真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第27話「絆亭で、リア充」

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 絆亭……この古き村ジェトレにおいて、主に商人が宿泊する事で知られている宿屋である。
 
 ここはジュリアの常宿らしく、勝手知ったるという感じ。
 ジュリアは俺の手を引くと、さっさとカウンターの前に連れて行った。
 1階にはカウンターとテーブルを並べた食堂があって、カウンターに宿屋の主が居るのはタトラ村の大空亭と全く同じだが、規模と内装の質が全然違うのである。

 室内を眺めたジュリアが、しみじみと言う。

「トール、ぽんぽんと歯に衣着せぬ言い方で、たまにはあたしもムッと来る時があるけど……ジェマ叔母さんは優しいし、あたしにとってはトール同様に大切な身内なの」

「ああ、分かるよ」

 俺はジェマさんから、ジュリアの事を頼まれた。
 お前にならと任せられた。

 その時に分かった。
 ジェマさんって、自己表現がとっても不器用なだけで、本当は凄く良い人なんだって。
 ジュリアも肉親だけあって、薄々ジェマさんの本質は見抜いていたようだ。 

「いつか大空亭も私が仲買人で儲けた利益でこの絆亭くらいの宿屋にはしてみせる。それが私の恩返しと決めているの」

 育てて貰った叔母さんに恩返しか……相変わらずジュリアって、しっかりしている。

「ジュリア、お前は偉いよ。俺も、お前を見習ってもっとしっかりしないとな」

 俺が思わずそう言うと、ジュリアは「えへへ」と恥ずかしそうに笑いながら可愛く照れる。
 そんな奥ゆかしいところも、彼女の魅力のひとつだ。

「おっと、ジュリアちゃん。よく来たね、その人はジュリアちゃんの彼氏かい?」

 俺が声のする方を見ると、
 カウンターの向こうから太った、ジェマさんを更に恰幅良くさせたような貫禄のある女性が笑顔を浮かべている。
 彼女がこの絆亭の主人らしい。

「ドーラさん、こんにちわ! そうなんだ、あたしにもやっと彼氏が出来たの。彼はトール。格好良いし、とても強いんだよ。あたしが凶悪なゴブの群れに襲われているのを助けてくれたんだ」

 おおっと!
 格好良いし、強いって……
 いつもながら、くすぐったいよ、その言い方。

 しかしジュリアは自分にとって初めて出来た彼氏である俺の事を、自慢したくて堪らないらしい。

「初めまして、トール。あたしがこの絆亭の女将おかみドーラさ。あらあ、あんた黒髪で黒い瞳か。ふふふ、ヤマトの凛々しいサムライみたいだね。ジュリア、今度、彼にカタナでも持たせてみたら?」

「うん! そうしてみるよ」

 ジュリアとドーラさん、まるで掛け合い漫才のように呼吸いきが合っている。

「で、ふたり共泊るんだろう? 今回は何泊するかい?」 

 ここでジュリアが俺にこの宿のシステムを教えてくれる。

「大空亭は何日、泊っても1泊当りの料金は変わらないけどこの絆亭は違うんだ。泊れば泊る程、1泊あたりの宿泊費が安くなるって仕組みなのよ」

 成る程!
 上手く出来ている。
 お互いに幸福ハッピーになる、仕組みなんだな。

「さっきの冒険者講習や商業ギルドでの手続きも考えたら、当初の5日の予定よりもっと長く泊ろうか? ここでじっくり商売をしないと今回掛かった経費を回収して儲けを出せないからね」

 ジュリアの前向きな提案に対して俺に異論は無い。
 確かに今回はいろいろ経費が掛かるだろうし、せっかちというよりはのんびりしている方が好きな俺にも願ったり叶ったりだ。

「じゃあ、ドーラさん。今回は15日以上はお世話になるよ、良い?」

 聞くとこの宿は1日、5日、10日、15日、30日以上というような料金設定がされているらしい。
 15日だと1泊あたり2,500アウルムになり、1,500アウルムも割り引かれるという。
 ちなみに1日当りの宿泊費は4,000アウルムで、30日以上だと半額の2,000アウルムになり長期滞在すればするほど得になるそうだ。
 俺は素早く計算をする。

 ええと、1泊2,500アウルム、15日で37,500アウルム……2人で75,000アウルムか。

「良いよ、ジュリアちゃん。じゃあとりあえずは15日にしておこうか? 部屋はふたり一緒だと、更に割引料金でトータル67,500アウルムだ。前払いで頼むよ」

 ここは俺が払ってやろう。

「じゃあ、俺が……」

「待って! お金がごっちゃになっちゃうから半分ずつ出そう。割り勘だよ」

 相変わらず、そういう所はきっちりしているジュリア。

「でも革鎧の買い物といい、そっちの持ち出しが多過ぎるけど大丈夫か?」

「ふふふ、トールったら優しいね。私の事、心配してくれているんだね。じゃあ後でゆっくり相談しよう」

 ジュリアは「きゅっ」と手を握って来る。
 俺も思わず握り返すと嬉しそうに「にこっ」と笑う。

 よっし!
 相談の後、今夜はジュリアとちょめちょめ。
 ぺろぺろ、ちゅっ。 
 ああして、こうして、ええと……やっほ~い!

「もう、トールったら、エッチ」

 何か顔に出てたっぽい。
 ジュリアの顔は、真っ赤。

 既に夜へと飛んでしまった邪な俺の気持ちは、ジュリアにほぼ読まれているようであった。
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