87 / 205
第87話「死闘」
しおりを挟む
ガルドルド魔法帝国の最終兵器滅ぼす者。
プライドを傷つけられ、今迄より数倍近い速度で襲い掛かって来た。
隠されていた『ギア』を上げたようだ。
しかし邪神様の使徒として動体視力と敏捷さに秀でた俺にはまだアドバンテージがある。
俺の『動き』からすれば、相手の攻撃を躱すのに充分に対処出来る範囲内。
しかし俺も手詰まり状態。
通常タイプの鋼鉄の巨人なら、致命的な弱点である筈の関節裏。
さっきから何度も攻めているのだが、魔法で処理がしてあるのだろう。
ほんのカスリ傷しかつけられないのだ。
そんなわけで戦局は一進一退である。
武器である大剣を奪われ、怒り狂っているらしい滅ぼす者は攻撃も防御も冷静さを欠いていた。
一見、何の変哲もない人間の俺に翻弄されるのが許せないのであろう。
ここらへんが機械ではなく、妙に人間臭さを感じて俺には少し切なくなるのだ。
いかん!
また感傷に浸ってしまった!
今の相手に、俺が最も気をつける事。
それはアモンが言っていた擬似魔法の直撃を喰らわない事。
そして身体を掴まれて自由を奪われない事である。
とんでもない移動速度を誇る俺に対して、相手は焦り始めていた。
何せ俺が「するりするり」と自分の攻撃を避け続けているのだから。
逆に俺は考えている。
いつ、どのようなタイミングにおいて擬似魔法で攻撃して来るのか?
またそれは具体的にどのようなものなのか?
威力はどこまで凄いのか?
いわゆる相手の奥の手が分からないまま、仕掛けるほど危険な事は無い。
そして遂に……その時は来た。
腹部の一部が小さく開いたかと思うと、サッカーボールくらいの火球が一度に数十発襲って来たのだ。
おおっ、これが擬似魔法か?
確かに結構な威力である。
確かにイザベラの強力な魔法やアモンの灼熱の炎には劣る。
だが結構な威力の火球がこの量で一度に撃ち出されるとは……
多分、下手な魔法使いが100人居るよりも凄いだろう。
魔力波で発射のタイミングと軌道を予測した俺は何と全ての火球を掻い潜った。
だが、奴の狙いはこの擬似魔法で俺を倒す事ではない。
火球を避けた際に出来た隙に乗じて、俺を捕らえ強力な力で圧殺しようとしていたのだ。
更に相手の動きを予測した俺は、凄まじい速度で真っすぐ伸びて捕まえようとする奴の腕をも躱した。
しかし奴もここが攻め時だと考えたようだ。
一気に勝負をつけるつもりらしい。
何と擬似魔法を続けて撃とうとしたのである。
しかし俺も、このタイミングを待っていたのだ。
何せ比較的柔らかい筈の関節裏でさえ、攻撃を受け付けない強固な装甲である。
様々な攻撃を想定した正面の分厚い装甲は、たとえ魔剣でさえ攻撃しても厳しい。
まともに斬りつけてもダメージを与える事はほぼ無理に決まっている。
俺が見るに奴等の弱点は俺が止めを刺してやった魔法水晶――いわば真理と呼ばれる心臓部であろう。
そして擬似魔法の射出孔が開かれた時、そこはほぼ無防備である事も容易に想像出来たのである。
攻撃する唯一の機会は擬似魔法の火球が放出され、閉じられる前の瞬間だけである。
今だ!
俺は自分の最大の攻撃方法を使う。
そう、自分の魔力を剣に篭めて撃ち出す大技を。
これは危険な技である。
危険というのはこの技、下手をすれば枯渇に繋がるくらい、魔力を極端に喰らう。
以前オークを倒した時は、本当に危なかった。
アモンに助けられなければ、俺はオークに確実に殺られていたであろう。
しかし今は状況が違う。
こいつを倒したら他の鋼鉄の巨人が襲って来るという事が無い。(多分)
この滅ぼす者とはタイマン、すなわち1対1の勝負をしているからだ。
だが万が一の場合もある。
俺は魔剣を振りかざし、魔力枯渇にならないように加減して擬似魔法の射出孔に必殺の魔力波の刃を撃ち込んだのである。
すると!
滅ぼす者は何故か腹を押さえ、苦しがった。
俺の打ち込んだ魔力の刃の渦は、擬似魔法の射出孔から奴へ致命傷を与えたのだろうか?
半信半疑の俺は身構えて待っていた。
すると!
俺の魔力波が結構な損傷を与えたらしく、滅ぼす者は「どう」と倒れてしまったのである。
派手な地響きを立てて。
思わず俺は喜びが込み上げる。
苦労した上、遂に強敵を倒した。
悪魔が一個大隊をもってやっと倒した強敵を、俺はたったひとりで倒したのだ。
か、勝った!
俺は勝ったぞ!
「トールの勝ちぃ~!」
「やった~!」
ジュリアとイザベラの嬉しそうな声が聞こえ、アモンの満足そうな魔力波《オーラ》が伝わって来た。
俺が「ホッ」としかけた、その瞬間。
とんでもない危険の予感、いや確信が生じた。
ぞくぞくする恐怖の原因は?
こいつ!?
俺は思わず目の前に倒れた滅ぼす者を凝視したのであった。
プライドを傷つけられ、今迄より数倍近い速度で襲い掛かって来た。
隠されていた『ギア』を上げたようだ。
しかし邪神様の使徒として動体視力と敏捷さに秀でた俺にはまだアドバンテージがある。
俺の『動き』からすれば、相手の攻撃を躱すのに充分に対処出来る範囲内。
しかし俺も手詰まり状態。
通常タイプの鋼鉄の巨人なら、致命的な弱点である筈の関節裏。
さっきから何度も攻めているのだが、魔法で処理がしてあるのだろう。
ほんのカスリ傷しかつけられないのだ。
そんなわけで戦局は一進一退である。
武器である大剣を奪われ、怒り狂っているらしい滅ぼす者は攻撃も防御も冷静さを欠いていた。
一見、何の変哲もない人間の俺に翻弄されるのが許せないのであろう。
ここらへんが機械ではなく、妙に人間臭さを感じて俺には少し切なくなるのだ。
いかん!
また感傷に浸ってしまった!
今の相手に、俺が最も気をつける事。
それはアモンが言っていた擬似魔法の直撃を喰らわない事。
そして身体を掴まれて自由を奪われない事である。
とんでもない移動速度を誇る俺に対して、相手は焦り始めていた。
何せ俺が「するりするり」と自分の攻撃を避け続けているのだから。
逆に俺は考えている。
いつ、どのようなタイミングにおいて擬似魔法で攻撃して来るのか?
またそれは具体的にどのようなものなのか?
威力はどこまで凄いのか?
いわゆる相手の奥の手が分からないまま、仕掛けるほど危険な事は無い。
そして遂に……その時は来た。
腹部の一部が小さく開いたかと思うと、サッカーボールくらいの火球が一度に数十発襲って来たのだ。
おおっ、これが擬似魔法か?
確かに結構な威力である。
確かにイザベラの強力な魔法やアモンの灼熱の炎には劣る。
だが結構な威力の火球がこの量で一度に撃ち出されるとは……
多分、下手な魔法使いが100人居るよりも凄いだろう。
魔力波で発射のタイミングと軌道を予測した俺は何と全ての火球を掻い潜った。
だが、奴の狙いはこの擬似魔法で俺を倒す事ではない。
火球を避けた際に出来た隙に乗じて、俺を捕らえ強力な力で圧殺しようとしていたのだ。
更に相手の動きを予測した俺は、凄まじい速度で真っすぐ伸びて捕まえようとする奴の腕をも躱した。
しかし奴もここが攻め時だと考えたようだ。
一気に勝負をつけるつもりらしい。
何と擬似魔法を続けて撃とうとしたのである。
しかし俺も、このタイミングを待っていたのだ。
何せ比較的柔らかい筈の関節裏でさえ、攻撃を受け付けない強固な装甲である。
様々な攻撃を想定した正面の分厚い装甲は、たとえ魔剣でさえ攻撃しても厳しい。
まともに斬りつけてもダメージを与える事はほぼ無理に決まっている。
俺が見るに奴等の弱点は俺が止めを刺してやった魔法水晶――いわば真理と呼ばれる心臓部であろう。
そして擬似魔法の射出孔が開かれた時、そこはほぼ無防備である事も容易に想像出来たのである。
攻撃する唯一の機会は擬似魔法の火球が放出され、閉じられる前の瞬間だけである。
今だ!
俺は自分の最大の攻撃方法を使う。
そう、自分の魔力を剣に篭めて撃ち出す大技を。
これは危険な技である。
危険というのはこの技、下手をすれば枯渇に繋がるくらい、魔力を極端に喰らう。
以前オークを倒した時は、本当に危なかった。
アモンに助けられなければ、俺はオークに確実に殺られていたであろう。
しかし今は状況が違う。
こいつを倒したら他の鋼鉄の巨人が襲って来るという事が無い。(多分)
この滅ぼす者とはタイマン、すなわち1対1の勝負をしているからだ。
だが万が一の場合もある。
俺は魔剣を振りかざし、魔力枯渇にならないように加減して擬似魔法の射出孔に必殺の魔力波の刃を撃ち込んだのである。
すると!
滅ぼす者は何故か腹を押さえ、苦しがった。
俺の打ち込んだ魔力の刃の渦は、擬似魔法の射出孔から奴へ致命傷を与えたのだろうか?
半信半疑の俺は身構えて待っていた。
すると!
俺の魔力波が結構な損傷を与えたらしく、滅ぼす者は「どう」と倒れてしまったのである。
派手な地響きを立てて。
思わず俺は喜びが込み上げる。
苦労した上、遂に強敵を倒した。
悪魔が一個大隊をもってやっと倒した強敵を、俺はたったひとりで倒したのだ。
か、勝った!
俺は勝ったぞ!
「トールの勝ちぃ~!」
「やった~!」
ジュリアとイザベラの嬉しそうな声が聞こえ、アモンの満足そうな魔力波《オーラ》が伝わって来た。
俺が「ホッ」としかけた、その瞬間。
とんでもない危険の予感、いや確信が生じた。
ぞくぞくする恐怖の原因は?
こいつ!?
俺は思わず目の前に倒れた滅ぼす者を凝視したのであった。
0
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる