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第108話「悪魔騎士との対決」

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 俺が察知した不穏な気配…… 

 これは……この禍々まがまがしい大量の気配は……
 おびただしい悪魔の軍団。
 すっげぇ数だ。

 俺の目が、『関所』前に整列する悪魔の一隊を捉えた。
 真ん中に将校らしい悪魔が、腕組みをして仁王立ちをしている。
 アモンほど魔力波オーラは強くはないが、結構な大物だろう。

 この先に待ち伏せがある事を告げると、アモンの顔が辛そうに歪む。
 どうやら、何かヤバイ事になりそう。
 そうこうしている間に、俺達は遂に関所の前へ到達した。

 関所の前には……やはり。
 1,000体以上の悪魔がひしめいていた。
 いわば悪魔の軍団って奴か!
 見れば、俺の知らない中小の悪魔ばかりだ。
 おぞましい光景極まりない。

 だが、不思議な事に俺はあまり恐怖を感じなかった。
 これって、改造人間のチート?
 
 俺達が少し近付くと、先程遠目から見た悪魔がしわがれた声を張り上げる。
 見た目は白髪と長いあごひげをたくわえた、老人であった。
 しかし目付きが完全に変。
 どこか明後日の方向に行ってしまっている。
 つまり、狂気の眼差しという事だ。
 
 その『老人悪魔』が吠える。

「悪魔将軍、アモン侯爵よ! そなたは事もあろうに神の使徒にあっさりと負けた挙句、婚約者のイザベラ様を奪われた……その罪、言語道断である。よって悪魔裁判に掛けられて、相当の刑を受けさせるものとする」

「…………」

「そこの神の使徒及び他2名にも告ぐ! ……イザベラ様を置いて、大人しく退けば今回だけは許してやろう。無論、オリハルコンのレシピと賢者の石は置いて行って貰う」

 どうやら俺達の今迄の行動及び結果は全てお見通しのようだが……
 何だ、それ?
 あまりにも一方的で無茶苦茶な話じゃあないか?
 
 俺は相手の悪魔の、言い方と内容に沸々と怒りが湧いて来た。

「よせ、トール……いくらお前でも相手の数が多過ぎる」

 アモンが、怒りの波動を感じたのだろう。
 いきり立つ俺を止めようとした。
 しかし俺はこの前、ゴッドハルトと戦ったタイマンの事を思い出していたのだ。
 相手の『リーダー』を潰せば、大軍相手には有利に事を進められる可能性は大きいと!

「おい、そこの糞じじい」

「何……糞じじいだと!?」

 罵倒された悪魔の顔色が変わる。
 多分、プライドの塊だろうから、怒らせて冷静さを失くす有効な『口撃』だろう。
 なので、俺は容赦なく言ってやる。

「そうだよ、糞じじい。俺に負けたアモンを偉そうに非難するのなら、この俺にタイマンで勝ってみせろ。お前が勝負を受けないのなら、逃げたとみなして、ここに居る悪魔を全てぶち殺す……俺は本気だ」

 いかにも高慢そうな老人の風貌をした悪魔は、俺の言い方に「恥をかかされた」と思ったに違いない。
 悪魔の周囲には、禍々しい瘴気が立ち昇ったのだ。
 しかし俺は既に相手を見下ろしている。
 だってこいつはアモンより弱いって事は……図式として俺、楽勝だもの。

 待てよ!
 誰かが何か言う気配がする。
 こんなふうに盛り上がった時って……
 あのお方……いきなり乱入して来るのだものなぁ……

『ははっ! あったり~! そりゃそうさ! 君がこんなに面白い事するからね! 短気で好戦的な僕の性格に染まりつつあるよぉ! やっちゃえ、やっちゃえ!』

 やっぱり出たか!
 
 でも今の俺は怒り心頭で、邪神様なんかには構っていられない。
 しかし邪神様、俺が無視するのもお見通しらしくて構わず喋り続けた。

『あらぶる闘神スパイラルの使徒、トール・ユーキってとこだね。かっけ~、でもね、ほんのちょっとは冷静になった方が良いよぉ!』

 冷静になれ!?
 今迄、散々煽っておいてそれはないでしょ!

 しかし邪神様は、俺の考えなど無視して勝手に話を進めてしまう。

『そうそう、相手は戦鬼アモンよりはだいぶ落ちるけど、仮にも悪魔の騎士だよ。今の君には奥さんがふたりと候補生もひとり居るんだからさ、それも考えて戦わないとね』

 え?
 奥さんがふたりは分かるけど、候補生って誰!?

『今の所はまだ自動人形オートマタだけどさ、本来の身体に戻れば、君のお嫁さん候補だよ』

 それって、まさかソフィアかい!
 俺は呆気に取られて、ぱっくり口を開けていた。

 邪神スパイラルとの念話は当然悪魔には聞こえない。
 俺が自分を無視しているように見えたらしく、悪魔は癇癪《かんしゃく》を起している。

「おのれ! 人間ふぜいめ! 先程、自分から決闘を申し込んでおいて何をぶつぶつ言っておる! よかろう! この勝負受けてやるわ!」

 怒りの余り、大声で叫ぶ悪魔だが、風貌が老人のせいか迫力に欠ける。
 悪いが……アモンと違って全然迫力が無い。
 油断するつもりはないが、余裕をもって対峙出来るのは嬉しい。

「儂は悪魔騎士、フルカス! ひ弱な人間のお前など我が槍の錆びにしてくれるわ!」

 お~、お~、いきり立っちゃって!
 でもフルカスも有名な悪魔だ。
 
 武器は槍?
 初めて戦う武器だ。
 振り返るとアモンが黙って頷いた。
 油断するな! という戒めだろう。
 
 俺は魔剣を抜いて正眼に構えると、対面の悪魔を思い切り睨みつけたのであった。
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