真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
41 / 205

第41話「名品・珍品の店」

しおりを挟む
「スイカ切りました!朝食のデザートです」
「ありがとうございます!」
「冷えててめっちゃ甘くて美味い!」
「サキさんが切ってくれたと思うとより美味い」

 昨日買ったスイカは流石に二人では大きかったので分けて皆で食べることにした。
 ミスカさんの所へ持っていき、少し耳に近づけてコソッと言う。

「ミスカさんの分、大きめに切ってみました」
「!ありがとう。良いのか?」
「勿論です」

 瑞々しい果汁が喉を通ると、じわじわ暑い毎日も爽やかに過ごせそうな気がした。
 スイカを食べてすっきりした団員たちは元気に仕事へ向かって行き、私とヴェルストリアくんも片付けを終える。

「サキさん、昨日町へ行ったんですね。ここに来てからは外に出ていなかったでしょうし、久しぶりでしたか?」
「あ……そう、だね」

 そっか、ヴェルストリアくんは私が異世界から来たことを知らないんだった。
 嘘をつくというのはやっぱり心苦しい。

「……昨日はね、調味料も買ったんだ!見て、こんなにいっぱい」
「ふふ、食べ物ばっかりですね」
「確かに言われて見ればそうかも」

 私は持ってきた物の中から、ラッピングされた小さな袋を取り出す。

「ヴェルストリアくんにお土産買ってきたの。良かったらどうぞ」
「僕に……?ありがとうございます……!開けても良いですか?」
「うん!」

 袋を開くとキラキラと輝くエメラルド色の飾りがささやかに付いたシンプルな髪飾り。

「これ見つけた時、ヴェルストリアくんぽいなって思ったの。髪ちょっと長めだから鍛錬中はいつも纏めているでしょ?」
「……いつも見てくれているんですか?」
「えっと、ちょっとこっそり?」

 ヴェルストリアくんが剣術に励んでいる姿はカッコよくて、つい目で追ってしまう。

「その時に使ってくれたら嬉しいな」
「使います!嬉しい……ありがとうございます……」

 ヴェルストリアくんは片手で口元を覆いながら、髪飾りを大事そうに見つめていた。
 喜んでもらえてよかった!

「あの、嫌じゃなかったら今私が付けさせて貰えないかな?」
「え!?」

 実はヴェルストリアくんの髪を一度いじってみたかったのだ。
 だって三つ編みとかしたら絶対可愛いもの。

「サキさんがそう言うのなら……お願いします。無理しないでくださいね」
「?うん、ありがとう!」

 早速後ろにまわり、そっと髪を梳くう。サラサラの白い髪が窓からの明かりに照らされてより一層輝いた。見惚れながらも両サイドから編み込みをしていく。

「痛くない?」
「は、はい……」

 二つの三つ編みを後ろの残りの髪と纏め、髪飾りで留めれば完成だ。
 手鏡で仕上がりを見てもらう

「わぁ……こんな結び方も出来るんですね」
「うん!慣れたら簡単だよ」

 不思議そうに横を向いて手鏡で見ている様子が嬉しくて、私はヴェルストリアくんの頭を撫でる。

「やっぱりこの髪飾り、綺麗な髪にとっても似合うなぁ」
「……っ!?」

 ふと、こちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。勢いよく食堂の扉が開く。

「リューク!?そんなに慌ててどうしたの」
「サキ……スイカ無くなっちゃった……?」
「スイカ?」
「朝練終わらなくて……出遅れたぁ」

 リュークがだいぶしょんぼりしているので、ヴェルストリアくんには先に仕事に戻ってもらった。

「そんなにスイカ食べたかったの?リュークの分あるよ」
「うん……食べたかっ……え、あるの?」
「特別だよ」
「サキ……!」

 というわけでリュークの分のスイカを持ってきた。ニコニコしながらスイカにかじりつくリュークは可愛い。

「ふふ、実はミスカさんからスイカ好きって聞いたから取っておいたんだ」
「優しすぎる……ありがとう!」
「どういたしまして。そういえば昨日シオンさんのお店にお邪魔したよ。リューク元気にしてるかって気にしてた」
「叔父さんここのところ会ってなかったなぁ。サキ、今度は俺と一緒に行こうよ!」
「うん!行きたい!」

 リュークはスイカをすっかり食べ終えて満足したみたいだ。

「リュークはミスカさんと幼なじみだったんだね」
「そうそう!近所に住んでてさ。ずっと一緒に遊んでたんだ。昔から剣術ごっことかしてたんだよ」

 リュークは懐かしむようにミスカさんとの思い出を話してくれて、本当に仲が良いのだと伝わってくる。

「そういえばヴェルストリア珍しく髪結んでたけど」
「あ、ヴェルストリアくんにお土産で髪飾りあげたの!それで髪結ばせてもらって」
「髪に……そっか。サキなら大丈夫だな」

 リュークは納得したように頷いた。

「リュークのお土産も一応……あるよ」
「え、一応って何」
「これなんだけど」
「……スイカ!?」

 黒い種であろう点がなんとも言えない絶妙な顔を作っているこのスイカのキーホルダーを、私は見つけてしまったのだ。

「リュークがスイカ好きって聞いたらもうこれしか目に入らなくて……」
「くっ……ふふっ、待って…顔が……!」
「ちなみにもう一個あるの」

 ピンクの色違いを取り出す。

「サキ面白すぎる……あはは!」
「ふ、ふふ……だって……」

 思った以上に笑われて、私も笑いが止まらなかった。
 なんとか二人とも落ち着いた頃にはお腹がだいぶ筋肉痛だった。

「はぁ……それでね、良かったらお揃いにしたいなって思ったの」
「お揃い……!そうしよう!すごく嬉しい。サキ、ありがとう」
「うん!喜んで貰えて良かった」

 赤いスイカを渡そうとすると、差し出した私の手にリュークの大きい手がそっと重なる。

「どうかした?」

 リュークが私の目を真っ直ぐ見つめている。

「俺、これ見る度にサキのこと考えちゃう。サキも……これ見たら俺のこと思い出してくれる?」

 少し首を傾げて微笑むリュークに私の胸はトクンと音をたてた。
 買った時は意識して無かったけど、お揃いにしたいってすぐ考えてた。これを見たらリュークも同じ物を持っているんだって嬉しくなる。リュークが私の事を考えてくれるのも嬉しい。
 でもそれって……独占欲みたいな……?もっと私のこと考えて欲しいなんて……。

「見てない時でも思い出しちゃうよ……」
「!!」

 自分の気持ちに恥ずかしくなって、俯いて空いている片手で顔を隠す。
 最近の私はなんだか変だ。そわそわして落ち着かないような、そんな気分。

「サキ……」
「す、スイカ、また食べようね。それじゃあ今日はお掃除しないとだから」

 キーホルダーをリュークの手に握らせて、目が合わせられないままそそくさ食堂を後にした。


 サキのくれた赤いスイカのキーホルダー。
 そのなんとなく微妙な顔を撫でながら、リュークは呟いた。

「意識、してくれてたよな……」

 正直このスイカがあってもなくても俺はサキのことばっかり考えている。
 でもサキはそうじゃない。彼女にとって俺は大勢いる騎士団員の一人。お土産だって他の人にも渡している。
 会っていない時でも俺の存在を忘れないで欲しい。お揃いだと言ってくれたその意味が特別なものであって欲しい。

「……ずっと俺のこと思い出してくれたらいいのになぁ……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...