真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
35 / 205

第35話「イザベラの依頼」

しおりを挟む
「てへぺろ」をするジュリアを見て、イザベラは苦笑する。
 その笑顔は最初に会った時とは違い、情の籠《こ》もった優しいものだ。
 確実に、ふたりの間には絆が生まれている。

「じゃあ、今回の私の依頼をトールへ話そうか?」

 いよいよだ。
 イザベラの依頼って奴が聞けるのか。
 依頼を聞いたジュリアが、彼女と打ち解けた。
 という事は、何か女性が同情するような気の毒な依頼に違いない。

 さあ、聞こうか。
 俺が見つめると、イザベラはにっこり笑う。

「単刀直入に言うと私はオリハルコンを探している。それを探す手伝いをして欲しいのさ」

 おおっ、ははは~!
 何だよ~っ。
 ついに『オ・リ・ハ・ル・コ・ン』来た~っ!
 幻のアトランティス大陸産の超合金!
 定番のミスリルと並んで、中二病必須の金属の筆頭だぁ!
 
 俺は期待にわくわくする。
 と同時に、何故オリハルコンを探しているのかイザベラに理由を聞いてみた。

「なあ、オリハルコンって、凄い素材なんだろう? どうしてそんな物が要るんだい?」

「実はさ。私の姉が嫁ぐ事になったんだけど。輿入れの際にティアラと短剣を携《たずさ》えて行くんだよ」

 へぇ~。
 イザベラの姉さんの嫁入り道具か。
 成る程ね!

「ティアラと短剣、それをオリハルコンで作ろうって事か」

「そうなんだよ。だけど私の国には他の金属はあってもこれだけは無くてね。姉は困っていたんだ、このままじゃあ好きな相手と結婚出来ないって」

 成る程!
 お互いが好きなら問題なんて無いとも思うけど、そのような慣習が残っていればそりゃ困るだろう。
 でも、どうして……オリハルコン?
 豪華さだけをアピールしたいのであれば、黄金なんかでも良い筈だけど。

「昔から決まっていて、絶対にオリハルコンじゃなきゃ駄目なんだ。我が家の面子メンツに関わる事なのさ」

 ふ~ん、昔から決まっている? 家の面子?
 成る程ね。
 イザベラの家って、きっと身分の高い、魔族の中でもさぞ立派な家柄なんでしょうね。

 俺がそんな事を考えていると、いきなりイザベラが爆弾を投下した。

「私の父は、悪魔王アルフレードルよ」

 あ、あ、あ、あくま!?
 悪魔王アルフレードル!?

「悪魔……王?」

「そうさ、私は悪魔王の次女なんだ」

 す、凄いカミングアウトを聞いてしまった。
 俺が読んだ資料本の中に、その名前は無いが超怖そうな感じだ。
 驚いたのは、ジュリアも同様。
 鳶色の目を一杯に見開き、可愛い口をあんぐりと開けている。

「な、成程。で、では……そういう事で」

 俺は、さっさと話を切り上げようとした。
 だって、そうだろう。
 性格が最悪な邪神とはいえ、俺は仮にもこの世界の管理神スパイラル様の使徒。
 怖ろしい悪魔王とでは、真逆過ぎる存在だもの。

「何だい? 名乗っただけでちゃんと話も聞いて貰えないの? そんなの酷いよ」

 いや!
 他の素性は良いとしてその名乗りだけは皆、引きますって!

 そんな時、ジュリアが信じられない事を言う。

「ねぇ、トール。イザベラは本当に困っているようなんだ。ここは相手の素性は置いといて話をまず聞こうよ」

 いや素性は置いといてって……ジュリアさん、その素性が肝心なんだよ。

 だがジュリアは俺に対して必死に懇願し、何とイザベラは目に涙まで溜めている。

 はああ……困ったなぁ。
 だって俺は神スパイラルの使徒だし、悪魔を助けて神罰とか喰らったら嫌だから。

『ははは、それ、面白いじゃない、傑作だよ! ぜひ、やってみなよ』

 いきなり俺の魂に声が響く。
 ああ、邪神様だよぉ! 

