69 / 205
第69話「戦う商売人」
しおりを挟む
ジュリアが勢いで宣言したクラン『バトルブローカー』……
嘘のような本当の話で、その名前が俺達の正式なクラン名になってしまった。
ボキャ不足な俺が、他に良い名前を思いつかなかった事もあるけど……
『クラン バトルブローカー』まあ、語感は良いと思う。
俺はともかく、超絶美少女ふたりと巨漢の戦士という目立つクランメンバー。
なので、冒険者ギルドに正式登録すると周りの冒険者には早速知られる事になったのである。
このクラン、正式には俺とジュリアとイザベラの3人構成。
アモンだけは冒険者ギルドに正式な登録をしていない。
あくまでも助っ人という形になった。
無事クラン登録も済んだので、早速準備にかかる。
冒険者ギルドを出て、コーンウォール遺跡のキャンプに軒を並べている店を覗いてみた。
迷宮に来る冒険者の為に発展したキャンプだけあって、武器防具に始まり、魔道具、魔法薬など迷宮探索に必要な店は全て揃っていた。
俺の見立てではジュリアに何か回復系の魔道具を持たせれば、クランバトルブローカーのバランスは良くなると思っている。
このキャンプの店舗は皆、方形住居もしくは円形住居と言う簡素なもの。
店はたくさんあるので、どの店が良いとか俺には分からない。
さすがのジュリアも、このキャンプの内情までは通じていない。
本当はそこらの冒険者数人にでも聞いて、評判の良い店を探すのがベストだろう。
だけど、今の俺達には時間がない。
そのような悠長な事はしていられない。
いくつか店を見た中で、アンソニー魔道具店という看板が目に留まる。
客も今数人が出て来たところ。
ここは店構えの雰囲気及び勘で……
俺達は、何か良い出物があればと入ってみたのである。
「ああ、いらっしゃい。アンソニー魔道具店にようこそ」
カウンターの奥に居た、店主のアンソニーは30代前半の優男だ。
背は170cmくらい。
顔色が異常に白く、不健康なくらい痩せている。
「この娘は魔法使いではないんだが……そんな女の子でも使えるような回復系の魔道具はあるかな?」
「回復系? じゃあこの魔法杖はどうかな?」
店主のアンソニーが提示したのは、小ぶりな1本の杖であった。
何かの金属で作られた細めの杖だが、先端に何か透明な宝石が装着されている。
「その杖の効能効果、使い方、そして最後に値段を教えてくれないか?」
アンソニーが示した商品を見て、何となく予想はつく。
だが、俺は改めて説明を求めた。
俺の反応を見て、アンソニーは「売れる」と見込んだらしい。
笑顔を浮かべて、説明を始める。
「効能効果は……回復の小規模魔法である治療を10回使える」
「へぇ、回復魔法をね、良いね」
「ああ、良い商品だぞ。魔法杖自体はミスリル製の単なる魔法杖さ。しかし聞いてくれ、凄く便利なんだ」
「凄く便利?」
「おお、先端に埋め込む魔法水晶を付け替えればいろいろな使用目的の魔法杖になる。現在は、回復用の魔法水晶が付いているって事」
おおっ!
ミスリルか!
オリハルコンに続き、中二病御用達金属が来た~っ!
自分でも笑顔が溢れるのが分かる。
今の俺はにっこにこしているだろう。
「成る程! ミスリル製の万能魔法杖って事だな。で、使用方法は? ねぇ、教えてくれ、早く!」
勢い込んで聞く俺に、アンソニーは少し引き気味だ。
「あ、ああ。あんたのリクエスト通り、これは魔法使いじゃなくても使える優れものなんだ。使い方は簡単。発動対象に向けて魔力を僅かに込めるだけさ」
「へ? それだけ」
「ああ、魔法使いじゃない、常人の魔力量で充分に発動出来るから」
店主アンソニーの言う通り、人間には全て魔力があるというのが、この世界の常識だ。
魔力とは人間の気力を支える精神の燃料。
そう言ったら、分かり易いだろうか。
ちなみに魔法使いは魔力を使って、常識を超えた事象を起こせる者の事。
……これって全部、ジュリアからの受け売りだけどね。
「これは買いだ! 魔法使いじゃない者でも使える杖なんて滅多に無いよ!」
アンソニーは強調した。
この魔法杖は、便利で稀少な魔道具だと。
確かに俺もそう思う。
後は金額の問題だろう。
「ああ、良い商品だな。じゃあ最後に値段を教えてくれ」
「ふふふ、それなりの価格さ。何たってあらゆる金属の中では魔法伝導が1番良くて高価なミスリルで出来ているんだからさ」
アンソニーは商品が安くは無い事を匂わせた。
「ずばり幾らなんだ?」
「金貨100枚だな、ずばり100万アウルム! 付け替え用の魔法水晶は杖を買ってくれたらサービスして1つ10万アウルムで譲るよ」
俺とアンソニーの会話を先程から、じっと聞いていたジュリア。
「ちょっと待って!」
手を挙げたジュリアはにこりと笑う。
我が嫁ながら本当に可愛い。
しかし綺麗な薔薇には棘がある。
ここから、ジュリアの本領が発揮されたのであった。
