真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
76 / 205

第76話「迷宮の秘密」

しおりを挟む
 地下3階で戦ったのは蟻酸ぎさんを大量に吐き散らす、気持ち悪いくらい大きい蟻の大群。
 もしくは、相変わらず豚にしか見えないオーク。
 いずれも結構な強敵だが、戦いに慣れて来た俺達には大体楽勝であった。
 
 俺が本当にヤバイと思った相手は大蟷螂ビッグマンティスと呼ばれる魔物だけである。

 通常種でも共食いをするような、獰猛な雌の蟷螂かまきり
 このとんでもない昆虫がそのまま大型の魔物になったような奴で、鎌状になった前脚は下手な剣よりも遥かに鋭利。
 
 何せ革鎧は勿論、薄手の金属鎧も紙のように切り裂いてしまう。
 地下3階で初心者のクランが淘汰される主な理由はこいつの存在だという。
 
 動きも、結構敏捷びんしょう
 幻惑するような動きを見せ、獲物を混乱させて翻弄する。
 そして頃合を見て、一気に首を刎ねるか、相手の身体を怪力で絡め取って丸かじりをする。
 と、いうのが奴等の戦法で考えただけでも怖ろしい。

 そんな相手だから、俺も最初は躊躇《ちゅうちょ》した。
 たかが虫とはいえ体長は3m以上、体高は1m以上もある。
 小型の肉食恐竜ティラノサウルスという趣きなのだ。
 実際に見た人には分かるだろうが、あの感情の欠片《かけら》もない三角の眼から見据えられたら震えも来よう。
 
 元々小心な俺にとって、怖くないわけがない。

 しかしアモンの指示は大蟷螂ビッグマンティスがたった1匹な事もあり、またもや「俺が単独で戦え」という無情なものであった。
 最後は例によって、愛する嫁達の安全を盾にとって迫って来たのだ。

 しかし! 
 
 そんな俺も徐々に覚醒しつつあった。
 最初から『俺様最強』では無いが、しかるべき師につけば才能が開花する。
 邪神様の言う通りであり、このまま行けば師匠は悪魔アモンという事になる。
 大笑いされたが、俺だって今なら笑える。
 神の使徒の師匠が、凶悪な大悪魔なのは皮肉だから……

 そんな訳で大蟷螂ビッグマンティスと正対した俺だが、最初はやはり様子見。
 大蟷螂はいつもは餌とみなす相手に対するのと同じ様に、羽を大きく開き、身体を左右に振って俺を幻惑しようとする。
 しかし、相手が出す肉食獣特有の殺気に満ちた魔力波オーラは至極分り易い。
 次に奴がどう動くか、どのような攻撃を仕掛けて来るかが、丸分かりなのだ。

 俺は某アニメの主人公のように相手の動きを予測し、懐に飛び込むと一気に首を刎ねた。

 一撃必殺!

 俺の動きに対して思わずアモンの口から「ひゅう」と音が洩れる。
 口笛のようだ。
 どうせ、俺のやった事を真似したのであろう。

 あいつ!
 やけに嬉しそうじゃないか?
 さっきの火炎へ拍手喝采のお返しか?

「ええと……」

 まあ、良い。
 余計な事を言って揉めると面倒なので、さっさと戦利品の獲得だ。

 ジュリア曰く……
 大蟷螂《ビッグマンティス》の前脚は武器を作る際、稀少な部位になるという
 俺は白い腹を晒して倒れている蟷螂の骸から、左右それぞれ1m近くはある前脚を切り離すと収納の腕輪に入れたのである。

 大蟷螂と戦った後、俺達は真っ直ぐに地下4階への階段を目指す。
 階段に辿り着くまでにオークやゾンビの群れが出現したが、相変わらず俺達は何なく倒して進んだ。
 
 アモンが俺に聞いて来る。

「トール、どうだ? 魔力波オーラ読みの方は?」

 教師アモンは俺の戦い振りを、じっと観察していた。
 大蟷螂との戦いでコツを掴んだ俺が圧倒的な勝利を収めたからであり、戦いへの手応えを聞きたかったに違いない。

「ぼちぼち……だな」

「ぼちぼち……か。まあ良いだろう」

 悪魔らしくないアモンの慈愛に満ちた眼差しに、俺は父のような兄のような温かいものを感じていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 コーンウォール地下迷宮地下4階への階段付近……

 この階段付近も幸い待ち伏せをしている敵は居なかった。
 なので、俺達は車座になって簡単な作戦会議を行う。
 念の為、イザベラには魔法障壁を発動させて貰う。
 
 何か、久々の休憩だ。
 意外にも、全員がリラックスしている。
 怖ろしい迷宮の中で、温かい紅茶を飲んで皆でくつろぐのも奇妙な感覚だ。

「でも……不思議だね」

 ジュリアが首を傾げる。

 くう!
 ジュリアが堪らなく可愛いっ。
 ここが危険な迷宮ではなく、更にアモンも居なければ「きゅっ」と抱き締めている所。
 しかし、何が不思議なんだろう?

 俺が「きょとん」としていると、ジュリアは口を尖らせた。
 「もうっ」という表情になる。

「トールったら! 少しは気付いてよ。あたし達がこの迷宮を結構探索していても、あれだけ居た他の冒険者のクラン達と全然遭遇しないじゃないか?」

 成る程!
 確かにそうだ。
 俺達の前にあれだけ並んでいた冒険者達と、全然会わないのは何故だろう?
 50人位は先行していたよな~

「それは俺が説明しよう」

 口を開いたのはやはりアモンであった。

「この迷宮は多分様々な異界と繋がっているのだろう?」

 異界?
 異界って俺の知識通りで良いのかな?

「異界って天界や冥界も含めて、人間が生きる現世うつしよと違う世界……それで正しいのかな?」

 俺の言葉を聞いたアモンは「ふん」と鼻を鳴らす。
 そして、面白そうに笑うと俺を見つめた。

「ほう! トールは中々、知識はあるようだ」

 おお、アモン先生に褒められた。
 それで?

「後は、俺が補足してやろう。この迷宮で言えば、多分冒険者が入るごとにそれぞれが違う異界の同じ構造の迷宮へと飛ばされる。そう考えれば他の冒険者は居ないのも辻褄が合う。階層ごとに湧き出る怪物も、ある一定の決まりを設けてどんどん補充されているのに違いない」

「凄いな、それ。もしかして造ったのは……」

「ははは、やはりいにしえの旧ガルドルド魔法帝国であろうな……さすがに何の為かは分からんが」

 成る程ねぇ!
 
 それって俺が昔に熱中した、ゲームのような仕組みじゃないか。
 やったのは、入る度に構造が変わる迷宮だったっけ。
 それにしても悪の魔法使いが単に迷宮を作るだけと違って、入る度に冒険者を異界に飛ばす迷宮ってどんだけ大掛かりなんだ。

「……地下4階の対策を考えようか」

 俺が例によって中二病的な空想に耽っていると、またもやアモンの重々しい声がした。

 そうだな。
 買った地図によれば、地下4階からは魔物が一気に強くなるのだ。

 まず注意するのは、『死を呼ぶ黒妖犬』とも呼ばれ、猛火を吐く子牛程の体躯を持つ獰猛どうもうなヘルハウンド。
 次にオークなど及びもつかない膂力りょりょくを誇る人喰い鬼オーガ
 そして、生前は一流の腕前を持っていた剣士や騎士を不死者アンデッド化したスケルトンウォリアーという骸骨剣士。
 他にも凶悪な魔物共が手薬煉てぐすね引いて待っているらしい。

「相手は一気に強くなるが……トールの潜在能力ならば何とかなるだろう。その為には魔力波オーラ読みをもっと極める事だ」

 魔力波読みって……そんなに万能なんだ。
 よっし、極めるぞ~。

 そんな俺の心を読んだように、アモンが呟く。

「魔力波読みは便利な技だが、過信するのは禁物だぞ」

 何故?
 どうして?

「上級術者や上位の魔物にはわざと偽りの魔力波を出して攪乱かくらんする者が居るからだ」

 偽りの魔力波オーラ
 何、それぇ!?

「更に高みへと登るには、そういった技も破らねばならない」

 アモンに釘を刺された俺は、渋面を作って肩を竦めるしかなかったのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...