真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

文字の大きさ
上 下
6 / 205

第6話「泣かせちゃった!」

しおりを挟む
 戦いが終わり、俺は勝った。
 ゴブリンの脅威も……去った。

 今、俺は少女の居る木の上を見上げている。
 彼女は俺がゴブリンを倒したと呼びかけたのに、まだ降りて来ないのだ。
 まあ危害を加える相手が、ゴブリンから俺に代わっただけと考えて警戒しているのかもしれない。
 
 何度か、声をかけてみたが、少女はこちらを睨むだけで全く動く気配が無かった。
 もしかして言葉が通じないのか?
 でも、これでは埒があかない。
 このまま少女が降りて来るのを待っていると、まるでさっきのゴブリンと同じ見え方になってしまうではないか。

 それに、こんな森の中で愚図愚図などしてはいられない。
 怖ろしい魔物が出るような所で日が暮れるなんてまっぴら御免だ。

  俺が少し離れると少女が木の上から降りる気配がする。
  残りのゴブリンが逃げたので近くに居るかもしれないと、未だビクビクしているのであろう。
  そんな彼女の怯えの気配が伝わって来る。

  気配!?

  先程のゴブリンの気配を感じた時もそうであったが、俺はその不思議な感覚を得る為に集中する。
 今度は少女の緊張した息遣いが耳に入り、疑心の眼差しまでが感じられた。
 よくよく考えてみれば、この能力はとてつもなく大きい。
 常に索敵状態になり、いきなり奇襲される可能性が大幅に減るからだ。

 そして俺が歩き出すと、 後ろからこっそりついて来る少女の気配がある。
 彼女の怯えた気配を背中に感じながら俺は街道に戻って行った。

 暫し歩き街道に戻ると、少女の所有物らしい背負子しょいこは放置されたままになっていた。

 俺はちょっと考える。
 あの娘の服装と背負子は近隣か中距離の場所に行く物であり、遠距離の旅装とは思えない。
 そして女の子の足であれば、中距離という可能性も低くなる。
 と、いう事はあの娘は何キロか歩いて自分の村に帰るのだろう。
 
 よしっ!
 俺もとりあえずそこに行こう。
 行き先を決めた俺は、背負子を立て散らばった彼女の荷物を拾い、適当に詰め込んだ。

 当の少女はというと少し離れた所から俺の様子を窺っている。
 自分の荷物を取られるかと思ったのかその視線は激しい憎しみに満ちていた。

 おいおい、一応命の恩人だろう?
 俺はお前のさ。

 俺は苦笑して背負子の傍を離れると、少女は急いで背負子の置いてある所に駆け寄って来る。
 彼女は背負子の荷物を確かめると、何も無くなっていない事を知ったようだ。
 ホッとする様子が遠目からでも分かる。

 俺がだいぶ離れて見守っていると、俺と荷物を交互に見た。
 どうやら自分と荷物を天秤にかけているようだ。
 しかし折角ここまで運んで来た荷物を、簡単には捨てられないのだろう。
 小さな身体には大き過ぎる背負子を、何とか背負ったのである。
 そしてそのまま俺が歩いて行こうとした方角に向って進もうとしたのだ。

 今だ!

  俺は、ダッシュして少女の下に向う。
  それを見た少女は驚いて走り出すが、重い荷物を背負った為に俺から逃げられる筈もない。
  俺は背負子を背負った少女を捕まえて、軽々と抱え上げた。
  少し無理があるが、一応お姫様抱っこのような格好だ。
  彼女は酷く泣きわめいているが、俺はそのまま歩き始めたのである。

  ――30分後

  泣き疲れた少女は相変わらず俺を睨んでいる。

 「悪魔! 鬼畜! けだもの!」

 罵詈雑言の嵐ではあるが、これを聞く限り何とか言葉は通じるようだ。

 「おいおい、お前をゴブリンから助けたのは俺だぜ」

 「ふんっ、どうせ下心があっての事だろう。こ、この、あたしの身体が目的なんだろう?」

 俺は改めて抱えている彼女を見た。
 
 年齢は俺と同じくらいか少し下だろうか?
 日焼けしていて肌は浅黒い。
 髪は栗色のショートカットで、大きな鳶色の瞳の目付きはきつい。 
 意志の強そうな口は真一文字に結ばれ、野生的な顔立ちだ。
 
 一応美人の部類には入るだろう。
 背は150cmくらいだろうか、身体全体は華奢なつくりで、俺の大好物の胸は……殆ど無い。
 そして蓮っ葉な言葉遣い……

 俺の好みは色白で胸が大きくて切れ長の瞳の子。
 そう、ちょっぴりふくよかな、優しい癒し系が大好き。
 なので、少女は完全な『ボールゾーン』であった。
 
 軽く舌打ちしながら、俺は首を横に振る。

 「悪いが、ちっぱい、ぺったんでやせっぽっちのお前は俺の好みのタイプじゃない。もしそうだったらそこらの繁みに連れ込んでさっさとやっているよ。それにわざわざ30分も運んだりしない」

 あれぇ……
 ひでぇ言い方!
 こんなにきつく言わなくても……
 俺ってこんな遠慮の無い奴だったっけ?
 
 もしや!
 これって……邪神様の斜に構えたような超が付く毒舌だ。
 
 気付いた時には既に遅い。
 俺の言葉の暴力は鋭い槍となって助けた少女を傷つけながら、深く心へ突き刺さっていた。

 「うわあああああああん! やせっぽちのあ、あたしが全くこ、好みじゃないっていうのぉ!? ちっぱい、胸ぺったんで可愛くないっていうのぉ!? あたし、村の娘達の中では1番の美人って言われているのにぃ!」

 あああ、いきなり、やっちまった。

 俺はさめざめと泣き出した少女を抱えて、阿呆のように街道の真ん中に突っ立っていたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...