真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第51話「売らない理由」

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 ここはジェトレ村、商業ギルド内オークション会場。
 
 円形のフィールドに商品を引っ張り出してアピールするみたい。
 まるで闘技場のようだ。
 結構な広さがある。
 千人以上は楽に入りそうだ。

 その会場の片隅で、俺とジュリア、イザベラは話している。
 まだ人影はまばらだから、大きな声さえ出さなければ内緒話も可能である。 

 俺が賢者の石、反魂魂、そして銅製の指輪の出品中止を提案すると、ジュリアもイザベラも不思議そうな顔をした。

 賢者の石は相当な高値が見込める。
 東方の不思議アイテム反魂香も、何らかの反応がある筈。
 そして魔道具『守護の指輪』を装着すると、さほど強力ではない対物理の魔法障壁の効果が発生。
 僅かながらも、敵の物理的攻撃から身を守る事が出来る。
 
 余り高価なものではないが、冒険者で所持している者は多い。
 ある意味、冒険の必須アイテムと言える。

「全部売れば少しは利益になるのに、何故売らないの?」

 俺の真意を測りかねているらしい、ジュリアがぽつりと言った。
 いつもは勘の良い彼女も、ピンと来ないようだ。

 ここは……正直に話さないとまずいだろう。

「まず賢者の石と反魂香だけど……売らない理由は……これから、俺達の運命に大きく関わるから」

「へ?」
「何だ? それは」

 案の定というか、ジュリアもイザベラもきょとんとしてる。
 そりゃ、そうだ。
 これじゃあ、ふたつの商品を売らない理由の説明にはなっていない。
 
 だが、仕方がない。
 他に言いようは、ないのだから。

「悪いが、確約は出来ない……だけど、俺の勘が、内なる声が絶対に売るなと告げて来たのさ」

「……それって……全然不確かだよね。どうしてそこまで?」

「ヤバイ気配を避けるジュリアの勘と一緒さ。このふたつを売っちゃいけないっていう……確信だな」

「確信? ……分かった。じゃあ今回は売らないでおこう」

 ジュリアは何とか納得してくれた。
 自分の勘としかいえない、危機回避能力を引き合いに出されたからだ。
 さあ後はイザベラにも了解して貰わないと。

「イザベラ、悪いな。もし賢者の石を売っていれば買えたのにとか、という事になるかもしれない」

「いやいや、構わない! トール達の金を当てにしちゃいけないだろう。私は持参した宝石を売った金で正々堂々オリハルコンをゲットする」

「ありがとう!」

「いや、こちらこそだ。そこまで私の事を気遣ってくれてありがとう」

 あれ?
 イザベラがぺこりと頭まで下げた。

 そして顔を上げる。
 爽やかに笑うイザベラ。
 とっても魅力的。
 
 ああ、嬉しい。
 ジュリアには悪いけど……俺、イザベラも好きになりそう。
 真っすぐでさっぱり。
 礼儀正しい。
 きりっとした姉御肌。
 その反面、俺に対しては甘えん坊でとても可愛いから。

「トール!」

 そんな事を思っていたら、ジュリアから……
 ヤバイ!
 妄想がバレた?

「ねぇ、トール。ダックヴァルさんから貰った指輪を売らない理由は? 冒険者には人気があるから売れると思うけど」

 ホッ……違った。
 じゃあ、今度は指輪を売らない説明をしないとね。

「こっちは別の理由がある」

「別の?」
「何?」
 
 指輪を売らない理由が別にあると聞いたジュリアとイザベラ。
 勘が良いふたりは俺の態度を見て何かあると思ったようだ。

 ここでズバリ言おう。

「あのおっさんが、お前達ふたりを『彼女』として大事にしろって事さ」

「「彼女!?」」

 ふたり共、いきなり俺の口から固有名詞が出て吃驚している。
 
 そこで俺は黙って両名の薬指に守護の指輪を嵌めてやった。
 これら魔法の指輪は不思議な能力を持っている。
 普通の指輪とは違い、サイズが自由自在に変わるのだ。
 今度はイザベラが、首を傾げた。
 不思議そうに言う。

「ト、トール……薬指に指輪を嵌めるのって……意味があるの?」

 おお、普段の彼女に似合わず、声が少し震えている。
 綺麗なシルバーの髪が揺れ、潤んだ赤い瞳がじっと俺を見つめた。

 イザベラを見て反応したジュリア。
 思い切り、身を乗り出して来る。
 美しい鳶色の瞳が濡れたように輝いている。

「薬指に嵌める指輪って……やっぱり特別な意味があるんだよね? 早く言って!」

 ふたりは期待に胸を膨らませて俺を見ていた。
 よっし!

「ああ、妻と言うか、彼女と言うか、男が贈った場合はぶっちゃけ『俺の特別な女』って意味だよ」

「「妻! 彼女! 俺の特別な女!?」」

 ジュリアとイザベラは先程と同様、全く同じ様に復唱。
 何故か、顔を見合わせた。
 そして……

「「トール!」」

 ふたりは俺の名を呼び、揃って抱きついてきたのであった。
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