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第65話「オークの群れを倒せ!」
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俺達は、コーンウォール迷宮を目指して進む。
敵の気配を感じたので、注意しながら。
20分くらい歩いただろうか。
ジュリアとイザベラがいきなり敵の襲来予告を告げた。
「近いわ! この先、10分くらい歩くと奴等に遭遇する。もう襲われている人が居るよ」
「ジュリアの言う通りね。確かに血の臭いがするよ……相手はオーク辺りかな。大群で人間を襲っている」
やっと相手が分かった!
オーク?
う~ん、ゴブとの比較が出来ない。
でも絶対にゴブよりは強い。
間違いない。
畜生、アモンめぇ!
全然、雑魚じゃないじゃん。
でも、血の臭いか……ああ、これか!
確かに俺のチートな鼻腔にも、甘酸っぱく生臭い嫌な香りが漂って来る。
だが……
可哀想な人が襲われている!
よっしゃ、助けるぞ!
などと、俺は絶対にそんな事は言わない。
前にも言ったが、俺は清廉潔白な正義の味方ではないのだ。
それに今の俺は、ひとりではない。
戦鬼アモンは置いといても、愛する可愛い嫁がふたりも居る。
ジュリアは戦えるタイプではないし、イザベラだって戦闘経験はさほど無さそうだ。
ふたりとも俺が抱いた責任を取らねばならない。
守る義務がある。
そのような状況で自分から危険を呼び込むような愚かな行動などありえない。
しかし、アモンは違うようだ。
何かを期待するように俺を見る。
「トール、どっちにしてもこのまま行けば奴等と遭遇する。俺に楽勝したお前の実力、じっくりと見せて貰おう」
俺に楽勝した実力って……あのね。
単なる腕相撲なのよ、分かってる?
でもアモンは「楽勝だ」という。
オークはファンタジーの世界ではゴブリンと並んで、お馴染みの連中だ。
実力的にはゴブの3倍から4倍増しだと考えておけば良いのだろうか?
資料本で読んだ限りでは、そこそこの膂力のみで戦うだけで、利口でも俊敏な魔物でもない。
特殊な奴でなければ魔法も使わなかった筈。
俺が考え込んでいたら、アモンの奴が煽りやがる。
「トール、俺が援護してやる。行くぞ!」
う~、くそ!
俺はもう戦う覚悟を決めるしかないのか。
よっし、決めた。
戦う、覚悟を。
「イザベラ! 俺とアモンで敵を殲滅する。ジュリアを守りながら後方から魔法を撃てるか?」
「まっかせといて! ふたり共頼りにしてるよ」
イザベラがジュリアの腰に手を回して、庇《かば》うような仕草を見せる。
俺はジュリアへイザベラを抱いた事を伝えた。
しかし、イザベラはイザベラで昨夜の出来事を自らジュリアに伝えたらしい。
その為だろうか……
俺の嫁同士という立ち位置で、ジュリアとイザベラの間には絆と言うか連帯感が生まれて来たようだ。
敵に遭遇した時の作戦をどうするか、俺は改めてアモンと相談した。
素人の俺が出した指示にアモンは吃驚《びっくり》しながらも「言われた通りにする」と約束してくれたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
やがて……
注意深く進んだ俺達は、ジュリアとイザベラが察知したオークの群れに遭遇していた。
凄い!
ざっと見て、ジュリアの予想を遥かに超えた50匹以上は居る!
こりゃ……結構な数だよ。
オーク共は先日の山賊同様、商人を襲ったらしく馬車が倒れていた。
獰猛な肉食のオークは哀れな犠牲者は勿論、馬車を引っ張っていた馬までも喰らっていたのである。
奴等は離れた場所に現れた俺達を認めたようで、新たな獲物の出現に涎をたらして喜んでいた。
俺は基本……ヘタレだ。
口の周りを真っ赤にして人肉を喰らうオークを目の当たりに見て、身体が震えている。
俺の心の中では再び葛藤が生まれていた。
この凶暴なオーク達に対して、俺の剣の腕は果たして通用するのか?
邪神様に改造された能力は、どこまで奴等に通用するのだろうか?
だが、ここまで来たらやるしかない。
この世界で、これから生き抜いて行く為に!
ジュリアとイザベラという嫁達。
そう、俺の新しい家族を守る為に!
……俺の立てた作戦はこうだ。
並びは前衛に俺、中段にアモン、そして後衛にイザベラとジュリアという布陣である。
俺が前衛で戦い、前衛の俺が討ち洩らした敵を盾役のアモンが掃討しならがイザベラ&ジュリアの盾となる。
最後方では、イザベラがジュリアを守りながら攻撃魔法で俺を援護する。
50匹を超えるオークは、さすがに多い。
俺は深呼吸をして武者震いを止める。
気合を入れる。
そして、
「おおおおおおおおおおっ!」
大声で叫びながら、オークの群れの居る方角へ走り出した。
「トール! 死なないで!」
ジュリアが小さく叫んだ。
傍らのイザベラは、オークの群れに突っ込んで行く俺を見ながら魔法発動のタイミングをじっと計っている。
『爆炎!』
俺が群れに突っ込む少し前に、イザベラの念話による言霊が俺聞えるように発せられた。
悪魔族は無詠唱で容易に魔法を発動する事が出来る。
しかし敢えて声を出すのは魔法の発動を全員が知り、味方の攻撃魔法を受けないようにする、つまり誤爆しない為の措置である。
イザベラの言霊と同時に爆炎の魔法が発動。
大きな火球がオークの群れの中に着弾して、炸裂した。
魔法の威力はもっと上げられるらしいが、今回は俺が連携して戦うので意図的に威力を下げてある。
威力を下げたというが、それでも大きな爆音と共に赤黒い炎が高く立ち昇り、オークの叫び声と悲鳴があがった
奴等は少なくとも10匹以上は斃れ、残りは大混乱に陥っている。
いっけ~!
俺は邪神スパイラルから授かった魔剣を振りかざすと奴等の群れに飛び込んで行ったのだ。
敵の気配を感じたので、注意しながら。
20分くらい歩いただろうか。
ジュリアとイザベラがいきなり敵の襲来予告を告げた。
「近いわ! この先、10分くらい歩くと奴等に遭遇する。もう襲われている人が居るよ」
「ジュリアの言う通りね。確かに血の臭いがするよ……相手はオーク辺りかな。大群で人間を襲っている」
やっと相手が分かった!
オーク?
う~ん、ゴブとの比較が出来ない。
でも絶対にゴブよりは強い。
間違いない。
畜生、アモンめぇ!
全然、雑魚じゃないじゃん。
でも、血の臭いか……ああ、これか!
確かに俺のチートな鼻腔にも、甘酸っぱく生臭い嫌な香りが漂って来る。
だが……
可哀想な人が襲われている!
よっしゃ、助けるぞ!
などと、俺は絶対にそんな事は言わない。
前にも言ったが、俺は清廉潔白な正義の味方ではないのだ。
それに今の俺は、ひとりではない。
戦鬼アモンは置いといても、愛する可愛い嫁がふたりも居る。
ジュリアは戦えるタイプではないし、イザベラだって戦闘経験はさほど無さそうだ。
ふたりとも俺が抱いた責任を取らねばならない。
守る義務がある。
そのような状況で自分から危険を呼び込むような愚かな行動などありえない。
しかし、アモンは違うようだ。
何かを期待するように俺を見る。
「トール、どっちにしてもこのまま行けば奴等と遭遇する。俺に楽勝したお前の実力、じっくりと見せて貰おう」
俺に楽勝した実力って……あのね。
単なる腕相撲なのよ、分かってる?
でもアモンは「楽勝だ」という。
オークはファンタジーの世界ではゴブリンと並んで、お馴染みの連中だ。
実力的にはゴブの3倍から4倍増しだと考えておけば良いのだろうか?
