真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第20話「俺はジュリアを守る!」

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 モーリスの店を出ると、あんなに勇ましかったジュリアが俺にくっついた。
 彼女の表情は、何と辛そうなものに一変している。

「はあ~、また、やっちゃったよ」

 また、やっちゃった?
 ええっと……ジュリアが、何かきつい物言いをしていたけど、その事かな?

 ジュリアの表情から、俺がそのように考えてたら案の定である。

「トール、正直に言って……あたし、モーリスに言い過ぎたかな」

「いや、あれくらいなら問題ないさ。でもジュリアがそう思うんだったら、次はもう少し優しく言えば良い」

 俺が大丈夫だと答えると、ジュリアは安心したような笑顔を見せた。

「あたし……本当はとても怖がりで小心者なんだ。だけど仲買人って商売柄、こうやって強気でいないと絶対に舐められる。特にあたしは女だから尚更さ……もしトールが見て、これはまずいぞと思ったら、どんどん言ってね、直すから……」

 ジュリアには、確かに身内のジェマ叔母さんは居る。
 だけど両親が死んでから、「自分はもうひとりきりだ」と覚悟を決めて必死に生きて来たんだ。
 こうやって本音を言ってくれるのが俺にとっては凄く嬉しい。

 守ってやらなきゃな、この俺が。
 大事な『彼女』のジュリアを!

 俺は繋いでいた手にぎゅっと力を入れてやる。

「あ!」

 俺の気持ちが伝わったのか、ジュリアは小さな声をあげると嬉しそうな顔をして同じくらいの力で俺の手を握り返して来たのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 モーリスの店で手間取ったので、少し時間を食ってしまった。
 
 もう時間は午後12時を回っている。
 時間は村の中央広場にある時計で知る事が出来るのだが、ちなみに持ち込んだのは、あのモーリスだそうだ。
 ジュリアには仕組みが分からない魔法の力で動いている時計らしく、名前を魔導時計というらしい。
 錬金術の件と言い、やはり彼は只者ではなさそうだ。

 俺達は一旦、大空亭へ戻った。 

 まずジェマさんに明日の出発の挨拶とモーリス同様、買い付けの用事の確認をした。
 大空亭の買い物はやはり宿屋に必要な業務用の日用品が多い。
 後は、ジェマさんが個人的に使う化粧品だ。
 
 最後はこのタトラ村の男性村長にも挨拶をした。
 そのドン村長は80歳近い老人である。
 俺を見て、「もごもご」言っていたようだが、終に言葉が理解出来なかった。
 ジュリアに聞いてみたら、俺を見て少し驚いていたようだ。

 驚くって……
 何か俺、まずい事したかしらん……

 少し不安にはなったが、不吉だから追い出せとかそんな事ではないらしい。

 今日やる事は、全て終わった。
 俺とジュリアは大空亭に帰ってジェマさんを手伝い、夕食を食べて就寝した。
 ちなみに昨夜の『痛み』があるとの事で残念ながら『H』はお預けであった。

 翌朝……

 俺とジュリアは宿屋の朝の仕事を終えると出発の準備をした。
 ジェマさんは相変わらず淡々としていたが、俺に対して以前とは態度が違うのはひと目で分かる。
 ジュリアの恋人なら、彼女にとっては準身内なのだろう。
 
 俺達はジェマさんへ挨拶をすると、手を振って出発した。
 荷物を詰めたジュリアの背負子しょいこを俺が代わりに背負う。
 そして空いた手で彼女の手を繋ぎ、歩き出したのである。
 
 村の中を歩いていると俺に対して突き刺さるような視線を感じたので俺はそちらに目を向けた。
 するとジュリアと同じくらいの年齢の少年が、殺気の篭った目で俺を睨んでいる。

「なあジュリア、あいつは?」

 俺が顎をしゃくって聞いてみると、ジュリアは一応幼馴染だと言う。

「一応?」

「ああ、子供の頃によくいじめられたよ。両親が死んでからは苛められなくなったし、あたしも生きて行くのに必死であんなのを構っている暇なんか無かったもの」

 あの、男の子が女の子を苛めるって……
 それって、多分好きの裏返しだ。
 加えて頻繁に苛めたって事は……ジュリアが大好きって事だよ、きっと。

 幼馴染の少年は相変わらず俺を睨んでいるので、少しうざい。
 そこで、こちらからも睨み返してやった。
 すると自分でも何か怖ろしげな波動が立ち昇るのが感じられる。
 怒りの魔力波オーラって事だろうか?
 俺からただならぬ気配を感じたのか、少年は慌てて視線を逸らすと自分の家らしい家屋に逃げ込んでしまった。

 その光景を見て、ふふふっと面白そうにと笑うジュリア。
 多分少年の自分に対する気持ちなど分かる筈も無く、俺のひと睨みで彼が逃げた事への快哉を叫んだのであろう。

 少し歩いただけで間も無く村の正門だ。
 俺はこれからまた旅に出るのだ。
 しかし、今度はこの異世界に来た時のようにひとりきりではない。

 俺のかたわらには、可憐でしっかりした愛すべき相棒が心からの笑顔を見せていたのであった。
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