真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
82 / 205

第82話「ガルドルド魔法帝国の悲劇」

しおりを挟む
「あのさ……アモンは昔、ガルドルドと戦ったんだよな」

 地下6階への階段を降りながら、俺はアモンに向かって話し掛けた。
 それにしても数千年前にはもうバリバリ大悪魔として戦っていたアモンって、一体何歳なんだよ……
 そんな事を考えながら問いかける俺。
 対して、アモンは目線を合わせずにぶっきらぼうに答える。
 このような所作もアモンらしい。

「ああ、俺達悪魔の軍勢とガルドルド魔法帝国は真っ向から戦った」

「良かったら、話してくれないかな」

 俺は栄華を極めた旧ガルドルド魔法帝国がどのような理由で滅びたのか、何となく知りたかった。
 そんな俺の気持ちを理解したのか、アモンは珍しくぽつりぽつりと話し始める。
 ジュリアやイザベラも興味があるらしく、背後で聞き耳を立てている様子だ。

「ガルドルド魔法帝国は魔法工学の粋を極めた人間族の王国であった。彼等が信仰していたのは当然の事ながら天地創造を行った創世神であり、建国当初はその教義を忠実に守り、信じる事で国家は繁栄の一途を辿った」

 成る程……
 やはり謎の声の女が『神の使徒』という事で俺の力を認めた言葉通り、創世神の教えを守る国家なのだな。

「だが……彼等の軍はこの地上において、その版図を広げ切り、他に敵対する者も無くなった時にとうとうその運は尽きた」

 そう言うと、アモンは「ふう」と溜息を吐いた。

「彼等は自分達ガルドルド帝国こそが神の代理であると勝手に位置付け、人に飽き足らず悪魔など魔族を掃討し、冥界や魔界までその版図に組み入れようとした。それが神の意思だと主張してな」

 ええっ!
 異界である冥界や魔界に攻め入るって!?
 人間の世界に飽き足らずにか?
 そりゃ……思い上がりってものだろう?
 俺が思わず頷くと、アモンはゆっくりと目を閉じた。

「だが創世神は元々彼等の所業を良しとしていなかった。その最たる物がゴーレムの製造だ」

 ゴーレムって……
 結局、今で言えばロボットだろう?
 造るのがそんなにいけない事なのかなぁ……

「ゴーレムとはいわば人造生命体だ……つまりゴーレムの製造は神のみぞ行える『命の創造』であり、いわば究極の真理エメトだ。それを神が定めた本能の営み以外に軽々しく行って良い訳がない」

 はぁ……
 そういうものなんだ。
 神がそう定めているなら、それは確かにまずいだろうなぁ……

「最初のゴーレムは、ただの魔法水晶に人間の行動パターンを特殊な魔法で読み込ませたものであった。しかしそれでは同じ行動の繰り返し……応用が利かない。意思が無いから只の道具と一緒だった」

 確かに俺の前世で、ロボットという形態を取る『道具』と一緒だな。
 だが……
 もしもゴーレムに独自に考える意思を持たせるとしたら?
 そうなると……人とゴーレムの線引きが曖昧《あいまい》になる。
 結局収まりがつかずに、よりリアルな物にしようとどんどんエスカレートするだろうな。

 俺の表情を見てアモンはゆっくりと頷いた。

「お前の思っている通り……ガルドルド魔法帝国の悲劇はゴーレムに対して人と同じ物を求め過ぎたのだ。所詮、造り物のゴーレムや自動人形オートマタは人間のような『生物』ではありえない。決定的にどこが違うか? ……それは感情だ」

 感情……か。
 確かに『ロボット』に人間のような感情は無いものな。
 あるように見えても、それは所詮見せかけの偽物だ。

「喜怒哀楽……愛や喜び……そして怒りや憎しみ……それは所詮、人型たる造り物に宿せないし、宿すべきものでもない――何故ならばそれは神が創りし物だからだ」

 人間と同じように受け答え出来て、感じる心――俺の前世のロボット工学でもそれは永遠のテーマだったろうな。
 しかし感情を創り出す事は容易ではない。
 その行き着く先は……

「そうだ! 創れない物を無理矢理創ろうとした悲劇は人の不幸にもなった。彼等は感情が創れないとみるや、何と! ……人の魂を秘法で抽出し、魔法水晶に封じ込めてゴーレムや自動人形の中枢としたのだ……同胞を道具の部品と化す愚かな所業……そのような事は我等悪魔でもやらぬわ」

 しかし……
 そうなったゴーレムは?

