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第152話「婚約確定!!」

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シモンとエステルは、王国復興開拓省専用の馬車でラクルテル公爵邸へ向かっていた。
小村出張時の、革鎧と魔法使い戦闘用の法衣ローヴそのままである。
着替えなくともそのままでOKと、アレクサンドラは告げた。
シモンの収納の魔法腕輪の中には『着替え』が入っているが、
とりあえず上司のアドバイスに従い、ふたりとも『そのまま』で馬車へ乗り込んだのだ。

やがて馬車は、ラクルテル公爵邸へ到着した。

先ほど解団式を行った採用待ちの候補生の中には……
ラクルテル公爵邸へ詰めている若手騎士も混ざっている。

その騎士から、今回の結果を聞いているのだろう、正門の警護を務める騎士達もシモンとエステルの姿を認め、嬉しそうな笑顔を向ける。
彼ら彼女には、シモンとクラウディアのゆくゆくの婚約、結婚が主ラクルテル公爵本人から伝えられている。

将来は自分達の主となるシモンに英雄譚が増えて行くのが相当嬉しいようだ。

「シモン様、任務完遂おめでとうございます!」
「おめでとうございます、シモン様! これでクラウディア様と、晴れてご婚約ですねっ!」
「シモン様は、まさに!『ティーグル・ドリーム』の体現者ですよっ!」

そんな声に送られながら、シモンとエステルは馬車から降り、
御者へ礼を言い、王宮の王国復興開拓省へ戻るように指示をした。

シモンとエステルは、正門から屋敷内へ入り、正面に見える4階建ての巨大な主屋しゅおくへと向かう。

と、その時。

主屋の扉が、バン!と開き、

「シモン様あ! エステル姉様あ! お帰りなさあいい!!」

金髪碧眼の麗しき美少女がひとり駆けて来る。
クラウディアである。
傍らに、栗毛の可憐な侍女リゼットと、凛々しい黒髪の女子騎士アンヌを伴い……

そしてクラウディアは「がしっ」と、シモンに抱き着くと、思い切り情熱的にキスをした。

「お、おいおいっ!」

「シモン様ああ!! クラウディアは寂しかったですう!! 大好きっ!! 大好きっ!! 大好きぃぃっっ!!!」

「あははは……」

将来『妻』となる麗しき美少女に、数多の人々の面前で大好きと言われ、抱きしめられる。
そして、抱き合うふたりを慈愛を込めて見守るストロベリーブロンドのこれまた麗しき美女も『妻』となる。

王国宰相マクシミリアン殿下と、英雄アンドリュー・ラクルテル公爵に見込まれ、
女傑アレクサンドラ・ブランジェ伯爵の腹心たる平民シモン・アーシュ。
先ほど、出迎えた騎士が発した『ティーグル・ドリーム』の体現者として、
周囲の者は全員、晴れがましい誇らしい表情で、見守っていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「わははははははは! ウチのクレアは私に本当に良く似ている! 情熱的なところはそっくりだ!」

「は~い、顔と優しいところは、本当、私にそっくりですよ♡」

場面変わって、ここはラクルテル公爵邸、主屋にある大広間。
ラクルテル公爵夫妻は、愛娘クラウディアを愛称で呼び、自慢し合っている。

クラウディアとの抱擁、シモンとのキスの後……
革鎧姿のシモンと戦闘法衣姿のエステルは入浴し、用意された綺麗な服に着替え、
ラクルテル公爵夫妻、アンドリュー・ラクルテル、と妻ブリジットとの会食に臨んでいた。
エステルは、綺麗に髪を整え、薄化粧している。
勿論、改めて入浴し、着替えて、化粧し「おめかしした」クラウディアも一緒であった。

「今回の任務完遂、お疲れ様。戻った騎士から、詳細な報告を受けた」
「うふふ、ふたりとも本当によく頑張ったわ、お疲れ様。さあ、乾杯しましょ」

と、いう事で、シモン、エステル、クラウディア、アンドリュー、ブリジットの、
5人全員が乾杯。

冷たい赤ワインの入ったグラスが各自により高々と持ち上げられた。

そして、上司アレクサンドラ・ブランジェ伯爵が言っていたように、
宴は本題の話へ入る。 

「いよいよ公式発表しようと思う。まずエステル・ソワイエのラクルテル公爵家養子入り、そしてシモン・アーシュとクラウディア・ラクルテル、エステル・ラクルテルふたりとの婚約をだ!」
「ええ、数多の魔物を討ち取り、小村支援の成果をあげ、凱旋して帰って来た今が、ベストタイミングよ。婚約お祝いの会は、後々やるとして、公式の発表をしましょう!」

アンドリューとブリジット、両親のふたりから『婚約の確定』を出され、
クラウディアは、歓喜!である。

「やったあ! やったあ! シモン様あ、エステル姉様あ!」

「はははは、クレア、大喜びだな。だが私達夫婦も非常に嬉しいぞ!」
「本当に! 素敵な息子と娘が増えるんだもの! 本当に喜ばしいわ!」

……食事が始まると、話は更に盛り上がる。
シモンの両脇には、エステルとクラウディア。
まさに両手に花……である。

ラクルテル公爵夫妻の話は未来への希望に満ちていた。

「結婚はクレアが、ロジエ魔法学院を卒業する来年春が良いだろう。クレアはそのまま、魔法大学へ進学すると言っている」

「うふふ、クレアもシモンとエステル、そして私とサーシャの完全な後輩になるのね! 嬉しいわ!」

「新居は、我が屋敷拡張の為に購入済みの土地を使う。新居の差配は、支援戦略局の専門家に仕切らせれば良い」

「ええ、費用は気にせず素敵なお屋敷を建ててね! そのお屋敷が将来、エステルが立ち上げる分家の屋敷にもなるわ。そこへシモンのお母様もお呼びすれば良いかもね」

しばし経ち、酒もだいぶまわったせいか、アンドリューがシモンへ笑顔を見せ、言う。
但し、声は相当落とし、身内にしか聞こえないくらいにこっそりと。

「シモン、我が息子よ、お前は本当に凄い。この私の力を遥かに超えている。この前サシで戦って、すぐに分かった」

「そ、そうですか」

「……いつか、お前がドラゴンと戦った話を……冒険譚ぼうけんたんを話してくれ。……必ずだぞ」

「は、はい! ち、父上!」

やはりアンドリューは、シモンの実力を見抜いていた。
いずれシモンは、エステルだけに話した『ドラゴン10体との戦い』をアンドリューへ告げるに違いない。

食事が終わると……お茶の時間となった。

頃合いと見たのか、アンドリューは手を叩いた。
扉が開き、侍女リゼット、女子騎士アンヌが入って来る。

「本人達の強い希望もあり、この両名はシモンへ仕える。クラウディア付きとしてな!」

「シモン様、宜しくお願い致します!」
「宜しくお願い致します、シモン様!」

予想された展開である。
ふたりは、シモンがクラウディアと結婚してもそのまま仕える事となる。

しかし、まだ紹介は終わらない。

「おい、入れ!」

「は! 閣下!」

……リゼット、アンヌに続き、大広間へ入って来たのは、
何と!
アンヌの姉であり、支援戦略局の局員となった女子騎士ジュリエッタ・エモニエであった。
先ほど、シモン、エステルと一緒に王都へ帰還したばかりである。

「え? ジュリエッタが?」

「はいっ! 私もぜひにと公爵閣下へ志願し、妹のアンヌ同様、局長……いえ、シモン様に誠心誠意、お仕え致します。引き続き、支援戦略局、局員の仕事はぜひ続けたいですし、エステル様の護衛も兼ねる事になるでしょう!」

真面目なジュリエッタは、嬉しくてたまらないという、とびきりの笑顔を見せていた。

シモンとエステル、そしてクラウディアは顔を見合わせると、

「「「宜しく!!!」」

と、大きく唱和したのである。
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