真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
71 / 205

第71話「俺達は賭けの対象」

しおりを挟む
 コーンウォール迷宮は旧ガルドルド魔法帝国の遺跡である大規模な街跡にて偶然に発見された。
 この街跡はかつて創世神の神殿があり、神の様々な恩恵を受け栄えた街だったと古文書には記されている。
 
 迷宮への入り口は巧妙に隠されていた。
 偶然ともいえる発見は、倉庫を造ろうとした地元の農民が遺跡の壁に穴を開けたのがきっかけだった。
 放置され荒れ果てていた遺跡がヴァレンタイン王国の管轄になり、キャンプが出来て発展して行ったのは迷宮のお蔭である。

 肝心の迷宮はといえば、構造はシンプル。
 複雑な罠や仕掛けも無い地下5階の仕様だ。
 発見されてから5年以上が経過している為、昇降する階段の位置どころか出没する魔物も特定され市販の地図に反映されているくらいである。
 俺が冒険者ギルドで購入したのは、これまで迷宮に入った冒険者達の情報を元に作り上げたそんな市販の地図なのだ。

 迷宮の入り口には、キャンプ専属の衛兵がふたり立っている。
 これは様々な冒険者の迷宮への出入りの確認と、中の魔物が這い出て来ないかという監視の為に置かれていた。

 迷宮に潜る、冒険者達の朝は早い。
 日の出前から、入り口に行列を作る。
 今朝も例外ではない。
 俺達は早起きして朝の6時には来たのに、先客がもう50人以上も並んでいたのだ。

 ジュリアが珍しく、雰囲気に圧倒されていた。

「凄いね……皆、一攫千金を狙っているんだろうけど」

「トールが買った地図を見ると、中の魔物を倒すだけじゃ全然元は取れないね」

 俺の嫁という立場同士、さらにいろいろな事があった。
 その為か、ジュリアとイザベラの絆はより深まっている。
 これはとても喜ばしい。

 待つ事30分。
 ようやく、俺達クランが迷宮に入る順番がやって来た。

「うん? お前等、この辺では見ない顔だな」

 話し掛けた衛兵が呟くと、もうひとりの衛兵がすかさず手を横に振った。

「俺は知ってる。先に並んでいる冒険者から聞いたぜ。怖ろしい顔をした大男に黒髪の痩せ男、そして銀髪の可愛い女の子と商人風の同じくらい可愛い女の子……ははは、お前等は賭けの対象になっているんだよ」

 何だよ……賭けの対象って?

「お前等が生きて迷宮から帰って来れるかどうかがさ」

 はぁ!?
 この世界は娯楽が少ないって聞いていたけど。
 馬鹿野郎……
 人の生き死にを賭けのネタにするなっての。
 あ!

 一瞬、不吉な予感が、俺の頭をよぎった。

「それって……まさか?」

 衛兵はそんな俺の心を見透かしたように笑う。

「おお、気付いたか? お前、満更馬鹿じゃないな」

「何だと?」

「まあ聞け、これは忠告だ。死ぬ方に賭けた奴から見ればお前等が死ぬと結構な金が手に入る。迷宮内で冒険者同士の争いは一応ご法度になっているが、何が起こるか分からないぞ」

「…………」

「せいぜい、どさくさに紛れて殺されないように気をつけな」

 むう!
 こりゃ、本当にやばいかもしれないぞ。
 迷宮に出没する人間や魔物ばかり気にしていたけど目の前のクランがいきなり襲って来るって事もあるんだ。
 ……絶対に気をつけないといけない。

「そろそろ、行くぞ……」

 俺の背後から、アモンが声を掛ける。
 頷いた俺は、ゆっくりと迷宮の中に入って行った。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ……俺達は今、迷宮内を歩いている。
 
 地図があるから迷宮の攻略なんか楽。
 普通はそう思うだろう。
 しかし迷宮っていうのは、俺が想像した以上に不便である。

 迷宮にもよるだろうが、このコーンウォール迷宮、明かりが殆ど無い。
 地下1階の入り口から暫くは、魔導ランプがともされていたが、少し行くと殆ど闇。
 
 これは辛い。
 
 閉所恐怖症の奴ならすぐパニック状態になるであろう。
 携帯用の魔導ランプは用意したが、先程の話を聞いて使用を控えた。
 こちらの明かりを目当てに、同じ人間から奇襲攻撃されたら……
 防ぎきれないからだ。

 幸い俺は、夜目が利く。
 邪神様が改造してくれた身体は戦いには向いていた。
 五感も鋭くなるから敵の足音などは勿論、結構遠くの生き物の息遣いまで耳にも入って来る。
 
 そんなわけで、このクランでは俺が攻撃役アタッカーをやるが索敵も担当。
 いわゆるロールプレイングゲームで言えばシーフ役もやる。
 シーフ担当は、危機回避能力に長けたジュリアにも協力して貰うつもりであったが、少し暗闇が怖いみたい。
 俺だってこれほど夜目が利かなければびびるし、女子なら無理もない。

 クランの並びはというと俺が先頭をきり、俺ほどではないが夜目が利くイザベラが番手、ジュリアが3番目、殿しんがりを護るのがアモンである。
 
 普通のゲームの考え方であれば1番体力の無いジュリアが最後方。
 だが、後方からの奇襲の可能性も考えてアモンに最後方に盾役として入って貰った。

 こうして……
 下へ降りる階段を目指して、俺達は出発したのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...