真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
68 / 205

第68話「クランの名は?」

しおりを挟む
 怖ろしい悪魔と契約なんて!
 いかにも嫌そうという雰囲気で言ったジュリア。
 もう既に悪魔が家族に居るのに……勢いでうっかり失言をしてしまった。

 しかしここで素直に謝るのが、ジュリアの良い所。

「御免……イザベラ。言葉の弾みでつい……」

 だがイザベラは、大して気にしていないようだ。
 自分達魔族がいかに人間に怖れられているかを、しっかり自覚しているらしい。
 なので、全然怒っておらず、笑顔で言う。

「構わないよ、気にしないで。普通の人間から見れば悪魔との契約なんて怖ろしいものかもね。でも、人間の死霊術師程度が契約するのは大抵下級悪魔さ。上級悪魔は人間の魂など欲しがらず、人間の夢を喰らうのが好きなんだよ」

 は?
 何?
 今度は俺が驚いた。

「え? ゆ、夢を……喰らうの?」

「ああ、夢だよ」

「悪魔が夢を? 凄く……意外だ」

「何、言ってるの。魂、魂ってクレクレになるのは今や悪魔の中では流行《はや》っていないもの」

 え?
 それって、流行はやりなの?
 何か、違う気がするし……魂を取られる事自体、人間から見たらとんでもないし。

 そんな俺の怪訝そうな顔もスルー。
 イザベラは、目を潤ませて熱~く語る。

「人間が叶えたい夢って、本来は甘くて素晴らしいモノだろう。上級悪魔はそんな夢を持つ人間と契約して力を貸して夢を叶えさせるんだ」

「そう……なんだ」

「うん! そして夢が叶った瞬間に味わう人間の喜びを喰らうのさ。私は夢を食べた事はないけれど、食べ慣れると魂なんか見向きもしないって言うよ」

 ううむ……夢を喰らうなんて初耳だ。
 悪魔って、もしかして獏の一種?
 まあ、それは冗談だけれども、確かに始末が悪いかも。
 人間が幸せを感じる、1番美味しい瞬間を持って行くんだからな……
 
 盛り上がってそんな話をしていると、アモンがぶっきらぼうに言う。

「どうする? すぐに迷宮へ行くか?」

 しかし俺は首を振る。

「いや……まず冒険者ギルドの支部に行って迷宮の情報集めだ。その後に店を見て不足している物資がないか確認した上で宿屋で作戦会議を兼ねた休息。それから出撃だな」

 俺の言葉を聞いていたアモンが、僅かに微笑む。
 馬鹿にしているとかではなく、余は満足って感じ。
 
 あのさ、悪魔侯爵様。
 何かこの前、俺を叱った時から先生ぶってない?
 まあ、俺にはこの世界で師匠が必要とか邪神様も言っていた。
 だから、別に良いけどさ。

「うむうむ……いつもよりは、慎重だな。少しは成長したようだ」

「そいつはどうも! さあ行こうか」

 俺は傍らに立っていた衛兵に冒険者ギルドの場所を聞く。
 そして3人へ、早く行こうと促したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 コーンウォールのキャンプにある冒険者ギルドの支部は、思ったより大きかった。
 やはり、迷宮によって生み出される冒険者の需要に応える為と言って良いだろう。

 ジェトレ村の支部には及ばないものの3階建ての大きな建物でこのキャンプの中でも1、2を争う大きさだったのだ。
 だが、この支部では迷宮関係以外の依頼は殆ど無い。
 迷宮関係の依頼とは、大体がクランメンバーの募集なのである。

 それだけ冒険者は消耗が激しい仕事なのだろう。
 まさにハイリスク、ハイリターンだ。

 冒険者ギルドに入るや否や、俺達はいろいろな冒険者に声を掛けられた。
 ダントツの1番人気は、戦士として圧倒的な存在感のアモンである。

「ぜひウチのクランに!」

「いやいやウチに!」

 次いで人気があるのは俺の嫁である超絶美少女ふたりだ。

「おおお! こんな薄汚い迷宮キャンプに! まさに掃き溜めに鶴だ!」

「うわぁ……あの銀髪の娘……身体のラインが少女から女になる寸前かな、たまらん!」

 おいおい!
 なんか危ない事を言っている奴が居るぞ。

 冒険者ギルドに、男達の邪な欲望が満ち溢れる。
 ジュリアは彼等に対して「しっかり釘を刺したい」と考えたようだ。

「駄目、駄目! あたし達売約済み! この人の妻だから!」

「私もよ~」

「はあ~っ! こ、こんな奴の嫁!?」
「おかしいぜ! 何かの間違いだろう?」
「騙されてるんじゃね?」

 ジュリアとイザベラの言葉に、冒険者達は驚く。
 1番弱そうに見えた俺が、超絶美少女ふたりの旦那。
 違和感がありありなのだろう。

 驚いた冒険者達の反応に、ジュリアが「ムッ」とした様子で返す。

「あたし達はクラン、バトルブローカーよ。リーダーはこのトール・ユウキ、れっきとしたBランク冒険者よ」

戦闘仲買人バトルブローカー!? この男がBランクぅ!?」

 おいおい、クラン戦闘仲買人バトルブローカーって初耳なんだけど……
 戦う商人って……どんなクラン名なんだよ?

 だがジュリアの言葉で、とりあえず俺達を誘ってくる冒険者は居なくなった。
 
 俺はカウンターに行き、いろいろ話を聞いた。
 丁度売っていた、コーンウォール迷宮の地図を小銀貨3枚で購入する。
 
 買った地図によれば、コーンウォールの迷宮は地下全5階。
 聞いた通り最深部には、例の『日替わり宝箱』があるらしい。
 購入した地図には、各階ごとに出没する魔物までがちゃんと記載されていた。
 何か、とっても便利。
 
 でもこれじゃあ、ゲームそのものの世界だ。
 俺の中ではまた例の中二病が、えらく大きな声を出して騒ぎ出したのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...