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第148話「ゴブリン殲滅」

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シモン達の掃討で森林に潜むオーガ104体は全滅した。

オーガの脅威がなくなった森林で、シモン達はキャンプを張った。
今夜は……この森で一夜を明かす事となる。

だが、全軍が一夜を明かすわけではない。
村に待機している部隊と入れ替えをせねばならない。
クラン候補者を除く応援部隊8割の人数を村へ帰還させ、
村で待機している留守番部隊と入れ替わらせ、キャンプ地へ呼び寄せるのだ。
そして、既にオーガと戦い、帰還した部隊が新たに留守番部隊となり、村を守る事となる。

帰路は、危険があまりないと想定出来るが……
念の為シモンは、冥界の魔獣ケルベロス――ゼエヴを帰還部隊の護衛につけ、
ともに村へ一旦戻らせる。

翌朝、ゼエヴは入れ替わる部隊の護衛となり、キャンプ地へ戻って来るという段取りだ。

さてさて!
帰還部隊が出発する前から……
残存部隊、40名の者達は速攻でテントを張り、
寝袋を用意し、キャンプの準備は着々と進む。

その風景を……
既に手早く自分が寝る準備を終えたシモンは、懐かしそうに眺める。

シモンは前職のトレジャーハンター時代に、野宿は散々体験した。
経験上、このような森林はまだ安全な方である。
約100体のオーガどもを討伐したから尚更だ。 
遥かに危険な、邪気こもる遺跡や迷宮で、たったひとり寝た事も度々ある。

しかし……
シモンは、今ひとりではない。
自分の身だけを守ればOKというわけではない。

愛するエステル、そして絆を結んだ部下達も連れている。
それにオーガは殲滅したが……
他の魔物や熊や狼など、肉食獣などがキャンプ地を襲撃する可能性もゼロではない。

なので、召喚しているゴーレムを放ち、森林中を巡回させ……
キャンプ地の周囲を徹底的に警戒させる。
さすがに、牙や爪ではダメージを与えられないゴーレムを襲う中小の魔物や、
肉食獣は皆無だから。

実は、キャンプ地をうかがう、オークやゴブリンどもは居たのだが……
全てがゴーレムに威嚇され、追い払われた。

そんなこんなで、夜が明けて……

翌朝、シモン達は起床し、身支度を整える。
やがて昼過ぎとなり、ケルベロスを伴い、
早朝に村を出発した『留守番部隊』が到着した。

朝一番で村を出発し。20kmを行軍して来たにもかかわらず、
『留守番部隊』は全員元気、やる気満々であった。

オーガを倒して戻った部隊から、シモンのとんでもない無双ぶりと鮮やかな戦勝を聞き、部隊全員の気合がみなぎり、腕を撫していたのだ。

……村から森林までは約20km。
朝から歩いた行軍の疲れをしばし癒し……シモン達と改めて綿密な作戦会議を行い、情報を共有し、行き違いのないよう何度も、意思確認をした。
途中参加の者には残った2割の者が更にケアをした。

結局、新たに構成された部隊として、人数は第一陣より多い総勢140名超となり……
シモン達はリスタート、改めて進軍を開始したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

出発した森林から約15km離れた渓谷に巣食うゴブリン2,000体と……
更に、この渓谷からくだった広大な湿地帯に、
跋扈ばっこするリザードマン500体の討伐に向かうシモン達。

行軍の仕切りは、オーガ討伐に向かうのと全く一緒。
シモン達クランが先行し、約100m後を後続部隊が進軍する。

いきなり奇襲を受けぬよう、ゴーレムとケルベロス―ゼエヴを斥候に出し、
シモン自身も索敵しながら、ゴブリンが潜む渓谷へと進む。

渓谷に近づくにつれ、ゴブリンの反応が濃くなって行く。
ここからシモンは、オーガ戦と作戦を変えた。

一旦、進軍を止め、後方から着いて来る部隊と合流したのだ。

シモンが歩みを止めたのは、森林が途切れ、渓谷は入る手前の開けた場所。
大きな岩と石ころだらけの荒涼とした河原である。

大きな岩という遮蔽物はあるが……
森林ほど密集しておらず、可燃物も著しく少ない。
周囲の森林へ、延焼の可能性もほぼない。

この開けた場所へ、ゴーレムとゼエヴを勢子にし、ゴブリンどもを一気に追い込み、
シモン、ジョゼフ、エステル、そしてクラン候補者の遠距離攻撃魔法で大ダメージを与える作戦である。
今回は2次使用を考えず、思い切り無双する。
そして死骸は葬送魔法で塵にする。
そう決めていた。

