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第45話「ジュリアの本領発揮」
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まだ心に、熾火がくすぶっていたのか?
よっし、ここは!
俺が責任を取って、ふたりの仲を修復しなければ!
イザベラは今まさに、心の火薬庫へ火がつきそうになっていた。
「何を! 偉そうにこの女は「イザベラ、駄目だぞ!」出しゃばって……」
俺は、イザベラが言い切る前にきっぱり遮った。
そして悲しそうに首を振る。
すると!
「御免……」
イザベラは俺の気持ちが通じたのか、小さな声で謝って引き下がる。
よっし、これも俺の予感と言うか、確信。
さっきダーリンって呼んだくらいだから、俺の言う事を聞いてくれると思ったのは正解だった。
だが、こんな時にはイザベラへのアフターケアも必須である。
ジュリアの肩を持った理由を言わないと。
「聞いてくれ、イザベラ。ジュリアは交渉のプロなんだ」
「交渉のプロ?」
「ああ、そうだ。契約した客であるお前の為に誠意を尽くして交渉すると言っている、だから任せて構わないよな?」
「あ、ああ……」
「ああ、じゃない。ぜひお願いします……だろ?」
俺はにっこり笑ってイザベラを促す。
すると切なそうな表情でまたもや「うん」と彼女は頷いたのである。
イザベラの様子を見たジュリアも、にっこり笑う。
「引き受けた」と答えたのだ。
そして、
「おっちゃん、この娘は私の大事な客で仲間なんだ。悪いけど交渉させて貰うよ」
仲間!?
改めてジュリアの口から出た言葉に、イザベラは吃驚している。
「ああ、なら話だけは聞いてやる。だがな、800万アウルムと魔法鍵で大サービスだと思うぜ。これ以上の条件は他店に行ったらまず無い」
「ふふふ、そうかな? この娘が言った1千万アウルムってのは、実はあたしが鑑定した金額なんだ。それも結構少めにね」
「…………」
ジュリアの指摘に対して図星だったのか、ダックヴァルは黙り込んだ。
相手が黙ったのを見たジュリアは、ここぞとばかりに攻め込んで行く。
「確かに……観賞用の宝石として売るのなら、その上代で良心的と言えるだろうけど……いくつかの宝石を、魔道具用で別々に売るとしたら、もっと利益が出ると思うけどね」
「な、何!?」
ジュリアのツッコミにダックヴァル……動揺している。
成る程!
物事ってのは、けして一面から見てはいけない。
この宝石には、いろいろな役割がある。
観賞用ってだけじゃない。
そうなると、価値も変わるって事なんだ。
「悪魔王の石と言われる緑玉《エメラルド》に、海の精の魔力が篭もった真珠《パール》、魔法使いが予知に使う水晶《ロッククリスタル》、そして創世神の巫女が豊穣を祈願する柘榴石《ガーネット》……これ以外にも結構あると思うんだけど」
凄いな!
俺はそう思いながら以前に聞いたイザベラの言葉を思い出した。
『竜っていうのは一般的に宝石《ジェム》や貴金属《プレシャスメタル》を始めとしたお宝が好きって事くらいは常識として知っているよね。ほら住処に溜め込むってあれさ。竜神族も例外じゃなくて宝石や貴金属には目がなくて特に鑑定に関しては抜群に優れているという話だよ』
確かに結構な量の宝石を僅かな時間で鑑定したり、今言った知識は生半可なものではなかった。
間違い無い。
ジュリアの竜神族としての血が、彼女の素晴らしい才能を開花させつつある。
散々突っ込まれたダックヴァルは、呆気に取られたように目を見開いている。
「むむむ! どうやら……お前はただの小娘ではないようだ、ジュリア」
おお、この偏屈親爺が初めてジュリアをまともに呼んだ。
今までは名前を呼ばずに『村の小娘』とか、『やせっぽち』とか散々な言い方をしていたが……
「ははは、仕方がない。じゃあ800万に少し色をつけてやる。プラス50万アウルムでどうだ?」
ダックヴァルは、やはりイザベラの宝石を買い取りたいらしい。
結構な上乗せ分を提示して来た。
しかし、ジュリアはあっさりと『瞬殺』した。
「全然話にならないね。一旦はこの店で売ろうと思ったがフルールさんのお店やキングスレー商会に持って行った方が高く買って貰えそうだ。じゃあ引き上げるよ」
凄い!
華奢なジュリアが、貫禄たっぷりの店主ダックヴァルに対して一歩も引いていない。
いや!
逆に、百戦錬磨のダックヴァルを押し始めている。
「うぐぐ……じゃあ思い切ってプラス80万だ。これでギリだ、でないとウチの経費が賄えない。ど、どうだよ?」
「ふふふ、もうひと声! お・ね・が・い!」
ああ、ここでいきなり変化球だ。
最後の止めはあの甘えん坊なジュリアの声である。
「くうう! じゃあプラス100万!」
「ようしプラス120万の920万アウルム&魔法鍵で決定よ! 当然税金はそっち持ちだ。 それで良いよね?」
うっわ~!
何気に20万増やしているし、ぱねぇぜ! ジュリア。
ジュリアはそう言うとモーリスさんの店でやったように右手を差し出した。
交渉成立可否の打診だ。
「うおおお! 勝手に値段をあげやがって! まあ良い! 買った、買ったよ!」
脂汗を滲ませながら手を差し出すダックヴァルを見ながらジュリアは可愛らしく「ありがとうございます」と言う。
がっちりと握手をした竜神族の少女は、笑顔を浮かべて、ぺこりと頭を下げたのであった。
よっし、ここは!
