真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
37 / 205

第37話「俺がもてる?」

しおりを挟む
 イザベラが見抜いたジュリアの秘密……
 俺は勿論、当人も吃驚。
 何と、ジュリアは竜神族の血を引くという。

 竜神族か……
 俺には良く分らないけれど。
 『竜』って言うからには……あの怖ろしい伝説のドラゴン……だよな。
 あまり、ピンとは来ない。
 ジュリアって、外見は可憐な美少女だから……

 俺はそんな事をつらつらと考えながら、見つめていた。
 イザベラの所持する宝石を熱心に調べるジュリアを。
 
 そんな俺へ、イザベラが念話で囁いて来る。
 どうやらこっそりと内緒話をしたいようだ。
 俺が竜神族に関して知識がないと勘付いて、すかさず話を振って来たらしい。

『ねぇ、トール。貴方は竜神族の事って本当に知らないの?』

『ああ、殆ど知らないな』

『じゃあ教えてあげるよ。竜神族の先祖はね、北の大神と竜神の姫君との間の子である聖なる竜、真竜王――この神の御子だと伝えられている誇り高い一族なのさ』

『ふうん、そうなんだ』

『ああ、彼等は一般的な竜の一族とは一線を画していて、その為に殆どの竜族とは敵対している。だから竜の中でも最強と言われる古代竜エンシェントドラゴンなんかは代表的な彼等の宿敵さ』

 俺は、少しホッとした。
 邪神様から貰った革鎧は、古代竜の皮で出来ていると聞いていたから。
 もしジュリアの一族の皮で出来ている鎧など着ていたら……
 ヤバい事になるのは間違い無い。
 そんなのは子供でも分かる事だ。

 なおも、イザベラの話は続いている。

『竜神族は15歳を境に『覚醒』するんだ。覚醒すると身体能力の著しい強化は勿論、性格は益々強気になり、押しがとても強くなる』

 覚醒?
 そうなると、性格が強気に?
 押しも強く?
 そ、そうか!?

『加えて危機回避能力も著しく高くなるから、強気で大胆な性格ながら冷静さも併せ持ち、リスクを見極める判断能力が凄く高くなる』

 おお、成る程!
 それってジュリアの力……そのものだ。

『竜っていうのは宝石や貴金属を始めとしたお宝が好きって事くらいは常識として知っているよね。ほら巷で言われる住処すみかにお宝を溜め込むっていうあれさ。竜神族も例外じゃなくて宝石や貴金属には目がなくて特に鑑定に関しては抜群に優れているという話だよ』

 そうか!
 分かるよ。
 イザベラの言う通り、竜って宝石を溜め込む習性がある。
 ならば宝石だけじゃないけど、お宝を扱う今の仕事はジュリアにとって天職なんだな。

 念話で会話をするふたりの傍らで、熱心に宝石を見入るジュリア。
 その真剣な表情を見ていると、いつもの軽口を叩ける雰囲気ではない。
 とっても真剣な雰囲気なのである。
 しかしどうやら、その確認も終わりそうだ。

「ふたり共、お待たせ。何とか確認が終わったよ。さっきも言ったけど、さすが悪魔族の王女様の持ち物だ。トータルで金貨1千枚、1千万アウルムはすると思う」

 1千万アウルム!?
 えっと1円が1アウルムくらいとしても……約1千万円か!
 そりゃ、凄い。

 しかし、イザベラは不満顔だ。

「失敗した! そんなに少いなら、もっと持って来ればよかった」

 す、少ない!?
 約1千万円で何故少ないの!?

 俺が不思議な表情をしているのを、読み取ったんだろう。
 ジュリアが、イザベラの心配は当然と主張する。

「トール、オリハルコンは貴重な古代人工遺物アーティファクトさ。もし見付かって仮に持ち主が売ってくれたにしても多分市場価値を無視した高額な言い値だよ」

「え? 市場価値を無視した言い値?」

「うん、万が一オークションに出品されても下手すりゃ直取引以上の値が付いてしまう。そうなるとイザベラの持っている1千万アウルムでも心もとないんだ」

 そうか!
 そうなんだ……
 生半可な中二病の知識があっても俺なんかまだまだ……だな。

 そんな俺とイザベラに、ジュリアの声が掛かる。

「明日は商業ギルドに行ってトールとイザベラの商人登録をしよう。時間が無いから朝早く行くよ、だからそろそろ寝よう」

 やっぱり今夜、『アレ』は無しか……

 露骨にがっかりする俺に苦笑したジュリアは「じゃあ添い寝してあげる」と優しく囁いたのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 翌朝……

 俺達は手早く支度を済ませて絆亭で朝食を摂ると、ジェトレの村を歩いていた。
 
 ひとつ疑問に思った事を念話でイザベラに聞いてみる。
 それは村に入る時のチェックの問題だ。
 確か特別村民証を発行する魔法水晶は、イザベラみたいな悪魔族だと真っ黒に反応する筈。
 手を翳して、イザベラの正体が良く「ばれなかった」という事に関してである。

『ああ、あれ?』

 あんなのチョロイと、イザベラは言う。

『下級魔族ならともかく、私達くらいの上級悪魔になるとあんな子供騙しの魔法水晶なんか魔力を使った裏操作で何とでもなるのよ』

 裏操作ねぇ……
 という事はだ。
 様々な街や村に、ノーチェックで凶悪な上級魔族が入り込んでいるって事?

『当ったり~! その通り』

 当たりって……
 イザベラさん、それって人間からしたら凄く怖い事なんですけど。

『大丈夫だよ、トール。今時の魔族って実は平和主義者の方が多いんだ』

『平和主義者?』

『そうだよ、何故人間の街に入るかって言うと、魔界より人間の街の方が日々の暮らしが格段に楽しいからさ。それを悪戯に乱して壊すような事は滅多にしないよ』

 ふ~ん……そうなんだ。
 魔族が平和主義って、これも俺の趣味というか意向がこの世界に反映されているせいだろうか?

『それよりさ……折角こうして内緒で話せるんだからさ。ジュリアに内緒で今度、私とデートしてよ……ねえったら!』

『イザベラ……お前、それこそチョロインって言われるよ』

『何よ! チョロインって? それ意味分からないよ! それより誘いを断わるなんてそんなに私は魅力無いかなぁ? これでも魔界では王女という立場だけじゃなくて色々な男達に言い寄られて困っていたんだけど』

 不思議そうに言うイザベラ。
 そりゃ、お前は超絶美少女さ。
 だから俺には、全く現実感が無いんだってば!

『はあ……でもさ……逆に俺がお前に好かれる理由が全く分からないんだけど……』

『何言っているの! トールが強くて格好良いからに決まっているじゃないか! 私達、悪魔族は力こそが正義……いや悪だから強い者は文句無しに人気があるんだ』

 強い男ねえ……
 どこが?
 かねぇ……
 雑魚のゴブ数匹にしか勝った事のない男が……
 あ、冒険者ギルドのおっさんにも一応勝ったっけ。

 そんな事を考えていたら、イザベラが解説してくれる。

『トールが強いのはその凄過ぎる動態視力と底知れぬ膂力さ。動体視力は人間の男との試合、膂力の方は私との腕相撲でそれぞれの圧倒的勝利で明白だよ……』

『そ、そう?』

『うん、総合的には私の父である悪魔王に匹敵する力じゃないかと私は睨んでいるんだ。ジュリアがトールに惚れているのも多分同じ理由じゃあないかな』

 悪魔王に匹敵!?
 うわぁ、色々な意味でやばい響きだ。
 管理神の使徒の俺がねぇ……だけどちょっとは格好良い!
 嬉しくなって来たのは誰かさんには内緒にしたい。
 でも自称『邪神』だから許してくれるかも……

『その上、イケメンで優しくて気配りも出来る……私はね、そんなトールにひと目惚れしたんだ。たとえジュリアが正妻でも良いのさ。いずれ彼女には頼み込んで許可を取るよ』

 うわぁ!
 イザベラが『依頼』だけじゃなくて俺達と居るのも、そして敢えて商人になったのもそれが理由か!

 でもさ、ちょっち待て。
 抱きついただけで怒り心頭のジュリアが、イザベラの頼みを聞くだろうか?
 覚醒したジュリアが竜になって、悪魔王女イザベラと戦ったとしたら……

 嬉しい反面、段々気が重くなってきた気分に、俺は「はあ……」と大きく溜息を吐いたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...