとって俺が放つ神力はある意味天敵のような破邪の力だ。
 多分、神力は悪魔族の魂を容易に破壊してしまうのだろう。
 悪魔族が神力を使うスパイラルの軍勢に全く歯が立たなかったのも頷けるのだ。
 
 その時である。
 
 俺の心に聞き覚えの無い声が響いたのだ。
 何だ、いきなり。
 これ、念話?
 
 気取ったプライドの高そうな男の声である。

『おい、待て! 停戦する! エリゴスを殺すな!』

 緊急の念話らしい。
 この場の全員に聞えたようだ。

いな、宰相! 我輩は人間などには絶対に降伏せぬぞ!」

 座り込んで、刃を向けられたエリゴスは呼びかけられた声に抗う。
 どうやら彼の上席らしいが、悪魔騎士の誇りとやらが敗北を良しとしなかったのだ。
 
 エリゴスは刃を突きつけた俺を睨みつけると、観念したように叫ぶ。

「我輩を殺せ! 汚らわしい人間め、ひと思いにな。それが我輩の騎士としての矜持だ!」

 俺はエリゴスをスルーして、宰相と呼ばれた声の主に返事をした

『おい! 宰相とやら、姿を現せ! こちらに来てお前がエリゴスの代わりに人質になるんだ!』

 しかし宰相と呼ばれた男は、少し待っても現れない。
 状況を察して、すかさずイザベラのフォローの念話が俺に入る。

『さっき念話で叫んだ奴は悪魔王国宰相のベリアルだよ、相当にしたたかな悪魔だから気をつけて!』

 悪魔王国宰相のベリアル?
 以前に俺の読んだ資料書にあった、超が付くほど有名な悪魔の名前だ。

 かつては天の御使いとして誕生。
 地に堕ちても、強大な魔力と弁舌で力を振るったという大悪魔である。
 名前からして、狡猾でしたたかな奴なのは間違いがない。
 そこで先手を打つ事にした。
 
 俺は念話でイザベラに呼び掛けたのである。

『イザベラ、もしかしてお前の念話で、ここから両親や姉へ呼び掛けられるか?』

『え!? で、出来るけど……な、何故? あ!』

 イザベラは勘が鋭く、聡明な女。
 俺の申し入れの意味に、すぐ気付いたようである。

『ベリアルが全く信用出来ない男なら、ここでしっかり保険を掛けておこう。直接、お前の両親と姉へ、これから出向くと伝えるんだ。出来ればここまで迎えに来て貰え。そうなればベリアルも簡単に俺達を謀殺出来ない筈だからな』

『な、成る程!』

 イザベラは俺の言葉に納得すると同時に、両親と姉宛に念話を開始した。
 無論、ベリアルにも聞えるようにだ。

『父上! 母上! 姉上! 只今帰りました。 とても遅くなりましたが、姉上の輿入れの為に必要なオリハルコンのレシピと材料を持ち帰りましたよ。ちなみにこの重要アイテムを得る事が出来たのは私の夫であるトール・ユーキ及び家族達の多大なる協力によるものです。その中には当然、アモンも含まれています!』

 イザベラの家族への呼掛け。
 対して、宰相ベリアルが動揺するのが彼の発する魔力波《オーラ》によって、はっきり伝わって来た。
 もし、この動揺さえも『擬態』であれば、ベリアルはとてつもない策士であろう。

『イザベラ!』

 突如、重々しい声が響く。
 俺の魂にも「ずっしり」と響くような声だ。
 
 もしかして……お父さん?

『イザベラ、無事で何よりだな……お前の、その様子だとやはり下々の報告が違っているようだ……そこな人間よ、お前にも我が声が聞えているだろう。余がイザベラの父、悪魔王アルフレードルである』

 やっぱりそうか、お父様だ!
 じゃあイザベラ、次のお願いだぞ。

『父上、我々はそちらが無理をしなければ抵抗しません。というよりは我が夫トールは強者です。エリゴスやフルカスを一蹴したのですから……それにそもそも彼は私を力で打ち負かし、荒々しくも優しく抱いて女にしたのです』

 はぁ!?
 私を力で打ち負かし、荒々しくも優しく抱いたぁ!?
 おおお、『女』にしたぁ!?
 おい! 違うだろ!
 まるで俺がケダモノになって、無理矢理Hしたみたいじゃないか!

 しかし、ここでも悪魔の倫理が炸裂した。

『ふむ……お前のような剛毅な娘を無理矢理抱いて惚れさせたか……大したものだ』

 ええっ!?
 イザベラぁ!
 俺、お前を力で抱いた事になっちゃった?
 しかも、それが大したものだって……何!?
 悪魔王、却って嬉しそうにしてるじゃないか!
 
『父上! トールは強い男です! アモンも正々堂々と戦って打ち負かしたわ! だから彼はこの通り、トールに付き従っているのよ』

 イザベラの念話が飛ぶとアモンは黙って一礼した。
 これは彼が今の話を肯定するといった意思表示であろう。
 イザベラは更に要求を続けた。

『父上、宜しければ私達が居るこの場所までお迎えに来て頂けますか……ここまで私達が理不尽に受けた仕打ちを考えると、それくらいして頂いても良いと思いますが……』

 イザベラがそういうと、一瞬の間を置いて豪快な笑い声が響き渡った。

 『ははははははは! 面白い! イザベラ、お前はもうその人間の妻として堂々と振るまっておるのだな』

『はい! 貴方の娘イザベラはもうトール・ユーキの妻ですので』

 父親の指摘に対して、イザベラは間を置かずにきっぱり言い切ったのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...