23 / 205
第23話「ジュリアの秘密能力②」
しおりを挟む
俺はジュリアを背負い、速歩レベルで歩き続けている。
もう軽く1時間は経っただろう。
ジュリアは目を丸くして言う。
「トールったら、あたしを背負っているのに何でそんなに歩くのが速いの?」
ジュリアは自分を背負いながら、楽々と歩き続ける俺の歩行の速度に驚嘆している。
聞けば、ジュリアが歩くペースの2時間くらいの道のりを、もう既に走破したと言う。
「ははは、少し鍛えたからな」
曖昧に答えた俺だが、これもさっきの腕輪の出所と一緒で嘘。
俺の歩みが速いのは、この世界の神であるスパイラルから与えられた頑健な身体のお陰だ。
そして俺達が向かっているジェトレの村は俺が歩いて来た方とは逆、つまりは西へ5時間程度歩いた所だという。
今、俺がジュリアを背負って歩いている速さは軽く彼女の2倍はある。
つまり後、1時間半から2時間でジェトレに着く計算だ。
本当はもっと早く歩けるけど、ひと目で尋常じゃないと分かる。
まだ俺の全てを伝えていないのに、それはまずい。
「広くて温かいし、あたし……トールの背中が大好き」
顔を、俺の背中に埋めて甘えるジュリア。
しかし、そんな甘い雰囲気も30分後には様子が変わる。
ジュリアが、不安そうに危険を告げたのだ。
「トール、今度は本当にやばいよ。この先に怖ろしい気配がする、迂回するか、少しこの場で待とうよ」
これがジュリアの勘、優れた危機回避能力って事か。
確かに俺の例の直感も、この先は危ないと告げている。
しかし、残念ながら何がどうしてだから危険なのかという内容まで知る事は出来なかった。
まあ考えられるのは魔物か、人間か、どちらにしろ害意を持った奴等の襲撃しかない。
そして、ここでの選択肢は3つ、まあ正確に言えばふたつだが……
このまま無条件に進む……こんな阿呆な事はしないから論外のNG
注意しながら迂回して進む……でもジュリアによればこの直ぐ先はまた森でありゴブリンやオークなどの魔物が、跋扈する領域だそうなのでこれもパス。
ここで1時間程度待つ……これが最も無難そうだ。
幸いにも、辺りは草原であちこちに雑木林が点在するような地形だ。
しっかりと警戒していれば、何者かが近付けば直ぐに分かるのも良い。
当然ながら、俺は3つ目の安全策を取る事にした。
ジュリアは、俺が意見を取り入れてくれたのをとても喜んでくれる。
そうそう、お互いに意見は言うけど、ず~っと平行線のままってあるじゃない。
それって不満が溜って、いずれは不和のきっかけになりそう。
意見の一致は価値観の一致に繋がる。
こうやって何気ない気持ちの積み重ねで、男と女って仲良くなる気がする。
俺とジュリアは適度な休憩場所を探す。
周囲が見渡せて、敵が隠れる遮蔽物が無い場所がベスト。
丁度良い場所が見付かると、俺は腕輪から背負子を取り出した。
すかさずジュリアは、休憩の際に飲めるようお茶の支度をしてくれる。
後は水筒から水を鍋に注ぎ、お湯を沸かすだけだ。
天気は良いし、心配事さえなければなぁ……
俺は苦笑して、軽く息を吐く。
だって、可愛い彼女とピクニックなんて初体験なんだもの。
さて、ここで俺は、ふたつ目のカミングアウトをする事となった。
例の……水芸だ。
「うっわ~、格好良いかどうか微妙だけど……旅には欠かせないよね」
俺が指先から水を噴出して空の鍋に満たした所、驚きながら笑ったジュリア。
いきなり、でっかい氷柱飛ばすとかよりは、ずっと地味で可愛い魔法だものね。
俺は湯を沸かす為に、火打石など使わずに俺が魔法で拾ってきた枝に火まで点ける。
するとジュリアの驚きはさすがに大きくなった。
「トール……あんた、凄いよ。こんな生活魔法が使えれば商人としては、ばっちりさ」
商人としては、凄いし、ばっちりか……
冒険者レベルじゃないって事だ。
ははは、まあ改造人間トール・ユーキの魔法はこんなモノ。
中二病な俺としては、まだ華麗な攻撃魔法に拘っているのだがね。
4大精霊魔法とか、爆炎の魔法とか、響きからして恰好良いし。
ああ、せめて「ファイアーボール」とか叫んで、火球くらいは飛ばしてみたい。
でもないものねだりしても仕方がないか。
気を取り直した俺は、鍋で沸かしたお湯を茶葉を入れたポットに注ぐ。
やがて……紅茶の良い香りが辺りに漂って来た。
おお、かぐわかしい。
野外で飲むお茶って、もしかして凄く美味いんじゃないだろうか?
見ればジュリアも、鼻を鳴らして香りを嗅いでいる。
さあ、ひと口。
おお、美味い!
