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第107話「魔界入り」
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転移門に入ってから暫くの間……
暗く長いトンネルを潜ったような感覚が続いた。
と、思っていたら視界がぱあっと開けた。
今迄イザベラの故郷である『魔界』とは一体どのような場所であろう。
常々想像して来た俺であったが、思った以上に荒涼とした風景に唖然《あぜん》とする。
何せ大きな岩ばかり。
草木も殆ど無い砂漠が続く、肌寒い雰囲気なのだ。
大きな空は雲など一切無く、濃い紫一色。
イザベラに聞いたら、今は一応昼間にあたるそうだ。
夜はやっぱり地上同様、真っ暗になるのであろうか……
以前読んだ本で、とある『詩人』が冥界を巡る有名な本があった。
大昔に書かれた古典ともいえる名作である。
ラノベとはほど遠いが、中二病の俺にとっては大好物の本であったから、何度も読み返したものだ。
今、目の前に広がる風景は荒涼としている。
その本で紹介されている冥界の風景に似ていなくもない。
邪神様は言っていた。
この世界に俺が影響を及ぼすと。
その影響とはこの『魔界』にも反映されているのであろうか?
目の前には石畳となっている、そこそこ広い幅の街道が遥か彼方の地平線まで延びていた。
俺が街道の先まで見通しているとアモンがぽつりと言う。
「この道をずっと行けば悪魔王国ディアボルス、王都のソドム……イザベラ様のお父上、悪魔王アルフレードル様がいらせられる街だ」
はぁ!?
悪魔王国ディアボルス?
って、どこかの言葉で『まま』じゃない。
ソドムはあの背徳の街、ソドムから取ったの?
そして……イザベラの父、悪魔王アルフレードルが居る……
オリハルコンの件もそうだが、着いたら大至急『挨拶』に行かないとまずい……
「このような転移門から王都への道はかつてたくさんあったが、スパイラルによる転移門破壊に伴い、殆どが封鎖された」
そりゃ、そうだろう。
こんな転移門があちこちにあったら……魔界から悪魔が容易に来れる。
それも超が付く団体様で。
そんな怖ろしい事が現実にあったのが古代の冥界大戦後の世界なのだ。
当時の人々は、さぞ怖ろしかっただろう。
でも不思議だ。
俺はイザベラにアモントップクラスの上級悪魔しか接していないが、悪魔って……
そんなに悪い奴等なんだろうか?
つらつらと俺が考えていたら、アモンが睨む。
あ! ヤバイ。
まだ説明の最中だったっけ。
「確かこの先には関所がある、そこで入国手続きをしてから王都の王宮に向かおう」
「そ、そうか。分かった」
俺が納得して頷くと、アモンはまた「待った」をかける。
「出発前に、やっておく事がある」
「?」
出発前に?
やっておく事?
果たして何だろう?
「この魔界では悪魔以外に身体が順応しない者が多々居る。その為に魔法で悪魔化して貰う。我々が人間界では身体が順応しない為に人化するのと同じだ」
へぇ!?
悪魔が人化するって、ただ人間に化けて紛れ込むだけじゃあなかったのね。
それにしても……悪魔化か……
やってみたい!
何か、小説か、ゲームの話みたいだもの。
もしかしたら、邪神様に滅法怒られそうだが。
あ、人間に戻れるのが必須条件。
ずうっと悪魔のままはイヤだ。
俺のウキウキした様子を見てアモンは、にやっと笑う。
「ふふふ、お前の考えている事などお見通しだ。必要がなければ魔法は使わないぞ!」
ああ、やっぱりお見通しか!
「ははは、ただ覚えておけよ。人化や悪魔化とは単なる変身では無い。まあ根本は変身魔法の一種ではあるが、その土地に順応するという趣旨だから、ただ化けるだけとは意味合いが全然違うのだ」
彼はそう言い放つと、直ぐに元の不機嫌そうな『怒れる悪魔アモン』の表情に戻ったのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後……
俺達は既に出発。
石畳の街道をどんどん進んで行く。
アモンが確認したところ、結局は誰も悪魔化の魔法は無用。
と、いう結果に。
結局、全員そのままで進んでいる。
今迄、一番ノーマルな人間に近かったジュリア。
竜神族の覚醒を経て、超人的な能力が身に付いた……という事らしい。
ちなみにソフィアは自動人形だから、冥界の瘴気も全然平気だそうだ。
暫く歩けど歩けど……
周囲が砂漠と岩ばかりの代わり映えしない風景で続いていた。
もう3時間は歩いているだろう。
だが覚醒したジュリアは疲れたから、負ぶってくれとは言わない。
一応心配して聞いたが、大丈夫だという。
体力がこんなにもつなんて、やっぱり竜神族に完全覚醒したんだ。
更に2時間歩いて、その先にやっと黒っぽい建物が見えて来る。
「あれが関所だ」
アモンが呟くと、俺は即座に反応した。
「関所って事は門? 冥界=魔界で、門なら……あそこにケルベロスとかオルトロスとかが居るの?」
思わず、個人的に大好きな冥界の魔獣を思い浮かべる。
ギリシア神話に登場する、テュポンとエキドナの息子で3つ首の怪物。
俺の中では強さの象徴である。
某有名ゲームのせいだが。
「ははは、トールは良く知っているな。だが残念ながら奴等はあそこには居ない。ここはイレギュラーの悪魔専門の出入り口で奴等が居るのは正門だ」
正門には居るんだ……
っていうか、実在するんだ、2頭とも。
しかし!
『関所』に近付くにつれて、不穏な気配が漂って来たのであった。
暗く長いトンネルを潜ったような感覚が続いた。
と、思っていたら視界がぱあっと開けた。
今迄イザベラの故郷である『魔界』とは一体どのような場所であろう。
常々想像して来た俺であったが、思った以上に荒涼とした風景に唖然《あぜん》とする。
何せ大きな岩ばかり。
草木も殆ど無い砂漠が続く、肌寒い雰囲気なのだ。
大きな空は雲など一切無く、濃い紫一色。
イザベラに聞いたら、今は一応昼間にあたるそうだ。
夜はやっぱり地上同様、真っ暗になるのであろうか……
以前読んだ本で、とある『詩人』が冥界を巡る有名な本があった。
大昔に書かれた古典ともいえる名作である。
ラノベとはほど遠いが、中二病の俺にとっては大好物の本であったから、何度も読み返したものだ。
今、目の前に広がる風景は荒涼としている。
その本で紹介されている冥界の風景に似ていなくもない。
邪神様は言っていた。
この世界に俺が影響を及ぼすと。
その影響とはこの『魔界』にも反映されているのであろうか?
目の前には石畳となっている、そこそこ広い幅の街道が遥か彼方の地平線まで延びていた。
俺が街道の先まで見通しているとアモンがぽつりと言う。
「この道をずっと行けば悪魔王国ディアボルス、王都のソドム……イザベラ様のお父上、悪魔王アルフレードル様がいらせられる街だ」
はぁ!?
悪魔王国ディアボルス?
って、どこかの言葉で『まま』じゃない。
ソドムはあの背徳の街、ソドムから取ったの?
そして……イザベラの父、悪魔王アルフレードルが居る……
オリハルコンの件もそうだが、着いたら大至急『挨拶』に行かないとまずい……
「このような転移門から王都への道はかつてたくさんあったが、スパイラルによる転移門破壊に伴い、殆どが封鎖された」
そりゃ、そうだろう。
こんな転移門があちこちにあったら……魔界から悪魔が容易に来れる。
それも超が付く団体様で。
そんな怖ろしい事が現実にあったのが古代の冥界大戦後の世界なのだ。
当時の人々は、さぞ怖ろしかっただろう。
でも不思議だ。
俺はイザベラにアモントップクラスの上級悪魔しか接していないが、悪魔って……
そんなに悪い奴等なんだろうか?
つらつらと俺が考えていたら、アモンが睨む。
あ! ヤバイ。
まだ説明の最中だったっけ。
「確かこの先には関所がある、そこで入国手続きをしてから王都の王宮に向かおう」
「そ、そうか。分かった」
俺が納得して頷くと、アモンはまた「待った」をかける。
「出発前に、やっておく事がある」
「?」
出発前に?
やっておく事?
果たして何だろう?
「この魔界では悪魔以外に身体が順応しない者が多々居る。その為に魔法で悪魔化して貰う。我々が人間界では身体が順応しない為に人化するのと同じだ」
へぇ!?
悪魔が人化するって、ただ人間に化けて紛れ込むだけじゃあなかったのね。
それにしても……悪魔化か……
やってみたい!
何か、小説か、ゲームの話みたいだもの。
もしかしたら、邪神様に滅法怒られそうだが。
あ、人間に戻れるのが必須条件。
ずうっと悪魔のままはイヤだ。
俺のウキウキした様子を見てアモンは、にやっと笑う。
「ふふふ、お前の考えている事などお見通しだ。必要がなければ魔法は使わないぞ!」
ああ、やっぱりお見通しか!
「ははは、ただ覚えておけよ。人化や悪魔化とは単なる変身では無い。まあ根本は変身魔法の一種ではあるが、その土地に順応するという趣旨だから、ただ化けるだけとは意味合いが全然違うのだ」
彼はそう言い放つと、直ぐに元の不機嫌そうな『怒れる悪魔アモン』の表情に戻ったのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後……
俺達は既に出発。
石畳の街道をどんどん進んで行く。
アモンが確認したところ、結局は誰も悪魔化の魔法は無用。
と、いう結果に。
結局、全員そのままで進んでいる。
今迄、一番ノーマルな人間に近かったジュリア。
竜神族の覚醒を経て、超人的な能力が身に付いた……という事らしい。
ちなみにソフィアは自動人形だから、冥界の瘴気も全然平気だそうだ。
暫く歩けど歩けど……
周囲が砂漠と岩ばかりの代わり映えしない風景で続いていた。
もう3時間は歩いているだろう。
だが覚醒したジュリアは疲れたから、負ぶってくれとは言わない。
一応心配して聞いたが、大丈夫だという。
体力がこんなにもつなんて、やっぱり竜神族に完全覚醒したんだ。
更に2時間歩いて、その先にやっと黒っぽい建物が見えて来る。
「あれが関所だ」
アモンが呟くと、俺は即座に反応した。
「関所って事は門? 冥界=魔界で、門なら……あそこにケルベロスとかオルトロスとかが居るの?」
思わず、個人的に大好きな冥界の魔獣を思い浮かべる。
ギリシア神話に登場する、テュポンとエキドナの息子で3つ首の怪物。
俺の中では強さの象徴である。
某有名ゲームのせいだが。
「ははは、トールは良く知っているな。だが残念ながら奴等はあそこには居ない。ここはイレギュラーの悪魔専門の出入り口で奴等が居るのは正門だ」
正門には居るんだ……
っていうか、実在するんだ、2頭とも。
しかし!
『関所』に近付くにつれて、不穏な気配が漂って来たのであった。
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