真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第31話「妖しい少女」

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 俺はジュリアと共に冒険者ギルドの講習会を受ける事となった。
 
 午前中の授業内容は冒険者の心得や常識。
 更にはクランの成り立ちから個々の役割について……すなわち盾役タンク、攻撃役《アタッカー》、支援役《バファー》、回復役《ヒーラー》などの特長と適性についても詳しい説明が為されたのだ。

 聞いている内容は前世において、資料本などで散々に覚え理解したものではある。
 しかし!
 改めて冒険者ギルドという特別な場所で話を聞く。
 この状況が夢ではなく現実である。
 そう思うと、嬉しさが込み上げて来るのだ。
 中二病全開でワクワクが止まらない。

 受講者達は大部分が授業を真面目に聞いている。
 だが、何気に目にしたひとりの少女だけは違っていた。
 チラ見すると、遠くからでも目立つ綺麗な銀髪セミロングヘア。
 整った顔立ちの、クール系美少女であった。
 
 美少女は片隅の目立たない席に座ると、退屈そうに小さく欠伸をした。
 さりげなく見ていると、そのうち転寝うたたねをする始末である。

 何だよ、勿体ない。
 こんなに面白いのに……
 金貨1枚だって払っているじゃないかよ。

 俺は肩を竦めると、ギルドの幹部の方へ視線を戻した。
 だが、突如悪寒が「ぞくぞくっ」と俺を襲う。

 何だ!?
 これ?

 まさか何者かが、使徒である俺を害そうとしているのであろうか?
 ゆっくりと身体を向けて、そのおぞましい気配が漂って来る方向を見ると……
 何ということか、あの可愛く居眠りをする銀髪の少女だ。
 彼女から禍々しい黒い魔力波オーラが、立ち昇っていたのである。

 あいつ!?
 一体何者なんだ?
 そうか……俺の勘。
 否、確信だ。
 はっきり言える事……あの少女は人間じゃあない。
 多分……魔族か、何かだろう。

 しかし俺はこのような場合、考え方がはっきりしている。
 あの魔力波だって、俺を襲おうと発しているものではないから。
 で、あれば今の俺はジュリアも居るし、あえて危険を冒すつもりもない。
 すなわち……放置だ。
 
 あの少女が可愛い外見に似合わず、もし凶悪な魔族だとしたら……
 レベル1のひ弱な俺が、いきなりレベル99の強大なラスボスに遭遇したようなもの。
 瞬殺されるに決まっている。
 ああ、あのおぞましい魔力波を我慢していたら鳥肌が立って来た……
 
「トール、どうしたの? 脂汗が出ているよ」

「い、いや……何でもない」

 何と!
 このおぞましさをジュリアは感じていないらしい。
 やはり魔力波に敏感な俺と比べて、普通の人間にはあの禍々しい魔力波は感じていないようだ。
 ジュリアの危険回避の『勘』というのもこのような魔力波を感知するものではないらしい。
 まあ、その方が幸いと言うべきか。
 俺は小さく溜息を吐いて、早く午後が来いと願うのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 12時に簡単な昼食が出た。
 受講者全員がそれを摂り、午後1時から実技は始まった。
 
 気になった俺が例の美少女はと見ると……
 あの邪悪な魔力波は、もう放出されてはいなかった。
 昼食を軽く平らげ、ぺろりと長い舌を出して唇を舐めている。
 それがいやに艶めかしくて、俺は逆にぞっとする。
 正直彼女とは、余り関わり合いたくない。

 さて、午後の実技は模擬戦闘訓練だ。

 建物の裏が訓練場となっているので、全員がそこへ移動する。
 教官は、冒険者ギルドAランクの中年男性幹部。
 刃を潰した練習用のショートソードで、無駄の無い身体の使い方という奴を教えてくれた。
 いわゆる型というものだ。

 しかし……

 凄腕の筈の幹部の動きは、やはり『あの時』と一緒であった。
 ゴブと戦った時のように、スーパースローモーションなのである。
 便利な事に、どうやら戦闘に入ると身体強化のモードが自動的に発動するらしい。
 これはとても楽チンだ!
 
 さあ肝心の実技だが、とりあえず教官の教えてくれる、この型を覚えよう!
 ええとこうするんだな?

 多分これは、基本中の基本なのであろう。
 そうならば、体術や剣技が全くの素人の俺には大事な訓練だ。
 何せ相手がゆっくり動くからこっちもじっくりと観察が出来る。
 こんなに楽な事は無いのだ。

 だが俺は幹部が数回繰り返す型を見て完全に覚えると、飽きてしまい更に応用をしようと考えた。
 中二病の俺が1番好きな幕末新撰組の天才剣士、沖田総司の秘剣を試してみようと悪戯心が起きたのである。

 天才沖田の得意技である無明剣の三段突き。
 超人にのみ可能な技で普通なら夢物語だが、これが今の俺になら出来るかもしれない。

 たった一拍の間に敵の急所である喉や鳩尾などを三度突く事が可能とされた秘剣、無明剣。
 敵の喉、鳩尾、胸を突く三段突きは相手によって攻撃箇所が千変万化であり、余りにも高速な剣の為、敵がその動きについていけないといわれた必殺剣なのだ。

 暫く幹部の言う通りに型の練習をした後、俺はこっそりと三段突きの練習をする。
 不格好だが、所詮チートな俺の能力……これからモノになっていけば良い。

「よ~し、順番に模擬試合をしよう。まずは……」

 教官を務める幹部は、申し込んだ順番に名前を呼ぶ。
 もうひとりのBランクの若い女性教官も加わり、受講生の模擬試合をどんどん捌いて行ったのである。

 そして……
 とうとう俺の番が来た。
 俺の相手は、ふたり居る教官の高ランクなおじさんの方である。
 どうしようか?
 手加減なんて出来ないし……ええい、ままよ。

 その結果……勝負は一瞬でついてしまう。
 
 三段のひとつめで手首を打つと剣を弾き飛ばし、ふたつめの突きで鳩尾に突き入れる。
 すると相手は意識を朦朧とさせ、尻餅を着いてしまったのである。
 俺は最後の止めで、剣を教官の喉元手前で寸止め。
 充分にアピールしてから、一礼をして引き下がった。

 もうひとりの教官役、女性幹部は固まってしまっていた。
 ジュリアを始めとした受講者達も目を見開き、あんぐりと口を開けている。

 ヤバイ!
 ここは、上手くフォローをしなければ怨まれるな。
 負けて意地になった教官と、再戦なんて勘弁だし……

「教官殿、私如きに手加減して頂き、ありがとうございましたぁ!」

「あ、あああ……」

 俺に倒されたおじさん教官はまだ立ち上がれない。
 尻餅をついたまま、力なく頷いている。

「あの……さっきから私……待っているんですけど……」

 ジュリアが俺の次の順番なので、不満そうに催促するが返事は無い。

「ちょ、ちょっと待ってくださいね」

 Bランクの女性教官が慌てた様子で走り去った。
 多分、応援の為に他の幹部を呼びに行くのだろう。

「ふふふ、お前……結構、強いわね」

 いきなり俺の耳元で囁く声がする。
 立ち昇る黒い魔力波オーラ

 ま、まさか!?

 恐る恐る振り向いた俺の目には、悪戯っぽく笑うあの銀髪の少女が腕組みをして立っていたのであった。
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