先の部隊には格闘戦でシモンの無双を見せた。
今回はシモンが行使する凄まじい攻撃魔法の破壊力を見せるという意図だ。

やがて……
後続部隊が合流。
事前の作戦通り、シモン達の後方で待機する。

……遠くからは、ゴーレムとゼエヴの咆哮が聞こえて来る。

シモンは、大きくて良く通る声を張り上げる。

「まもなくぅ! 敵が来るぞぉ! 後方部隊はそのまま待機ぃ! クランメンバーは撃ち方用意っ! まずは、俺が風の攻撃魔法で迎撃するっ! 俺が魔法を撃ったら、10を数え、一斉に放てぇ!」

対してクランメンバー、後方部隊の全員がこれまた大きな声で応える。

「「「「「「「「「は~いっ!」」」」」」」」」」

やがて……
ゴーレムとゼエヴに追われ……
ゴブリンの大群が押し寄せた。

シモンは、引き付けられるだけ、引き付け……

「撃てぇっ!!!」

声を張り上げると同時に、風の攻撃魔法『風矢』を放った。

ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! 
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! 
ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! ひょお! 

とんでもない数の鋭い風の矢が、押し寄せたゴブリンどもに降り注ぐ。

ぎゃああああああああっ!
ぎえええええええええっ!
ぐあああああああああっ!

10数えたエステル、ジョゼフ、クランメンバー候補者の魔法が次々と撃ち出される。

どっ! どっ! どっ! どっ! どっ!
ごおっ! ごおっ! ごおっ! ごおっ!
びしゅ! びしゅ! びしゅ! びしゅ!
ぶわっ !ぶわっ! ぶわっ! ぶわっ!

ぎゃああああああああっ!
ぎえええええええええっ!
ぐあああああああああっ!

ゴーレムとゼエヴへ威嚇され、追われ、逃げて来たゴブリンどもは、
行く手から、シモン達からの攻撃魔法、一斉放射を受け、
数多の者どもが倒され、大混乱に陥った。

ここで勢子役のゴーレムとゼエヴが追撃者へ変わり、挟み撃ちされる形となってしまった。

「よおし! 撃ち方、やめぃ! クランメンバーの魔法使いは左右へのけぃ」

シモンは、エステルをしっかりと抱き、左横へ退いた。
ジョゼフや、魔法使いのクラン候補生も退く。

「よし、ジュリエッタ! 物理攻撃役のクラン候補生、後方部隊を率いて、全軍ゴブリンどもへ突撃ぃぃ!!」

対して、ジュリエッタも負けじと大音声。

「OKだあ!! 局長!! クラン候補生!! そして後方部隊、全軍突撃ぃぃ!!!」

シモンの号令に応え、ジュリエッタ達物理攻撃組と、後方部隊を合わせた全軍が、
一斉に突撃。
こうして、大混乱していたゴブリン2,000体の殆どは、
あっという間に討ち取られてしまった。

ゴブリンの大部分を討ち取った後、シモン達は渓谷を探索。
『生き残り』が居ないか、確認する。

渓谷の奥には洞窟がいくつも存在している事が事前の調査で判明していた。
しかし、そのまま洞窟の内部へ踏み込むのはリスクが伴う。
そこでシモンは、再び『勢子』としてケルベロスを侵入させ、自身と配下達は洞窟外で待ち伏せした。

結果、洞窟内に残っていたゴブリンどもは残らず狩り出され、倒されたのである。
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