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第138話「選考会③」
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ティーグル王国王立闘技場……
周囲への安全の為、対物理、対魔法兼用の魔法障壁に覆われたフィールドの中……
精悍な若手男子騎士とシモンが呼び出した疑似生命体、ゴーレムが対峙していた。
この選考会はルールとして戦う時間は、3分間と限られている。
但し……いかにゴーレムへダメージを与えるかという事が重視されており、
守りに徹しすぎると、「戦意が皆無では?」と疑われ、『指導』が入り、それが度重なると『反則負け』となってしまう。
それゆえ、タイミングを計っていたのか、
「たおおおおおっ!」
……若手騎士は、自ら剣を振りかざし、鎧姿の金属製ゴーレムへ猛突進した。
がいいいんん!!!
轟いた音こそ、派手であったが、ゴーレムは左腕に付けた盾であっさりと剣を受け止めた。
「う、ううっ!」
逆に、若手騎士の腕はビリビリしびれているようだ。
しかし、若手騎士は痛みをこらえ、第二撃を発する。
「くっ! うおおおっ!」
がっ!
何と今度は!
ゴーレムは、金属手で研ぎ澄まされた剣の刃を掴んだ。
しかしゴーレムは、すぐに「ぐいっ」と突き放す。
同時に手を放したので、若手騎士は思い切りしりもちをついてしまった。
「まっ!!」
勝ち誇ったように咆哮するゴーレム。
「ち、ちっくしょ!! うおおおおおっ!!」
起き上がった若手騎士は怒りのせいか、顔を真っ赤にして斬りかかるが……
今度は素早く、ゴーレムが身をひるがえし、かわす。
若手騎士の息は切れつつあったが、諦めず、闘志をむき出しにし、何度も斬りかかる。
しかし、ゴーレムの動きは更に俊敏となり、全ての剣撃を余裕でかわしていた。
はっきり言って、ゴーレムと若手騎士の力差がありすぎて、一方的となっている。
片や、順番を待つ若手騎士の仲間や先輩、後輩の騎士達、数多の冒険者、一般の応募者達は……
最初の方こそフィールド外から、大きな声援を送っていたが……
圧倒的なゴーレムの強さに、顔が引きつり、青ざめて行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後も……
冒険者、魔法使い、戦士、武闘家などが登場したが……
シモンが召喚したゴーレムに大きなダメージを与えた者は居なかった。
ゴーレムはまるで人間のように反応し、人間の数倍以上も素早く動いたからである。
例えば魔法使いなど、言霊を詠唱中に接近されるか、背後に回られてしまい、発動を封じられてしまった。
しばらくすると……
えり抜きの実力者らしき者がようやくゴーレムにダメージを与えられるようになった。
しかしいずれも致命的なダメージには至らない。
一方……
観客席では、支援開発戦略局の局員達がゴーレムと応募者達との戦いぶりを見守っていた。
「凄い!」
「あのゴーレム強いぞ! 名だたる猛者達が、子供扱いだ!」
という驚きの声が局員達に満ちる中……
地の魔法使いでもあるジョゼフが言う。
「ああ、この前の巨大ゴーレムもびっくりしたが、あのゴーレムも半端じゃない。とんでもない強さだぜ」
ジョゼフの言葉を聞き、エステルがふっと微笑む。
「万事……順調のようですね」
「はあ? 万事順調? 何を言うエステル」
エステルのつぶやきに「反論した」のは騎士のジュリエッタだ。
「どこを見てそう言う? 全然ダメだろう? いくらゴーレムが強いといっても、応募者はろくに打ち込めてないではないか! これでは見込みのある候補者が全然残らん!!」
「良いんですよ、残らなくても。応募者のある程度の絞り込みは出来ますし。それより、ゴーレムの試運転はバッチリですから」
「何? ゴーレムの試運転だと!?」
「ええ、試運転です。もしくは慣らし運転です。あのゴーレムは全然、本気を出していません。能力全開を100としたら、まだ2,3くらいしか出していませんよ」
「な、何!? 100のうち、2か3だとぉ!?」
「はい、皆さん、局長の凄さはご覧になっていますよね……あのゴーレムは局長の能力を反映した存在です。でも100%は反映していないと思います」
「な!? 100%は反映していないだと!? ど、どうして分かる? 何故そこまで言い切れるのだ?」
「うふふ……内緒です」
エステルは悪戯っぽく笑った。
彼女だけが知っているシモンの秘密……
体長20m以上のドラゴン10体とたったひとりで戦い、撃退した。
その強さ、その底力を考え、想像すると……
「こんなものではない」と思ってしまう。
否、思うのではない。
確信に至るのだ。
そんなこんなで……
ゴーレムを使った2次選考が終わった。
やはり、ジュリエッタの懸念通り、ゴーレムにしっかりと攻撃を入れられた者はわずかであった。
しかし、シモンの表情は不満の素振りなど微塵もなく、晴れやかなものだったのである。
周囲への安全の為、対物理、対魔法兼用の魔法障壁に覆われたフィールドの中……
精悍な若手男子騎士とシモンが呼び出した疑似生命体、ゴーレムが対峙していた。
この選考会はルールとして戦う時間は、3分間と限られている。
但し……いかにゴーレムへダメージを与えるかという事が重視されており、
守りに徹しすぎると、「戦意が皆無では?」と疑われ、『指導』が入り、それが度重なると『反則負け』となってしまう。
それゆえ、タイミングを計っていたのか、
「たおおおおおっ!」
……若手騎士は、自ら剣を振りかざし、鎧姿の金属製ゴーレムへ猛突進した。
がいいいんん!!!
