真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第61話「役割分担」

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 戦えるイザベラはともかく、ジュリアを連れて怖ろしい迷宮へ潜るのなら……
 『戦鬼』と呼ばれる、悪魔アモンの同行は渡りに船。
 大幅な戦力アップとなる。
 
 だが、問題はアモンのモチベーションだ。

 普通なら『婚約者寝取られ』だもの……
 ショックだろうし、俺は間男=完全な悪役。
 なので俺は一応、アモンに謝った。
 
 しかし、人間と悪魔の価値観は全く違うらしい。
 彼等の世界では、勝者こそが絶対的な王者。
 負けた方は奴隷扱いされても、文句は一切言えないのだそうだ。
 俺だったら、そんな世界は絶対に嫌だけど。
 
 イザベラの時もそうだったが、俺は勝ったからといって相手をそんなにおとしめるなど出来ない。
 そんな俺の態度が、アモンにはとても不思議に映ったようだ。

「本当にスマン。間男して……」
 
「何故謝る! 真に強い者が名誉も美しい女も得る。至極当然だ」

「いや……結果的に、あんたの婚約者を無理矢理奪った事になるじゃあないか」

「いや、俺は負けた。お前と全力で戦い、完膚なきまでに叩きのめされた。イザベラ様もお前に惚れているようだし、納得している」

 完膚なきまでにって……お前とは普通に腕相撲しただけなんだけど……
 やっぱり……悪魔って不思議な奴等だ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 最後に考えるのが、明日の迷宮攻略の作戦立案。
 ここでは、俺の中二病的な知識が役に立った。
 すなわち各自の能力別による役割分担なのだ。

「冒険者のクランの役割は大まかに分けると攻撃役《アタッカー》、盾役《タンク》、強化役《バファー》、回復役《ヒーラー》の4種類になるよな」

「へぇ、トールったら今日冒険者ギルドの初心者講習受けたばかりなのに凄いね」

 俺とジュリアの会話を聞いていたアモンが、憮然とした表情で反応。

「冒険者ギルドの初心者講習を受けた? 何だと……トール、お前の強さを見たら、それははっきり言って詐欺ではないか」
 
 おいおい!
 詐欺って何!?
 凶悪な悪魔のあんたから『詐欺師』って言われたくない。

 俺は場の雰囲気を変える為に、ひとつ咳払いをして話を戻した。

「全員の能力を再確認する。自己申請して欲しい。基本能力だけで良いが、能力別に役割分担してクランを組むんだ」

「うふ! クランか! 胸がどきどきして来たぞ」

 イザベラが、うっとり目を閉じている。
 
 成る程……やっぱりアモンが言う通り、姉さんの為だけではなく、王女という立場の、縛られた生活から少しでも逃れたかったんだろう。
 だから冒険者ギルドの講習を受けて、どこかで冒険者になるつもりだったに違いない。

「一応、攻撃役《アタッカー》、盾役《タンク》、強化役《バファー》、回復役《ヒーラー》の説明をしておく、良いかな?」

 攻撃役アタッカー:文字通り攻撃を役割とする。但し物理攻撃と魔法攻撃それぞれを得意とする者とに分かれる。

 盾役タンク:壁役とも呼ばれるクランの守備役。敵の攻撃を一身に受ける役割。厳しい攻撃を受けるのを喜びとする変態もたまに居るという。

 強化役バファー:クランの仲間を強化したり、敵を弱体化させたりする役割。盾役ほどではないが、同じ事ばかりやらされて欲求不満になり戦いたがる人が多い。

 回復役ヒーラー:クランの仲間の傷を癒したり、体力を回復させたりする役割。やはり癒し系は良い!

 う~ん、ジュリアをどうしよう。
 戦わない役割だから支援役決定だけど。
 彼女の危機回避能力が上手く生かせれば。
 例えば、シーフとか?

 俺が考えながら4種類の役割を説明すると、いち早く手を挙げたのがイザベラである。

「はいっ、トール! 私は絶対アタッカーが良い!」

「そうか?」

「うん! それも魔法で攻撃したい」

 魔法で攻撃か。
 何となくイメージが湧く。

 俺が見ていたら、イザベラはもう自分の世界へと入っていた。

「うふふふ、得意の魔法でゴブリンやオークをじわじわと焼き殺して行くのが堪らな~い。心地良い悲鳴が聞けるわ~」

 じわじわと焼き殺す?
 心地良い悲鳴って……
 ははは……まあ……良いけど。
 とりあえずはっきりと分かった、イザベラ、こいつはやっぱりドSだ。
 
 攻撃魔法で戦うのが大好きだと、嬉しそうに言うイザベラ。
 俺は改めて尋ねる。

「イザベラ。お前、支援系の魔法は使えないの?」

「支援系? え、ええ? 一応使えるけど……何?」

 遠慮がちに答えるイザベラへ、俺は「ずばん」と直球を投げ込んだ。

「決めた! お前は強化役バファー兼務……これ、決定!」

「えええっ! 酷いわ! 『夫』の横暴に断固抗議します」

 夫の横暴か……
 可愛い奴。

 甘えて悪戯っぽく笑うイザベラに、俺も思わず笑っていたのであった。
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