俺が責任を取って、ふたりの仲を修復しなければ!
イザベラは今まさに、心の火薬庫へ火がつきそうになっていた。
「何を! 偉そうにこの女は「イザベラ、駄目だぞ!」出しゃばって……」
俺は、イザベラが言い切る前にきっぱり遮った。
そして悲しそうに首を振る。
すると!
「御免……」
イザベラは俺の気持ちが通じたのか、小さな声で謝って引き下がる。
よっし、これも俺の予感と言うか、確信。
さっきダーリンって呼んだくらいだから、俺の言う事を聞いてくれると思ったのは正解だった。
だが、こんな時にはイザベラへのアフターケアも必須である。
ジュリアの肩を持った理由を言わないと。
「聞いてくれ、イザベラ。ジュリアは交渉のプロなんだ」
「交渉のプロ?」
「ああ、そうだ。契約した客であるお前の為に誠意を尽くして交渉すると言っている、だから任せて構わないよな?」
「あ、ああ……」
「ああ、じゃない。ぜひお願いします……だろ?」
俺はにっこり笑ってイザベラを促す。
すると切なそうな表情でまたもや「うん」と彼女は頷いたのである。
イザベラの様子を見たジュリアも、にっこり笑う。
「引き受けた」と答えたのだ。
そして、
「おっちゃん、この娘は私の大事な客で仲間なんだ。悪いけど交渉させて貰うよ」
仲間!?
改めてジュリアの口から出た言葉に、イザベラは吃驚している。
「ああ、なら話だけは聞いてやる。だがな、800万アウルムと魔法鍵で大サービスだと思うぜ。これ以上の条件は他店に行ったらまず無い」
「ふふふ、そうかな? この娘が言った1千万アウルムってのは、実はあたしが鑑定した金額なんだ。それも結構少めにね」
「…………」
ジュリアの指摘に対して図星だったのか、ダックヴァルは黙り込んだ。
相手が黙ったのを見たジュリアは、ここぞとばかりに攻め込んで行く。
「確かに……観賞用の宝石として売るのなら、その上代で良心的と言えるだろうけど……いくつかの宝石を、魔道具用で別々に売るとしたら、もっと利益が出ると思うけどね」
「な、何!?」
ジュリアのツッコミにダックヴァル……動揺している。
成る程!
物事ってのは、けして一面から見てはいけない。
この宝石には、いろいろな役割がある。
観賞用ってだけじゃない。
そうなると、価値も変わるって事なんだ。
「悪魔王の石と言われる緑玉《エメラルド》に、海の精の魔力が篭もった真珠《パール》、魔法使いが予知に使う水晶《ロッククリスタル》、そして創世神の巫女が豊穣を祈願する柘榴石《ガーネット》……これ以外にも結構あると思うんだけど」
凄いな!
俺はそう思いながら以前に聞いたイザベラの言葉を思い出した。
『竜っていうのは一般的に宝石《ジェム》や貴金属《プレシャスメタル》を始めとしたお宝が好きって事くらいは常識として知っているよね。ほら住処に溜め込むってあれさ。竜神族も例外じゃなくて宝石や貴金属には目がなくて特に鑑定に関しては抜群に優れているという話だよ』
確かに結構な量の宝石を僅かな時間で鑑定したり、今言った知識は生半可なものではなかった。
間違い無い。
ジュリアの竜神族としての血が、彼女の素晴らしい才能を開花させつつある。
散々突っ込まれたダックヴァルは、呆気に取られたように目を見開いている。
「むむむ! どうやら……お前はただの小娘ではないようだ、ジュリア」
おお、この偏屈親爺が初めてジュリアをまともに呼んだ。
今までは名前を呼ばずに『村の小娘』とか、『やせっぽち』とか散々な言い方をしていたが……
「ははは、仕方がない。じゃあ800万に少し色をつけてやる。プラス50万アウルムでどうだ?」
ダックヴァルは、やはりイザベラの宝石を買い取りたいらしい。
結構な上乗せ分を提示して来た。
しかし、ジュリアはあっさりと『瞬殺』した。
「全然話にならないね。一旦はこの店で売ろうと思ったがフルールさんのお店やキングスレー商会に持って行った方が高く買って貰えそうだ。じゃあ引き上げるよ」
凄い!
華奢なジュリアが、貫禄たっぷりの店主ダックヴァルに対して一歩も引いていない。
いや!
逆に、百戦錬磨のダックヴァルを押し始めている。
「うぐぐ……じゃあ思い切ってプラス80万だ。これでギリだ、でないとウチの経費が賄えない。ど、どうだよ?」
「ふふふ、もうひと声! お・ね・が・い!」
ああ、ここでいきなり変化球だ。
最後の止めはあの甘えん坊なジュリアの声である。
「くうう! じゃあプラス100万!」
「ようしプラス120万の920万アウルム&魔法鍵で決定よ! 当然税金はそっち持ちだ。 それで良いよね?」
うっわ~!
何気に20万増やしているし、ぱねぇぜ! ジュリア。
ジュリアはそう言うとモーリスさんの店でやったように右手を差し出した。
交渉成立可否の打診だ。
「うおおお! 勝手に値段をあげやがって! まあ良い! 買った、買ったよ!」
脂汗を滲ませながら手を差し出すダックヴァルを見ながらジュリアは可愛らしく「ありがとうございます」と言う。
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