『おお、君に邪神って呼ばれるとゾクゾクするね! 恰好良いよ、それ!』

 もう!
 相変わらずだ、この御方おかたは。

『ふふふ、神の使徒が悪魔王を助けて『貸しひとつ』っていうのも傑作だよ。僕の方は全然問題無いから』

 良いのかな?
 いわば神の使徒が、悪魔を助けるのを公認なんて……
 万が一、上級神って方々に知られたらまずくない?

『お~っと、それは内緒だ。もしチクったらそれこそ君に神罰喰らわせちゃうよ』
 
 事の経緯を散々面白がった邪神様。
 俺の心を読んで、きっちり口止めする。
 さすがに、しっかりしてる。

『うふふ、じゃあ、ビシッと全力でその子を助けなよ~、じゃあね~』

 散々面白がった邪神様。
 悪魔王の娘であるイザベラを、助力するようにと言い残し去って行った。

 もう!
 こうなると、俺はもう腹を括るしかないだろう。

「トール? 大丈夫?」

「どうした? ぼーっとして?」

 竜神族の血を受け継ぐ娘と悪魔王の娘……
 さすがのふたりにも、俺と邪神様の会話は聞こえないらしい。
 『念話』の最中は俺が単にぼうっとしているようにしか見えなかったようだ。

「だ、大丈夫だ。分かった! イザベラ、もう少し詳しく話を聞かせてくれ」

 決心した俺は、改めてイザベラへと向き直ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 何度か深呼吸した俺は、漸く話を聞く態勢になった。
 イザベラは何故か「くすり」と笑う。

「じゃあ最初から話すよ。姉のレイラは隣国の悪魔王ザインの息子エフィム王子の下へ嫁ぐ事になったんだ。ふたりは幼馴染で昔から仲が良かったから、お互いの国に異存はない」

 ふうん……
 悪魔の王国ってのもたくさんあるのね……
 何か凄そう……

「私達の悪魔王家の習慣では花婿が広大で豪奢な宮殿を築いて花嫁を迎え、花嫁は光り輝くオリハルコンのティアラと短剣を携えて嫁入りするのさ」

「さっきから気になってたけど……何故、オリハルコンなんだ?」

「うん! オリハルコンはとても入手が困難な金属でね。それに降魔の効果があるから我々悪魔族を始めとした魔族の力の象徴でもあるんだ」

 オリハルコンに降魔の効果?
 それは俺の知識には無い。
 確か資料本にそのような事は載っていなかった気がするが……

「そのオリハルコンがどうしても手に入らない。父上や母上、そして姉上本人も懸命に手を尽くして探させたんだけど、いまだに見つかっていないのさ」

 そうか……
 事情は分かった。
 でもこういうのって、タイムリミットがあるよなぁ。

 すぐ確認だ。

「で……婚礼はいつなんだ?」

「それが……もう2ヶ月後に迫っているんだよ」

 たった2か月?
 何だよ。
 それ、ヤバくないか?

 現状では全く手がかりがない。
 インゴッドか何かもし探し出せても、精錬してからティアラと短剣を作るんだろう?
 
「おいおい、全然時間が無いじゃないか!」

「だからだよ、だから困って私が人間界にまで探しに来たんだ。何とか力になってよ! うわああああん! このままじゃあ姉上が可哀想そうだぁ!」

 イザベラはとうとう泣き出してしまった。
 ここまで切羽詰っていたら、確かに厳しいな。
 
 ジュリアが同情するわけのも納得。
 イザベラは姉思いの健気な妹……だものな。

 更に聞けば家出同然で来た為、供も連れておらず冒険者ギルドで下僕を探そうとしていたらしい。

「トール、力になってやろうよ。このままじゃあイザベラ……可愛そうじゃない」

 協力を促すジュリアの言葉に、俺は思わず同意して大きく頷いていたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...