22 / 205
第22話「ジュリアの秘密能力①」
しおりを挟む
俺は今、街道を歩いていた。
背には、恋人ジュリアが負ぶさっている。
結局、俺は背負子を収納の腕輪に仕舞ってから、ジュリアを背負って歩いているのだ。
ジュリアは最初、その恰好が子供みたいで恥ずかしいと渋っていた。
だが、少しでも早くジェトレ村に到着する為にはこの方が良いと説得した。
すると俺の意見に対して、素直に従ったのである。
暫し歩いてから、以前不思議に思った事を聞いてみた。
「ジュリア」
「ん?」
「お前、良くこんな危ない道を、ひとりっきりで行き来していたな」
どう見たってジュリアは、無力な15歳の少女だ。
動きは多少素早いが、戦う力も無くて抵抗する術も碌に持ってはいない。
中世西洋を例に取ると、当時街道を旅する行商人は確かに存在する。
だが彼等の商売用の荷物は山賊などの恰好の餌食な為に、普通は屈強な護衛を雇って旅をするのが常識なのである。
加えてこの世界は、人だけでなく怖ろしい魔物まで出没するから。
「だって、あたしには護衛を雇うお金なんか無いんだもの」
ジュリアは醒めた顔で笑い、顔を顰めた。
「それに村の男は勿論だけど、村に来る冒険者や傭兵崩れだって、あたしを抱きたいって奴ばかりだったんだ。あんたには『好み』じゃないって言われたけど、これでも散々やらせろって口説かれたんだよ」
ええっ!?
「好みじゃない」って言ったの覚えてたの?
何か結構、根に持っているみたいだ……
……ヤバイ。
俺はジュリアに謝りながら、「大好きだ」と囁くと彼女の機嫌は幸いにして直る。
そして改めて、ジュリアの置かれた境遇を考えてみた。
そうか!
まあ、考えれば当り前か……
ぎりぎりの生活をしているし、金出して護衛なんか雇ったらジュリアの商売の規模では仲買人の利益など出るわけがない。
そんな事してたら、商売やる度に大赤字だ。
稼ぐという前提で、働く意味なんかない。
それにしたって……
やらせろ! って本能的な奴がそんなに多いんだ……
だからジュリアは、「ムードを大事にして」って言ったのかしらん。
うわぁ、だったら初めてのエッチの時、甘い言葉くらいかけてやれば良かった。
恥ずかしいから、ラノベの甘イチャシーンは飛ばして読んでいたツケが来たんだよ、コレ。
もっと、女の子の口説き方とか、アプローチのやり方とか練習しとけば良かった……
ああ、俺の、バカ、バカ、バカぁ!
そんな物思いに耽っていた俺に、今度はジュリアが囁く。
「実は、あたし勘が鋭いんだ」
「か、勘?」
「そう! やばそうな気配がしたらそこを避けるんだ。今迄何度もそれで命拾いして来たよ」
トールと会った時は何故かそれが働かなくて危なかったけどとジュリアは苦笑した。
さすがにそれはあの『邪神』の陰謀……いや、加護とは彼女には言えない。
それよりジュリアの秘密能力だ。
野生の草食動物でもたまに居るけど、いわゆる『危機回避能力』がとても高い動物とか……
成る程!
ジュリアはそれで今迄無事に旅が出来たんだな。
「ふ~ん、じゃあこれからも、ヤバそうだったら教えてくれよ」
「分かったよ。じゃあ早速、危な~いっ!」
「へ? あ、危ない? どこに危険がっ!」
「ああっ、ここにも私を凄くエッチな目で見て危なそうな人がひとり居る……名前はトールっていうの」
ジュリアが悪戯っぽく笑う。
はぁ!?
危ないって……俺?
凄くエッチって、俺の事かよ?
よ~し!
じゃあ、君の期待に応えてやろうじゃないか!
俺はおぶった手で、ジュリアの小さなお尻を強く掴んだ。
強くと言ったって、所詮優しくだけど。
まあ甘噛み……みたいなものだ。
「ああっ、いやぁん」
誰かがどこかで言っていた。
女の子の「嫌だ」と「いやぁん」は同じ言い方でも大分違うと。
更に、ここでフォローだ。
「俺、ジュリアみたいにお尻の小さな女の子って大好きなんだ」
まるで昔聞いた歌のフレーズみたいだ。
しかし、それを聞いたジュリアは意外そうな表情だ。
「本当? トールも大きなお尻の女の子が良いと思ってたから嬉しいよ」
「トールも、って他に誰かそんな馬鹿げた事を言う奴居るのかよ?」
「ダニーに散々言われたんだ、安産型じゃない小さなお尻の女は駄目だって」
はぁ?
ダニーって、一体誰?
「ほら、村を出る時あたし達を睨んでいたあいつさ」
ああ、あのいじめっ子ね。
そんな事まで言うなんてあいつ、ジュリアの事本当に好きだったんだなぁ。
まあ反省しても、もう遅いけどね。
ジュリアは、俺の彼女にしたから。
「俺は、全部ひっくるめてジュリアが好きなんだ」
きっぱりと、言い放つ俺。
以前の俺なら、絶対に言えなかった台詞《セリフ》が来た~!
でもこう言われて、相手が大嫌いじゃない限り嫌な女の子なんて居ない……と思うけど。
さあて、ジュリアは?
