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第42話「邪神様の嘲笑」
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「これだけのブツだったら、ウチで買い取ってやっても良いぜ」
ジェトレ村の悪名高き『名品・珍品の店 ダックヴァル商店』店主の髭親爺。
イザベラの宝石を鑑定し終わると、「ふん」と鼻を鳴らした。
超が付く、偏屈な性格なのだろう。
品質の良さを認めている癖に、相変わらずの『上から目線』は変わらない。
そんな態度だから、イザベラの店主に対する視線も厳しい。
しかしこの親爺は、全く気にならないらしい。
親爺は再び「ふん」と鼻を鳴らした。
いよいよ、金額の提示みたい。
「この宝石……俺の鑑定金額は全部で800万アウルムだな、この金額でよければ即現金で払ってやる。無論、取引税もこっち持ちだ」
取引税?
何、それ?
俺が首を傾げていたら、ジュリアが解説してくれる。
「トール、こうやって売買する度に、王国の規定でかかる税金が取引税っていうんだ。大体取引額の5%を取られるのさ」
成る程、納得した。
消費税……みたいなものかな?
一方、親爺の見立てた金額にイザベラは不満そうだ。
「納得いかない! さっきのジュリアの見立てでは1千万アウルムだろう? 税金は店持ちだからといって、たった800万アウルムとは、いくら何でも買い叩き過ぎじゃないの?」
確かに、200万アウルムの差は大きい。
この宝石を売って、オリハルコンの購入金に充てるからだ。
万が一、少しの金額差で落札出来なかったらという心配がある。
それを考えたら、200万は大きい。
大き過ぎる。
差額の200万は、殆どが利益プラス経費だろう。
だが、イザベラの言う通り確かに納得のいく説明が欲しい。
これからジュリアと共に商売人を目指す俺にとっても、今後の勉強になるからだ。
俺がそんな事を考えていたら、親爺がジュリアに顎をしゃくった。
苦笑しながら、偉そうに言う
「おいおい、タトラの小娘よぉ。この馬鹿姉ちゃんに買取りと販売の兼ね合いを説明してやれ」
はぁ?
馬鹿……姉ちゃん?
これはまずい!
誇り高い悪魔王女を、寄りによって馬鹿呼ばわりなんて。
案の定、イザベラは……切れてしまった。
今迄、親爺の態度が腹に据えかねていたようだから無理もない。
「おい、貴様! 薄汚い髭男! ……この私に対して馬鹿とは良い度胸だ。殺してやるから、首をここに出せ」
「何だと! この小娘がぁ! 馬鹿だから馬鹿って言ったんだよ」
「き、貴様! 馬鹿と……二度言ったな? そうか、そんなに地獄へ送って欲しいか? よ~し、待っていろよ……今、魂を奪ってやる」
魂を奪う?
おい、おい、やばいよ!
いつの間にか、例の禍々《まがまが》しい魔力波が凄い勢いで立ち昇っているじゃないか!
そうだ!
人間と違って、神や天使、悪魔族って呪文や言霊無しでも魔法が使えるって聞いた事がある。
ぱぱっと、発動出来るんじゃなかったっけ!?
「……死」
あぎゃ、やばい!
いかにも、凶悪そうな魔法が発動しかけてるう!
俺がアッと思った時には遅かった。
イザベラの指先から発生した黒く禍々しい魔力波は、無情にも店主を覆う。
親爺はは意識を失い、テーブルに倒れこんでしまった。
ああ、遅かったか!?
俺は咄嗟にイザベラを羽交い絞めにした。
魔法を完結させない為?
分からないが、何とか止めたい一心からである。
でも……
何、この……ふわっとした感触?
もしかして、あの大きなおっぱい!?
「あうっ! いやあん!」
俺に抱かれて脱力してしまったのか、甘く可愛い悲鳴をあげてくたっと座り込むイザベラ。
おお!
この『いやあん』はもしかして……好きにしてOKの『いやあん』だ!
で、あれば!
こんな汚い中年の髭店主なんか放っておいて、まずイザベラだ。
俺が抱き起こすと、イザベラは潤んだ瞳で俺を熱く見つめて来る。
「トール、好きだっ!」
イザベラが大きな声で叫び、彼女の冷たいけど柔らかい唇が俺の唇に押し付けられた瞬間!
ガン!
凄い音が、俺の後頭部で響いていた。
何か固いもので、誰かに思い切り殴られたのだ。
ぐわっ!
いってぇ~。
だいぶ痛いが、やはり邪神様に改造して貰った馬鹿みたいに頑健な身体。
俺が何とか後ろを振向くと……
やはり予想通り、目に涙を一杯溜めたジュリアが大きな花瓶みたいな器を持って怒りの眼差しで立っていたのである。
「ジュ、ジュリア!?」
やばい!
さすが竜神族、怒ると、ぱねぇ!
「う~! トールったら、あたしが! あたしが! あんたの彼女なのに! 他の娘とキスなんかして!」
ああ、御免!
俺は、ジュリアの正真正銘の彼氏なのに。
ついイザベラの魅力に負けてしまった。
でも、これって普通の人はやらないよ。
愛する彼女の前で、他の女の子とぶっちゅうとキスなんて!