資料本で読んだ限りでは、そこそこの膂力のみで戦うだけで、利口でも俊敏な魔物でもない。
特殊な奴でなければ魔法も使わなかった筈。
俺が考え込んでいたら、アモンの奴が煽りやがる。
「トール、俺が援護してやる。行くぞ!」
う~、くそ!
俺はもう戦う覚悟を決めるしかないのか。
よっし、決めた。
戦う、覚悟を。
「イザベラ! 俺とアモンで敵を殲滅する。ジュリアを守りながら後方から魔法を撃てるか?」
「まっかせといて! ふたり共頼りにしてるよ」
イザベラがジュリアの腰に手を回して、庇《かば》うような仕草を見せる。
俺はジュリアへイザベラを抱いた事を伝えた。
しかし、イザベラはイザベラで昨夜の出来事を自らジュリアに伝えたらしい。
その為だろうか……
俺の嫁同士という立ち位置で、ジュリアとイザベラの間には絆と言うか連帯感が生まれて来たようだ。
敵に遭遇した時の作戦をどうするか、俺は改めてアモンと相談した。
素人の俺が出した指示にアモンは吃驚《びっくり》しながらも「言われた通りにする」と約束してくれたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
やがて……
注意深く進んだ俺達は、ジュリアとイザベラが察知したオークの群れに遭遇していた。
凄い!
ざっと見て、ジュリアの予想を遥かに超えた50匹以上は居る!
こりゃ……結構な数だよ。
オーク共は先日の山賊同様、商人を襲ったらしく馬車が倒れていた。
獰猛な肉食のオークは哀れな犠牲者は勿論、馬車を引っ張っていた馬までも喰らっていたのである。
奴等は離れた場所に現れた俺達を認めたようで、新たな獲物の出現に涎をたらして喜んでいた。
俺は基本……ヘタレだ。
口の周りを真っ赤にして人肉を喰らうオークを目の当たりに見て、身体が震えている。
俺の心の中では再び葛藤が生まれていた。
この凶暴なオーク達に対して、俺の剣の腕は果たして通用するのか?
邪神様に改造された能力は、どこまで奴等に通用するのだろうか?
だが、ここまで来たらやるしかない。
この世界で、これから生き抜いて行く為に!
ジュリアとイザベラという嫁達。
そう、俺の新しい家族を守る為に!
……俺の立てた作戦はこうだ。
並びは前衛に俺、中段にアモン、そして後衛にイザベラとジュリアという布陣である。
俺が前衛で戦い、前衛の俺が討ち洩らした敵を盾役のアモンが掃討しならがイザベラ&ジュリアの盾となる。
最後方では、イザベラがジュリアを守りながら攻撃魔法で俺を援護する。
50匹を超えるオークは、さすがに多い。
俺は深呼吸をして武者震いを止める。
気合を入れる。
そして、
「おおおおおおおおおおっ!」
大声で叫びながら、オークの群れの居る方角へ走り出した。
「トール! 死なないで!」
ジュリアが小さく叫んだ。
傍らのイザベラは、オークの群れに突っ込んで行く俺を見ながら魔法発動のタイミングをじっと計っている。
『爆炎!』
俺が群れに突っ込む少し前に、イザベラの念話による言霊が俺聞えるように発せられた。
悪魔族は無詠唱で容易に魔法を発動する事が出来る。
しかし敢えて声を出すのは魔法の発動を全員が知り、味方の攻撃魔法を受けないようにする、つまり誤爆しない為の措置である。
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威力を下げたというが、それでも大きな爆音と共に赤黒い炎が高く立ち昇り、オークの叫び声と悲鳴があがった
奴等は少なくとも10匹以上は斃れ、残りは大混乱に陥っている。
いっけ~!
俺は邪神スパイラルから授かった魔剣を振りかざすと奴等の群れに飛び込んで行ったのだ。
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