「ああ、見かけは強靭な身体を持つ別次元の存在となった。人を超えた至高の存在と言われてな。そして至高の人たる、歴史上最強の軍隊は遂に魔界へ攻め込んだのだ」

 ガルドルド魔法帝国の軍は緒戦において、その最強の陸戦兵器であるゴーレムと、強力な魔法使い達の力で悪魔軍団を圧倒したようである。

「しかしガルドルド魔法帝国が一身に受けていると信じ込んでいた神の加護は既に彼等には無く、最初は劣勢だった我々悪魔軍は反撃に転じ、ガルドルドの軍勢は連戦して連敗。最後には殆どが壊滅して無残に敗退して行った」

 悪魔達は敗退したガルドルドの軍を追撃して、逆に地上に現れたそうだ。
 本来なら神がそのような悪魔の行為を決して許す筈もないのに……

「本来なら許されぬ我々、悪魔の地上での跋扈ばっこもガルドルドの罪悪を罰して、人の撒き散らした『穢れ』を払うという理由で創世神はあっさりと許したのだ」

 おびただしい数の、怖ろしい悪魔が地上を覆う……
 異形の群れ……人間にとって、文字通り阿鼻叫喚の地獄だったであろう。

「それでもまだガルドルドは抵抗をやめず、創世神の加護を信じて戦った。だが到底、もつわけがない。結局、彼等は現在の国家とは比べ物にならぬ高度な魔法工学文明を持ちながら呆気なく滅びたのだ」

 そこで口を挟んだのがイザベラである。

「時代が古過ぎて私が生まれる前の話だから分からないけど……おかしくない? 私達悪魔が地上を蹂躙すれば人間は滅亡してしまったではないの?」

 確かにそうだ!
 だという事はどこかで……

「もしかして創世神から悪魔達へストップがかかったんじゃあ?」

 俺が思わず口を挟むとアモンは満足そうに頷いた。

「お前は勘が良いな、その通りだ。イザベラ様が知らないのは当たり前。我等にとって、これはいわゆる黒歴史だからな」

「黒……歴史」

「そうだ、悪魔の公的な歴史書からは一切削除されておる。話を戻せば悪魔軍はこの際、地上も自分達の版図にしようと、つい欲が出た。そこで悪魔討伐の為に遣わされたのが創世神の御子である闘神スパイラルとその配下の天使達というわけだ」

 おわぁっ!
 ここで出たよ、邪神様!
 もしこの場に彼が居たらその時の自慢話を延々と聞かされそうだ。

『ははっ、いつでも聞かせてあげるよ! 約5時間コースかなっ!』

 ……聞こえなかった事にしておこう。

「で、どうなったの?」

 俺が思わず聞くとアモンは俯いてしまう。
 どうやら余り話したくないようだ。
 それでも結果を伝えないで誤魔化す方がアモンにとっては男として卑怯なのであろう。

「負けた……あっさりと、それも圧倒的な敗北を食らってな……」

「な、成る程……そうか……」

「全く思い出したくも無い……スパイラル……奴は一見、美しい少年の姿をしているが、そんな姿は見せかけ。正体は神の御子とは到底思えない悪鬼だ……残虐で情け容赦なく強欲なのだ。いわば悪魔……いや悪魔どころではない! 世を滅ぼす邪神そのものだ」

 吐き捨てるように言うアモンを見て、俺はまるで自分が責められている気分になっていたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...