真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号

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第5話「初めての戦い」

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 ……俺は今迄思い出に耽っていたが……現実逃避完了!
 突如、ハッと我に返る。
 
 思い直す。
 やっぱり大人しく喰われれるのは御免だ。
 転生不可=消滅は嫌だ。

 というか、てめぇら、来るんじゃねぇ!
 こんな時は魔法だ。
 ゴブリンみたいな魔物は火を恐れる筈……

 しかし酷い。
 邪神様もセバスチャン爺も、出発前に魔法のレクチュアなんて全くしてくれなかった。
 だから、さっきの水の魔法同様、イメージで使ってみるしかない。

 でも言霊も呪文も知らなくて魔法なんて使えるのだろうか?
 まあ、いちかばちかだ。

「よっし! 炎よ、吹き出せ!」

 ……シュボ!

「は?」

 何と、指先にライターのようにちっちゃな火が出た。
 確かに火の魔法は使えた。
 料理には便利だ、嬉しいなっと。
 
 バカヤロ~
 嬉しくねぇ
 戦うのになんて使えないじゃん、これ。
 やっぱり俺は……こんな生活魔法しか使えないんだ。

「あ~、畜生! どうすれば良いんだよぉ!」

 もうヤケ!
 俺は、邪神様から貰った魔剣を抜いて構える。
 でも刃物なんか、家庭科の調理実習で包丁くらいしか使った事が無い。
 慌てているから、構える恰好は全く様になっていない。 

「あ~、もう糞っ!」

 再び声を出して、必死に怖さを紛らわす。

 へっぴり腰で剣を構えた俺の額に、どっと汗が噴き出ている。
 もう詰んでしまうのだろうか、俺? 

 その時である。
 奇跡が……起こった。
 
 俺に向ってくるゴブリンの動きが急速に鈍くなったのだ。
 ひとコマ送りのような動きであり、いわゆるスローモーション状態である。

「わわっ!?」

 俺は思わず、大声を出してしまった。
 
 おかしい?
 何故?
 これも邪神様の加護だろうか?

 迷った俺であったが、首を振って意識を現実に引き戻す。

 まあ良いか。
 無駄に考えている暇はない。
 俺はどのような手段を使っても勝つだけだ。
 絶対に勝って、生き残らなければならない。
 負けて、あのような奴等に頭からむしゃむしゃ喰われるのは御免だ。
 異世界初心者のこの俺はRPGに出てくる勇者のように、正義感や格好なんか気にしてはいられない。
  
 俺は改めて剣を構えた。
 相変わらず変な構えだが、さっきよりはだいぶ心に余裕が出来た。
 邪神様から貰った剣の黒光りする刀身が陽を浴びて不気味に反射する。

 相変わらず奴等の動きは遅い。
 めちゃ遅い!
 
 考えてもみてくれ。
 野球でもサッカーでも止まっているボールを打ったり、蹴り込む事の容易さを。
 しっかりと方角を決めて、力加減もゆっくりと決められる。
 戦いだってそうだ。
 止まっている、無抵抗な奴を倒すなど児戯である。
 奴等との戦いは、まさにGAMEでいう無双状態であったのだ。

 勇気付けられた俺は雄叫びをあげて、ゴブリンに突っ込む。
 必死だった。
 先頭を切って襲って来た奴の頭を、俺は蹴り飛ばす。
 鈍い感触があり、俺に蹴られたゴブリンの頭は不自然に後方へ折れ曲がった。
 それだけじゃない、相手は軽く吹っ飛んでしまう。
 遠くへごろごろと転がったゴブリンは倒れたままで、ぴくりとも動かない。

 行けるっ!
 
 俺は息を吸い込むと、思い切り吐いた。
 そして、次に襲って来た奴に対しては、力任せに剣で横に薙ぎ払う。
 剣の心得がある人から見たら滅茶苦茶なのだろうが、俺にとっては精一杯の戦い方だ。
 そんないい加減な戦い方なのに、この魔剣の切れ味は抜群だった。
 ゴブリンの首はあっけなく、すぱ~んと刎ねられたのである。

  3匹目の奴は、食い殺した哀れな犠牲者から奪ったのか、錆びたメイスを振るって殴りかかって来た。
 しかし奴の動きはやはりスローモーであり、対する俺の方は相手の動きに合わせて殺陣《たて》を行う昔のコントをやっているかのようだ。
 俺は体を横にして相手の攻撃をあっさりかわすと首の後ろに手刀を叩き込んだのである。
 またもやゴブリンの首の骨が折れる手応えが伝わり、相手はあっけなく絶命した。

 俺が3匹倒したので残りは2匹……
 しかし、その2匹は木の下に居て、少女を見張りつつこちらをうかがっていた。
 
 どうやら俺を恐るるに足らずと見て3匹に任せ、残りは少女が逃げられないように木の下に陣取っていたらしい。
 俺はゆっくりと奴等に近付いて行く。
 ゴブリンの知能がどれほどのものだか分らないが、何も感じないと言う事はないだろう。
 多分、恐怖という感情はあるに違いない。
 奴等は怯えの気配を発すると、あっさりと俺に背を向けて森の奥に逃げ出したのである。

「ふ~、よっし、勝った! 勝ったぞ~!」 

 俺が叫ぶと、聞き覚えのある声が響いて来た。
 あのお方である。

『うふふ! やったねぇ! 我が使徒のデビュー戦大勝利! オメデト~』

 どうやって話せば良いんだろう?
 俺が考えると……

『ふふふ、これは念話と言って心と心で話す会話さ。心で……呟くんだ』
 
 えっと……やってみよう。
 ああ、何となくコツを掴んだ。
 話す事が出来そうだ。

『あ、ありがとうございます。何とか……勝ちました、今のってスパイラル様のお力ですか?』

『そうだよん! 僕が君へ施した改造の成果のひとつ、身体能力大幅アップさ、どう?』

『どうって……す、スゴイっすよ! 相手が止まって見えましたから!』

『うんうん! これはね、今までにないチート能力だよぉ。魔力を結構使うけど、何と身体能力を通常の数十倍にも出来るんだ。という事は君は今ゴブリンに対して数十倍の動きで戦ったんだよ』

 だから……コマ送りみたいになったり、相手が……止まって見えた?

『そうそう! 君の居た世界の野球ってスポーツで活躍した昔の選手の発言にヒントを貰ったのさ……その人、ボールが止まって見えた! だってさ、あはははは!』

 邪神様ったら、冗談みたいに言っているけど。
 す、スゴイよ!
 このチート能力は!
 ここは素直に礼をいうべきだろう。

『スパイラル様、ありがとうございます! 貴方のお陰で俺は勝てました!』 

『ぱらららぱぱっぱ~! 不細工な使徒トオルの信仰心が上がった! 美少年神スパイラルは神格LV.5に上がった! 何てね! 君達の信仰心って奴がさ、僕の神格レベルをどんどん上げるんだ。これからもよろしくぅ! ば~い!』 

 邪神様は満足したように言うと、帰ってしまった。
 彼の使徒である俺は改めて納得した。
 これからも邪神様とは持ちつ持たれつ、共存共栄なんだと。

 さあて、あの女の子を助けよう。
 
 こちらをじっと見ているであろう、木の上の女の子の視線を感じながら俺は一歩を踏み出したのであった。 
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