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第88話「生と死の淵」
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嫌な予感は当たった!
倒れている滅ぼす者の内部にある装置に、いきなりスイッチが入った。
そんな気配がしたのである。
滅ぼす者自体の意思では無い事は、停止している心臓部の様子を見ても明らかであった。
装置のスイッチが勝手に作動したのだ。
まさか!
こういうのって秘密保持の為の良くあるアレ?
俺は高鳴る動悸を無理矢理抑えつけて考える。
最終兵器という事もあり、この機体はガルドルド魔法帝国にとっては極秘扱いに違いない。
万が一機体が破壊されたり、故意に停止させられると……自動的に完全破壊される装置が発動する?
……もしかして爆破装置!?
俺の嫌な想像が間違っていないのは、後ろに控えていた鋼鉄の巨人達の慌てぶりで分かった。
滅茶苦茶、右往左往しているもの。
このとてつもなく頑丈な機体が完全に爆破されるって……どんな威力!?
……この遺跡全部が、上の迷宮ごと破壊されるくらいじゃね?
もしそうなったら、悪魔の上位種であるイザベラやアモンはともかく俺とジュリアは絶対に助からない。
何とかしないと!
それに多分、時間も無い!
異様な空気を感じ取ったのだろうか……
ジュリアの泣き叫ぶ声に、心配そうなイザベラの声。
そしてアモンが大声で俺を呼ぶ声が交差しているが、皆に応える時間や余裕は無い。
俺が考えた、全員が助かる方法はただひとつ。
滅ぼす者の自爆装置に魔剣を使い俺の魔力波《オーラ》を流し込んで完全に破壊し、止める事のみ。
これはこれで危険なやり方である。
魔力波で破壊しようとした瞬間に、自爆装置が大暴発する可能性も高いからだ。
だが迷う余地は無い。
今にも爆発するかもしれない。
俺は倒れている滅ぼす者の機体にダッシュで駆け寄ると、開いたままである擬似魔法の射出孔へ魔剣をぐいっと差し込んだ。
俺は滅ぼす者の機体を凝視する。
停止している機体の中で唯一可動している部分が自爆装置だからだ。
あった!
胸の装甲、心臓部である魔法水晶の少し離れた場所にそれはあった。
規則正しく一定の魔力波を放出し続けている。
ままよぉ!
行っけぇ~!
もう躊躇しない。
俺は持てる魔力を全て魔力波に変換して、魔剣経由で半開きの射出孔から流し込んだ。
俺の魔力の影響だろうか?
魔力が注入された瞬間、滅ぼす者の青白いシルバーカラーが燦然と輝いたのである。
と同時に身体の全てを喪失感が襲い、俺は意識を手放したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……俺は今、どこに居るのだろう?
ふわふわと心地良い感覚だ。
爆発に巻き込まれて俺は死んだ?
夢の中で殺されたとかじゃなく。
本当に死んだのか?
でもそれならそれで良い。
俺は全力を尽くした。
やるだけの事はやったから悔いはない。
『…………おいおい! まだ永遠に寝ちゃ駄目だよ、トール』
あれ、俺の魂に呼び掛ける声がする。
この声は?
『ふふふ、僕だよ、螺旋さ』
……こうなっているという事は、俺は詰んだんでしょ。
『あはは! いやいや違う、大丈夫さ、生きているって。君が使ったあの技は単なる魔力波攻撃じゃないんだ。そうじゃなきゃ対魔法防御の処理をしたこの巨人《ゴーレム》の心臓部を破損出来る筈がない』
え?
ただの魔力波攻撃じゃあ無いの?
『そうさ! あれは僕みたいな神が発動する神力波の攻撃なのさ。まあ神が使うものに比べれば多少、威力は落ちるけどね』
神力波!?
な、何それ?
『そんな事より、君ってさ、とても成長したよ』
『そうですか?』
『謙遜しちゃって! 今回の勇気ある行為……僕は君を見直した。臆病で他人の為に頑張ろうとした事なんか皆無だった君がさ。家族を守る為に命を張るなんて、何という勇気を持った男だろうって父上も褒めていたよ』
父上!?
え?
もしかして?
『ふふふ、そう! 偉大なる創世神さ。何か気になるの?』
やばい!
なら、知られたの?
神の使徒である自分が、竜や悪魔の娘を嫁にした事が……
『ははは、大丈夫さ。ばれてどうなるかとは思ったけど、結局は僕の見解同様、とても面白そうだから見物させて貰うって!』
……うわぁ、創世神様の寛容力、ぱねぇ!
『という事で君はまだまだ人生を楽しめるよ、ばいば~い!』
邪神様の声が魂の中で反響しながらフェードアウトして行った。
瞬間!
意識が違う場所へ引き戻される。
身体の感覚が戻って来る。
同時に俺の瞼が……ゆっくりと開けられる。
「「旦那様!」」
「おおっ! トール! 気が付いたか!?」
目を覚ました俺が周囲を見ると……
クラン仲間であるジュリア、イザベラ、アモンは勿論の事、敵である筈の鋼鉄の巨人達も俺を心配そうに見つめていたのであった。
倒れている滅ぼす者の内部にある装置に、いきなりスイッチが入った。
そんな気配がしたのである。
滅ぼす者自体の意思では無い事は、停止している心臓部の様子を見ても明らかであった。
装置のスイッチが勝手に作動したのだ。
まさか!
こういうのって秘密保持の為の良くあるアレ?
俺は高鳴る動悸を無理矢理抑えつけて考える。
最終兵器という事もあり、この機体はガルドルド魔法帝国にとっては極秘扱いに違いない。
万が一機体が破壊されたり、故意に停止させられると……自動的に完全破壊される装置が発動する?
……もしかして爆破装置!?
俺の嫌な想像が間違っていないのは、後ろに控えていた鋼鉄の巨人達の慌てぶりで分かった。
滅茶苦茶、右往左往しているもの。
このとてつもなく頑丈な機体が完全に爆破されるって……どんな威力!?
……この遺跡全部が、上の迷宮ごと破壊されるくらいじゃね?
もしそうなったら、悪魔の上位種であるイザベラやアモンはともかく俺とジュリアは絶対に助からない。
何とかしないと!
それに多分、時間も無い!
異様な空気を感じ取ったのだろうか……
ジュリアの泣き叫ぶ声に、心配そうなイザベラの声。
そしてアモンが大声で俺を呼ぶ声が交差しているが、皆に応える時間や余裕は無い。
俺が考えた、全員が助かる方法はただひとつ。
滅ぼす者の自爆装置に魔剣を使い俺の魔力波《オーラ》を流し込んで完全に破壊し、止める事のみ。
これはこれで危険なやり方である。
魔力波で破壊しようとした瞬間に、自爆装置が大暴発する可能性も高いからだ。
だが迷う余地は無い。
今にも爆発するかもしれない。
俺は倒れている滅ぼす者の機体にダッシュで駆け寄ると、開いたままである擬似魔法の射出孔へ魔剣をぐいっと差し込んだ。
俺は滅ぼす者の機体を凝視する。
停止している機体の中で唯一可動している部分が自爆装置だからだ。
あった!
胸の装甲、心臓部である魔法水晶の少し離れた場所にそれはあった。
規則正しく一定の魔力波を放出し続けている。
ままよぉ!
行っけぇ~!
もう躊躇しない。
俺は持てる魔力を全て魔力波に変換して、魔剣経由で半開きの射出孔から流し込んだ。
俺の魔力の影響だろうか?
魔力が注入された瞬間、滅ぼす者の青白いシルバーカラーが燦然と輝いたのである。
と同時に身体の全てを喪失感が襲い、俺は意識を手放したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……俺は今、どこに居るのだろう?
ふわふわと心地良い感覚だ。
爆発に巻き込まれて俺は死んだ?
夢の中で殺されたとかじゃなく。
本当に死んだのか?
でもそれならそれで良い。
俺は全力を尽くした。
やるだけの事はやったから悔いはない。
『…………おいおい! まだ永遠に寝ちゃ駄目だよ、トール』
あれ、俺の魂に呼び掛ける声がする。
この声は?
『ふふふ、僕だよ、螺旋さ』
……こうなっているという事は、俺は詰んだんでしょ。
『あはは! いやいや違う、大丈夫さ、生きているって。君が使ったあの技は単なる魔力波攻撃じゃないんだ。そうじゃなきゃ対魔法防御の処理をしたこの巨人《ゴーレム》の心臓部を破損出来る筈がない』
え?
ただの魔力波攻撃じゃあ無いの?
『そうさ! あれは僕みたいな神が発動する神力波の攻撃なのさ。まあ神が使うものに比べれば多少、威力は落ちるけどね』
神力波!?
な、何それ?
『そんな事より、君ってさ、とても成長したよ』
『そうですか?』
『謙遜しちゃって! 今回の勇気ある行為……僕は君を見直した。臆病で他人の為に頑張ろうとした事なんか皆無だった君がさ。家族を守る為に命を張るなんて、何という勇気を持った男だろうって父上も褒めていたよ』
父上!?
え?
もしかして?
『ふふふ、そう! 偉大なる創世神さ。何か気になるの?』
やばい!
なら、知られたの?
神の使徒である自分が、竜や悪魔の娘を嫁にした事が……
『ははは、大丈夫さ。ばれてどうなるかとは思ったけど、結局は僕の見解同様、とても面白そうだから見物させて貰うって!』
……うわぁ、創世神様の寛容力、ぱねぇ!
『という事で君はまだまだ人生を楽しめるよ、ばいば~い!』
邪神様の声が魂の中で反響しながらフェードアウトして行った。
瞬間!
意識が違う場所へ引き戻される。
身体の感覚が戻って来る。
同時に俺の瞼が……ゆっくりと開けられる。
「「旦那様!」」
「おおっ! トール! 気が付いたか!?」
目を覚ました俺が周囲を見ると……
クラン仲間であるジュリア、イザベラ、アモンは勿論の事、敵である筈の鋼鉄の巨人達も俺を心配そうに見つめていたのであった。
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