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第83話「鋼鉄の巨人」
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コーンウォールの迷宮の最深部5階……
俺達クラン『バトルブローカー』は遂にガルドルド魔法帝国が仕掛けた隠し扉の謎を解いた。
扉を開き、突入した俺達。
しかし、魔導ランプがぼんやり灯った薄暗い地下6階への階段は、予想していたよりもずっと長かった。
これは地下6階の空間が深い位置で大きく取られているって事かな?
俺は一瞬そう思ったが、ここが転送された異界である事を思い出して首を横に振る。
余り考え過ぎても駄目だな。
それにしても……
旧ガルドルド魔法帝国というのは本当に凄い国だったのだ。
俺の前世で知られている伝説の大陸国家や幻の国にしても冥界や魔界などの異界に攻め込む技術を持った国なんて聞いた事が無い。
そのような技術があればこそ、この迷宮の異界への転送技術というものあるのだろう。
「着いたぞ……」
アモンが重々しく呟く。
当初の俺の予想通りだ。
迷宮地下6階はやはりとてつもなく広い空間のようである。
そして俺の『索敵』には何か大量の金属と生命体の混在という気配が感じられた。
何だろう、この不思議な反応は?
俺が思わずアモンに問うと彼は無表情なまま答えた。
「多分、鋼鉄の巨人達だろう……強敵だ」
「鋼鉄の巨人?」
俺は聞き慣れない言葉に思わず聞き直してしまう。
そんな俺へ、アモンは相変わらず視線を合わせずにぽつりと呟いた。
「文字通り、表面が錆びないよう魔法で半永久的特殊加工をした鋼で造られている。強力な戦闘用ゴーレムだ」
「それって! ……まさか! さっきの話の……」
「トール、お前の思っている通り、中身は人間。ガルドルド帝国人達だ」
やはりか。
アモンの話がこれから現実となって俺に直面する。
人間が機械なんかの部品になるなんて昔読んだ漫画の場面にあった。
だけど……現実に目の当たりにするとなると、俺は何故か無性に悲しかった。
そんな俺へ、アモンは冷たく言い放つ。
「感傷に浸っている暇はない。それより現実を直視しろ。この先を進むのなら戦いの準備だ……トール、リーダーなら皆に指示を出せ」
ああ、その通りだ……
俺には自分の『家族』を守り、生活していく責任がある。
アモンに叱咤された俺は、気を取り直して全員を見渡した。
まずは……
改めて敵の情報収集をしなければならない。
この中で鋼鉄の巨人という相手がどんな奴なのかを。
唯一知っているのはアモンだ。
「アモン、相手の特長と攻め方、こちらの守り方をアドバイスしてくれ」
俺は頭を切り替えて、アモンへ聞いた。
自分から振ったせいもあり、アモンも素直に答えてくれる。
「分かった、リーダー……奴等は魔法障壁発生装置を備えた特殊合金製の戦闘型ゴーレムだ。普通の攻撃は勿論、生半可な魔法は弾かれてしまう」
成る程!
今迄とは桁違いに強い。
そして、攻めるには厳しい相手なんだな。
「魔法が効かない……か。装甲も相当なものだろうが、打撃や斬撃、殴打などの物理攻撃はどうなんだ?」
「トール、お前の考えている通り、奴等の身体は鍛えに鍛え抜かれた特殊合金で造られている。普通の剣は全く受け付けないし、お前の魔剣でも斬れるかどうか……俺には何とも言えない」
むう!
戦鬼アモンに、そこまで言わせるとは……
それほどの……装甲なのか。
「動きは? どれくらいの身のこなしなんだ」
「ふん! 素早さか? 一体あたり相当な重量があるからそれほど早くはない。しかし膂力は悪魔の俺に勝るとも劣らない。基本的に身体は守備に特化し、攻撃は敵への一撃必殺を旨としているからな」
いつもなら、敵に対して弱気な部分を全く見せないアモンが、こんなに慎重なのは珍しい。
それだけ鋼鉄の巨人が強敵ということだろう。
「ただ今回はトール、お前なら出来る攻撃のやり方がある」
俺だけの攻撃方法?
ぜひ聞きたいな。
「奴等の身体の構造に、唯一の弱点があるのだ」
身体の構造に唯一の弱点?
そんな守備の鬼のような奴等の、どこに弱点があるのだろう?
「奴等の弱点は腕と脚の膝の関節の裏側、内側だな」
「関節?」
「手足を自在に動かす為に関節には唯一柔らかな素材を使用しているのだ。ゴーレムの動きを滑らかにする為のガルドルドの素晴らしい技術だよ。そこを上手く攻撃すれば良い。ただ前面は強固な装甲板に覆われているから攻撃しても無駄だがな」
そうか!