本当に美味いよ、コレ。
茶葉は勿論、水が美味しいからだろうな。
そしてもうひとつ分かった。
美味いお茶を飲めば、話も弾むのは本当だって。
お茶好きな女子の気持ちが分かったぞ、俺。
そんなこんなで……
俺とジュリアは他愛のない話をしながら、ひと時の休憩を楽しんでいたのであった。
もう軽く1時間は経っただろう。
ジュリアは目を丸くして言う。
「トールったら、あたしを背負っているのに何でそんなに歩くのが速いの?」
ジュリアは自分を背負いながら、楽々と歩き続ける俺の歩行の速度に驚嘆している。
聞けば、ジュリアが歩くペースの2時間くらいの道のりを、もう既に走破したと言う。
「ははは、少し鍛えたからな」
曖昧に答えた俺だが、これもさっきの腕輪の出所と一緒で嘘。
俺の歩みが速いのは、この世界の神であるスパイラルから与えられた頑健な身体のお陰だ。
そして俺達が向かっているジェトレの村は俺が歩いて来た方とは逆、つまりは西へ5時間程度歩いた所だという。
今、俺がジュリアを背負って歩いている速さは軽く彼女の2倍はある。
つまり後、1時間半から2時間でジェトレに着く計算だ。
本当はもっと早く歩けるけど、ひと目で尋常じゃないと分かる。
まだ俺の全てを伝えていないのに、それはまずい。
「広くて温かいし、あたし……トールの背中が大好き」
顔を、俺の背中に埋めて甘えるジュリア。
しかし、そんな甘い雰囲気も30分後には様子が変わる。
ジュリアが、不安そうに危険を告げたのだ。
「トール、今度は本当にやばいよ。この先に怖ろしい気配がする、迂回するか、少しこの場で待とうよ」
これがジュリアの勘、優れた危機回避能力って事か。
確かに俺の例の直感も、この先は危ないと告げている。
しかし、残念ながら何がどうしてだから危険なのかという内容まで知る事は出来なかった。
まあ考えられるのは魔物か、人間か、どちらにしろ害意を持った奴等の襲撃しかない。
そして、ここでの選択肢は3つ、まあ正確に言えばふたつだが……
このまま無条件に進む……こんな阿呆な事はしないから論外のNG
注意しながら迂回して進む……でもジュリアによればこの直ぐ先はまた森でありゴブリンやオークなどの魔物が、跋扈する領域だそうなのでこれもパス。
ここで1時間程度待つ……これが最も無難そうだ。
幸いにも、辺りは草原であちこちに雑木林が点在するような地形だ。
しっかりと警戒していれば、何者かが近付けば直ぐに分かるのも良い。
当然ながら、俺は3つ目の安全策を取る事にした。
ジュリアは、俺が意見を取り入れてくれたのをとても喜んでくれる。
そうそう、お互いに意見は言うけど、ず~っと平行線のままってあるじゃない。
それって不満が溜って、いずれは不和のきっかけになりそう。
意見の一致は価値観の一致に繋がる。
こうやって何気ない気持ちの積み重ねで、男と女って仲良くなる気がする。
俺とジュリアは適度な休憩場所を探す。
周囲が見渡せて、敵が隠れる遮蔽物が無い場所がベスト。
丁度良い場所が見付かると、俺は腕輪から背負子を取り出した。
すかさずジュリアは、休憩の際に飲めるようお茶の支度をしてくれる。
後は水筒から水を鍋に注ぎ、お湯を沸かすだけだ。
天気は良いし、心配事さえなければなぁ……
俺は苦笑して、軽く息を吐く。
だって、可愛い彼女とピクニックなんて初体験なんだもの。
さて、ここで俺は、ふたつ目のカミングアウトをする事となった。
例の……水芸だ。
「うっわ~、格好良いかどうか微妙だけど……旅には欠かせないよね」
俺が指先から水を噴出して空の鍋に満たした所、驚きながら笑ったジュリア。
いきなり、でっかい氷柱飛ばすとかよりは、ずっと地味で可愛い魔法だものね。
俺は湯を沸かす為に、火打石など使わずに俺が魔法で拾ってきた枝に火まで点ける。
するとジュリアの驚きはさすがに大きくなった。
「トール……あんた、凄いよ。こんな生活魔法が使えれば商人としては、ばっちりさ」
商人としては、凄いし、ばっちりか……
冒険者レベルじゃないって事だ。
ははは、まあ改造人間トール・ユーキの魔法はこんなモノ。
中二病な俺としては、まだ華麗な攻撃魔法に拘っているのだがね。
4大精霊魔法とか、爆炎の魔法とか、響きからして恰好良いし。
ああ、せめて「ファイアーボール」とか叫んで、火球くらいは飛ばしてみたい。
でもないものねだりしても仕方がないか。
気を取り直した俺は、鍋で沸かしたお湯を茶葉を入れたポットに注ぐ。
やがて……紅茶の良い香りが辺りに漂って来た。
おお、かぐわかしい。
野外で飲むお茶って、もしかして凄く美味いんじゃないだろうか?
見ればジュリアも、鼻を鳴らして香りを嗅いでいる。
さあ、ひと口。
おお、美味い!
本当に美味いよ、コレ。
茶葉は勿論、水が美味しいからだろうな。
そしてもうひとつ分かった。
美味いお茶を飲めば、話も弾むのは本当だって。
お茶好きな女子の気持ちが分かったぞ、俺。
そんなこんなで……
俺とジュリアは他愛のない話をしながら、ひと時の休憩を楽しんでいたのであった。
0
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる