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第8話「宿屋女将のトンデモ提案」
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宿屋の女将なのだろうか、女の視線が俺とジュリアに真っすぐに注がれる。
カウンターの脇には簡素なテーブルが3組置いてあり、飲食や休憩が出来るようであった。
女はジュリアを見ると、俺の事を完全無視。
ぶっきらぼうにジュリアへと話し掛ける。
その間もジュリアの小さな手は、俺の手をしっかり握っていた。
「ああ、ジュリアかい? やけに遅いんで心配したんだよ」
「叔母さん、あたし途中でゴブに襲われたの。但し、隣村へのお使いはきちんとして来たよ」
ジュリアの話を聞いていると、この女は彼女の叔母らしい。
「お前も荷物も無事だったかい? そりゃ、結構。で、その人は?」
「あたしをゴブから助けてくれたんだ、命の恩人だよ」
「ふ~ん、強いんだね。そうは見えないけど」
ジュリアの話を聞いても、女の表情にさほど変化は見られなかった。
ゴブに襲われて、下手すりや喰われる……
こんな事は、この付近で日常茶飯事なのだろうか?
そんな事を考える俺へ、女は寧ろ値踏みするようにじっと見つめて来た。
彼女の視線は、俺の顔からジュリアの手を握る俺の手に移って釘付けになる。
訝し気な 女の口元に、僅かだが笑みが浮かぶ。
「はっ、私はジェマ。ジュリアの叔母でこの宿屋『大空亭』の主人さ。あんたは冒険者のようだが、ジュリアを助けてくれたお礼に安くしておこう。そうさねぇ、通常の半額料金で良いよ。どうする、泊るかい?」
女主人=ジェマさんの物言いと態度は、サービス精神に溢れた日本式宿屋の接客とは程遠いが、この世界ではこんなものものかもしれない。
身内がゴブリンに襲われて命拾いしたのに喜ぶ様子も全く無く淡々としているのには、はっきり言ってドン引きしたが……
俺への礼はともかく自分の姪であるジュリアへ、何の心配もないとは不思議でならなかったのだ。
一応、宿代を格安にするという話が、ジェマさんの誠意なのであろう。
まあ良いと、俺は思う。
通りすがりの俺には、所詮関係無い事だ。
どこかに泊ろうと思っていた俺には渡りに船だから、この大空亭で宿泊する内容と料金を聞く事にした。
「素泊まりは1,000アウルム。朝食付きは1,200アウルムだね。これを半額にしてやるよ。朝食以外の食事代は物によって別途頂くから」
1,000アウルム?
それって、円に換算してどれくらいの金額なんだろう。
邪神様から貰い、所持している金は果たして使えるのだろうか?
以前読んだ資料本にはこのような時には相手に大金を見せない方が良いと書いてあった筈だ。
「じゃあ、とりあえず1泊朝食付きで、今夜の夕飯も頼みたい、幾らかな?」
「だったら特別に今夜の夕飯もサービスにしておいてやるよ。全部込みで半額の600アウルムで良い。夕食代のサービスは私達の荷物を守ってくれた御礼さね」
俺が客になると知って、ジェマさんは初めて愛想笑いを浮かべる。
彼女は本当にクレバーでドライな人だ。
財布を取り出し、相手に中身を見せないように注意しながら、俺は大きな方の銅貨5枚を渡した。
持っている硬貨がどれくらいの価値があるのか試してみたのである。
「600アウルムと言っただろう? 1泊と朝食なら後、100アウルム足りないよ……」
ジェマさんは、結構渋い顔をしていた。
どうやら俺は、特値を更に値切っていると思われたらしい。
すぐ謝罪した俺は、改めてどの硬貨を出せば良いのか聞いてみた。
「100アウルム……その大銅貨1枚がそうだよ……ああ、そうだ、あんたも男だったら女が好きだろう」
「は、はぁ?」
「どうだい、このジュリアに『夜伽《よとぎ》』をさせるかい?」
「え? えええっ!?」
「夜伽OKなら、別に25,000アウルム払いな。高いと思うかもしれないが、これは絶対に負けられないからね。見た通り器量はまあまあだし、未だこの娘は処女だからさ」
はぁ!?
いきなり何それ?
ヨトギ? よとぎ?
夜伽って何だっけ?
俺は必死に資料本で読んだ記憶を呼び起こそうとした。
しかしラノベ執筆用の資料本にそんな事は載ってはいない。
いる筈がない。
俺は何か別の本で読んだ僅かな記憶を手繰り寄せた。
ええと、確か……
お客へのもてなしの一種だっけ?
お、女の子が俺と一緒に寝てくれて……○や×をして最後は☆みたいな!?
ってジュリアは処女って……だからぁ、何ぃ!?
混乱した俺は思わずジュリアを見る。
ジュリアは俺の顔をまともに見れないようで真っ赤になって俯いてしまっていた。
でも本人の意思って関係無いのだろうか?
叔母さんの命令は絶対なのか、ジュリアに嫌がっている様子はない。
「さあ、どうする。ジュリアに夜伽をさせるのかい?」
彼女の叔母であるジェマは相変わらず冷静である。
どうやらこの村はそのような慣習があるらしい。
まあこの『○○』と呼ばれる仕事は『地球』では最も古い職業だと聞いた事があるから、この世界にあってもおかしくはないだろう。
「と、とりあえず結構です。またの機会にします」
金はあるのだし、このような時に前世でリア充、女性に対して百戦練磨のモテ男であるならば、こんな機会にはひゃっはーと叫んで迷わずOKしたであろう。
だけどその時の俺は、そんな勇気が無いいわゆる『ヘタレ』であった。
仕方無いよ、童貞だったしな……
今から思えば自分でも情けないと思うが、俺がそう言うと顔をあげたジュリアは何故か悲しそうな表情をした。
酷く悲しそうな目をして、俺をじいっと見たのである。
俺はそんなジュリアを見ていられなくて、そそくさと教えられた部屋に引っ込んでしまったのであった。
カウンターの脇には簡素なテーブルが3組置いてあり、飲食や休憩が出来るようであった。
女はジュリアを見ると、俺の事を完全無視。
ぶっきらぼうにジュリアへと話し掛ける。
その間もジュリアの小さな手は、俺の手をしっかり握っていた。
「ああ、ジュリアかい? やけに遅いんで心配したんだよ」
「叔母さん、あたし途中でゴブに襲われたの。但し、隣村へのお使いはきちんとして来たよ」
ジュリアの話を聞いていると、この女は彼女の叔母らしい。
「お前も荷物も無事だったかい? そりゃ、結構。で、その人は?」
「あたしをゴブから助けてくれたんだ、命の恩人だよ」
「ふ~ん、強いんだね。そうは見えないけど」
ジュリアの話を聞いても、女の表情にさほど変化は見られなかった。
ゴブに襲われて、下手すりや喰われる……
こんな事は、この付近で日常茶飯事なのだろうか?
そんな事を考える俺へ、女は寧ろ値踏みするようにじっと見つめて来た。
彼女の視線は、俺の顔からジュリアの手を握る俺の手に移って釘付けになる。
訝し気な 女の口元に、僅かだが笑みが浮かぶ。
「はっ、私はジェマ。ジュリアの叔母でこの宿屋『大空亭』の主人さ。あんたは冒険者のようだが、ジュリアを助けてくれたお礼に安くしておこう。そうさねぇ、通常の半額料金で良いよ。どうする、泊るかい?」
女主人=ジェマさんの物言いと態度は、サービス精神に溢れた日本式宿屋の接客とは程遠いが、この世界ではこんなものものかもしれない。
身内がゴブリンに襲われて命拾いしたのに喜ぶ様子も全く無く淡々としているのには、はっきり言ってドン引きしたが……
俺への礼はともかく自分の姪であるジュリアへ、何の心配もないとは不思議でならなかったのだ。
一応、宿代を格安にするという話が、ジェマさんの誠意なのであろう。
まあ良いと、俺は思う。
通りすがりの俺には、所詮関係無い事だ。
どこかに泊ろうと思っていた俺には渡りに船だから、この大空亭で宿泊する内容と料金を聞く事にした。
「素泊まりは1,000アウルム。朝食付きは1,200アウルムだね。これを半額にしてやるよ。朝食以外の食事代は物によって別途頂くから」
1,000アウルム?
それって、円に換算してどれくらいの金額なんだろう。
邪神様から貰い、所持している金は果たして使えるのだろうか?
以前読んだ資料本にはこのような時には相手に大金を見せない方が良いと書いてあった筈だ。
「じゃあ、とりあえず1泊朝食付きで、今夜の夕飯も頼みたい、幾らかな?」
「だったら特別に今夜の夕飯もサービスにしておいてやるよ。全部込みで半額の600アウルムで良い。夕食代のサービスは私達の荷物を守ってくれた御礼さね」
俺が客になると知って、ジェマさんは初めて愛想笑いを浮かべる。
彼女は本当にクレバーでドライな人だ。
財布を取り出し、相手に中身を見せないように注意しながら、俺は大きな方の銅貨5枚を渡した。
持っている硬貨がどれくらいの価値があるのか試してみたのである。
「600アウルムと言っただろう? 1泊と朝食なら後、100アウルム足りないよ……」
ジェマさんは、結構渋い顔をしていた。
どうやら俺は、特値を更に値切っていると思われたらしい。
すぐ謝罪した俺は、改めてどの硬貨を出せば良いのか聞いてみた。
「100アウルム……その大銅貨1枚がそうだよ……ああ、そうだ、あんたも男だったら女が好きだろう」
「は、はぁ?」
「どうだい、このジュリアに『夜伽《よとぎ》』をさせるかい?」
「え? えええっ!?」
「夜伽OKなら、別に25,000アウルム払いな。高いと思うかもしれないが、これは絶対に負けられないからね。見た通り器量はまあまあだし、未だこの娘は処女だからさ」
はぁ!?
いきなり何それ?
ヨトギ? よとぎ?
夜伽って何だっけ?
俺は必死に資料本で読んだ記憶を呼び起こそうとした。
しかしラノベ執筆用の資料本にそんな事は載ってはいない。
いる筈がない。
俺は何か別の本で読んだ僅かな記憶を手繰り寄せた。
ええと、確か……
お客へのもてなしの一種だっけ?
お、女の子が俺と一緒に寝てくれて……○や×をして最後は☆みたいな!?
ってジュリアは処女って……だからぁ、何ぃ!?
混乱した俺は思わずジュリアを見る。
ジュリアは俺の顔をまともに見れないようで真っ赤になって俯いてしまっていた。
でも本人の意思って関係無いのだろうか?
叔母さんの命令は絶対なのか、ジュリアに嫌がっている様子はない。
「さあ、どうする。ジュリアに夜伽をさせるのかい?」
彼女の叔母であるジェマは相変わらず冷静である。
どうやらこの村はそのような慣習があるらしい。
まあこの『○○』と呼ばれる仕事は『地球』では最も古い職業だと聞いた事があるから、この世界にあってもおかしくはないだろう。
「と、とりあえず結構です。またの機会にします」
金はあるのだし、このような時に前世でリア充、女性に対して百戦練磨のモテ男であるならば、こんな機会にはひゃっはーと叫んで迷わずOKしたであろう。
だけどその時の俺は、そんな勇気が無いいわゆる『ヘタレ』であった。
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今から思えば自分でも情けないと思うが、俺がそう言うと顔をあげたジュリアは何故か悲しそうな表情をした。
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