関節の内側は、どうしても前面の装甲と同じ強度には出来ないのであろう。
俺が素早く関節の内側を狙って、奴等の手足を切り落として戦闘不能にするという事だな。
分かったと頷いた俺に対して、アモンは満足そうに笑った。
「……理解したようだな。そうなると作戦も自ずと決まって来る筈だ」
しかし俺はまだ聞く事があった。
それは今回の戦い方を決めるのに重要な要因になる。
「あとひとつ……奴等は飛び道具を持っているのか?」
「飛び道具?」
「装甲以外の奴等の装備さ。武器に弓や投擲出来る武具、または魔法を備えているかという事だ。それによって俺達の作戦が全く変わって来る」
いかに俺の動きが人間離れしていても、相手は高度な魔法文明を誇った名だたる国。
どんな凄い技術を持っているか分からない。
弓はともかく魔法で集中して狙い撃ちされたら、相手を倒す前にこちらが簡単にやられてしまう。
「ほう、意外に冷静だな。褒めてやろう。しかしそれは俺が確かめる、その為の盾役だ」
アモンは、俺の質問を聞いて満足そうに頷いた。
頭を下げて、俺はアモンへ頼み込む。
「一応教えてくれ。今迄はどうだった?」
「基本的に飛び道具は無い。弓よりも大型の剣や斧、メイスを使って戦う重装甲の兵士達だ。魔法は魔法使いの部隊が別に居たからな」
そうか……アモンの経験のみだけだが、やはりゴーレムは力で押す陸戦兵器なのだ。
「了解! じゃあ作戦はほぼ決まりだが、後は相手の数と6階の構造を見てから最終決定しよう」
地下6階への入り口は大きく開け放たれた鋼鉄の両扉であった。
俺達は恐る恐る中を覗き込んだ。
すると!
目の前の光景は、俺が予想していたより全く広かった。
ここが迷宮の中とは思えない、信じられないものだ。
天井が高いこの空間は俺が思っていたより遥かに広大でひとつの城下街が模してある。
勢いよく噴出する噴水が置かれた石畳の中央広場があり、周囲には白い壁の街並みもある。
奥には王宮らしいものが建てられていたが、注目はその王宮手前の中央広場。
そこには昔のローマ帝国兵士のような出で立ちの、鋼鉄の巨人達が30体以上立っていたのだ。
俺はそれを見て、作戦の『やり直し』をしなければと考えたのであった。
俺達クラン『バトルブローカー』は遂にガルドルド魔法帝国が仕掛けた隠し扉の謎を解いた。
扉を開き、突入した俺達。
しかし、魔導ランプがぼんやり灯った薄暗い地下6階への階段は、予想していたよりもずっと長かった。
これは地下6階の空間が深い位置で大きく取られているって事かな?
俺は一瞬そう思ったが、ここが転送された異界である事を思い出して首を横に振る。
余り考え過ぎても駄目だな。
それにしても……
旧ガルドルド魔法帝国というのは本当に凄い国だったのだ。
俺の前世で知られている伝説の大陸国家や幻の国にしても冥界や魔界などの異界に攻め込む技術を持った国なんて聞いた事が無い。
そのような技術があればこそ、この迷宮の異界への転送技術というものあるのだろう。
「着いたぞ……」
アモンが重々しく呟く。
当初の俺の予想通りだ。
迷宮地下6階はやはりとてつもなく広い空間のようである。
そして俺の『索敵』には何か大量の金属と生命体の混在という気配が感じられた。
何だろう、この不思議な反応は?
俺が思わずアモンに問うと彼は無表情なまま答えた。
「多分、鋼鉄の巨人達だろう……強敵だ」
「鋼鉄の巨人?」
俺は聞き慣れない言葉に思わず聞き直してしまう。
そんな俺へ、アモンは相変わらず視線を合わせずにぽつりと呟いた。
「文字通り、表面が錆びないよう魔法で半永久的特殊加工をした鋼で造られている。強力な戦闘用ゴーレムだ」
「それって! ……まさか! さっきの話の……」
「トール、お前の思っている通り、中身は人間。ガルドルド帝国人達だ」
やはりか。
アモンの話がこれから現実となって俺に直面する。
人間が機械なんかの部品になるなんて昔読んだ漫画の場面にあった。
だけど……現実に目の当たりにするとなると、俺は何故か無性に悲しかった。
そんな俺へ、アモンは冷たく言い放つ。
「感傷に浸っている暇はない。それより現実を直視しろ。この先を進むのなら戦いの準備だ……トール、リーダーなら皆に指示を出せ」
ああ、その通りだ……
俺には自分の『家族』を守り、生活していく責任がある。
アモンに叱咤された俺は、気を取り直して全員を見渡した。
まずは……
改めて敵の情報収集をしなければならない。
この中で鋼鉄の巨人という相手がどんな奴なのかを。
唯一知っているのはアモンだ。
「アモン、相手の特長と攻め方、こちらの守り方をアドバイスしてくれ」
俺は頭を切り替えて、アモンへ聞いた。
自分から振ったせいもあり、アモンも素直に答えてくれる。
「分かった、リーダー……奴等は魔法障壁発生装置を備えた特殊合金製の戦闘型ゴーレムだ。普通の攻撃は勿論、生半可な魔法は弾かれてしまう」
成る程!
今迄とは桁違いに強い。
そして、攻めるには厳しい相手なんだな。
「魔法が効かない……か。装甲も相当なものだろうが、打撃や斬撃、殴打などの物理攻撃はどうなんだ?」
「トール、お前の考えている通り、奴等の身体は鍛えに鍛え抜かれた特殊合金で造られている。普通の剣は全く受け付けないし、お前の魔剣でも斬れるかどうか……俺には何とも言えない」
むう!
戦鬼アモンに、そこまで言わせるとは……
それほどの……装甲なのか。
「動きは? どれくらいの身のこなしなんだ」
「ふん! 素早さか? 一体あたり相当な重量があるからそれほど早くはない。しかし膂力は悪魔の俺に勝るとも劣らない。基本的に身体は守備に特化し、攻撃は敵への一撃必殺を旨としているからな」
いつもなら、敵に対して弱気な部分を全く見せないアモンが、こんなに慎重なのは珍しい。
それだけ鋼鉄の巨人が強敵ということだろう。
「ただ今回はトール、お前なら出来る攻撃のやり方がある」
俺だけの攻撃方法?
ぜひ聞きたいな。
「奴等の身体の構造に、唯一の弱点があるのだ」
身体の構造に唯一の弱点?
そんな守備の鬼のような奴等の、どこに弱点があるのだろう?
「奴等の弱点は腕と脚の膝の関節の裏側、内側だな」
「関節?」
「手足を自在に動かす為に関節には唯一柔らかな素材を使用しているのだ。ゴーレムの動きを滑らかにする為のガルドルドの素晴らしい技術だよ。そこを上手く攻撃すれば良い。ただ前面は強固な装甲板に覆われているから攻撃しても無駄だがな」
そうか!
関節の内側は、どうしても前面の装甲と同じ強度には出来ないのであろう。
俺が素早く関節の内側を狙って、奴等の手足を切り落として戦闘不能にするという事だな。
分かったと頷いた俺に対して、アモンは満足そうに笑った。
「……理解したようだな。そうなると作戦も自ずと決まって来る筈だ」
しかし俺はまだ聞く事があった。
それは今回の戦い方を決めるのに重要な要因になる。
「あとひとつ……奴等は飛び道具を持っているのか?」
「飛び道具?」
「装甲以外の奴等の装備さ。武器に弓や投擲出来る武具、または魔法を備えているかという事だ。それによって俺達の作戦が全く変わって来る」
いかに俺の動きが人間離れしていても、相手は高度な魔法文明を誇った名だたる国。
どんな凄い技術を持っているか分からない。
弓はともかく魔法で集中して狙い撃ちされたら、相手を倒す前にこちらが簡単にやられてしまう。
「ほう、意外に冷静だな。褒めてやろう。しかしそれは俺が確かめる、その為の盾役だ」
アモンは、俺の質問を聞いて満足そうに頷いた。
頭を下げて、俺はアモンへ頼み込む。
「一応教えてくれ。今迄はどうだった?」
「基本的に飛び道具は無い。弓よりも大型の剣や斧、メイスを使って戦う重装甲の兵士達だ。魔法は魔法使いの部隊が別に居たからな」
そうか……アモンの経験のみだけだが、やはりゴーレムは力で押す陸戦兵器なのだ。
「了解! じゃあ作戦はほぼ決まりだが、後は相手の数と6階の構造を見てから最終決定しよう」
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俺達は恐る恐る中を覗き込んだ。
すると!
目の前の光景は、俺が予想していたより全く広かった。
ここが迷宮の中とは思えない、信じられないものだ。
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そこには昔のローマ帝国兵士のような出で立ちの、鋼鉄の巨人達が30体以上立っていたのだ。
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