「う、うん……あたしもトールの事が好き、大好き!」
くうう、これだよ、これ。
これが、『可愛い彼女』が居る幸せって奴なんだ。
俺はジュリアを背負う手に僅かに力を入れながら、例の舗装されてない街道を歩いて行った。
背には、恋人ジュリアが負ぶさっている。
結局、俺は背負子を収納の腕輪に仕舞ってから、ジュリアを背負って歩いているのだ。
ジュリアは最初、その恰好が子供みたいで恥ずかしいと渋っていた。
だが、少しでも早くジェトレ村に到着する為にはこの方が良いと説得した。
すると俺の意見に対して、素直に従ったのである。
暫し歩いてから、以前不思議に思った事を聞いてみた。
「ジュリア」
「ん?」
「お前、良くこんな危ない道を、ひとりっきりで行き来していたな」
どう見たってジュリアは、無力な15歳の少女だ。
動きは多少素早いが、戦う力も無くて抵抗する術も碌に持ってはいない。
中世西洋を例に取ると、当時街道を旅する行商人は確かに存在する。
だが彼等の商売用の荷物は山賊などの恰好の餌食な為に、普通は屈強な護衛を雇って旅をするのが常識なのである。
加えてこの世界は、人だけでなく怖ろしい魔物まで出没するから。
「だって、あたしには護衛を雇うお金なんか無いんだもの」
ジュリアは醒めた顔で笑い、顔を顰めた。
「それに村の男は勿論だけど、村に来る冒険者や傭兵崩れだって、あたしを抱きたいって奴ばかりだったんだ。あんたには『好み』じゃないって言われたけど、これでも散々やらせろって口説かれたんだよ」
ええっ!?
「好みじゃない」って言ったの覚えてたの?
何か結構、根に持っているみたいだ……
……ヤバイ。
俺はジュリアに謝りながら、「大好きだ」と囁くと彼女の機嫌は幸いにして直る。
そして改めて、ジュリアの置かれた境遇を考えてみた。
そうか!
まあ、考えれば当り前か……
ぎりぎりの生活をしているし、金出して護衛なんか雇ったらジュリアの商売の規模では仲買人の利益など出るわけがない。
そんな事してたら、商売やる度に大赤字だ。
稼ぐという前提で、働く意味なんかない。
それにしたって……
やらせろ! って本能的な奴がそんなに多いんだ……
だからジュリアは、「ムードを大事にして」って言ったのかしらん。
うわぁ、だったら初めてのエッチの時、甘い言葉くらいかけてやれば良かった。
恥ずかしいから、ラノベの甘イチャシーンは飛ばして読んでいたツケが来たんだよ、コレ。
もっと、女の子の口説き方とか、アプローチのやり方とか練習しとけば良かった……
ああ、俺の、バカ、バカ、バカぁ!
そんな物思いに耽っていた俺に、今度はジュリアが囁く。
「実は、あたし勘が鋭いんだ」
「か、勘?」
「そう! やばそうな気配がしたらそこを避けるんだ。今迄何度もそれで命拾いして来たよ」
トールと会った時は何故かそれが働かなくて危なかったけどとジュリアは苦笑した。
さすがにそれはあの『邪神』の陰謀……いや、加護とは彼女には言えない。
それよりジュリアの秘密能力だ。
野生の草食動物でもたまに居るけど、いわゆる『危機回避能力』がとても高い動物とか……
成る程!
ジュリアはそれで今迄無事に旅が出来たんだな。
「ふ~ん、じゃあこれからも、ヤバそうだったら教えてくれよ」
「分かったよ。じゃあ早速、危な~いっ!」
「へ? あ、危ない? どこに危険がっ!」
「ああっ、ここにも私を凄くエッチな目で見て危なそうな人がひとり居る……名前はトールっていうの」
ジュリアが悪戯っぽく笑う。
はぁ!?
危ないって……俺?
凄くエッチって、俺の事かよ?
よ~し!
じゃあ、君の期待に応えてやろうじゃないか!
俺はおぶった手で、ジュリアの小さなお尻を強く掴んだ。
強くと言ったって、所詮優しくだけど。
まあ甘噛み……みたいなものだ。
「ああっ、いやぁん」
誰かがどこかで言っていた。
女の子の「嫌だ」と「いやぁん」は同じ言い方でも大分違うと。
更に、ここでフォローだ。
「俺、ジュリアみたいにお尻の小さな女の子って大好きなんだ」
まるで昔聞いた歌のフレーズみたいだ。
しかし、それを聞いたジュリアは意外そうな表情だ。
「本当? トールも大きなお尻の女の子が良いと思ってたから嬉しいよ」
「トールも、って他に誰かそんな馬鹿げた事を言う奴居るのかよ?」
「ダニーに散々言われたんだ、安産型じゃない小さなお尻の女は駄目だって」
はぁ?
ダニーって、一体誰?
「ほら、村を出る時あたし達を睨んでいたあいつさ」
ああ、あのいじめっ子ね。
そんな事まで言うなんてあいつ、ジュリアの事本当に好きだったんだなぁ。
まあ反省しても、もう遅いけどね。
ジュリアは、俺の彼女にしたから。
「俺は、全部ひっくるめてジュリアが好きなんだ」
きっぱりと、言い放つ俺。
以前の俺なら、絶対に言えなかった台詞《セリフ》が来た~!
でもこう言われて、相手が大嫌いじゃない限り嫌な女の子なんて居ない……と思うけど。
さあて、ジュリアは?
「う、うん……あたしもトールの事が好き、大好き!」
くうう、これだよ、これ。
これが、『可愛い彼女』が居る幸せって奴なんだ。
俺はジュリアを背負う手に僅かに力を入れながら、例の舗装されてない街道を歩いて行った。
0
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる