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第160話エピローグ「ティーグルドリーム」
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3か月後……ティーグル王国王都グラン・シャリオの中央広場近くの大型路面店として、
シモン達がじっくりと準備を進めて来た『特産品ショップ』がオープンした。
マスター、モルガーヌ・オリオールの大号令のもと、商業ギルドが全面的に協力し、王国各地へ指導員を送り、商品の生産システムを確立させ、流通ルートも確保した。
ちなみに……
冒険者ギルドマスター、バジル・クストーの、こちらも全面協力により、
流通ルートは安全が保たれている。
そして『特産品ショップ』の運営を管理する店長は、
商業ギルドサブマスター兼務のペリーヌ・オリオールの推薦する、
ギルドの女子メンバーが出向、務める事となり、
スタッフは全員女子とし、パート、アルバイトも雇った。
全国の名物、特産品が王都に居ながら、簡単に手ごろな値段で購入可能。
配達、通信販売も対応。
接客をしてくれるのは元気で、笑顔が素敵な女子達。
ペリーヌのアイディアで、期間限定のイベントが行われ、
そのイベントの当該地の民族衣装をスタッフが可愛く着こなし、
大人気となった。
先日シモン達が支援した農村からも『名産品』が届き、これで小村は完全なビジネスモデルとなった。
こうしたいろいろな要因から、客足は順調以上。
入店待ちの長い行列まで出来た。
特産品ショップの盛況ぶりを、シモンはエステルを伴い、護衛のジュリエッタも含めた支援戦略局のメンバーと眺めていた。
開店にこぎつけるここまで……
散々苦労し、試行錯誤もした。
それだけ全員が感無量という趣きである。
エステルがシモンへ笑顔を見せる。
「局長、局長の故郷プリンキピウムの名産品もありますね」
「ああ、町長から売り込みがあって、審査の結果合格したから仕入れて販売する事になったな。ウチのオフクロが大好物だから買って帰るよ」
「うふふ♡ それが良いです。クレアもお店にぜひ来たいと言っていました」
「ああ、今度、一緒に来よう」
「そして来年春、クレアが卒業したら……王都大聖堂で、私達3人の結婚式ですね」
「だな! 結婚立会人には、何と! マクシミリアン殿下自らが申し出られたそうだ」
「うふふ♡ とっても畏れ多いですね♡」
「全くだな! 上級貴族のラクルテルの父上、母上は単純に喜んでいるが、平民のオフクロは今からひどく緊張しているよ」
「じゃあ、局長が回復魔法をかけないといけませんね」
「ああ、最近毎日かけてるよ。シモン、お前は凄いねって、とても喜んでいる」
「わあ、素敵な親孝行です」
という会話を交わすシモンとエステル。
そんなシモン達が見守る中……
特産品ショップはますます混雑して行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
年が明けて……3月。
クラウディアは、ロジエ魔法学院を無事に卒業した。
それも学年主席、魔法大学の推薦入学も決定していた。
そして5月。
春も深まり、快晴の王都。
暦的にもめでたき日に、天高くそびえる塔を備えたゴシック様式の大聖堂にて、
シモン、エステル、クラウディアの結婚式が執り行われた。
結婚立会人は予定通り、王弟で宰相のマクシミリアン・ティーグル殿下だ。
「新郎シモン! 貴方はエステル、クラウディアのふたりを妻とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「大いに誓います!」
「新婦エステル! そしてクラウディア! 貴女がたは、シモンを夫とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「大いに誓います!」
「大いに誓います!」
「では! 誓いのキスを!」
シモンはまずエステルを優しく抱きしめキスを。
そして次に、クラウディアを抱きしめキスを。
最後に、3人は一緒に固く抱き合い、永遠の愛を誓ったのである。
そんな3人を、
ラクラテル公爵夫妻、シモンの母マリアンヌは勿論……
エステルの親族代表としてあいさつしたアレクサンドラ・ブランジェ伯爵、
そして招かれた支援戦略局メンバーを始めとした、王国復興開拓省関係者、
数多の王国貴族、騎士、冒険者ギルド、商業ギルドの関係者達は、盛大な拍手で祝ったのである。
そんな結婚式が終わり……
5年の時が流れた……
その間に……シモンには家族が増えた。
秘書を務めるエステルにはママに良く似たストロベリーブロンド髪の可憐な娘が生まれ……
魔法大学を卒業し、王国復興開拓省へ入省したクラウディアには、金髪碧眼の大きな息子が生まれたのである。
ふたりの子供はいたって健康。
すくすくと育っている。
魔力が高いらしく、将来は父と母の血を受け継いだ素晴らしい魔法使いになると期待されている。
念願の孫が生まれたラクラテル公爵夫妻、シモンの母マリアンヌの喜びようは半端ではなく、
他人が言ったら絶対に許さない「じいじ」「ばあば」を自ら連発していた。
アレクサンドラも、血がつながったエステルの娘に会いに、公爵邸へ頻繁に足を運ぶ。
そんなシモンは仕事も順調。
アレクサンドラが更に出世し、王国副宰相になったのを機に、
王国復興開拓省の長官となった。
先輩のリュシー、レナは飛び越されてしまったが、
シモンは相変わらず先輩達を立て、気遣うので省内の人間関係はいたって良好だ。
エステルも公私混同と言われぬよう、日々秘書の仕事を完璧にこなし、
クラウディアも支援戦略局に勤務し、同様に華々しい実績をあげている。
シモンはたまに息抜きと称し、休日のシモンは居酒屋風車亭へ行くのが楽しみでもある。
同行するのは、エステルとクラウディア。
ジュリエッタとアンヌも護衛として同行する。
オーナーシェフ、アルバンの料理は相変わらず美味しく、ニーナ達スタッフも健在である。
……その間、仕事の時同様、ふたりの子供は『じいじ』とふたりの『ばあば』に預けているが、
子供達が大きくなったら、家族全員でランチを食べに行こうと夫婦3人で話している。
時間に追われながら……
シモンはたまに懐かしく、自分の履歴を振り返る。
……父が失踪し、母が苦労の末、シモンを育ててくれた。
18歳になって、片田舎、故郷プリンキピウムを出て、王都の魔法大学に入学。
苦学生となるも、バイトをしながら学費と生活費を稼いで何とか卒業。
とんでもないダークサイド企業コルボー商会に騙され、入社。
命をかけてトレジャーハンターを務めた末、コルボー商会の倒産を機に、
アレクサンドラにスカウトされ、王国復興開拓省へ入省。
エステル、クラウディアと運命の邂逅を遂げ、結婚。
子爵の爵位を授かり、王国復興開拓省長官の現在に至る。
ゆくゆくは、名門貴族ラクルテル公爵家の当主となり、国政にもかかわる。
コルボー商会の地獄の研修で、大群のゴブリンどもに怯え……
逃げ回っていたひ弱な青年が、遂につかんだ大きな夢。
まさに『ティーグルドリーム』である。
しかしシモンはまだまだ若い。
30歳になったばかりだ。
将来へ向け、大きな夢と希望がまだまだある!
以前シモンは小村で自らへ告げた。
それから、たまに自身を鼓舞する為に呟いている。
「俺の戦いはこれからだ」
シモンは誰にも聞こえないよう、「そっ」と呟いたのである。《完結》
シモン達がじっくりと準備を進めて来た『特産品ショップ』がオープンした。
マスター、モルガーヌ・オリオールの大号令のもと、商業ギルドが全面的に協力し、王国各地へ指導員を送り、商品の生産システムを確立させ、流通ルートも確保した。
ちなみに……
冒険者ギルドマスター、バジル・クストーの、こちらも全面協力により、
流通ルートは安全が保たれている。
そして『特産品ショップ』の運営を管理する店長は、
商業ギルドサブマスター兼務のペリーヌ・オリオールの推薦する、
ギルドの女子メンバーが出向、務める事となり、
スタッフは全員女子とし、パート、アルバイトも雇った。
全国の名物、特産品が王都に居ながら、簡単に手ごろな値段で購入可能。
配達、通信販売も対応。
接客をしてくれるのは元気で、笑顔が素敵な女子達。
ペリーヌのアイディアで、期間限定のイベントが行われ、
そのイベントの当該地の民族衣装をスタッフが可愛く着こなし、
大人気となった。
先日シモン達が支援した農村からも『名産品』が届き、これで小村は完全なビジネスモデルとなった。
こうしたいろいろな要因から、客足は順調以上。
入店待ちの長い行列まで出来た。
特産品ショップの盛況ぶりを、シモンはエステルを伴い、護衛のジュリエッタも含めた支援戦略局のメンバーと眺めていた。
開店にこぎつけるここまで……
散々苦労し、試行錯誤もした。
それだけ全員が感無量という趣きである。
エステルがシモンへ笑顔を見せる。
「局長、局長の故郷プリンキピウムの名産品もありますね」
「ああ、町長から売り込みがあって、審査の結果合格したから仕入れて販売する事になったな。ウチのオフクロが大好物だから買って帰るよ」
「うふふ♡ それが良いです。クレアもお店にぜひ来たいと言っていました」
「ああ、今度、一緒に来よう」
「そして来年春、クレアが卒業したら……王都大聖堂で、私達3人の結婚式ですね」
「だな! 結婚立会人には、何と! マクシミリアン殿下自らが申し出られたそうだ」
「うふふ♡ とっても畏れ多いですね♡」
「全くだな! 上級貴族のラクルテルの父上、母上は単純に喜んでいるが、平民のオフクロは今からひどく緊張しているよ」
「じゃあ、局長が回復魔法をかけないといけませんね」
「ああ、最近毎日かけてるよ。シモン、お前は凄いねって、とても喜んでいる」
「わあ、素敵な親孝行です」
という会話を交わすシモンとエステル。
そんなシモン達が見守る中……
特産品ショップはますます混雑して行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
年が明けて……3月。
クラウディアは、ロジエ魔法学院を無事に卒業した。
それも学年主席、魔法大学の推薦入学も決定していた。
そして5月。
春も深まり、快晴の王都。
暦的にもめでたき日に、天高くそびえる塔を備えたゴシック様式の大聖堂にて、
シモン、エステル、クラウディアの結婚式が執り行われた。
結婚立会人は予定通り、王弟で宰相のマクシミリアン・ティーグル殿下だ。
「新郎シモン! 貴方はエステル、クラウディアのふたりを妻とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「大いに誓います!」
「新婦エステル! そしてクラウディア! 貴女がたは、シモンを夫とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「大いに誓います!」
「大いに誓います!」
「では! 誓いのキスを!」
シモンはまずエステルを優しく抱きしめキスを。
そして次に、クラウディアを抱きしめキスを。
最後に、3人は一緒に固く抱き合い、永遠の愛を誓ったのである。
そんな3人を、
ラクラテル公爵夫妻、シモンの母マリアンヌは勿論……
エステルの親族代表としてあいさつしたアレクサンドラ・ブランジェ伯爵、
そして招かれた支援戦略局メンバーを始めとした、王国復興開拓省関係者、
数多の王国貴族、騎士、冒険者ギルド、商業ギルドの関係者達は、盛大な拍手で祝ったのである。
そんな結婚式が終わり……
5年の時が流れた……
その間に……シモンには家族が増えた。
秘書を務めるエステルにはママに良く似たストロベリーブロンド髪の可憐な娘が生まれ……
魔法大学を卒業し、王国復興開拓省へ入省したクラウディアには、金髪碧眼の大きな息子が生まれたのである。
ふたりの子供はいたって健康。
すくすくと育っている。
魔力が高いらしく、将来は父と母の血を受け継いだ素晴らしい魔法使いになると期待されている。
念願の孫が生まれたラクラテル公爵夫妻、シモンの母マリアンヌの喜びようは半端ではなく、
他人が言ったら絶対に許さない「じいじ」「ばあば」を自ら連発していた。
アレクサンドラも、血がつながったエステルの娘に会いに、公爵邸へ頻繁に足を運ぶ。
そんなシモンは仕事も順調。
アレクサンドラが更に出世し、王国副宰相になったのを機に、
王国復興開拓省の長官となった。
先輩のリュシー、レナは飛び越されてしまったが、
シモンは相変わらず先輩達を立て、気遣うので省内の人間関係はいたって良好だ。
エステルも公私混同と言われぬよう、日々秘書の仕事を完璧にこなし、
クラウディアも支援戦略局に勤務し、同様に華々しい実績をあげている。
シモンはたまに息抜きと称し、休日のシモンは居酒屋風車亭へ行くのが楽しみでもある。
同行するのは、エステルとクラウディア。
ジュリエッタとアンヌも護衛として同行する。
オーナーシェフ、アルバンの料理は相変わらず美味しく、ニーナ達スタッフも健在である。
……その間、仕事の時同様、ふたりの子供は『じいじ』とふたりの『ばあば』に預けているが、
子供達が大きくなったら、家族全員でランチを食べに行こうと夫婦3人で話している。
時間に追われながら……
シモンはたまに懐かしく、自分の履歴を振り返る。
……父が失踪し、母が苦労の末、シモンを育ててくれた。
18歳になって、片田舎、故郷プリンキピウムを出て、王都の魔法大学に入学。
苦学生となるも、バイトをしながら学費と生活費を稼いで何とか卒業。
とんでもないダークサイド企業コルボー商会に騙され、入社。
命をかけてトレジャーハンターを務めた末、コルボー商会の倒産を機に、
アレクサンドラにスカウトされ、王国復興開拓省へ入省。
エステル、クラウディアと運命の邂逅を遂げ、結婚。
子爵の爵位を授かり、王国復興開拓省長官の現在に至る。
ゆくゆくは、名門貴族ラクルテル公爵家の当主となり、国政にもかかわる。
コルボー商会の地獄の研修で、大群のゴブリンどもに怯え……
逃げ回っていたひ弱な青年が、遂につかんだ大きな夢。
まさに『ティーグルドリーム』である。
しかしシモンはまだまだ若い。
30歳になったばかりだ。
将来へ向け、大きな夢と希望がまだまだある!
以前シモンは小村で自らへ告げた。
それから、たまに自身を鼓舞する為に呟いている。
「俺の戦いはこれからだ」
シモンは誰にも聞こえないよう、「そっ」と呟いたのである。《完結》
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退会済ユーザのコメントです
とても好きなお話でいつも更新を楽しみにしていたのですが、この先のお話はもう読めないのでしょうか?そうだったら残念です。
いつもご愛読頂きありがとうございます!
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