真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第24話「この世界のリアルな現実」

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 ジュリアが『動物的勘=危機回避能力』って奴で、怖ろしい危険を感じるっていうのでジェトレ村への行進をやめて暫し待つ。

 そして……俺とジュリアが休憩に入って約1時間が経った。
 あと、どれくらい待てば良いのであろうか?
 空を見れば、やや西へと日が傾いている。
 
 ここで余り時間を過ごせば、目的地に着く前に日が落ちてしまうだろう。
 夜になれば、魔物や強盗も含めて危険度がぐっと増す。
 この先に危険があるとはいえ、あまり愚図愚図しては居られなかった。
 少々れた俺はジュリアに先に進んでも良いか、打診してみる。

「そろそろ、行っても良いかな」

「ああ、もう大丈夫そうだね」

 さっき嫌な予感というか、ヤバイぞという確信は俺にもあった。
 だが、今の俺は全く危険を感じない。
 危険はもう去った、という事なのだろうか?
 ジュリアの危機回避能力でも、ヤバイ気配は無くなったようだ。
 
 火を消してその場の後片付けをした俺は、背負子を収納の腕輪の中に仕舞う。
 そしてまた軽々とジュリアを背負った。
 相変わらずジュリアは、背負われる事に対して少し照れがあるようだ。

「トールに負ぶさって嬉しいけど……ちょっと恥ずかしいかな」

 おお、イチャタイム復活。
 俺はまた幸福熱々モードへと突入した。
 はにかむジュリアを背に俺はにっこりと笑うとまた西に向って歩き出したのである。

 ―――30分後

 しかし!
 そんな甘いイチャ気分は、すぐに吹き飛んでしまった。
 少なくとも、免疫の無い俺にとってはである。
 
 歩いた先の街道に、目を覆うばかりの惨状は広がっていたのだ。
 辺りに漂う、ムッとする血の臭い。
 散らばる、たくさんの死体。

 これって現実?
 ドラマとか、じゃない……よね?

 俺達が感じた怖ろしい気配の犠牲者になったのは馬車で移動していたらしい商人の一隊であった。
 
 むごい事に全員が殺されていた。

「う……わ!」
 
 見た事のない光景に、俺はショックで蹲ってしまう。
 思わず……胃液を吐きそうになる。

 馬車は襲撃の際に大きく壊されたらしく放置されていた。
 だが、馬も含めて荷物は残らず持ち去られ、彼等の着ていた服も一切脱がされていたのである。
 
 これは魔物ではない……魔物が餌として人間を喰う為に襲ったのではない。
 悪意を持った『人間』の仕業だ。

「ひ、酷いな……」

 俺は思わず呟くが、意外だったのはジュリアの態度である。
 負ぶさっていた俺の背から降りた彼女は、死体を見ても特に取り乱した様子もなく、平然としていたのだ。

「良かった! あたし達があのまま進んでいたら……こうなっていたよ。際どい所で助かったね」

 え?
 良かった?
 助かった?
 何、それ?

 俺は一瞬、耳を疑う。
 何故ジュリアがそのような事を言うのか理解出来なかったからだ。
 自分達さえ、良ければって考え方なのか。
 
 俺の表情を、敏感に読み取ったらしいジュリアは「ふう」と溜息を吐いた。

「あのねえ……これって多分、山賊か傭兵……もしくは食い詰めた地元の貧乏貴族の仕業だよ。もしこの商人達より先に奴等に遭遇したら、今頃そこに転がっているのはあたし達だったかもしれないね」

 確かに言う通りだけど……
 ジュリア……何でそんなに冷静なの?

 淡々と語るジュリアに、俺は呆然とするばかりだ。
 ジュリアは、そんな俺に諭すように話を続ける。

「犠牲になった人には悪いけどさ……こんなのは、ここらで良くある事」

「え? よ、よ、良くある事?」

「そうだよ。今日を何とか生きても、明日はあっさり死ぬかもしれない。そんな生活なんだよ、私達は」

「…………」

 呆然としている俺を見て、ジュリアは諭すように言う。

「ねぇ、トール、聞いて。ゴブとの戦いを見てもトールは強いから、一応は戦える。だけどね、相手にもよるよ」

「相手に?」

「うん! 多分、今回の相手は戦い慣れた大人数」

「…………」

「トールがいくら強くても、あたしという足枷に縛られながら戦えば圧倒的に不利。力尽きた所を嬲り殺しにされる」

「…………」

「捕らえられたあたしは自死が出来ないよう、自由を奪われてたくさんの男に散々乱暴された上で奴隷に売られるのさ……一歩間違えば皆そうなる、あたし達はそんな世界で生きているんだ」

 ジュリアが、また溜息を吐いた。

「それに魔物はともかく、こんな奴等にもし遭遇したら説得なんて無理。殺される前に相手を殺さなきゃいけないんだよ、それが現実」

「…………」

 相手が鬼畜のような奴であろうが、俺が人を殺す……そうしなければ俺の方が殺される。
 もし先に俺が殺されたら……
 守る者が居ないジュリアは、容赦無く輪姦され、挙句の果てに奴隷として売られてしまう……
 
 俺は……
 想像しただけで、そんな事には耐えられない。
 
 切々と語るジュリアの顔を見ながら、この世界の厳しさを漸く俺は実感していたのだ。
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