轟いた音こそ、派手であったが、ゴーレムは左腕に付けた盾であっさりと剣を受け止めた。
「う、ううっ!」
逆に、若手騎士の腕はビリビリしびれているようだ。
しかし、若手騎士は痛みをこらえ、第二撃を発する。
「くっ! うおおおっ!」
がっ!
何と今度は!
ゴーレムは、金属手で研ぎ澄まされた剣の刃を掴んだ。
しかしゴーレムは、すぐに「ぐいっ」と突き放す。
同時に手を放したので、若手騎士は思い切りしりもちをついてしまった。
「まっ!!」
勝ち誇ったように咆哮するゴーレム。
「ち、ちっくしょ!! うおおおおおっ!!」
起き上がった若手騎士は怒りのせいか、顔を真っ赤にして斬りかかるが……
今度は素早く、ゴーレムが身をひるがえし、かわす。
若手騎士の息は切れつつあったが、諦めず、闘志をむき出しにし、何度も斬りかかる。
しかし、ゴーレムの動きは更に俊敏となり、全ての剣撃を余裕でかわしていた。
はっきり言って、ゴーレムと若手騎士の力差がありすぎて、一方的となっている。
片や、順番を待つ若手騎士の仲間や先輩、後輩の騎士達、数多の冒険者、一般の応募者達は……
最初の方こそフィールド外から、大きな声援を送っていたが……
圧倒的なゴーレムの強さに、顔が引きつり、青ざめて行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後も……
冒険者、魔法使い、戦士、武闘家などが登場したが……
シモンが召喚したゴーレムに大きなダメージを与えた者は居なかった。
ゴーレムはまるで人間のように反応し、人間の数倍以上も素早く動いたからである。
例えば魔法使いなど、言霊を詠唱中に接近されるか、背後に回られてしまい、発動を封じられてしまった。
しばらくすると……
えり抜きの実力者らしき者がようやくゴーレムにダメージを与えられるようになった。
しかしいずれも致命的なダメージには至らない。
一方……
観客席では、支援開発戦略局の局員達がゴーレムと応募者達との戦いぶりを見守っていた。
「凄い!」
「あのゴーレム強いぞ! 名だたる猛者達が、子供扱いだ!」
という驚きの声が局員達に満ちる中……
地の魔法使いでもあるジョゼフが言う。
「ああ、この前の巨大ゴーレムもびっくりしたが、あのゴーレムも半端じゃない。とんでもない強さだぜ」
ジョゼフの言葉を聞き、エステルがふっと微笑む。
「万事……順調のようですね」
「はあ? 万事順調? 何を言うエステル」
エステルのつぶやきに「反論した」のは騎士のジュリエッタだ。
「どこを見てそう言う? 全然ダメだろう? いくらゴーレムが強いといっても、応募者はろくに打ち込めてないではないか! これでは見込みのある候補者が全然残らん!!」
「良いんですよ、残らなくても。応募者のある程度の絞り込みは出来ますし。それより、ゴーレムの試運転はバッチリですから」
「何? ゴーレムの試運転だと!?」
「ええ、試運転です。もしくは慣らし運転です。あのゴーレムは全然、本気を出していません。能力全開を100としたら、まだ2,3くらいしか出していませんよ」
「な、何!? 100のうち、2か3だとぉ!?」
「はい、皆さん、局長の凄さはご覧になっていますよね……あのゴーレムは局長の能力を反映した存在です。でも100%は反映していないと思います」
「な!? 100%は反映していないだと!? ど、どうして分かる? 何故そこまで言い切れるのだ?」
「うふふ……内緒です」
エステルは悪戯っぽく笑った。
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体長20m以上のドラゴン10体とたったひとりで戦い、撃退した。
その強さ、その底力を考え、想像すると……
「こんなものではない」と思ってしまう。
否、思うのではない。
確信に至るのだ。
そんなこんなで……
ゴーレムを使った2次選考が終わった。
やはり、ジュリエッタの懸念通り、ゴーレムにしっかりと攻撃を入れられた者はわずかであった。
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