嘘のような本当の話で、その名前が俺達の正式なクラン名になってしまった。
ボキャ不足な俺が、他に良い名前を思いつかなかった事もあるけど……
『クラン バトルブローカー』まあ、語感は良いと思う。
俺はともかく、超絶美少女ふたりと巨漢の戦士という目立つクランメンバー。
なので、冒険者ギルドに正式登録すると周りの冒険者には早速知られる事になったのである。
このクラン、正式には俺とジュリアとイザベラの3人構成。
アモンだけは冒険者ギルドに正式な登録をしていない。
あくまでも助っ人という形になった。
無事クラン登録も済んだので、早速準備にかかる。
冒険者ギルドを出て、コーンウォール遺跡のキャンプに軒を並べている店を覗いてみた。
迷宮に来る冒険者の為に発展したキャンプだけあって、武器防具に始まり、魔道具、魔法薬など迷宮探索に必要な店は全て揃っていた。
俺の見立てではジュリアに何か回復系の魔道具を持たせれば、クランバトルブローカーのバランスは良くなると思っている。
このキャンプの店舗は皆、方形住居もしくは円形住居と言う簡素なもの。
店はたくさんあるので、どの店が良いとか俺には分からない。
さすがのジュリアも、このキャンプの内情までは通じていない。
本当はそこらの冒険者数人にでも聞いて、評判の良い店を探すのがベストだろう。
だけど、今の俺達には時間がない。
そのような悠長な事はしていられない。
いくつか店を見た中で、アンソニー魔道具店という看板が目に留まる。
客も今数人が出て来たところ。
ここは店構えの雰囲気及び勘で……
俺達は、何か良い出物があればと入ってみたのである。
「ああ、いらっしゃい。アンソニー魔道具店にようこそ」
カウンターの奥に居た、店主のアンソニーは30代前半の優男だ。
背は170cmくらい。
顔色が異常に白く、不健康なくらい痩せている。
「この娘は魔法使いではないんだが……そんな女の子でも使えるような回復系の魔道具はあるかな?」
「回復系? じゃあこの魔法杖はどうかな?」
店主のアンソニーが提示したのは、小ぶりな1本の杖であった。
何かの金属で作られた細めの杖だが、先端に何か透明な宝石が装着されている。
「その杖の効能効果、使い方、そして最後に値段を教えてくれないか?」
アンソニーが示した商品を見て、何となく予想はつく。
だが、俺は改めて説明を求めた。
俺の反応を見て、アンソニーは「売れる」と見込んだらしい。
笑顔を浮かべて、説明を始める。
「効能効果は……回復の小規模魔法である治療を10回使える」
「へぇ、回復魔法をね、良いね」
「ああ、良い商品だぞ。魔法杖自体はミスリル製の単なる魔法杖さ。しかし聞いてくれ、凄く便利なんだ」
「凄く便利?」
「おお、先端に埋め込む魔法水晶を付け替えればいろいろな使用目的の魔法杖になる。現在は、回復用の魔法水晶が付いているって事」
おおっ!
ミスリルか!
オリハルコンに続き、中二病御用達金属が来た~っ!
自分でも笑顔が溢れるのが分かる。
今の俺はにっこにこしているだろう。
「成る程! ミスリル製の万能魔法杖って事だな。で、使用方法は? ねぇ、教えてくれ、早く!」
勢い込んで聞く俺に、アンソニーは少し引き気味だ。
「あ、ああ。あんたのリクエスト通り、これは魔法使いじゃなくても使える優れものなんだ。使い方は簡単。発動対象に向けて魔力を僅かに込めるだけさ」
「へ? それだけ」
「ああ、魔法使いじゃない、常人の魔力量で充分に発動出来るから」
店主アンソニーの言う通り、人間には全て魔力があるというのが、この世界の常識だ。
魔力とは人間の気力を支える精神の燃料。
そう言ったら、分かり易いだろうか。
ちなみに魔法使いは魔力を使って、常識を超えた事象を起こせる者の事。
……これって全部、ジュリアからの受け売りだけどね。
「これは買いだ! 魔法使いじゃない者でも使える杖なんて滅多に無いよ!」
アンソニーは強調した。
この魔法杖は、便利で稀少な魔道具だと。
確かに俺もそう思う。
後は金額の問題だろう。
「ああ、良い商品だな。じゃあ最後に値段を教えてくれ」
「ふふふ、それなりの価格さ。何たってあらゆる金属の中では魔法伝導が1番良くて高価なミスリルで出来ているんだからさ」
アンソニーは商品が安くは無い事を匂わせた。
「ずばり幾らなんだ?」
「金貨100枚だな、ずばり100万アウルム! 付け替え用の魔法水晶は杖を買ってくれたらサービスして1つ10万アウルムで譲るよ」
俺とアンソニーの会話を先程から、じっと聞いていたジュリア。
「ちょっと待って!」
手を挙げたジュリアはにこりと笑う。
我が嫁ながら本当に可愛い。
しかし綺麗な薔薇には棘がある。
ここから、ジュリアの本領が発揮されたのであった。
0
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる