真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
81 / 205

第81話「秘密の扉」

しおりを挟む
 ええっと……
 
 俺はざわついた頭の中を整理する。

 まず魔法鍵マジックキー
 そしてこの階のラスボスであるミノタウロスを倒したら、玄室が反響し石壁が光った……
 これをどのように組み合わせて、秘密の扉を開けるのかという方法に関してだ。
 
 その時である。

『そこな少年よ! 余計な事を考えず、わらわの言う通りにせよ!』

 誰だ!? 
 俺を呼ぶのは?
 
 俺の心の中に響いたのは凛とした張りのある若い女の声だ。
 うん! 
 これも、念話だ。
 俺は改めて認識した。

 しかし念話を使えるイザベラが反応していないところを見るとやはり俺だけに直接聞えているらしい。
 で、でもさ。
 わらわってどういう言葉遣いだよ?

 そんな俺の呟きが伝わったのか、声の主は苛立ちを見せる。

『ええい! うるさいわ! わらわは妾じゃ! それよりお前は偉大なる創世神の使徒であろう? ならば妾のもとに参る資格があるぞ。その鍵を持ち、光る壁の前に立つが良い』

 あのさ……
 俺、創世神の使徒ではなくて、そのドラ息子の使徒なんだけれどもさ。
 まあ……良いか。

 俺は謎の声が指示する通りに、鍵を持って光る壁に近付いた。
 ハウリングするような不快な共鳴音は相変わらず鳴り響いており、俺が鍵を持って近付くとますます音が大きくなる。

 俺は光る壁の前に立ったが、相変わらず共鳴音が鳴り響くだけで何も起こらない。
 魔法鍵を差し込む鍵穴も出現しない。
 これではクラン大狼《ビッグウルフ》とやらも、扉を見つけられなかったとしても無理はない。
 多分、この状態に加えて様々な条件が必要なのであろう。

『準備は良いか? これから妾《わらわ》の言う言霊ことだまを唱えるのじゃ! 大きな声で元気良く朗々とな!』

 言霊ことだま!?
 それって魔法の呪文とかの事か!
 だけど俺……地味な生活魔法しか使えないぞ。

 俺は改めて心に強く念じた。
 相手に対して、碌に魔法が使えないって事実を伝える為に……
 何せ使徒だ、何だと期待され過ぎたら、その反動って怖ろしそうじゃないか!
 いつも目立たず平穏無事に行く――ラノベ作家なんて目立った職業になりたいなんて思っていた反面、それが俺の処世術だったから。

『悪いけど、俺……しょぼい生活魔法しか使えないよ』

『な、何を馬鹿な事を申しておる! 創世神の使徒たる、お前がそんな低レベルな魔法しか使えないわけがない!』

 俺の自信無さげな言葉に、動揺する女の声……

 やっぱり俺の事を凄く過大に評価しているぞ。
 だ・か・ら!
 俺はその息子・・の方の使徒なんだよ。

『細かい事を愚図愚図言うではない! 早よう、言われた通りにするが良い!』

 ええ、分かりましたよ!
 でも俺は所詮、凡才!
 神様の息子に改造して貰ったチート能力で、ずる・・しているエセ使徒ですからね。
 先にそう言っておくから、どうか怒らないでくれよ!

 その時、俺の頭の中へ謎の女の声で言霊が響く。
 どうやら、この通りに同じ節で詠唱すれば良いらしい。

「悪い、俺ちょっとトライするから」

 俺は、「え?」って戸惑うクランメンバーへ目配せをしてから、詠唱を開始した。

「東西南北果てしなく! この大地をべる栄光の魔法帝国よ! その威光は創世神に迫るものなり! その力は闘神スパイラルに匹敵するものなり! その栄光の名をもってここに宣言する! 帝国への道はどこにても開くものなり!」

 俺は詠唱し終わってある違和感を覚えた。
 創世神は良いとして……闘神って?
 闘神スパイラルだとぉ!

 そんな俺に、またいつもの声で念話が響く。

『ははっ、面白いねぇ! この先で君は新たな出会いをするよ。神にもなれると思い上がって滅びた愚かな魔法帝国の子孫にさ! まあ魔法帝国って驕れるものは久しからずって見本のような連中さ。君も気をつける事だね。僕が改造して与えた力は結構大きいから』

『お、おい! それにしても【闘神】って!?』

 驚く俺にスパイラルはさも可笑しそうに言う。

『ははっ、君に言っていなかったっけ。僕は創世神から色々なものを受け継ぎ、任されているんだ。【戦い】もそのひとつさ。だから君はそこそこ強いんだよ。何せ栄えある僕の使徒だからさ……まあ君を見ていると相変わらず退屈しないよ、まったね~』

 またもや一方的に電話をきるように邪神スパイラルは会話を打ち切り、声は聞こえなくなる。

 はぁ……
 俺って振り回されっぱなしの人生だなぁ……
 まあ、良いか。

「トール! 見て! これ何? 扉?」

 ジュリアの声で我に返る俺。
 見ると、目の前に淡く青い光の輪郭に彩られた『扉』が出現していたのである。

「トール! さっき貴方が詠唱した言霊ことだまは一体、何!?」

 今度はイザベラが聞いて来た。
 魔法使いだけあって、聞いた事のない言霊《ことだま》に興味があるらしい。
 俺にも理由が分からないから、頼りない答えしか返せない。

「ああ、いきなり詠唱しろって声が聞こえたのさ」

 俺の話を聞いていた、アモンが言う。

「ふむ! これぞまさしく魔法帝国ガルドルドの魔法扉だ。ミノタウロスの命、魔法鍵、そして魔法の言霊。これらを組み合わせて開く、隠された秘密の扉だな」

 俺はそれを受けてあの名品・珍品の店ダックヴァル商店のサイラス・ダックヴァルから貰った魔法鍵を扉に近付けた。
 
 すると……何という事でしょう!
 丸い穴が出現したではあ~りませんか!
 何てね!
 多分、これが魔法鍵の鍵穴だろう。

『ここをこの鍵で開ければ良いのだろう?』

 俺は先程聞えた声――若い女らしい声に呼びかけた。
 しかしあれだけうるさく聞えていた声が、今は全く聞こえない。

 まあ良いか!

 俺は魔法鍵を鍵穴に入れて軽く回してみる。
 すると意外にも「がちゃり」と古めかしい音がして光の扉が消え失せる。
 
 そして……
 真っ暗な空洞が出現したのだ。
 そっと空洞の中の暗闇を覗き込むと、全くの闇というわけではなく、ほんのり淡く魔導灯が点灯していて更なる地下への階段が続いていた。

「ほう! やはり『地下6階』への入り口だったのだな」

 アモンがいかにも面白そうだという感じで呟き、そしてコホンと咳払いをする。

「もしもガルドルドの警備機能が俺の予想するものならば……ここからは俺が盾として先頭に立とう」

 警備機能セキュリティ
 それって何だろう?

「あ、待ってよ! あの宝箱……どうするの?」

 俺は扉に気を取られていたが、この地下5階には宝箱があった。
 何者かがまめに中身を入れているという曰く付きのものだ。
 どうやらジュリアは性格上、ずっと気になっていたようだ。

 俺はジュリアに声を掛け、宝箱の傍に寄ってみた。
 しかし案の定と言うべきか、宝箱には鍵がかかっている。
 
 鍵穴が違うので、これは持っている魔法鍵では開きそうもない。
 それに俺の『勘』が告げているが、強力な魔法の気配がある。
 どうやら『罠』も仕掛けられているらしい。
 下手に手を出すと『やばい』何かがある。

 現在、俺達のクランには罠を外したり鍵を開ける、プロの『シーフ』が居ない。
 『開錠』の魔法でもあればと思って聞いてみたが、誰も行使出来ないみたいだ。

 残念だがここはひとまず諦めるしかない。
 俺はゆっくりと首を横に振ると、ジュリアも苦笑して頷いた。

 そうしている間も、アモンとイザベラは地下への階段を覗き込んでいる。

「さあ、トール。行くぞ!」

 アモンの重々しい声に従い、俺達は階段に足を踏み入れたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生した元社畜ですがタッチの差で勇者の座を奪われたので紆余曲折あって魔王代理になりました ~魔王城の雑用係の立身出世術~

きのと
ファンタジー
社畜だった俺が転生したのは、大人気RPG『ワイバーン・クエスト』。これからは勇者としてがんがんチートする予定が、なぜか偽勇者として追われる羽目に。行く場をなくした俺は魔王城で見習い雑用係として働くことになったが、これが超絶ホワイトな職場環境!元気すぎるウサ耳の相棒、頼りがいある上司、セクシーなお姉さまモンスターに囲まれて充実した毎日を送っていた。ところがある日、魔王様に呼び出されて魔王城の秘密を打ち明けられる。さらに魔王代理を仰せつかってしまった。そんな大役、無理だから!どうなる、俺の見習いライフ⁉

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...