真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第60話「俺が守るよ」

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 午後11時……

 絆亭の部屋で俺達は打合せをしていた。
 こんなに遅い時間なのに、ジュリアの『顔』で特別に出して貰った紅茶は美味い。
 酔い覚ましには丁度良い。
 
 ……結局、『居酒屋お喋りビストロ ロクファース』では、店名通り話し込んでしまった。
 オリハルコンの情報が得られた後は、バカ息子に怪我をさせたお詫び代わりに散々飲み食いした。
 お陰で、俺達が絆亭へ戻ったのは予定よりだいぶ遅くなった。
 帰還の約束をした午後10時を、20分ほど過ぎてしまったのである。

 絆亭の特別システム……これはジェトレ村の領主と商業ギルドとで交わされた商人保護の取り決めらしい。
 帰還の時間を過ぎたら変事があったと判断されて、女将のドーラさんから通報し、衛兵隊が現場へ駆けつける。
 まるで……某警備会社の出動だ。

 しかし20分オーバーは、ギリギリセーフ。
 ドーラさんは俺達が多少は遅れると考えて、通報を待ってくれていた。
 お陰で衛兵出動という大事にならずに済んだのである。

 このシステムは、商人の安全の為にはありがたい物。
 だが、良し悪しという面も。
 衛兵隊があの場へ来たら、俺が居酒屋の主人を投げ飛ばした事がバレていた。
 完全に過剰防衛というか、相手は罵っただけだから俺は暴行罪で牢屋行き確定だったもの。

 傍らでは何故かアモンが紅茶を飲んでいる。
 最初、俺達とイザベラの関係をてっきり主従関係だと思っていたらしい。
 当然主人はイザベラで、俺達が忠実なるしもべだ。
 
 しかし、俺に対して子猫のように甘えるイザベラを目の当たりにした事。
 自分に圧勝した俺の強さを体感した事等々。
 諸々の事実を聞いて、ようやく俺達とイザベラの関係を受け入れる事が出来たみたい。

 でも絆亭は商人専用の宿なのに何故、もろ戦士のアモンが宿泊出来るのか?
 実は……
 今のアモンの立場は、商人の俺に雇われている従士という事にしたから。
 
 誇り高い上級悪魔にとって、俺みたいな人間の従士になるのは屈辱以外の何ものでも無いだろう。
 だが、アモンは割り切った。
 実際に俺に負けているから仕方がないし、そうしないとこの宿には一緒に泊まれない。

 でもさ、そこまでしなくても。
 アモン、あんたは自分の泊っている宿へ戻れば良いのに……

 俺は一応そう伝えたが、アモンは頑として一緒の宿に泊まると言って聞かなかった。
 だけど、さすがに全員が一緒の部屋というのは勘弁して貰う。
 俺達3人は夫婦になったからだ。
 
 昼間の事もあってジュリアが俺にくっついて離れなかったのと、イザベラも俺の手を握って放さないのはご愛嬌。

 前置きがすっかり長くなってしまったが、居酒屋ロクファースで俺が出した結論は4人でコーンウォールの迷宮を探索するというものであった。
 当然、目的はオリハルコンの手掛かりを求めて。
 手元にある魔法鍵の謎を解けば道は開ける……
 俺にはそのような確信が生まれていたのだ。

 迷宮での俺は実戦不足が玉に瑕だが、何とかなるのではと楽観的。
 邪神様に改造された、自分の実力が徐々に分かって来たから。
 
 鍛えれば強くなる=あの初歩の訓練で伝説の剣技を真似られた。
 何せ、冒険者ギルドの上位ランクのおっさんを子供扱い。
 
 パワーがありすぎると言っていたのにも納得。
 悪魔族でも上級のイザベラやアモンにも圧勝したのだ……単なる腕相撲だけど。
 
 そのイザベラ。
 最初は迷宮行きを危惧していたが、実力はアモンが太鼓判を押した。
 彼が言うには剣を含めた武技は勿論の事、悪魔族では有数の才能を持つ魔法使いだと聞いて安心。
 
 まあ王女様だから実戦経験がどこまであるか分からない。
 だが、よくよく考えたら魔族でも最上位の悪魔族、それも王族が雑魚のゴブやオーク如きに負けるなどとは常識的に考えられない。
 イザベラ本人に聞いても一応どこに行っても恥ずかしくないくらい戦闘の訓練は積んだという。
 その上、イザベラが装備している武器と防具は業物らしいショートソードと頑丈そうな革鎧。
 迷宮探索への準備も万全である。

 そしてアモン……
 気になる能力とはいかに……
 
 スペック確認を本人へすると、驚く程に頑丈な肉体を誇り、背負った大剣を軽々扱う凄まじい膂力を持つらしい。
 様々な魔法にも長け、口からは猛炎を吐くと言う。
 
 あれ?
 それって、やっぱり?

 アモンという名も含めて資料本に記載されていた俺の知っている上級悪魔にそっくりだ。
 イザベラ曰く、実戦経験も豊富で悪魔王国でのふたつ名は「戦鬼アモン」
 戦鬼……実に怖そうなお名前である。

 そんなわけで、俺が唯一不安視したのはジュリアである。
 装備は幸いモーリスさんの店で揃えていたのは良かったが、危険を避けるというやり方で生きて来た為、彼女には実戦経験が殆ど無い。
 
 かと言って……このまま残すわけにもいかないよなぁ……

「あたし、絶対一緒に迷宮に行くから! トールに置いて行かれてひとりきりは嫌だ!」

 恐る恐る聞いた所、ジュリアは俺の留守番要請を断った。
 
 ジェトレ村に向う道中の襲撃を冷静に回避した人物と同じと思えないくらいきっぱりと。
 強硬に迷宮への同行を主張したのである。
 
 こうまで言われちゃ仕方が無い。
 ジュリアは俺が守るしかないな。

 俺は必死に訴えるジュリアへ、俺は笑顔で同行のOKを出していたのであった。
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