頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第136話「選考会①」

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 1カ月と少し後……
 特産品ショップの準備も完了。
 オープンに向け、着々と準備が進む中……
 シモンの率いるクラン、そして応援部隊の『2次選考』の『実戦』が行われる事となった。

 会場はティーグル王国闘技場コロシアム、一般には非公開の為、客席に関係者だけだ。

 当然、シモン達支援開発戦略局一行も顔を見せていた。
 客席の一角に陣取っている。

 しかしその中に、ジョゼフとジュリエッタの顔はない。
 本日参加する冒険者ギルド、騎士隊双方の控室へ行っているのだ。
 ちなみに控室は、創世神教会、一般他の計4つ設けられている。

 やがて……
 ジョゼフとジュリエッタがシモン達の下へ戻って来た。

 笑顔でそれぞれ一番端へ座った。

 まずは胸を張ってジョゼフが言う。

「局長! ウチのランカー達、殆どが1次選考を楽勝で通過! 気合十分で、他の奴らを簡単に蹴落とし、全員合格するって感じですよ」

 対してジュリエッタも身を乗り出した。
 こちらも、全然負けてはいない。

「何を言う、ジョゼフ! それは騎士隊のセリフだ! 冒険者など簡単に退けてやる! 局長の強さを身をもって知っていればこそ、騎士達も、気合が入るというものだ」

「何だと! 黙れ! ジュリエッタ!」

「何おう、ジョゼフ! ふざけるな!」

 「ぎっ!」とにらみ合う、ジョゼフとジュリエッタ。
 「バチバチバチ!」という派手な火花の擬音が聞こえてきそうだ。

 さすがにシモンがふたりをいさめる。

「まあままあ。ジョゼフ、ジュリエッタ。ふたりともケンカするな。俺達がどうこうしなくても、結果はすぐ出る」

 シモンのいう事は道理だ。
 応援の影響はゼロではないだろうが、勝負の行方を左右するまではいかない。

「むう、それはそうですが……」
「局長のおっしゃる通りです。大人げなかった、申しわけありません」

「よし! 仲直りしたな。手打ちをしろ」

「は、はい! ……ジュリエッタ、申しわけなかった」

「う、うむ! こ、こちらこそすまない! 互いに正々堂々戦おう!」

「ははは、お前達が直接戦うわけじゃない。じっくり見守ってやれ」

「「はい!」」

「……と、いう事で、俺はちょっち行って来る」

「は?」
「局長?」

 ここでエステルが、「しれっ」と言う。

「人事部が書類で1次選考を行い、局長は、通過者全員の2次選考審査を直接個別にご担当されますから」

「え? 全員? 局長が直接? それも個別!?」
「多分総勢1,000名以上は居るぞ!! しかも山賊と違い、全員が猛者だ!! た、大変じゃないか、それ!!」

 1次選考通過者は結構な数である。
 その通過者全員を個別選考するシモン。

「どうして教えてくれなかった?」という表情のジョゼフとジュリエッタだが……
局員といえど、人事採用の方法等、詳細な情報は厳秘である。
万が一の場合、つい口が滑ったというのでは済まされないからだ。

「じゃあな」

 シモンは軽やかに客席の最下段まで行くと、すたっと柵を超え、緑のフィールド内へ入った。

「アーシュ局長!」

 そして、人事部のスタッフが呼ぶのに応え、大きく手を打ち振ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ……人事部スタッフが待ち受ける場へ、歩みを進めるシモン。

 シモンの背を見送りながら、ジュリエッタが言う。

「局長は、どこかの段階で審査、選考に絡むとは思っていたが、この2次選考で、という事か」

 続いてジョゼフも、

「全くの同感だ。しかし、普通に審査しないという感じだな」

 先ほどまで言い争いをしていたふたりが、顔を見合わせ頷いた。
 エステルが、悪戯っぽく笑う。

「うふふ、おふたりとも完全に仲直りしましたね」

 麗しき秘書に指摘され、ジョゼフとジュリエッタは苦笑する。

「ま、まあな……」
「うむ、つい意地になっただけだ」

 そんな観客席は、さておき……

 シモンは、人事部スタッフが白布をかけ、保管してあるモノへ視線を向けた。
 大きさは高さ2mくらいだろうか……
 生物ではないらしく全く動かない。

「選考試験の準備は万全ですね」

「はい、バッチリです。アーシュ局長」

「そろそろ時間ですね。では、1次選考通過者を集合させてください」

「かしこまりました! 局長!」

 シモンの言葉に応え、人事部のスタッフが頷いた。
 先ほどのシモンのように手を大きく打ち振る。

 瞬間!
 闘技場内に、魔法の力によるベルが鳴り響いた。

 そして少し間を置き……
 冒険者達が、「ざっざっざっ!」
 騎士達が、「だっだっだっ!」

 また創世神教会の治癒士達と、一般部門の参加者もそれらの集団に続いたのである。
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