『あはははははは~、いや~最高! 面白い~、この浮気者~』
呆然とする俺の頭の中では、邪神様の嘲笑する声が確かに響いていたのであった。
ジェトレ村の悪名高き『名品・珍品の店 ダックヴァル商店』店主の髭親爺。
イザベラの宝石を鑑定し終わると、「ふん」と鼻を鳴らした。
超が付く、偏屈な性格なのだろう。
品質の良さを認めている癖に、相変わらずの『上から目線』は変わらない。
そんな態度だから、イザベラの店主に対する視線も厳しい。
しかしこの親爺は、全く気にならないらしい。
親爺は再び「ふん」と鼻を鳴らした。
いよいよ、金額の提示みたい。
「この宝石……俺の鑑定金額は全部で800万アウルムだな、この金額でよければ即現金で払ってやる。無論、取引税もこっち持ちだ」
取引税?
何、それ?
俺が首を傾げていたら、ジュリアが解説してくれる。
「トール、こうやって売買する度に、王国の規定でかかる税金が取引税っていうんだ。大体取引額の5%を取られるのさ」
成る程、納得した。
消費税……みたいなものかな?
一方、親爺の見立てた金額にイザベラは不満そうだ。
「納得いかない! さっきのジュリアの見立てでは1千万アウルムだろう? 税金は店持ちだからといって、たった800万アウルムとは、いくら何でも買い叩き過ぎじゃないの?」
確かに、200万アウルムの差は大きい。
この宝石を売って、オリハルコンの購入金に充てるからだ。
万が一、少しの金額差で落札出来なかったらという心配がある。
それを考えたら、200万は大きい。
大き過ぎる。
差額の200万は、殆どが利益プラス経費だろう。
だが、イザベラの言う通り確かに納得のいく説明が欲しい。
これからジュリアと共に商売人を目指す俺にとっても、今後の勉強になるからだ。
俺がそんな事を考えていたら、親爺がジュリアに顎をしゃくった。
苦笑しながら、偉そうに言う
「おいおい、タトラの小娘よぉ。この馬鹿姉ちゃんに買取りと販売の兼ね合いを説明してやれ」
はぁ?
馬鹿……姉ちゃん?
これはまずい!
誇り高い悪魔王女を、寄りによって馬鹿呼ばわりなんて。
案の定、イザベラは……切れてしまった。
今迄、親爺の態度が腹に据えかねていたようだから無理もない。
「おい、貴様! 薄汚い髭男! ……この私に対して馬鹿とは良い度胸だ。殺してやるから、首をここに出せ」
「何だと! この小娘がぁ! 馬鹿だから馬鹿って言ったんだよ」
「き、貴様! 馬鹿と……二度言ったな? そうか、そんなに地獄へ送って欲しいか? よ~し、待っていろよ……今、魂を奪ってやる」
魂を奪う?
おい、おい、やばいよ!
いつの間にか、例の禍々《まがまが》しい魔力波が凄い勢いで立ち昇っているじゃないか!
そうだ!
人間と違って、神や天使、悪魔族って呪文や言霊無しでも魔法が使えるって聞いた事がある。
ぱぱっと、発動出来るんじゃなかったっけ!?
「……死」
あぎゃ、やばい!
いかにも、凶悪そうな魔法が発動しかけてるう!
俺がアッと思った時には遅かった。
イザベラの指先から発生した黒く禍々しい魔力波は、無情にも店主を覆う。
親爺はは意識を失い、テーブルに倒れこんでしまった。
ああ、遅かったか!?
俺は咄嗟にイザベラを羽交い絞めにした。
魔法を完結させない為?
分からないが、何とか止めたい一心からである。
でも……
何、この……ふわっとした感触?
もしかして、あの大きなおっぱい!?
「あうっ! いやあん!」
俺に抱かれて脱力してしまったのか、甘く可愛い悲鳴をあげてくたっと座り込むイザベラ。
おお!
この『いやあん』はもしかして……好きにしてOKの『いやあん』だ!
で、あれば!
こんな汚い中年の髭店主なんか放っておいて、まずイザベラだ。
俺が抱き起こすと、イザベラは潤んだ瞳で俺を熱く見つめて来る。
「トール、好きだっ!」
イザベラが大きな声で叫び、彼女の冷たいけど柔らかい唇が俺の唇に押し付けられた瞬間!
ガン!
凄い音が、俺の後頭部で響いていた。
何か固いもので、誰かに思い切り殴られたのだ。
ぐわっ!
いってぇ~。
だいぶ痛いが、やはり邪神様に改造して貰った馬鹿みたいに頑健な身体。
俺が何とか後ろを振向くと……
やはり予想通り、目に涙を一杯溜めたジュリアが大きな花瓶みたいな器を持って怒りの眼差しで立っていたのである。
「ジュ、ジュリア!?」
やばい!
さすが竜神族、怒ると、ぱねぇ!
「う~! トールったら、あたしが! あたしが! あんたの彼女なのに! 他の娘とキスなんかして!」
ああ、御免!
俺は、ジュリアの正真正銘の彼氏なのに。
ついイザベラの魅力に負けてしまった。
でも、これって普通の人はやらないよ。
愛する彼女の前で、他の女の子とぶっちゅうとキスなんて!
『あはははははは~、いや~最高! 面白い~、この浮気者~』
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